龍閃の軌跡   作:通りすがりの熾天龍

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3日連続投稿最終日。
レッツ6話目!
サブタイが前話とかぶっているのは気にしない方向で。
だって思いつかなかったんだもん!


4月10日

「そのドライケルス皇子が最初に挙兵した辺境の地ですが・・・リィン・シュバルツァー君。その地がどこなのかご存知ですか?」

 

トマス・ライサンダー教官による帝国史の授業。

 

4月10日、土曜日。

この日最後の授業だ。

獅子心皇帝が挙兵した地・・・それなら知っている、というか旅の途中で立ち寄った。

 

「ノルド高原。帝国の北東に広がる高原地帯です」

「はい、正解です。ちなみに、リィン君は少し前まで旅をしていたと聞きますが、ノルド高原には行ったことがありますか?」

「ええ、まぁ」

「後で話を聞きたいものですね。と、授業に戻りましょう。当時、ドライケルス皇子は・・・」

 

あ~、何か目つけられたっぽい?

何人かが同情の視線を向けてくる。

教員方の中にもこの人の被害にあっている人も居るらしいし。

サラ教官もその一人だそうだ。

でもなぜだろうか、この人かなりの強者だ。

・・・まぁ、そのうちわかるだろ。

それはさておき、授業授業。

 

――――そんな授業風景の一幕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実はドライケルス本人に会ったことがあるっていうのは内緒。

過去にタイムスリップしたことがあってだね。

俺はあいつのことをドライクって呼んでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、まずは9日間、お疲れ様」

 

放課後のHR。サラ教官が話す。

4月1日は1年だけ特別休暇だったため、代わりに4日は1年だけ授業日となった。

 

「明日は1年にとって、初めての自由行動日ね。1日の特別休暇と違って、私服も許可されているし、前日までに申請すれば鉄道の使用も許可されるわ。但し、鉄道で行ける範囲は限定されるし、就寝時間までに寮に戻ってこないと罰則があるわよ。明日は最初だし、学院の各施設やクラブ活動を見て回る人が多いと思うわ。講堂以外の学園の施設は自由行動日には基本開放されているけど、節度を守った行動ができないと施設の閉鎖もありうるから、注意して頂戴」

 

鉄道で行くとしたら帝都辺りが距離的にもちょうどいいだろう。

それ以上遠くだと十分に楽しめる時間が無いだろうからな。

 

「最後にもう一つ。羽目を外しすぎて体調を崩すなんてことが無いように」

 

サラ教官の話はそこで終わり、副委員長であるマキアスが号令を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、二人はクラブはもう決めた?」

 

HRが終わり、皆が自由行動に移る。

フィー以外の女子3人は教室の外で楽しそうに雑談。

俺とエリオット、ガイウスは俺の机のに集まって、こちらも雑談。

他のメンバーは外に出て行った。

そんな中、エリオットが俺とガイウスに訊く。

 

「俺は美術部というところに入ろうかと思っている」

 

意外。ガイウスって絵が趣味なのか?

 

「絵は故郷に居た頃、たまに趣味で描いていた。しかし、ほぼ我流だからきちんとした技術を学べるのはありがたいと思ってな。エリオットはどうだ? もう決めているのか?」

「うん、吹奏楽部にしたよ。昔から音楽は好きだからね」

 

なるほど、なんとなくエリオットらしい気がする。

 

「そうか。リィンは決めているか?」

 

俺の番、だな。

 

「俺は特定のクラブに所属するつもりはないかな。個人的には自由が一番だし。気が向いた時に適当なクラブに遊びに行こうかなって考えてる。女子限定のラクロス部は除くけどな」

 

へぇ~、という声をあげる二人。

 

「なんだかリィンらしいね。でも、そういう考え方もあるんだなぁ」

「そうだな。型に嵌らない考え方がいかにもリィンらしい」

「おいガイウス、その言い方じゃ俺がキチガイみたいじゃねぇか」

「い、いや、俺はそんなつもりでは・・・」

 

思わぬことを言われ、焦るガイウスを見て、俺とエリオットが笑う。

そして彼らはそれぞれの部活・・・じゃなくてクラブへ向かう。

・・・どうもクラブって聞くと小学生のイメージがなぁ。

そんなことを考えつつ、俺も教室を出た。

もちろん、鍵を閉めて教員室へ返しに行くのを忘れずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今日は行ってみたい場所があるんだ。

