Rebellion Fight of traitors   作:A.K

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コウマ「さて、オリンピックも終わったが……大統領はどうなるのやら……っとspecialchapter4始まるぞ」



 これはとある平行世界のある日のことである。


specialchapter4「真夏のカルデア異世界交流会」

 平行世界の山脈地帯にて、一夏専用機のVB-6が吹雪の中をその機体の脚で移動する。険しい山の中で送られてきた位置データを便りに行動を進めて、現在入口でチェック項目のデータを打ち込んでいる。

 

 データの打ち込みが終わり次に行ったのは『現在の統計緯度と次元座標』である。ここまで来るのにかなりの魔術結界…認識阻害の魔術式を確認したためである。

 

 

「そういえば、ブラッドの皆は異世界移動は初めてだよな?」

 

 

 訓練を終えた翌日、一夏達カンパニー特別遊撃隊《クラッシャー隊》は平行世界への交流会の為に派遣されることになった。更に極東支部のメンバーから何名か追加で送られてきたのだ。

 

 

「そうだよ。まあ私たちも極東支部に来なかったらこんな体験はしなかったと思うよ?」

 

「そういえば冷房はちゃんと効いてる?」

 

「ああ、しっかりと効いてるぜ。しかしなかなかメンテのやりがいがある機体だな一夏」

 

「まあね、けどギルやみんなの整備が良かったからちゃんと動くと思うけどな」

 

 ギルと呼ばれたのは、特殊神機使い”ブラッド”の隊員である元グラスゴー支部所属のギルバード・マクレイン。ポール型のチャージランスの使い手の第三世代神機使いでもある(ブラッド自体第三世代神機使いの部隊だが)。

 

 彼はある日を境に機械弄りが趣味になり今では神機の整備や機動兵器のメンテナンスまでこなすので、アストナージの元で訓練を受けている。その為か最近の私服は整備士の服装が普通になりつつある。

 

 

「そういえば最近のアラガミの動きはどうなってるんだいナナ?」

 

「うん、勇儀さんも気になってると思うけど今は赤い雨もない代わりに野生化した神機兵が他のアラガミを群れで襲ってるから、こっちの仕事はデスクワークが多いんだよね〜。けど極東支部に近づく個体は完全に倒しちゃうんだけどね!」

 

 

 勇儀と会話をするのは香月ナナ。ブラッド隊員のブーストハンマーの使い手でゴッドイーターチルドレンと呼ばれる人種でもある。最近は料理に凝ってるがなぜかカプセルレーションが出来てしまうという謎補正が付加されていた。

 

 服装は布面積が少なく腹壊さない?とよく言われている。

 

 

「皆さん、そろそろ中に入りますから静かにお願いします。燐さんは準備はできてますね」

 

「シエルは相変わらず真面目だねぇ。最近はどうだい?」

 

「カルビがまた大きくなりました……なんででしょうか? 」

 

 

 お燐と会話をするのは今現在のブラッド隊員の最もな若手新人であるシエル・アランソンである。主に支援能力に長けて、狙撃手としての実力は非常に高い。

 

 が、ブラッドに来るまで軍人としての訓練を幼い時から受け続けた結果どこかずれた考えたが多いのも特徴である。

 

 因みにカルビとは、極東支部で飼われている本来なら小さい種別のカピバラなのだが、シエルの飼育下においてはなぜか巨大化しつつある。

 

 

「よし、許可が降りたようだしみんな降りてくれ!」

 

 

 次々と降りていき、VB-6をスペルカードに戻してから一夏は中へ……人理継続保証機関カルデアへと入っていった。

 

 

 「ここがカルデアか」とギルが呟いた。何かトラブルは合ったようだが何らかの破壊工作の後を物語る痕跡が未だにチラホラと確認できた。

 

 

「ええ、皆様方にも予めパンフレットをお渡しましたがカルデアは複数の魔術結界と科学技術の組み合わせによって作動しています」

 

 

 「あの魔術師がか……」とギルが呟いた。魔術師は基本的には機械を嫌う。ここ近年は機械嫌いが減ってはいるがまだ多い。魔術師で機械等を好んで使っていたとされるのは有名な所で魔術師殺しの衛宮切嗣だろう。

 

 

「しかし話は聞いていたが……まだかなりの損壊や復旧していない部分も多いんだなえっと……マシュ・キリエライトさん?」

 

「マシュでいいですよ……ええっと「藤木コウタ、コウタでもいいよ」は、はいコウタさん!」

 

 

 一同の前に付き添い施設の説明をするのは、マシュ・キリエライトと呼ばれる少女だ。

 

 この少女はデミ・サーヴァントと呼ばれる人間と英霊の融合体であり、更に七つのクラスに分けられる基本的な英霊の中で例外とされる特異なクラスである”シールダー”と呼ばれる盾使いなのだ。

 

 

「しかし皆さんの持ってるその”神機”というのは変わっていますね」

 

「そうですか?まあ歴史的なことも考えるとそうですね、使用者認定の時では死人がよく出たようですし」

 

「……まあその話は忘れよう。そういえばマシュも若いのに頑張るよなー偉いよ」

 

 

 アリサがさらりと神機における黒い話をぶちまけたので、なかった事にする事にした。マシュも目線で理解してくれたようだ。

 

 この話は初期の神機使いにおける有名な話である。今現在では解析率が上がったものの、昔はまだオラクル技術が低いので100人選んで90人死んで10人残ればいい方でもあった。

 

 最悪選ばれた人員全員がアラガミ化してその場で殺処分されるのが多いと記録には残る。今でもその名残で神機使い認定試験では殺処分要員の神機使いが一人配備されている。

 

 

「ありがとうございます。そういえばそちらのえっと……フェンリル極東支部にも英霊の皆さんがいるんですよね?」

 

 

 マシュの一言に対して一夏が答えた。

 

 

「まあな、とは言っても俺達の世界の敵は通常生命体ではないアラガミやインベーダーなんて物もいるからな。英霊でも倒せるのはそれ以前の存在だから普段は通常労働者として働いてもらってる。しっかりと保険も給料もあるから安心してくれ」

 

「保険、給料……英霊にも出るんですか?」

 

「まあな、ただでさえ人材不足の極東支部にとって様々な技術を持った英霊は貴重な人材なのさ。だからその分の保証は良くする……まあ俺達の平行世界位だけどなここまでの事するのは」

 

 

 給料や保険等のサービスを英霊に行った結果、趣味に全力になった黒ひげのおっさんやら裏切りの魔女がプラモやらなんやら買い占めていたり、美食巡りを始めているDEBUや理性が蒸発したやつに文明の破壊者etc...etc...かなり平和になっている。

 

 え?平和に見えない?何を言っているんだ?

