魔法少女まどか☆マギカ ~ミサトとユウコはマドカの敵~   作:Mr.モノクマ

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第17話 「作戦会議」

  9月24日 現在時刻:11時35分

4時間目の授業は早乙女先生の英語。

見滝原中学校の英語は訳が専門のIと文法が専門のWに分かれている。

早乙女先生はIもWも両方とも担当している数少ない先生でもある。

今やっているのは訳のIのほうだ。

 

「では志筑さん。ホワイトボードに書いてあるの文を訳してください」

 

『A fried egg likes half-done. Only this cannot be yielded. 』

 

ホワイトボードには早乙女先生が書いた英文が書かれてあった。

まどかとさやかは意味が分からなかったが、英文が読めた仁美は困惑そうな顔をしている。

答えを言うのも少しためらっている。

 

「えっと・・・“目玉焼きは半熟のほうが好きです。これだけは譲れません”です」

 

その場にいた全員が訳が分からず呆然としている。

最初から英文の意味が分かった生徒もどういう顔をしていいかわからなかった。

 

「先生、これは」

 

早乙女先生はものすごくご機嫌そうな顔だ。

 

「そうですよね~皆さんも、卵焼きは半熟がいいですよね~先生はその言葉を聞いて安心しました」

 

その言葉を聞いて全員が納得した。

昨日話したことをまだ引きずっているのだこの人は。

まさか英文にしてまで自分の考えを闘争とするその心意気に生徒たちは何も言えなかった。

 

『よほど卵の件を根に持ってるんだ』

 

さやかはテレパシーでまどかにだけ聞こえるようにツッコミを入れる。

もうすでにこの能力をマスターしたようだ。

まどかはまだうまく使うことができないのにこういうところだけは人一倍物覚えが早い。

 

『アハハ・・・早乙女先生にこの前の仁美ちゃんの話を聞かせてあげたいね』

 

普段は半熟を食べて、疲れて精をつけたいときには固焼きにする。

この使い分け際できれば幸せな相手も見つかるだろうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わってまどかとさやかは屋上でマミと待ち合わせをしている。

仁美は今日は進学塾で早めに帰らなければいけない。

一週間の日でオープンなのは月曜日と火曜日だけというのだからハードスケジュールだ。

 

「願い事って言ってもなかなかだよね。まどかは決まった?」

「う~ん?わからないな」

 

青空を見上げながら大きく息を吸うさやか。

 

「アタシも全然だわ。なんだかな~いくらでも思いつくと思ったんだけどな」

 

実際に考えてみるとあまりにもくだらないことを願うわけにはいかない。

最初は“絶対に太らない体”とか“どんな問題でもたちまち解ける頭脳”だとかを考えていたがそんなことのために命かけるのは嫌だ。

 

「命懸けってところに何か引っかかるよね」

 

命懸けでやれば何でもできるという言葉を以前聞いたことがある。

でも本当にそうやったところで自分に何ができるのだろうか?

 

「私が魔法少女になったところでマミさんみたいにはなれないし」

「そうだよね。私もそこで迷ってるんだ」

 

自分みたいな弱い子が魔法少女になってもすぐにあの怪物(魔女)に殺されてしまうのではないかという恐怖がある。

マミみたいに心も体も強くないとできないのだろう。

 

「意外だな、大抵の子は二つ返事で契約するんだけどな」

 

二人に横にいるキュゥべえが意外そうに言った。

 

「きっとあたしたちがバカなんだよ」

「それはちょっとおかしいな」

 

でもそうかもしれない。

簡単に願い事が決められないのは今自分たちが幸せだから。

幸せバカというのは今この二人のためにあるのかもしれない。

 

「じゃあ契約した人たちはみんな不幸だったのかな」

 

まどかがキュゥべえに向けて言う。

 

「そうとは限らないよ。つまり一概に不幸な人だけが魔法少女になるわけじゃないんだ」

 

幸せな人が更なる幸福を願うというのはよくあることだ。

マミやあのナイトメアの三人組は元々から幸せだったのか、それとも・・・

 

「あらら、まどかが考え込んじゃったよ」

 

肩をゆするとハッとまどかは元の世界に戻る。

たまに考え込むとどこかわからない異次元に意識が飛んでしまう。

 

「大丈夫か?またどこか行ってたぞ」

「あ、ありがとう。キュゥべえは私たちに幸せになってほしい?」

 