中庭を通ってその場所へ向かう。

その場所、とは技術棟。

技術部が独占中の建物らしい。

そこの部長がかなりの技術を持っていると聞いた。

俺も自分の技術にはかなり自信がある。

なにせ俺には脳のリミッターがぶっ飛んでいるという規格外な要素がある。

更に異能を応用した独自の技術は十三工房やエプスタイン財団、ZCFやラインフォルト社、ヴェルヌ社等の技術団からのお墨付きだ。

超能力から術式と呼ぶべきものを構築。

それを機械や物などに組み込んで永続化させることで、普通の技術にはありえない機能を付加することが可能になるのだ。

ちなみに、この術式は完成品に組み込むのではなく製作中に回数を分けて組み込む。

そのほうが確実に永続化できるし、より精密な術式を組み込むことが可能だ。

術式によって付加できる機能は様々。

空間に作用したり、エネルギーを大量に溜め込めるようにしたり。

生命力、自意識などをを構築することも可能。

上手くやれば機械生命体とかも作れる。

この技術、一部の人達には《魔導異端技術》、略して魔術なんて呼ばれている。

だが俺は魔術じゃなくて《術式技術》って呼んでる。

俺にとって魔術というのはまた別物だから。

ちなみに魔術はユミルでしか使えない。

更にもう一つ、業界から認められている俺専用の技術がある。

前世の知識をそのまま流用したものだ。

名付けて、《電力技術》。

導力に対し、全く異なる電気というエネルギーを使うからだ。

電気と導力の融合という研究もやっている。

 

それはさておき、いざ、技術部へ。

誰が見ても異端な術式技術が使え、前世の地球の技術も持つ俺だが、別にこの世界の技術が完璧にできるわけではない。

現代ゼムリアの技術に関しては技術屋が、古代ゼムリア技術に関しては七曜教会が詳しく、俺が持つそれらに関する知識など、彼らに遠く及ばない。

少し前、アーティファクトを改造しようとしたが、無理だった。

わけがわからないことになってしまったそれは、おとなしく教会に預けた。

いや、ぶっちゃけ押し付けたようなものか。

ともかく、新しい技術が習得できるかもしれないし、技術部現部長で唯一の部員らしいその凄腕技術者と気が合うかもしれない。

俺達が持つARCUSの整備もその人がやっているらしい。

ARCUSの話を聞くだけでも有意義に過ごせそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

技術棟の手前の広場に、二人の人が居た。

比較的俺の位置に近いほうに、黒いライダースーツの人。

気配からして女性だ。というか俺の知り合いだ。

もう一人は入学式の日に会った、黄色いツナギの男。

そのツナギの男がいじっている物は・・・バ、バイクだ。

え、マジ?

今まで旅しててバイクは概念すら見なかったというのに。

本物が目の前にありやがる。

 

と、ライダースーツの女性が俺に気付いた。

 

「おや、リィンじゃないか。久しぶりだね」

 

そう言った彼女は、半年前に帝都の近くで出会った人。

ログナー侯爵家のアンゼリカ・ログナーだ。

ツナギの男もこちらを見る。

 

「よっす、アンジェ。久しぶり。ここの生徒だったんだな」

「そういえば、言ってなかったね」

 

アンジェとは、俺が彼女に付けた徒名である。

 

「アンジェっていうのは、アンの徒名なのかな。二人は知り合いかい?」

 

ツナギの人がそう言った。

 

「ええ、半年前に会ったんですよ。改めて、リィン・シュバルツァーです」

「僕はジョルジュ・ノーム。宜しく、リィン君」

 

自己紹介の後、改めて俺とアンジェの関係について聞かれる。

 

「半年前、いつもみたいにバイクで帝都に行ってね。あぁ、その時は一人だったよ。それで、帝都の近くに妙な魔獣が出たっていう話を聞いたから、行ってみたんだ」

 

アンジェの話に、俺はあることに気付く。

 

「そっか、あの時もアンジェはバイクで来てたんだ。そこからは徒歩?」

「あぁ、そうだね」

「なるほど。で、話を戻すけど、俺もその魔獣の話を聞いて、調査していたんです。そこでアンジェと出会って、共同戦線を敷いたのが知り合ったきっかけですね」

「なるほど、そうだったのか」

 

ジョルジュ先輩が頷く。

 

「そういえば、ジョルジュには敬語を使ってるけど私には使わないのかい? 一応私も君の先輩なんだけどね」

「え? いやほら、アンジェには、あの時も敬語使ってないし」

 

今更敬語ってのも違和感が、ねぇ?