 

 

「ここが会場です」

 

 

 一同が着いたのは広い会議室である。ざっと見た所200人は軽く入るだろうとギルとシエルは判断した。

 

 普段は無駄な装飾などはないのだろうが、今回の為に付けてくれたのだろうと思われる手作りの装飾品が多かった。

 

 そんな中ナナは壁に貼られた1枚の歓迎の紙に注目していた。炎に包まれた藁人形のようなキャラクターと赤い装飾の入った槍が描かれていた。

 

 

「あの装飾品は……ケルト神話系列の英霊が作った物だね!」

 

「ナナ分かるのか?」

 

「だってあれなんかウィッカー・マンじゃん!それにゲイ・ボルグみたいな装飾のテープもあるからそうでしょ?」

 

 

 ギルも思わずたじろぐほど力説するナナはよく見ていたのだ。以外にも基本落ち着きがないナナは観察眼が優れており、細かいチェックも結構やれるのだ。

 

 

「本当です、香月さんは細かい所まで良く見えてますね」

 

「うーん、まあゴッドイーターとしての癖かな?」

 

 

 まあ確かに癖であるのは間違いない……神機使いにとって景色の細かい変化も見逃せないのだ。そこにアラガミやアラガミ化した人間や神機使いがいたら即座に討伐出来るようにするためである。

 

 

「そうですか……あ、そろそろ始めますね?ドクター、よろしくお願いします!」

 

「うわぁ……噂に聞いてたけど鬼に火車に八咫烏が本当にいるね、っとごめんね今始めるよ。みんな来てくれ!」

 

 

 ドクターと呼ばれた人物が入ると共に、次々と英霊がやってきた。中には明らかにお前人間?と思うようなものも混ざっていたが気にしない事にする。

 

 

「はい、今日はわざわざ平行世界から起こしいただきありがとうございます。僕の名前はロマニ・マーキン……あだ名はロマン。このカルデアの仮だけど指揮をとっている者だ。まあ本業は医療班だけどね。それと隣にいるのが……」

 

「はいはい、私はレオナルド・ダ・ヴィンチ。まあ姿は完全にモナリザだけどそこは気にしないでね〜。性別?まあ美に性別はないから気にしないでね……イイね?」

 

 

  「アッハイ」と答えたら、「ロマン、忍殺語は他の世界の人でも通用したようだ!」と小さな声で会話をしているのが聞こえた。

 

 

「すみません、あの人はいつもあんな感じなので……改めて挨拶をさせてもらいますマシュ・キリエライトです。よろしくお願いします」

 

 

 内心、藤木コウタは最後に挨拶をしたマシュの行動を一つ一つ確認して舌を巻いた。

 

 よく出来た人だ、まだまだ緊張はあるが芯がまっすぐで”覚悟”を持っている……将来は凄い人材になるだろうと、極東支部第一部隊隊長としての人材チェックをしていた。だが同時に意思の揺らぎもわかり易いとも言えた。

 

 

「そちらが挨拶をしてくれたのに我々がやらないのは無粋というでしょう……私はフェンリル極東支部代表の織斑一夏大尉です。歳は16の趣味はトレーニングと家事です。所属はフェンリル極東支部の幻想郷支部第一部隊隊長、種族はゴッドイーター兼サイボーグです」

 

 一夏を皮切りに極東支部側も挨拶を始めた。

 

 

「フェンリル極東支部第一部隊隊長、外部特別支援部隊クレイドル隊員の藤木コウタ突撃兵大尉だ。歳は18。趣味はアニメ鑑賞やゲームだね。種族はゴッドイーターさ。まあ難しい話はなしでよろしく!」

 

「フェンリル極東支部外部特別支援部隊クレイドル隊員のアリサ・イリーニチア・アミエーラ大尉です。コウタと同じく18歳です。種族はゴッドイーターですね」

 

「フェンリル極地開発機構独立部隊ブラッド所属、ギルバード・マクレーン中尉だ。歳は22……まあゴッドイーターだな。機械いじりが趣味だからよろしく頼む」

 

「じゃあ次は私だね!同じくブラッド隊員の香月ナナ少尉でーす!歳は16のゴッドイーターチルドレンだよ!これからよろしくね!あ、これ御裾分けのおでんパンだよ、みんなで食べてねー!」

 

 

 おでんパンを配られた英霊は、この謎の戦慄を覚える謎のパンをじっと見つめていた。(アルテラや理性が蒸発した人物もといアストルフォ等はすごい勢いで食べてる。あとエミヤの目がやばい)

 

 

「では次は私です……シエル・アランソン狙撃兵少尉です。ギルやナナさんと同じくブラッド隊員で、ナナさんと同じ16です……趣味は……弾丸を改造することです。これで良かったですか?」

 

「上出来だよ。私は星熊勇儀装甲兵少尉……まあ歳は800年ぐらいかな?頭を見てわかると思うけど私は鬼だ。だがゴッドイーターだな……所属は幻想郷支部さ。ここにも鬼とかがいるようだから酒でもn「勇儀さん?」……すいません、本当に勘弁してください、私はまだ岩盤浴を浴びたり一人用のポッドに詰められたくないよ一夏」

 

「あはは……じゃああたいだね、火焔猫燐突撃兵中尉。種族は火車のゴッドイーター。年齢は200を超えたくらいだね……まあよろしくね」

 

