龍閃の軌跡   作:通りすがりの熾天龍

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3連休ということで、3日連続投稿します!
いざ、第4話!
前回に比べて短いですが。


自己紹介会

オリエンテーリングが終了し、俺達は本校舎の教室に案内された。

そして、サラ教官から幾つかの連絡事項を聞き、彼女は一旦職員室へ戻っていく。

 

「んじゃ、そろそろ説明すっかな」

 

全員が俺に注目する。

 

「俺が想定する《Ⅶ組》の設立目的は2つ。まず一つがさっき教官も言ってた“ARCUSの試験運用”だ。んで、もう一つが“人材の育成”」

「人材の育成?」

 

エリオットの復唱に頷く。

 

「ああ。考えてもみてくれ。貴族と平民を一ヶ所に集め、同じ教育を施す。つまりこれは()()()()()()()()()()()ってことなんだ」

『!』

 

皆もこれがどういうことか理解したようだな。

帝国でそういうことをするってことがどれほど難しく、画期的か。

これはエレボニアを丸ごと覆すほどの大革命になりうる。

 

「判断材料が少なすぎるから断定はできないけど、教育内容によっては貴族と平民の両方を芯から理解できる、そういった人材の育成が可能なはずだ。貴族と平民の対立が根深いエレボニアではこの先、そう言った人物、人材がきわめて重要になるだろう。そのような人材を集めて部隊を作れば一つの部隊による貴族、平民の問題の両方への介入が一気に容易になる、とかな」

「だから“人材の育成”か・・・」

「そういうことだ」

 

マキアスの言葉に頷くことで肯定。

 

「ま、間違っている可能性もあるし他にも理由はあるかもしれない。それを踏まえて何か言いたいことがあれば受け付ける。なければ自己紹介の時間にしよう」

 

 

 

 

 

というわけで、自己紹介タイムだZE☆

 

「俺はリィン・シュバルツァー。ノルティア州のユミルから来た。さっきも言ったが使う武器は太刀。東洋の技術の集大成とも言われている《八葉一刀流》を修めている。もう一つ言えば俺の戦い方は太刀だけじゃない。この世にある武器は一通り使えるし格闘も得意だ。それに俺には《異能》と呼ぶべき力がある」

「異能?」

 

不思議そうな声を出すフィー。

ラウラは止めるべきかどうか迷っているようだ。

 

「簡単に言えば()()()()()使()()()()()()()使()()()

『!?』

 

驚愕する皆。

エマに至っては完全に固まっている。

ラウラはそんな皆を見てどうすべきか迷っているようだ。

 

「原理は戦術オーブメントによる魔法行使とほぼ同じと思ってくれて構わない。まぁ、いずれ見せる機会もあるだろうし、詳しい説明はその時に」

 

さて、もう一つの重要事項をば。

 

「で、マキアスが訊きたいであろう俺の身分だが」

 

何人かの視線が向かい、焦るマキアス。

 

「俺の身分は“貴族であって貴族でない”というのが正解だ」

「ど、どういうことだ?」

 

マキアスが困惑しつつも少々警戒しながら訊いてきた。

 

「俺の育ての親はユミルの領主であるシュバルツァー男爵家だ。現領主のテオ・シュバルツァーが12年前、身元不明の浮浪児の俺を拾ってくれたんだ」

『・・・』

 

案の定というか、この話をするとたいてい皆暗くなる。

 

「そう暗くなるなって。俺自身は自分の人生を不幸だなんて思ったことは一度もないし、何より、社交界を追い出されても俺を引き取ってくれた両親には感謝してる。それに、俺がシュバルツァー家の養子にならなければ無かった出会いが幾つもあったからな。例えば俺の剣の師匠とか」

「リィン・・・」

 

なおも心配そうな声を出すアリサに苦笑。

 

「まあ貴族とはいってもそれを鼻にかけるようなことはしないよ。むしろそんなことする奴は俺がぶん殴って校庭から校舎の屋上までぶっ飛ばす! てなわけでラウラ、俺の代わりにこの暗い空気をぶっ飛ばせ。全責任はお前の両肩にかかっている」

「ちょ、いきなり!? それになぜそこで無駄にプレッシャーをかける!?」

 