その質問にちょっと考え込むキュゥべえ。

 

「僕にはよくわかららないけれど、こんな言葉があるんだ」

 

するとピョンとジャンプしてまどかとさやかの前にでる。

 

「幸福と不幸。かつて幸福だった人はその記憶があるからこそ不幸を実感する。不幸だった人は以前との記憶比べて初めて幸福をかみしめることができる。つまりどういう事かわかるかい?」

 

意味深な質問に顔を真面目にさせて考える。

そして考え付いた先に出会ったのが一つの答えだった。

 

「それって、絶対的な幸福も絶対的な不幸も存在しないってことかな」

「その通りさ」

 

現在自分がどのような状態にあるのかわからないと願いはかなえられないのだろうか。

そんな思いもまどかの中にかすかにある。

 

「でもさ、絶対的とはいっても命に代えてもきっと世の中にたくさんいるんだろうな」

 

風が強くなってきたのでさやかがスカートを強く握る。

そこまで幸福と不幸の願いにこだわるのは理由があった。

身近にいる大切な人が同じような境遇だからだ・・・・・・

 

「私たちは本当の不幸を知らない。その程度の存在なんだよ。恵まれすぎるのも難だなって」

 

真面目なことを言いすぎて疲れたのかまどかの膝に顔を置いて寝転がる。

やはり普段からおちゃらけている人が変にキャラ変更するとどっと疲れるらしい。

 

「まどかの膝枕はいいね。あたしの嫁はこうでなくっちゃ」

「さ、さやかちゃん」

 

まどかが顔を赤くしていると目の前の扉が開いた。

そこにいたのは黄色い髪に豊満な胸を持った少女、巴マミだった。

 

「ま、ま、ま、マミさん!?」

 

こんな恥ずかしい所を見られてしまったのでさらに顔を真っ赤にするまどか。

さやかかはそのまどかのリアクションが面白いので膝枕をやめようとはしなかった。

 

「さやかちゃん、ちょっと!いや、これは違うんですよ」

 

必死に弁解する姿を見てくすっと笑うマミ。

ほほえましい光景に思わず笑ってしまったのだ。

 

「じゃあまずはそこの喫茶店で作戦会議と行きましょうか」

「はい」

 

元気よく返事をして、マミと一緒に見滝原市近くにある喫茶店『し~さいど』にいく。

その後ろ姿をじっと見つめるものが一人。

 

「暁美さん。今日こそ帰りに喫茶店によっていこ」

 

誘ってきたのはクラスメイトの明るい二人組。

新人類とはまた別だがそれに似た雰囲気を持っていた。

 

「今日もちょっと急ぐ用事があって。ごめんなさい」

「そっか、残念」

 

哀しそうな顔をして教室を出る二人。

ほむらも早歩きでどこかに向かっていった。

 

「大丈夫かしら・・・」

 

ここは見滝原市直営喫茶店『し~さいど』

下校途中の生徒が何人か来て、学校もこの喫茶店のみ公認しているのだ。

『し~さいど』自体も学生向けのメニューを作っている。

 

「コーヒーを3つ頂ける?」

 

マミがコーヒーを頼むと早速話を切り出す。

 

「さて、それでは魔法少女体験コース第一弾を始めましょうか」

「はりきっていこ~!!」

 

さっきの真面目さとはまるで違うハイテンションのさやか。

 

「さやかちゃんバッド持ってきたの?」

「もちろんさ!しかもまどかの分まで持ってきてやったよ」

 

またどこから取り出したかわからないバットをまどかに渡す。

突っ込みたい気もするがそこは突っ込んではいけない気もする。

 

「お待たせ」

 

そこにマミも来て、第一回魔法少女体験コースの作戦会議が始まった。

 

「今日は鹿目さんは何か用意してきた?」

「え、ええっと、私は・・・こんなに考えてみた」

 

目の前に出したノートにはまどかが昨日一晩考えて書いた自分の魔法少女姿の設定書だった。

武器は弓で服装はかなり可愛らしいものでまどかのイメージピッタリであった。

だがしかし!