「私は霊烏路空狙撃兵少尉!元地獄烏の八咫烏でゴッドイーターだよ!歳は…………えっと何歳だったけ?「200ちょっとだよ!」えっと200超えたぐらいだよ!そういえば一夏、あの娘と『イデ』は出さないの?」

 

「イデは出したらやばいだろうが!それに正邪は幻想郷でやってもらうことがあるからここにはいないし、召喚符もない……っと、以上でこちらの挨拶は終了とさせていただきます」

 

 

 自己紹介が終わり互いに本日の予定を確認することになった。

 

 1まず互いの自己紹介などの挨拶を行う。

 

 2模擬戦闘を行い互いに交流をする。

 

 3その後は自由行動として、各員自由に活動をする。

 

 

「これで確認は終了だね……あと今日は彼は来てないのかい?”赤の星のサイボーグ”君は……?オルガ所長が改めて礼を言いたいそうなんだが……」

 

「Jさんは木星のザ・パワーの観測を行っているのでいません……。あの人がここの所長さんを発見したからお礼が言いたいのはわかりますが無理ですね」

 

 

 所長……本名オルガ・マリーはここカルデアの指揮を執る人物であるが、とある人物の手によりこの世界から消された。肉体も消された魂だけの存在になっていた彼女は何処と無く意識を失ってさ迷っていたのだ。

 

 そんな時にその人を見つけたのは、超弩級戦艦Jアークの艦長でありサイボーグであるソルダートJ-002である。

 

 そんな時に見つけた場所こそ艦これの世界で、ギャレオリア彗星が確認された太陽の近辺宙域だったのだ。

 

 幸運だったのは彼女が魂だけの存在になったお陰で、宇宙における有害事項(無酸素空間や宇宙放射線)の影響を受けなかったことと、太陽の光があれば不可能はほぼ無いJアークが近くにいた事だ。

 

 次元ゲートであるギャレオリア彗星を通り、極東支部に戻ったJはすぐに新しい肉体の再構築と魂を再構築した肉体へと送り脳の記憶データの解析をし、”どこの平行世界”で”どのようなことが起きたのか”を確認して今いる世界軸のFate/GrandOrderの世界へと来たのだ。

 

 そんなカルデアからしたら人間を完全に生き返らせた自分たちは、救えなかった人を救ってくれた英雄なのだ。そして今回が初めての本格的な交流になるのだ。

 

 

「そうなんだ……なら所長には僕から言っておくよ。それともうすぐここの……いや、人類最後の希望である最後のマスターが帰ってくる頃だよ」

 

 

 この世界の特性……それは英霊の主たるマスターが1人しかいないのだ。それにこの世界は人類を滅ぼし歴史も破滅させる考えをした魔術王ソロモンによりすでにカルデアを除き壊滅しているため、新たなマスターは存在しない。

 

 そもそもの予定である48の候補者は、最後の一人を除きコールドスリープで破壊工作に巻き込まれ重傷を負った影響による延命処置をされているので使いようがない。

 

 しかもマスターである者は魔術師なのだが……血統や家柄で全てを決めようとする者が多いため、体調を万全にしても絶対にろくなことにならないので論外。

 

 これらからして本当に苦労しているのだ……それに職員も本来の人員の半分ほど死亡したので人員も少ない……正にぎりぎり、正に瀬戸際なのだ。

 

「本当に苦労しているなぁ……って、そういえば対戦相手は誰なんだDrロマン?」

 

「うん、実は予め決められていてセイバー・リリィとアルテラの2名になってるんだけどそっちはどうなんだい織斑くん?」

 

「正直な話、俺とコウタになります……しかしなぜその2名を?ここのマスターの選抜メンバー等がいい筈……もしや来たばかり?」

 

 一夏はこちらに近づく2名の英霊二名に目を向けた。1人は破壊の大王と呼ばれもするアルテラ(アルテアともアッティラとも呼ばれるそうだ) 、もう1人はかのアーサー王ことアルトリア・ペンドラゴンの幼い時の姿でエクスカリバーではなくカリバーンを持つセイバー・リリィだった。

 

 2人ともまだ不安な様子で周りを見ている事から、まだ最近来たばかりなのだろうと考えた。

 

 

「うん、彼女達はまだ経験……まあメタい話レベルも低いから少しでも実力を上げてもらおうとね。あと君たちの使う神機の性能も試したいんだけど頼めるかい?」

 

「まぁその位なら良いですけど……なんかその幼いセイバーの方、なんか震えてないか?」

 

 

 コウタが見た通りにいつのまにかセイバー・リリィ(ここから略してリリィと呼ぶ)はブルブルと震えてアルテラの陰に隠れてしまっていた。

 

 

「あー……多分一夏くんとコウタくんじゃないか?凄い獰猛な顔してるし」

 

「やだなぁそんな顔で笑ってないよなぁコウタ?」

 

「だよなぁ一夏?」

 

 

 ほかの面子からしたら明らかに獰猛な顔をしているのは確かであり、なんかドワォしそうでやばい。

 

 お陰でまだ幼いリリィは怯えてしまっている始末だし、アルテラに関してはまだ耐えてるが少し顔が暗い。

 

 

「いやいや、凄く怖い顔してるから!?」

 

「何か作画的にも変わってるよね!?明らかに虚無の果てを突き進む人の顔だよね!?」

 

「そんなに怖いの俺達?」

 

「イチカとコウタと言ったか……正直に言うと犯罪者顔になってるぞ」

 

「……(ガタガタ)」

 

 

 この後、凄まじいほど怯えていたリリィに対しての罪悪感からの全力の土下座をかました2人のお陰で何とか、リリィは震えが収まったという。

 

 

 

 カルデア内《模擬戦闘空間……草原》

 

 カルデアには模擬戦闘訓練の為の特殊空間が存在し、フィールドを形成する。今回は遮蔽物も比較的少ない草原になった。

 

「さて、久しぶりに使うな神機は……まあ訓練は忘れてはないがな」

 

「一夏、今回は模擬戦闘だから何時もみたいに瞬☆殺する様な事はなしにしろよ?まあ俺も人のこと言えないけどね」

 

