龍閃の軌跡   作:通りすがりの熾天龍

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いざ、ケルディックへ!
というわけでケルディック編前編です。



ケルディックへ

いよいよ4月24日。

今日と明日は初めての特別実習だ!

詳しい課題の説明は向こうでサラ教官がしてくれるらしい。

それだけ聞けばA班とB班それぞれの自習先に赴いてそれぞれに説明するということになる。

トリスタから見て方向真逆ェ・・・。

ま、まぁどちらかの班には向こうで説明してくれる人がいるでしょ。

うん、大丈夫。多分大丈夫。

大丈夫じゃなかったら実習成り立たないって。

 

 

さて、特別製のクォーツは既に配布済み。

昨日の放課後はⅦ組全員を巻き込んでいろいろと準備は済んでいる。

皆を巻き込んだということは皆の準備も済ませたということ。

いつも通りに朝早くのランニングを済ませた後、皆が何か忘れてたり必要な準備を新たに思い出してたりしていないことを確認。

 

「皆、忘れ物は無いか? 何か忘れてた用事はないか? よっしゃ! 今年度最初の大仕事だ! 気合入れて、かつテンションあげて行こうぜ!」

「「「「「「「「おー!」」」」」」」」

「気合入ってるわねぇ・・・」

 

サラ教官に苦笑された。解せぬ。

ちなみに駅の構内だったため、無関係な何人かに睨まれた。解せる。

ユーシスとマキアスが睨み合うのはいつものこと。

なに、解せぬって? 知るか。

 

 

そんなこんなで先に帝都方面行きの列車が来たため、B班メンバーは出発。

少し遅れてクロスベル方面行きの列車に乗る俺達A班。

ついでにサラ教官も乗ってきた。

教官が付いてくるのは俺達A班側か。

細かいことはおいといて、さぁ、出発だ!

 

 

ところで、電車じゃなくて列車なんだよね。

俺的には電車の方が言いやすい。

・・・どうでもいいよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケルディックまで列車で約1時間。

ちなみにそこで乗り換えるとバリアハート行き。

乗り過ごすとクロスベル行きだ。

 

「リィンはケルディックにも行った事があるの?」

「ああ、何度か立ち寄ったことがある。かなり大きい街だからな」

 

エリオットの質問に答える。

 

「一番有名なのは交易町という名前の由来にもなった太市だな。毎週土日に開かれてるが規模はかなりのもんだぞ。他にも街の特産物として穀物や野菜とかがある。特に小麦は帝国内のシェアの半分近くを占めているんだ。街郊外の北西にあるルナリア自然公園も有名な観光地として知られている。公園の管理人やガイドの人はある程度戦闘ができることが必須条件だ」

 

概要としてはこんなところか。

 

「リィン、特産物の中に地ビールを忘れてるわよ」

「俺らまだ未成年ですってば・・・」

 

サラ教官の言葉に呆れる俺達。

 

「ところでサラ教官。A班への説明はサラ教官がすると言うことはわかりましたがB班の方はいったい誰が説明するんですか?」

 

アリサの質問。

これは俺も思ったことだ。

 

「B班の現地での説明は私の知り合いに頼んだわ。A班の方の説明が終わったら私はB班のフォローとかその他もろもろのためにパルムのほうへ行くからよろしく」

 

B班は険悪そうだもんなぁ。

まぁ、いずれ通る道ではあるし、そんなら早めに解決した方がいいよな。

今回の研修が終わった後二人がどうなっていることか・・・。

俺が知る全ての神に祈っておこう。

(地球の神仏を含む)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケルディック到着。

何度来てもこの雰囲気は心地良い。

人が多いのにのんびりとした感じは観光地としても過ごしやすい。

 

 

さて、俺達は今、サラ教官に連れられて2日間世話になるだろう宿へ移動中。

ちなみに教官はあの後からケルディックに着くまでずっと寝てた。

ここ1週間はほぼ徹夜だったそうだ。

お疲れ様。頑張れ。

ついでに教官が寝てる間、俺達はUNOとかトランプとかブレードをやってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿の名前は《風見亭》。