いきなり話を振られ慌てふためくラウラ。かわいい。

 

「んじゃ、まずリラックスしようか。はい息を吸って~」

「う、うむ。すぅ――――」

「吐いて~」

「はぁ――――」

「もう一度吸って~」

「すぅ――――」

「はい息を止めたまま自己紹介!」

「できるか!!」

 

ヤバいこれ超面白い。

漫画だったらラウラの目が飛び出す描写とかされてそう。

当然ながら皆いきなり始まった漫才に目が点になっている。

 

「んじゃ、いい感じにほぐれたところで自己紹介タイム再開といこうぜ。とりあえず順番は旧校舎地下での簡易自己紹介の順と同じで。というわけで次はラウラだ」

「う、うむ。了解した」

 

妙に納得いかなさそうな表情でラウラが頷く。

 

「ラウラ・S・アルゼイドだ。父はリィンの父君と同じ地方領主で、場所はクロイツェン州のレグラムだ。私の流派は《アルゼイド流》。我が剣は父より直接授かったものだ。それと、これはリィンとかぶってしまうが、私はこの身が貴族であることを驕るつもりはない。ゆえに皆にも一人の友として接してもらいたい」

 

マキアスが何やら考え込んでいる。

多分、俺、ラウラと続けて“貴族らしさ”を否定する貴族だったからだろうか。

 

「リィンと初めて会ったのは1年半前、彼がレグラムを訪れた時だ」

 

あ、そうそう、それも説明しなきゃだな。

え? 忘れるのはおかしい?

別に常時完全記憶能力フル稼働させてるわけじゃないよ。

 

「俺は3年間大陸各地を一人旅していたんだ。レグラムに行ったのはその途中だ」

「ちなみにリィンと会うのはその時以来、つまり1年半ぶりだな」

 

へ~、と皆感心しているようだ。

あれ? なんで感心? まぁいっか。

 

「これから1年間、よろしく頼む」

 

俺を含め、皆が拍手。

次はアリサだな。

ところで彼女はファミリーネームを隠していたが・・・。

 

「アリサ・Rよ。ごめんなさい、わけあってファミリーネームは言えないの。導力弓の使い方は私にとっての姉のような人から教わったわ。出身はノルティア州のルーレよ。よろしく」

「ノルティア州か・・・リィンと同じだね。よかったじゃん」

「もうやめて・・・」

 

フィーの言葉にアリサが小さくなってしまった。

これは・・・ダンジョン探索中にもいじられてたな。

 

「ごめん、アリサ」

「もうやめて・・・」

 

うん、ホントごめん。

謝りすぎて罪悪感芽生えさせちゃったならそっちを謝るべき?

え? 余計追い詰めちゃう?

 

「リィン・・・もうやめてあげなよ」

 

エリオットにもそう言われてしまった。

 

「とりあえず、次は僕だよね。エリオット・クレイグです。僕の出身は《帝都ヘイムダル》。魔道杖は適性があるって言われてそれを選んだって感じだね。こんなところかな。皆、よろしくね」

 

さてと、お次は・・・

 

「私だね。フィー・クラウゼル。よろしく」

 

あれ? それで終わり!?

 

「こ、これはもう僕の番でいいのか?」

「早くしろ、阿呆」

「ぐっ・・・マキアス・レーグニッツだ。ファミリーネームからわかる人もいるだろうが、僕の父親はカール・レーグニッツ。帝都ヘイムダルの知事をしている。出身もヘイムダルだ」

 

自己紹介を終えてすぐユーシスと睨みあうマキアス。

こっちもいい加減になさい。

 

「あはは・・・えっと、私ですね。エマ・ミルスティンです。わけあって詳しくは言えないのですが、出身は帝国内部の辺境の地です。魔道杖についてはエリオットさんと同じく適性があると言われて選びました。皆さん、これからよろしくお願いします」

 

おいユーシス。お前の番だぞ。

睨みあってないで進めてくれよ。

 

「ふん。ユーシス・アルバレアだ。クロイツェン州、バリアハートの出身。俺の剣術は、帝国に伝わる宮廷剣術で、俺の兄から教わった。俺の実家は《四大名門》に数えられるが、少なくとも学院内では特別扱いしすぎないでもらいたい。以上だ」