 

 一夏の使う神機は『ベルソル極(バスター)・カストルボルグス極(ショット)・インキトゥス極(バックラー)』の接近型でブラッドアーツは《クライシストIV》。強化パーツは消音、防御範囲強化。

 

 氷属性を持ち、血の力である『粉砕者』の影響で全面的な破壊力の強化を図っている一夏が好むアセンブルだ。

 

 コウタはとある教官の使っていた神機である『モウズィブロウ極』を使っている。因みに非可変式だったが、改良されて第1.5世代になった為に第1世代用の装甲等で近接攻撃や防御が可能になっている。

 

 こちらは万能の属性を持ちメインやサポートまでこなす万能型である。

 

 

『一夏、コウタ!わかっていると思いますが今回は捕食形態(プレデターモード)の対人使用は原則事項で禁止となっています』

 

『それに幾ら対人用特殊コーティングで人が切れない様に施したとしても下手したら死人が出るので気をつけてね一夏?それとオペレーターは私がやるからね』

 

「了解、死人はでないようにするぜ」

 

「まあ英霊と模擬戦闘なんて珍しいからな……おっぱじめるか。お空オペレート頼むぜ!」

 

 

 アリサとお空からの注意を聞いて索敵に入った2人は、目標を探すために駆け出した。

 

 

 

 

 

 プスプスとどこかの回線が焼けたような音がしているがまだ誰も気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君たちは訓練の一環として彼らゴッドイーターとの模擬戦闘をするが、ぼく達も事前に確認したこのデータが本当かどうかはわからないし……君たちが今日のために頑張ってきたのも知っている。だから……行ってこい!』

 

「っふ、了解した……!」

 

「で、では行ってきます!」

 

 

 いつも以上に本気となっているロマンの言葉を聞いて、決意を新たに決めた二人を見送りロマン達は対戦相手の移動速度を見た。

 

 開始と共に生物が出せる限界速度に近い速さで、突き進む様はまさに捕食者である。

 

 既に実力差は見て取れる位に理解している……自分たちよりもっと長い間”規格外”と対峙してきたのだ。まだ通常の生物とも呼べるドラゴンや幽霊やゴーレムとも違う者達を狩り続ける者だ。

 

 魔術も魔法も効かない相手だったら既にこの世界は滅んでいる……だがあっちの世界はそれでも足掻いて生き続けた。それに見習ってこちらも足掻かせてもらおう!

 

 

「彼らに勝てる勝率は……限りなく0だろうね。それでもやるしかないんだ……今日の為に頑張ってくれた彼女達の為にも!」

 

 

 ロマンはコンソールをチェックして状況把握を開始した。今回の戦闘では外部からのオペレーターが一人決められておりそのサポートを受けて戦闘をするのだ。

 

 

『『目標を確認、戦闘を開始せよ!』』

 

 

 まず最初に動いたのはコウタとリリィだ。リリィはその装備や服装から機動力が高く更に使う得物が勝利すべき黄金の剣とも呼ばれるカリバーンは軽い方で扱いやすいために動きを阻害しにくいのだ。更に魔力放出Aというスキルによる瞬間加速で距離を縮める。

 

 一方でコウタは遠距離から攻撃が可能な射撃型であり、制圧の名を持つアサルトライフル型の神機の為に連射もきくので使い勝手が良い。

 

 リリィが加速するが、上位個体のヴァジュラの全速力と比べると少し遅い程度なので問題として捉えてなかった。

 

「喰らえッ!!」

 

 モウズィブロウから放たれた爆裂弾は真っ直ぐにリリィの足元を消し飛ばし、爆裂して視界を塞いだ。すかさず後ろから一夏が接近しアルテラの方へ向かいつつカストルボルグスを斉射、氷と雷の散弾がアルテラを襲う。

 

 

「うわ……!?」

 

 

 とっさに気配を察知していたものの、散弾が着弾した場所は2~3mほどの巨大な穴を複数作り出していた。

 

 掠っただけでもこの威力……だけどやるしかないのだ。自分たちを必要としてくれたマスターの為にも!

 

 

「はぁああ!!」

 

 

 続けて発射された散弾を当たるか当たらないかのギリギリの所を剣ではじき飛ばし無理やり広げて、そこから懐に潜り込んだ。

 

 これはアルテラの星の紋章と呼ばれるスキルにより、全身に至る特殊な模様を通して身体機能を急激に上げることにより可能な事だ。

 

 更に剣を振り下ろしたが、展開された盾でガードされた……そこに連撃を叩き込み魔力を貯めて吹っ飛ばす。

 

 軍神マルスよりさずけられた特殊な3色の刃に、回転機構を持つランスにも見える大剣を地面を砕きながら振り抜く。アルテラのに刻まれた根源は《破壊》。故に万物に対する破壊力は桁違いに高くなる。そして自分の魔力を流し込み3色の刃が激しく周りだし凄まじいエネルギーの刃として一夏に襲いかかる。

 

 

軍神の剣(フォトン・レイ)!!」

 

 

 これこそアルテラの得物である軍神の剣であり、必殺の一撃を放つ宝具でもあるのだ。

 

 だがアルテラはこの時大切なことを知らなかった……『武器の相性』をだ。

 

 

 光り輝く軍神の剣が何かがぶつかると感じた時、気づけば剣に宿る光は霧散していた……よく見ると展開されていた一夏のベルソルにかき消されていた。

 

 こんな事は今まで無かった。その為か動きが完全に止まってしまう。

 

 

『アルテラ、回避するんだ早く!』

 

 

 ゴッドイーターの使う神機……それは対アラガミ用の装備でもあるのだが、極東支部独自の研究によりあらゆる神の加護を持つ武器や防具に対する絶対的な防御や攻撃力すら侵食し無効化する特性が判明したのだ。

 

 簡単に言うなら宝具の種類や強さにこだわらない、完成された対神秘兵器…神や妖に天に魔も問答無用の概念決戦兵器。相性が悪いにも程がある。

 

