魔法少女まどか☆マギカ ~ミサトとユウコはマドカの敵~   作:Mr.モノクマ

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第零章 「私には何もできない 〜Tragedy〜」
第1話 「ナイトメア」


  2011年9月20日 埼玉県春日部市

夏も終わりのころの夜。

春日部市の公園『虎の穴公園』で三人の少女がいた。

二人は腕を組みながら立っているが、もう一人はそっぽを向きながら地面に座り込んでいた。

 

「いい加減、自分の命を大切にしたらどうですか?」

「ふん。あんたたちに言われたくはないわ」

 

「ずいぶんと嫌われたものですね」

「そもそも仲良くなった気なんてさらさらない!」

 

手を差し伸べたら退けられた、ニヤリとする彼女の名前は、古谷ユウコ。

そこに空から翼を羽ばたかせてユウコの肩に止まるモノ。

 

「魔法少女の生命反応があったの」

「今回は結構長かったですね」

 

「ちょっとあっちでお祭りがやっていてのぞいてたら遅くなったの」

 

黒いウサギと猫を掛け合わせたような恰好をして、大きな黒い翼を羽ばたかせている。

そのお祭りに行ったのか小さな腕にはどこからか持ってきた風船を括り付けている。

 

「でも春日部の街はお祭りだけは楽しいの」

 

語尾に『~なの』とつけるこの動物の名前は、キューピー。

 

「ふつうこんな時に、お祭りなんか行かないぞ」

 

キューピの頭をぺしっとたたく一人の女。

叩かれたことでユウコの肩からずり落ちてしまう。

 

「何するの!だって風船がほしかったの」

「まだまだお子ちゃまだね。変なところで計画に支障が出たらどうするんだよ」

 

「そんなんで支障が出るぐらいだったらまだまだなの」

「確かにそうだが」

 

顎に手をやって少し何かを考え込む彼女の名前は、相生ミサト。

ミサトとユウコは端正な顔立ちでスリムな170センチ以上ある高身長。

 

「変なところで仲がいいんだから、ナイトメアめっ!」

 

ズキッと痛む腕を抑えて、憎まれ口をたたく少女。

 

「そもそもお前たちはなんでこんなことをしてるんだよ」

 

「負けたあなたにわざわざ教えることではありませんが、強いて言うなら大きな目的」

「思い起こせばもう何年になるだろうね」

「雨にも負けず、風にも負けず、頑張ってきたの」

 

「それは達成した後に言う言葉ですよ」

 

少女は分からなかった。

ナイトメアと呼ばれる彼女たちがこの数年間の間に何をやってきたのか。

 

「分かったわ。でもこれだけは渡すわけにはいかない、私のソウルジェム!」

 

手の中で必死に守り抜いているのは魔法少女一人一人が持っているソウルジェムというやつ。

基本的な形状は卵の形で統一されているが、普段は指輪の形状に、変身時はそれぞれ異なるアクセサリーの形状に変形する。

彼女は知っている。

ソウルジェムが持つ恐ろしい秘密を。

 

「ずいぶんと強情ですよね」

「なんでそこまでして生きようとするんだ?

「魔法少女の生と死は得てしてできるものじゃないの」

 

「ええそうよね。だけどその得てしてできないものに生きがいを感じるのよ!」

 

少女は手から巨大な剣を取り出す。

それをユウコに向かって切りかかろうとするが、簡単にかわされてしまう。

ミサトにも切りかかったが、それも無駄だった。

 

「早いっ・・・とても追いつけない」

 

息切れをして剣を地面にたたきつける。

 

「私には何もできない、誰も守れない、もういやだっ!」

 

泣き出してしまった少女はユウコは、優しく、強く抱きしめる。

柔らかな笑みを浮かべていた。

 

「嫌でしょう。その通りです。何の目的もなく延々と続く絶望」

「ううっ、ううっ・・・でも・・・・どうすれば」

 

「そうですね・・・・」

 

目の前の電灯の明かりがバチッとショートして消えた。

 

 

 