 

で、また二人は睨みあう。

もーやめれってばよ。

 

「俺で最後だったな。俺はガイウス・ウォーゼル。出身は帝国の北にあるノルド高原だ。槍は昔から触れている、俺にとっては使い慣れた武器だ。この学院にはある人物の推薦で入った。いろいろと至らない部分はあるだろうが、よろしく頼む」

 

全員の自己紹介が無事終了し、俺は1回手を叩く。

 

「よし、全員終わったな。まぁ、まずは1年間、よろしくな、皆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、第三学生寮。

自己紹介会が終わり、しばらく雑談してるとサラ教官が戻ってきてここに案内された。

そして各実家から送られてきた荷物は既に寮の1階に纏めて置いてあった。

で、キルシェで遅い昼食を取った後、各自室に荷物を運んで午後は丸々荷物整理。

荷物の量は人それぞれ。

フィーに至っては何もなし。

必要な分はこれから買いに行くそうだ。

経費はサラ教官持ちだとか。ご愁傷様です、教官。

俺は金が有り余るほどあるし、代わりに払ってあげようとも思ったが賄賂扱いされそうで止めた。

とりあえず他の人の荷物運びを手伝い、自室へ向かう。

自室の十分なスペースに『異能』で単発式の術式を仕込み、1階へ。

そこに残っているのが俺の荷物だけなのを確認し、『異能』発動。

纏めて俺の自室へ荷物を転送。

また2階へ上がり、荷物の整理を開始。

 

 

 

 

 

1時間ほど経ち、半分ほどの段ボール箱が畳まれた頃、部屋のドアがノックされた。

 

「はい」

「あの、ちょっといいかしら?」

 

気配で既にわかっていたが、アリサだ。

 

「おぅ、勝手に入っちゃっていいぞ」

「えぇ、お邪魔するわね」

 

アリサが入ってくるが、どうやらかなり緊張しているようだ。

とりあえず椅子をすすめ、自分はベッドに腰掛ける。

 

「まぁ、いろいろと思うところはあるだろうが・・・とにかくすまなかった」

「もう謝らないでいいから! その、こっちこそごめんなさい。いくら動揺していたとはいえ、助けようとしてくれた人に思いっきりビンタするなんて・・・」

「気にすんな。一撃必殺級の紅蓮の槍を喰らうのに比べれば、ビンタなんて可愛いもんさ」

 

あ、アリサが硬直した。

 

「な、何それ・・・じょ、冗談・・・よね?」

「うんにゃ、割とマジ。実際に一度喰らいかけた」

 

その場面を想像したのか、若干震えるアリサ。

と、何かに気付いたように震えを止める。

 

「ちょっと待って、その言い方だと、私以外にもそういうことがあったってこと・・・?」

 

思わず目を逸らした。

 

「貴方ねぇ・・・」

「俺だってしたくてしているわけじゃねぇ! ほぼ不可抗力だ!」

 

それでもジト目で俺を見るアリサ。

 

「リィン、貴方ラッキースケベって言われない?」

「全力で否定したい!」

「否定したいだけでしないのね・・・」

「・・・はい」

 

否定のしようが無いんだってばよ。

泣きたい・・・。

いや、実際に泣いたりはしないけどな。

と、そこでまたノックの音。

 

「はい」

「リィン、入ってもよいか?」

 

今度はラウラか。

 

「いいぞ。勝手に入っちゃってくれ」

 

あ、椅子が無い。

仕方ないので残された段ボールの一つを開ける。

 

「む、アリサか。その様子だと仲直りできたようだな」

「えぇ。心配してくれてありがとう、ラウラ」

 

背後でのそんな会話を聞きながら俺が取りだしたのは折り畳み式の簡易椅子。

ちなみにこれ、俺が前世の知識から導入したものである。特許取得済み。

俺からすればなんで今までなかったのか不思議でしょうがない。

 

「ラウラ、これ使ってくれ」

「うむ、感謝を」

 

ラウラが椅子に座り、俺は再びベッドに腰掛ける。

 

「で、何か用か?」

「うん、そなたの旅の話が聞きたくてな。1年半ぶりに聞かせてもらいたい」

「OK。いいぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間ほど旅の話や雑談をし、二人は自室に戻って行った。