 ところでこれは重要な内容だ……英霊にも相性はある。セイバーはランサーに強く、ランサーはアーチャーに強く、アーチャーはセイバーに強い……これをグループAとする。ライダーはキャスターに強く、キャスターはアサシンに強く、アサシンはライダーに強いこれをグループBとする。

 

 ここで言うとグループAとBは互いに得意でも弱くもないので特になんとも言えない。

 

 

 これらの6種以外のグループCとするバーサーカーは上記6種に強いが同時に弱い。更に調停者たるルーラーは上記7種の英霊に絶対的な戦闘力を持つが、アヴェンジャーには互いに弱い……これらをDとする。シールダーは全ての種に対して無敵であるが有効な攻撃は無いこれをEとする。

 

 これらのことから、A=B≧≦C≦D<E……ということになる。

 

 今回の組み合わせなら、一夏はバーサーカー、コウタはアーチャー、アルテラとリリィはセイバーとなる。

 

 ただし、上記の流れではなく本来ならばセイバーで呼ばれる英霊がバーサーカーになってて狂化を自力で跳ね除けて、ちゃっかり理性を普通に持ち会話ができる奴がいたりする。

 

 この定義は様々な概念でも適用される……が、唯一無二そのシステムの超えた武器がある。

 

 そう、神機である。神機の元になるオラクル細胞……アラガミは地球……惑星システムの最上位種のシステムである『終末捕食(若返り・リセット)』 の語幹をなす存在であり、生物、無機物、何でも食う事しかない。しかも対象は実体、無実態も含むために姿無き神秘も食われる。

 

 この特性により神機はあらゆる物体や概念を無視する過剰攻撃及び防御システムになっている。

 

 因みに普通のオラクル技術以外の兵器なども、オラクル技術によるコーティング加工を行う事でオラクル細胞に対抗は可能である。

 

 つまり、軍神の剣の一撃の元になるエネルギーはオラクル細胞によって拡散……捕食されてしまったのだ。

 

 宝具の力を捕食したことによりバーストモードと呼ばれる覚醒形態になった一夏は無念と言わんばかりの目を向けていた。

 

 

「惜しいな……いい線は有るが、やはり『今は』このレベルが限度か」

 

 

 次に攻撃を開始したのは一夏だ。ベルソルの剣腹で軍神の剣を払い上げ、即座に地面の構造を組み替えて周囲を砂地に変換、その砂を使い視界を塞ぐ。

 

 戦の記憶から読み取れる行動のパターンから、すかさずスキル天性の肉体を使い瞬間的な肉体強化で後ろに飛んだ、だが可笑しい……気配を感じないのだ。

 

 弾が肩を抉り痛みに震える、気配はないが更に攻撃が加えられてるのに対して反撃が許されぬまま数分間も攻撃が続く。

 

 蹴られ殴られ弾かれ引っ張られ、斬撃が体を薙ぎ体のあちこちが悲鳴をあげるも打撃と体を貫く弾丸の衝撃が砂地に発生させられた砂嵐の中に独りでに踊る我が身の姿を幻視した。

 

 かーごーめ、かーごーめ、籠の中の鳥はー

 

 

 背後から聞こえる声を振り向こうにも、振り向けない……いや怖いから振り向けないのだ。目は切り裂かれてもう見えぬ、左腕は切り飛ばされ腹には幾つも穴が開きそれでも動かねばと朦朧とする意識が踏みとどまる。

 

 

 いーつ、いーつ、出やーる 夜ー明けの晩に?

 

 

 空気が薄れる、心が乱れる、視界が歪む、わんわんと声が四方八方から響く……だけど体が勝手に振り向こうとする。

 

 

 鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ?

 

 

 全身の震えから初めて悟った……ああ、これが…………『死』。

 

 

「済まない……マスター……みんな」

 

 

 彼女を襲ったのは背後から叩き込まれた光を纏ったベルソルの一撃、そして地面から吹き出す赤黒い光……更にそこから生み出されるエネルギーの刃が体をズタズタに切り裂き…………アルテラの意識は黒く染まり消えた。

 

 アルテラはブラッドアーツ《テクスラストIV》を叩き込まれたのだ。唯でさえ破壊力の高い一撃なのに、アルテラ自身が神性を持つ英霊であるが故に一撃で倒された。血が広がる砂の上で一夏は何を考えてるのかわからない顔をしつつもアルテラに回復球を二つ使用した後回収して離脱した。

 

 

 カルデアはこの一方的とも言える蹂躙に旋律を覚えた。スキルや宝具の同時使用をものともせず徹底的に追い込み正面から叩き潰す…ただたんたんとむごたらしい攻撃に、何らかの存在に対する激しい憎悪と憤怒が見え隠れするのを記憶に残した。攻撃のさ中あまりの苛烈さに目を背けるものや恐れを抱く間の間で現れ始めもした。

 

 忘れるな、これこそ人の憎悪と憤怒の果ての形の一つであると…そして人の果てへとたどり着いた武の果てであると。

 

 

 

 

「アルテラさん!「余所見をするな!」ぐっ……!」

 

 リリィはカリバーンで弾丸を弾くが、既にその腕は痺れて感覚が無くなってきてもいたのだ。幾ら最高ランクの英霊であるセイバーであっても、実戦経験の差は漠然と差が出ている。

 

 片や修行中の未来の騎士王、片や日夜英霊を超える戦闘を繰り返す現代の人類の守護者、未完成の器と完成されつつも未だより高みを望む器では漠然とした差がハッキリしていた。

 

 

「この程度か?まだまだやれるだろ?セイバーの称号を持つ英霊さんよぉ!」

 

「もう1度……!」

 

 

 魔力放出のスキルで瞬時に魔力の放出によるジェット噴射で接近するが、直感のスキルによる警告が出るより先に神機で腹部から上に叩き上げられその直後に地面に叩きつけられるのが先だった。

 

「(カリバーンを素手で掴んで地面に叩きつけるなんて……!)」

 

 

 英霊化による直感スキルはもはや未来予知の領域に入るリリィだったが、完全に動きを先読みされていた。

 

 