 

「うわあっ」

「衣装や武器とかだけでも考えておこうと思って」

 

まどか以外の二人はおかしくて思わず大笑いしてしまった。

それに気づいて顔を真っ赤にして隣にいたキュゥべえで顔を隠す。

 

「意気込みとしては十分ね」

「こりゃあ参った、参りました。山田君!座布団二枚持ってきて」

 

笑い終えた後にさやかが朝の件を思い出す。

 

「そういえば朝、ほむらが言ってたんだけど。あの時の魔女を倒したそうです」

 

マミの顔が真面目になる。

 

 

 

 

 

  ~遡ること数時間前 回想開始~

 

 

 

 

 

教室の扉が開いて1人の生徒が入ってきた。

 

「ほむらちゃん」

 

その言葉にさやかも顔をあげて、まどかもほむらの顔をじっと見つめる。

ほむらはその間も表情一つ変えずにクールな素振りを見せる。

 

『ど、ど、ど、どうしようさやかちゃん』

『まどかいったん落着け。マミさんの言うとおり教室じゃ何もしてこないって』

 

テレパシーの会話に別の声が聞こえてくる。

それは紛れもなく机に座って本を読んでいる暁美ほむらの声だった。

 

『昨日はずっと魔女を探していたみたいね』

『一昨日の続きかよ!』

 

『いいえ、そのつもりはないわ』

『じゃあどうして』

 

『一昨日の魔女は私が倒しておいたわ』

『嘘でしょ?』

 

一昨日というとまどかたちが迷い込んでしまった際に見た魔女結界にいた魔女のことだ。

それを一人で倒してしまったというのだ、暁美ほむら。

 

『嘘じゃないわ。あなた達はいったい何をしてたのかしら』

『それは、ナイトメアの奴らが』

 

ナイトメアの奴らに邪魔をされてといっても今更それは言い訳に過ぎない。

それよりもあれを一人で倒したと言う事に信じられない面持ちを浮かべる。

 

『キュゥべえが鹿目まどかと接触する前にけりをつけたかったけれど、今更手遅れだし』

『手遅れって・・・どういうことだよ』

 

『いずれわかるわ』

 

手遅れというのはどういう事かまどかとさやかにはわからない。

恐らくマミも同じだと思う。

ではほむらはいったい魔法少女の何を知っているのだろうか?

 

『で、どうするの?あなたも魔法少女になるつもり?』

『私は・・・えっと・・・』

『あんたに言われる筋合いはないわよ!』

 

『私はこの前に言った、忠告が無駄にならないように祈っているわ』

 

チャイムがタイミングよく鳴り響く。

早乙女先生がやってきたので一端、テレパシー会話は終わりにする。

 

「はい今日のHRですがまず最初に・・・」

 

 

 

 

 

  ~回想終了~

 

 

 

 

 

「それが本当だったらやはり彼女は相当強い魔法少女みたいね」

「う~ん、喧嘩ふっかけてなくてよかった」

 

でもナイトメアの魔力も侮れない分、危険がさらに生じる。

一体あいつらは何の目的があってソウルジェムを狙っているのだろうか。

 

「じゃあ今日はどうするんですか?」

「うん。また地道に探すしかないみたいね」

 

「そういえば、一つ気になるところがあるんですけれど」

 

さやかが机の上に一枚の写真を提示する。

それは見滝原市郊外の森の中にある現在は誰も住んでいない廃墟屋敷であった。

2年前に殺人事件があってそれ以来取り壊しもされないままそこに残っている・・・

 

「らしいです」

「さやかちゃん誰に説明していたの?」

 

「・・・・ともかく!ここはどうでしょうかね」

 

写真を見てマミの顔が少しひきつったように見える。

 

「た、確かにここに魔女がいる可能性はかなりあるわね」

「でしょ、でしょ!それにここは1か月前に死体が発見されたとかなんとか」

 

興奮状態のさやか。実はこういうオカルト系に非常に興味があるのだ。

だがそれとは逆に消極的な人が一人。

 

「さやかちゃん。本当にここに行くの?やめておいた方がいいんじゃない」

「大丈夫だって!何かあってもこのさやかちゃんに任せておきなさい」

 

「マミさんはどう思いますか?」

「生半端な気持ちで行くのは危険だけど、その1か月前の事件があったとすればそれはおそらく魔女の呪いが原因だと思うわ。だとすれば」

 

「やるっきゃない!」

 

と言う事で今からその廃墟に三人で向かうことになった。

まどかは当然のことながら意気消沈しているが、決まったことなので仕方がない。


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