「ここで消えてなくなればいいのではないでしょうか?」

 

 

 

「えっ?」

 

涙はなくなり、その言葉にゆっくりと顔をあげる。

そのユウコの顔は笑顔であったが得体のしれない恐怖でいっぱいであった。

 

「このままいけばあなたは間違いなく悲惨な死を遂げることでしょう。お仲間と同じように」

「!!!」

 

少女の手が震えだした。

見たのだかつての同胞が魔法少女になったが故の悲惨な結末を。

 

「あなたたちは私を助けてくれるの?」

「ええ。別に殺そうとしているわけではないのですよ、逆に救っているのです」

 

「救う?」

「はい、見てください。このソウルジェム」

 

少女のソウルジェムは先ほどより確実に黒く濁りきっていた。

 

「ああ、このままだとやばいね」

 

そんなことは少女自身もわかっている。

いまどのような状況なのか、もう時間は残っていない。

 

「このままアレになるのと、ここで潔い死を迎えるのではどちらがよろしいですか?」

「でもここで死ぬのは?」

 

「死ぬのではありません。生まれ変わるのですよ。さあ決断の時です」

 

頭を抱えて考え込む少女。

先ほどまでの高圧的な態度から打って変って弱気でユウコにすがり寄ってくる。

 

「ユウコ、本当に彼女は大丈夫なのか?」

「ええ。人間はいつどんな時でも決断が大事です」

 

「私達もか?」

「そのとおりです。今ここであなたといるのもその決断の一つ」

「ナノもミサトとユウコと一緒にいるのもいい決断だと思っているの」

 

妙にしみじみとしてことを言うキューピにミサトは顔を少々赤らめる。

大きく息を吸ってユウコに真剣な表情を見せる少女。

 

「ここで、私を殺してくれる?」

「分かりました、けどあなたを殺しはしません」

 

ミサトが少女の手からソウルジェムを取り出す。

 

「どうするつもり?」

「お前には関係のないことよ」

 

腕を大きな氷の剣にそのまま変化させる。

そして少女の心臓を剣で貫く。

 

「うっ!」

「キューピ、あとはよろしく」

「私たちはカスカベタワーの屋上で待っています」

 

少女に背を向けてスタスタと『虎の穴公園』を去ってゆくナイトメアの二人。

 

「まって!」

 

心臓を貫かれても苦しそうにはしているものの胸を押さえて立ち上がる。

だが二人は振り向かない。

 

「あなた達の目的って何?」

「私達にもわかりません。でも運命の輪を取り戻しに絶望を作り出しているといっておきましょう」

 

二人は闇に包まれるとその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

  春日部市内のとあるビルの屋上

ミサト・ユウコ・キューピ、人呼んでナイトメアと名乗っている3人はじっと町を見つめている。

 

「ここも結構長かったよね」

「ええ。いろいろ変な町でした。でも名残惜しいですね」

「次の街は群馬・・・あの町なの」

 

キューピーが一枚の紙を二人に渡す。

そこには群馬のとある町の地図と写真であった。

 

「ついに戻ってくるんだな」

「ええ、数年ぶりでしょう。美しき思い出と忌まわしき町」

 

何やら過去を思い出すように夜の風に当たるユウコ。

 

「あそこの魔法少女はいつものようにはいきませんよ」

「話には聞いているけど、本当なのか?」

 

「さあ?でもそれよりもあの町にはまだ“アレ”があるはずです」

「まあ早まるなよ、まずはソウルジェム・・・だろ?」

 

手に持った缶を屋上から思いっきり投げると、それは真下の公園のゴミ箱に見事入った。

 

「ええ。じゃあ行きましょうか」

 

ビルから飛び降りるナイトメア三人。

これから走って見滝原市に向かうのだがなんやかんやの事情で3日かかってしまったのは別の話。




最初は、シリアスな感じのナイトメア3人衆を書いてみました。
これからどうなるのかは物語の流れに任せてみます。
どういう展開になるかわかりませんが温かい目で見守ってください。
感想よろしくお願いします。

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