「面白いものを見せてやるよ…バレット摘出『軍神の剣』」

 

 瞬間、放たれるは軍神の剣の光である。直撃を喰らい地面にめり込みながらもなんとか起き上がるも、魔力放出に異常な乱れが発生し動くのさえ辛くなった。

 

 

「お前は『動きを先読みされた』と考えてるけど、お前程度の奴なら新人でよく来るからすぐに分かる」

 

 

 コウタはゴッドイーターとしては世界最高峰の戦力の一人でもある。そして新人の教育訓練等で組手もするが、見てきた中にはリリィの様な動き方をする者や考えた奴もいた。

 

 だからこそコウタにはリリィの動きなどがすぐに先読みできるのだ。

 

 剣を振るえば目と呼吸と足の軸の動きや腕の筋肉の流れ等で読み取り、体術なら既に勝てる気がしなかった。

 

 

「まだ……まだです!」

 

 

 リリィは持ちうる限りの魔力を一斉に放出、カリバーンに黄金の光を宿すと共に光を解き放った。

 

 

勝利すべき黄金の剣(カリバーン)!!」

 

 

 選定の剣と呼ばれもする聖剣の一撃がコウタの股間に吸い込まれる。何故かこのカリバーン、放つ光が股間に当たるのだ……。これだけはコウタも知らない事だ……回避したと思ったら追尾してきて……。

 

 

「グボゥオア!?」

 

「これは入ったな……空、戦闘は中止。Drロマンに連絡を頼む」

 

「ご、ごめんなさーい!!」

 

 

 股間に直撃し凄まじい絶叫と共に転げ回るコウタを見て、アルテラを背負っていた一夏はお空に連絡をした。

 

 あまりの状態にリリィがなんとかしようとあたふたしている……もう訓練どころではないだろう。

 

 

「あれ、どうする?」

 

『放って置いてもいいんじゃないのかな?どうせもう終わるし』

 

 

 直後、機械音が響くと共に戦闘終了の合図がでた。予定時間が終わったのだろう。

 

 

「(しかしカリバーンか……極東支部に確かカリバーンが保管されていたよな、新型ブレードの開発の為に保管していたはずだよな?試すのもいいかもしれないが)しかし股間に突き進むビームとはな……(バシュ!!)なんだ今の音は!?」

 

『今調べるね!』

 

『こっちもすぐに調べるよ!』

 

 

 突如聞こえた何かが爆ぜた音が聞こえると同時に、通信機を通して解析音が響く。取り敢えず今は目の前で転がるコウタを何とかするために回復球を投げた。

 

 5分後、聞こえた小さな爆発音はカルデアのエアコン等に使う電線が複数に渡り過負荷に耐え切れなくなったことによる結果だったそうだ。その為少しずつだがカルデア内の気温がどんどん上がっているのだ。

 

 その為現在夏の季節であるカルデアはとても暑く、ロシア出身のアリサや、北国生まれの英霊に至ってはぐったりしていた。

 そんな時、織斑一夏はというと……

 

 

「こ、これで良いのか?」

 

「そうだ、それを……こう!」

 

 

 目の前の一部が損失したケーブルにケーブルに使われる素材である、プラスチックや鉄等を押し付けた一夏は構造を把握し物質を分解し再構築をする事で破損部分などを補強しつつ再生させた。

 

 

「こちらチームα、予定ポイントの半数を終了。こっちは破損率が高いな……どうぞ」

 

『こちらチームβ、こっちはもう終わるぜ。学業ばかりで作業効率が落ちたんじゃねえのか一夏?どうぞ』

 

『こちらチームθ、そんなに言うならチームβはαの手伝いをしてくださいね?通信終わり』

 

『……はい、チームβはこれよりチームαの支援に向かう。通信終わり』

 

『こちらチームα、支援感謝する。通信終わり』

 

 あれからというもの、人員不足によるメンテ不足が祟り広範囲にわたり破損した為に特定のエリアごとに人員を割いたのだ。

 

 

「ええっと大丈夫かアルテラさん?」

 

「さんはいい……アルテラでいい」

 

 一夏はアルテラと一緒に修理をしていた。一夏はアルテラを回復球で回復させた後、一人でやる予定だったがアルテラが付いてきたのだ。

 

 カチャカチャと破損箇所の修復と再構築を繰り返す。

 しばらくしてから一夏は言った。

 

 

「アルテラはなんで真っ先に俺に付いてきたんだ?他にも良さそうな奴がいただろうに?」

 

 

 しばらくしてからアルテラが答えた。

 

 

「私は……お前から感じた憎悪が分からなかった。そしてお前から感じた『死』を私は知りたい」

 

「やはり怖かったんだなさっきの…結構加減したけど...やり過ぎか」

 

 

 びくりと震えながらも頷くのを見た一夏はある程度加減はしておこうと誓いながらも先の質問に答えた。

 

 

「……そうだな、元はといえば俺は元々極東支部がある世界の人間じゃなかった」

 

 

 カルデアには基本的な情報は渡してあるが、一夏自身が平行世界のさらに別の別世界の住人であったことはまだ伏せていたのだ。

 

 

「そうなのか!?」

 

「インフィニット・ストラトスと呼ばれるパワードスーツができた世界のとある平行世界。そこが俺が生まれた世界だ」

 

「パワードスーツは文明か?」

 

「……まあそうだな。話を戻すと俺はその世界で誰もが敬う一番の天才の一族の落ちこぼれだった。家族は姉と弟と俺だけだ。そしてインフィニット・ストラトス……まあISが女性にしか動かせなかったから俺が邪魔にしか見えなかったんだろうな……あいつは天才でちやほやされる中、俺は四年前まで国中のあちこちから嫌がらせをされたよ。出来が悪いからな」

 

「……!」

 

「それでも俺なんかを受け入れてくれた人たちがいた……友達もだ。けど四年前に殆どが国ぐるみで殺された。『粛清』だってさ、それほどオレ達は存在を否定された……ISの製作者である博士も一緒に始末しようって話さ。その時だよ今の憎悪……復讐を求めた」