再び荷物整理を開始して更に1時間。

ようやく部屋が片付いた。

ちなみに明日は休日。

荷物が多い人のために明日までは授業が無いのだ。

但し新入生に限る。

俺はもう済んだため、丸1日かけて街を見て回れる。

とりあえずこれから夕食にでもしようと思ったが・・・。

現時刻5時。昼が2時だったので早すぎる。

少し考え、俺はある書類を取り出す。

その数は4。

 

 

1つ目は電気と導力の関係の応用についての論文。

発電は考え方そのものが存在しなかったため、特許取得済み。

それに、電気を利用する機械と導力を利用する機械の融合も実現済み。

この論文はその利便性と理論上可能であろう応用例を纏めるものだ。

例を挙げれば、充電のような形で電気によって導力を充填可能にする機構とか。

電気と導力の相互変換を行いつつ総エネルギーを上昇させる機構とか。

ちなみに上記2つは既に特許取得済みだ。

 

 

2つ目は小説。

俺がロキという名前で出版している書物は幾つもある。

その数は全ジャンル合わせて既に3桁を超えている。

小説、学習用書物、一般向け解説書etc。

まぁ大部分が小説なんだけど。

どれもほぼ前世知識で書いている。

今書いているのはとあるゲームを元にした作品『災厄を喰らう騎士達』

元ネタを言ってしまえば『GOD EATER』である。

作品の名前が違う理由は七耀教会が存在するからである。

空の女神(エイドス)信仰が浸透しているゼムリアで“神を喰う”などと言う表現は使えない。

しかしアラガミの名前はそのままである。

ゼムリアに俺の前世での神話は一つもないからな。

内容も少しいじってある。

機械に関する部分を導力技術に変えることで読みやすくしているのだ。

 

 

3つ目は楽譜。

こちらはオーディンという名前で複数の曲を発表している。

数はもうすぐ3桁といったところ。

前世で気に入った数多くの曲を歌詞も丸ごとパクったものだ。

別にこっちにはない曲だからいいんだよ。

最初の作品はデジモンの『Butter-Fly』。

で、今書いている曲は二つ。

一つは『今咲き誇る花たちよ』。

オリンピックのテーマソングとしても活躍した一曲だ。

もう一つは『君の神話』

創世のアクエリオンEVOLのOPテーマである。

作った曲は帝都歌劇場など、有名な団体にも提供していたりする。

まぁ、金は貰うが。

 

 

4つ目は特許申請用の書類。

簡単に言えば前世の技術でゼムリアに無い物を特許として申請している。

更にゼムリアの既存技術と前世の技術の融合なんかも申請の対象だ。

特許の数は50を超えている。

取得した特許はラインフォルト社などに売ったりライセンス発行したりしている。

売却はともかくライセンスは個人で出来るわけないだろと思うだろうが、そこはコネを活用。

ぶっちゃけて言えばオリビエである。あとクローゼ。

今回申請準備中の特許は“大規模システム用自動管理システム”

その名も『カーディナル』である。

わかる人はわかるであろう。SAOの最重要システムである。

システムの構築法そのもので特許を取るつもりだ。

 

 

 

少し悩んでから執筆途中の小説を手に取る。

他の書類をしまってからペンをとって書き始める。

これから書く部分は初ハンニバル戦の場面だ。

主人公がコウタを庇って神機を壊してしまうシーン。

あ、そうそう。無印・BURST編主人公の性別は男だ。

2編主人公はメイン男サブ女。つまり初期の副隊長は男主。

とりあえず、8時半くらいを目途にするか。

それから食材買ってキッチン借りて自炊しよう。




収入源は大事です。超大事。
論文はゼムリアには存在しない電気技術関連で特許を取るための布石。
小説や音楽は完全記憶能力で前世から持ってきた記憶より引用。
この小説ゼムリアの人達にも読んでほしいなあ、とか。
この音楽この歌手の人に歌ってほしいなあ、とか。

だから言ったじゃない、多方面チートだって。




一撃必殺級の紅蓮の槍・・・。
イ、イッタイダレナンダー




さて、次回投稿は明日正午ごろ予定です。
それでは!

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