 

「はは、アンにタメ語なら僕にも同じくタメ語でいいよ」

「サンキュ、そうさせてもらうよ、ジョルジュ」

「き、切り替え早いね・・・」

 

ジョルジュに苦笑された。

 

「ところで、リィン君は導力バイクを知っているのかい? これは現在研究中で、まだ世の中には出回ってないはずだけどね」

 

そういえばさっきの会話の時いかにもバイクを知っているような口調で話したな、俺。

流石に前世の知識だなんて言えないし。

というか“導力”バイクだから俺の知ってるバイクと構造はいくらか違うだろうし。

 

「あ~そこは・・・まぁ、うん。そういうことだよ」

「いや、どういうことさ」

 

言えない、ごめん。

 

「ジョルジュ、ここは訊かないであげよう」

「え? あ、うん。わかった」

「スマン・・・」

 

 

 

 

話を変えよう。

 

「ところで、このバイクを作ったのって・・・」

「僕だよ」

 

やっぱりか。

 

「いろいろと試行錯誤しながらレポートを纏めて、ルーレの工科大学に提出しているんだ」

「試運転は私の役目でね。たまに誰かを連れてツーリングに行ったりもしてるよ」

 

ほー。

 

「まぁ、アンのツーリングは大体女の子とのデートだけどね」

「なんだ、いつものアンジェか」

「そういえば、あの時リィンも見ていたね」

 

一連の事件が終わって、帝都に戻った時、アンジェは街の入口で女子に囲まれてたからね。

ずいぶん心配されてたみたいだからな。

その時、その場で個別にデートの約束を取り付けてたし。

いろんな意味でびっくりしたよ。

まさにレズハーレム。

 

「ジョルジュ、バイクはその1台だけ?」

「今のところはね。でも、どうしてそれを訊くんだい?」

「いや、ね。俺もバイクを作りたくなってきたから」

「「乗るほうじゃなくて作るほうか!」」

 

二人にツッコまれ、俺は笑う。

ここでは言わないが、俺が作りたいのは仮面ライダーのバイクだ。

ドラグランザーとかは機械生命体として作れるはず。

その後は、ジョルジュと技術について話し合って、なんか互いにヒートアップしてしまった。

アンジェが置いてけぼりになって、暇そうにしてたり。

偶に遊びに来ることを約束して、俺は技術棟を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、二人で熱くなるから、私は暇でしょうがなかったよ」

「ははは、ごめんごめん。それにしても、アンにとって彼は特別なんだね」

「急にどうしたんだい?」

「いやね、なんだかアンのリィン君を見る目が熱っぽかったからさ」

「・・・隠してたつもりなんだけどね」

「いやいや、意外とわかりやすいよ。多分クロウやトワにも一発でバレるだろうね」

「・・・ははは」

「クロウが目を丸くして大げさに驚く姿が想像できるよ」

「ぷっ、確かに」

「でも意外だね。アンは彼が入学していたことに気づかなかったのかい?」

「私がチェックしていたのは女の子だけさ。まさかリィンがトールズに来るなんて想像すらしなかった。卒業してから、彼を追いかける旅にでも出たかったんだけどね」

「そうか。でも結果的に良かったじゃないか、また会えたんだし」

「あぁ、そうだね」

「今度彼と一緒にツーリングにでも行ってきたらどうだい?」

「いいかもしれないね。明日、誘ってみるよ。それまでに、バイクの調整、頼むよ」

「任せて。バッチリ仕上げるよ」




リィンにしか使えない術式技術。
今後もちょくちょく出てきます。
主に四次元バックとか。
機械生命体もいずれ出す予定。

リィンはトマス教官の正体については知らないです。
たまたま彼に会ってないだけで、リィンは騎士達とは関わりがあります。
ロジーヌは教会所属じゃないことにしています。




次回投稿は来週予定。
土曜日の予定です。
それでは!

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