 

「それで……今いる場所に?」

 

「まあな、だけど俺の体はもう限界を超えていた……それで多くの平行世界の技術で俺は再生させられた。その時に俺は生と死の間をさまよった。そして、俺がいた世界の怨念やら何やらを日々取り込む中で俺は『死』を認識するようになった……そしてさっきまでに至る」

 

 あの戦闘方法は一夏が獲得した特殊なスキルであり、織斑一夏という存在に神機が答えた為に消音のスキルがあると発動できる特異なる力なのだ。

 

 話を聞き終わったあとのアルテラは怒りに満ちていた。破壊の大王と呼ばれていようが今はセイバーだ。こんなことをする世界が許せないのだろう。

 

 

「ISは悪い文明?」

 

「……人の悪意によってねじ曲げられたからには悪い文明で間違ってないな。だけど製作者であるあの人は言った『私はこの子達を宇宙に飛ばしたい』ってな……始まりは善意から始まったが今でこうなってしまった……ISも俺と同じ被害者だ……俺はISを憎んではいないし悪いと思っていない。悪いのは悪意を持ちその汁に集り甘い味を覚える者達だ」

 

「そうか……じゃあ壊さない。壊すのはそいつらの悪意だけにする」

 

 

 カチャカチャとまた音が響く……そして五分もすると別の人物の声が聞こえた。

 

 

「一夏ー!こっちも終わったぞー!」

 

「いま終わった所で最後だ!」

 

 

 コウタたちが戻ってきたのだ。アルテラが終わらせた部分で大規模メンテナンスは終了し、エアコンも再稼働していた。

 

 

「そうか、終わったのか……」

 

「そうだ、お前が終わらせてくれたんだ」

 

「破壊だけしか出来ない私にも……できるのだな……「知っているか?」む?」

 

「破壊は滅びをもたらすものでもある……だが新たな可能性を生み出すものでもある……これはとある機械仕掛けの神に宿る意思が語った言葉さ」

 

「それはいい事なのか?」

 

「いい事さ」

 

「そうか……いい事か。なら破壊する……滅ぼすだけの破壊ではなく可能性を作る破壊をする……!」

 

 

 アルテラへのアドバイスを終えて、会議室に戻る際に「何を話したんですか?」とマシュ達に聞かれたが内緒にした。自分たちで答えを求めさせるのも大切なのだ。

 

 その後自由時間となったので各自にバラバラに動くことになった。小腹が空いたので食堂でなにか作って食べるかと思い行ったが、そこはすでに戦場だった。

 

 

「このご飯美味しいね、すみませーんおかわり!」

 

「すみませーん!おでんパン作っていいですか?」

 

「エミヤ、私もおかわりお願いします!」

 

「君たちどれだけ食うつもりなのかね!?」

 

「エミヤ殿、余もおかわりだ!」

 

「アリサ、急いで食材持ってきて!あと調味料も早く!」

 

「なんでこんなに食べるんですかー!?」

 

「消毒、殺菌、消毒、殺菌、消毒、殺菌……」

 

「洗い物が追いつかなーい!!」

 

 その光景に絶句した。何時の間にかお空やナナも混ざっての英霊たちの食事は地獄にも見えた。

 

 明らかにそろそろなにかの扉が開きそうな錬鉄の英雄エミヤ、その手伝いをするブーティカとアリサ、ノイローゼ気味になりながらも凄まじい速度で皿を洗うナイチンゲールとブラヴァッツキー。

 

 ふと自分の隣を見ると悟った目で厨房に向かう英霊達の姿が……仕方ないので一夏も厨房に入る。

 

 殺菌消毒済みのエプロンや帽子などを装備し、最後に使い捨て可能なマスクを装着し歩み出した。

 

 

「宜しい、ならば調理だ……!」

 

 

 その時、一夏の背後に地上最強の生物が見えたと青髭……もといジル・ド・ルェは語る。

 

 

 気がつけば厨房に立っていたのは一夏とエミヤにナイチンゲールの3名だった。既にほかのメンバーの姿はなく静けさに支配された場所になった厨房は先ほどとは大違いだ、暫らくするとエミヤが口を開いた。

 

 

「織斑一夏といったか……支援に感謝する」

 

「いえいえ、見ていたら居てもたってもいられなくてね……貴方方と同じ厨房で戦えて本望です。錬鉄の英雄エミヤさん」

 

「あなたもエミヤさんと同じように衛生管理は出来て素晴らしいですね」

 

「いやいや、これは普通の光景ですよ?食器の荒い具合も程よい具合になっていてプロの領域ですよフローレンス・ナイチンゲール?」

 

「そちらの世界にも私はいるのかね?」

 

「ええ、いますよ?こちらのエミヤは食事班と武器制作の方で力を出してますよ」

 

 

 そうかと満更でもない顔で頷くのを見て、こっちも変わらないなぁと一夏は考えた。

 

 

「私はそちらにいますか?」

 

「まだいないですね……時々極東支部の何処かに英霊が新たにやってきている様ですから何時かは来ると思いますよ?」

 

 

 この時のことについて後でエミヤから聞くことになるが、消毒等についての思考が多いナイチンゲールがこのような事について聞くのは珍しいとのことだった……バーサーカーなら納得だと、少ししょんぼりしているナイチンゲールを見て思った。

 

 

 

 このあとこの3人を見たお燐によると、めちゃくちゃ掃除談話をしたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方コウタはとある一団に巻き込まれていた。

 

 

「だぁぁああ!!落ち着けヒロインXゥゥゥ!!!」

 

「離してください!!赤とか青とか黒とかとにかく私以外のセイバーぶっ殺すのです!!」

 

「落ち着けぇえええヒロインX!!」

 

「鬼は排除ぉおおお!!」

 

「なんでさ!?」

 

「落ち着け大将!!」

 

「ライコウさんも落ち着いてください!」

 

「ええっと、どうすればいいんでしょうか?」

 

「つうか、いい加減にせんかいぃぃいい貴様らぁぁああ!!!!」

 

「いや本当にごめんね?」

 

 

 こちらは自分以外のアルトリア顔をぶっ殺宣言し突撃しようとする謎のヒロインXを止めようとするギルとクー・フーリンに、鬼という事で勇儀を攻撃しようとする絶対鬼倒すウーマンの源頼光(よりみつではなくライコウ)を止めにかかる坂田金時とシエル、そんな光景に戸惑い助言を求めるリリィに対して思考を放棄したコウタの全力のツッコミ……もとい神機からの弾丸が飛ぶ。

 

 それを見て1分ほど前に帰ってきたマスター…48番目にして一般枠出身、藤丸立香が謝罪をする。

 

 数分後、半泣きになっている頼光と簀巻きにされたヒロインXの姿があった。二人とも額の所にシューと煙とゴム弾が直撃したような跡が見えた。

 

 

「っで、何か言いたいことは?」

 

「本当にすみませんでしたぁ……!」

 

「ここで私が倒れても、第2第3のヒロインXがセイバーをぶっ殺す!!」

 

「よーし、ギル、シエル、このアサシンに足くすぐりの用意」

 

「おおっと、マスター!この縄を解いてください!」

 

「……皆さんやっちゃって下さい」

 

 「あっちょ、やめ、アヒャハハハ!!??」と明らかにギルが暇つぶし作ったような道具でヒロインXをマスターも混じってでの3人で笑わせているのを見て、視線を頼光に写した。

 

 紫のタイツなのか服なのかわからないのを着て、その上に防具を着て武器を付けているもののはっきりわかるスタイル……そして凛とした顔は整っており正に美女と言うが……その姿のせいで下手すると警察に通報されるのは間違いない。

 

 金時から話を聞くと何の因果かセイバー格だと思っていたら、バーサーカーになってて狂化もぶち破り普通のままだという。過保護になりがちだったり、鬼を見ると狂化にも見えるのも普通らしい。むしろこっちの方が狂化になってるんじゃあ……と言いたいところをコウタは心の中に閉まった。

 

 そして、少々泣き虫な所も普通らしい。

 

 

「これがギャップ萌えという奴か……おっと鼻血が」

 

「うぉお!?どうしたコウタ、鼻血が出てるじゃねえか!?」

 

「いや、凛々しくてもこのポンコツ感がね……グッときた」

 

「……ふぇ?」

 

 

 涙目でこちらを見つめる頼光の姿ににコウタはノックアウト寸前だった。つうかこいつ直感でグッとくるものならアイドルでも武将でも何でも行けるようなヤツなのだ。

 

 

「可愛いは正義、それ以上でも以下でも無い」

 

「まあ、わかる気はするようなしない様な……?」

 

 

 

 こうして様々な困難などを乗り越えて交流は成功に終わる。え?これでいいのか?実はこれ以上のことがあったのだが、これ以上話が長くなるのも野暮だろう……

 

 

 ふと所長……オルガ・マリーアムニスフィアはカルデアの入口に来た立香を見て、書いていたペンを止めた。

 

 あの時はまだリハビリ中なので彼らのところにはいけなかったが、今では時々くる極東支部の人々と交流ができるほど体力も回復していた。それからというものの夜に外に出て宇宙を眺めるのが新たな日課となっていた。

 

 

「所長?何してるんですか?」

 

「ちょっとね……彼らの事を思い出していたのよ。限りなく近く限りなく遠い世界からの人々をね……ってまたフォウを抱いてるのね貴方?」

 

 

 これは、人類の未来を守るために戦う人々が奇跡の果てにやって来た平行世界の人々とのある1時の夏の記憶。

 

 未だに仮の自室である病室のベッドの隣には彼らと撮った写真が何枚も残っている。そして……あの後隠れてやってきた赤の星のサイボーグの男もその中に映っていた。

 

 

「……勝てるわよね、私達?」

 

「勝てるじゃないですよ……勝つんです!」

 

 

 一つのきっかけが思いもしない奇跡を作ることもある。そんなことを考えた8月の終わり頃のとある日の彼女は今日も宇宙を見上げる。




 カルデア人物紹介

 藤丸立香……Fate/GrandOrderの男主人公。いわゆるぐだ夫。本文ではあまり出ていないがそれなりに一緒に騒いだためにコウタと親友になる。

 オルガ・マリーアムニスフィア……カルデアの所長であるが本来なら既に消滅させられた人物だが何の因果か平行世界で活動中のソルダートJ-№002のJアークで発見された後今日に至る。それからというもの、態度が柔らかくなり夜には宇宙を眺めるのが日課となった。ロンドンの時計塔に連なる魔術師の名家であるアムニスフィア家の当主。

 マシュ・キリエライト……デミ・サーヴァントとなった少女。シールダーという特殊クラスであるが元となる英霊の真名が不明のためまだ開放されてない力がある。何事にも一生懸命な今を生きる少女。神機の一撃を見てビクッとしていた。

 ロマニ・マーキン……本来なら医療班なのだが所長に起きた事件の結果、臨時の司令となる。今回の交流で自分に自信を持つようになり、サポート能力が上がった。

 フォウ……本文では1行しか登場しないが、カルデア内を自由に移動できる特権生物でありリスなのかなんなのかよくわかっていない。

 今世界のカルデアについて

 この世界のカルデアは極東支部のある世界と接続された際にかなりの改修工事を行ったために、人理焼却への影響を逸らすカルデアスやシバの結界がカルデア内からカルデア本体周辺高度4千メートル地下4千メートル半径4キロ合わせ直径8キロの結界拡張に成功する。

 尚、ジェイアークやVB-6が転移したのもこの結界内である。流石に超弩級戦艦でも人理焼却を行う第3宝具からの干渉は厳しいため。



 次回予告

 ソーマ・フォン・シックザールは榊博士を連れて鎮守府に向かう、そこで出迎えたのは新たに確認された連合国からの2人の艦娘であった。

 次回specialchapter5「因縁を断つ者」

 その刃は亡霊を断つ白き刃なり

キャラクター名を一部変更及び追加書き込み(2018/04/10 18:06:08)

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