俺も何度か世話になったことがある宿だ。

宿の女将であるマゴットさんとはサラ教官と彼女のような気軽に話すような仲ではない。

互いの名前と顔は覚えているが、軽く世間話をした程度だ。

とはいえ、互いに知り合いではあるため、3人で少し雑談に走った。

マゴットさんは俺がサラ教官の担当クラスの所属とは知らず、少し驚いていた。

彼女は、噂やら何やらで、俺が士官学院に入ったことは知っていた。

というか入学祝いの手紙を送ってきてたし。

あの時はどうやら、ケルディックの他の何人かに触発されたらしい。

簡単に言えば、皆で手紙書こうぜ! ということだ。

雑談の後は知り合いでない者同士が軽く自己紹介をし合い、部屋に案内された。

 

 

案内されたはいいんだが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一部屋にベッドが四つ・・・っておい。

 

「まさか男女で同じ部屋ってことですか!?」

 

アリサが驚愕のような悲鳴のような声を上げる。

 

「う~ん、あたしも流石にどうかとは思ったんだけどねぇ。だけど、サラちゃんに『構わないから』って強く言われちゃってさ」

「『構わない』って強く言う言葉じゃねぇ・・・」

 

思わずそう返す俺であった。

 

「もしかしてB班も男女一緒だったりして・・・」

「「「・・・」」」

 

エリオットの言葉に俺を含むA班の他三人は天を、というか天井を仰いだ。

 

「いや、逆に考えるんだ。男女一緒の部屋にすることでガイウスの精神的負担が減ると」

「あんた達も大変そうだねぇ」

 

俺の言葉に3人が頷き、マゴットさんが苦笑した。

 

「B班に比べれば私達A班の苦労など大したことはあるまい。軍は男女の垣根なく生活を共にする世界。ならば部屋同じくすることくらい今の内に慣れておいたほうがいいだろう」

「ええ・・・そうね。でも、貴方達、不埒な真似はしないで頂戴。特にリィン」

 

ラウラの言葉に頷いたアリサだが、彼女は俺達、というか俺に釘を刺す。

 

「OK。なら俺は野宿にしよう。その方が二人も安心して眠れるだろう?」

「え? いや、ち、違うわよ!? 私は別にそんなつもりじゃ・・・」

 

俺の言葉にアリサは焦り始めた。なぜだ。

 

「いや、違うも何も、俺は野宿なら慣れてるから大丈夫だって」

「リィン、そろそろやめてあげなよ。それはアリサを非難しているようなものだよ」

「え? いや、何でそうなる?」

「リィン、私もエリオットと同じ意見だ。これ以上はアリサが不憫だ」

 

あるぇ?

 

「まぁ、とりあえずこれを渡しておこうかね」

 

マゴットさんが俺に封筒を渡してきた。

有角の獅子、士官学院の紋章。

特別実習の課題か。

 

「それじゃあね。何か困ったことがあったら何でも言っておくれ」

 

そう言ってマゴットさんは業務へ戻っていった。

さて・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、開けるぞ」

 

頷く3人の目の前で封筒を開け、中身を取り出す。

 

 

 

 

 

 

 

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実習範囲はケルディック周辺、200セルジュ以内とする。

なお、1日ごとに班で一つ、レポートを纏め、後日担当教官へ提出すること。

レポートの作成日時は当日の就寝前とする。

別紙の依頼書を参照し、各自適宜判断して行動せよ。

 

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「え、これだけ?」

「ふむ、どういうことだろうか・・・?」

「とりあえず、別紙の依頼書って言うのを見ればいいんじゃないかしら?」

「よし、見るか」

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず概要は以下の通り。

 

・東ケルディック街道に出現したスケイリーダイナの討伐。

・街道灯が壊れたから交換して欲しい。

・薬の材料の調達(多分)の手伝い。

 

以上。

 

 

「え、これだけ?」

 

さっきはエリオットが言った言葉を今度はアリサが言った。

っていうか、書式がまんま遊撃士への依頼書じゃねぇか。

つまり・・・。

 

「なるほど、そういうことか」

「リィン、わかったの?」

 

エリオットの言葉に頷く。

 

「結局、どういうことだ?」

 

ラウラが尋ねてくる。

 

「簡単に言えばこの依頼を受けるか受けないかも俺達の裁量次第ってわけだ。それ以外にも、他の人が何か頼んできたらそれを引き受けることも有りだと思う。その日その日をどう過ごすかは全て俺達の判断にかかっている。つまりはそういうことだ」

 

おそらくは、それこそが特別実習の内容。

 

「多分だけど、これらの依頼は自分達で歩き回って解決していくようなものを選んでいると思う。その理由は、このケルディックという地を深く知るため」

「ふむ、その土地ならではの実情を自分達なりに掴む、ということか?」

「その認識でいいだろう」

 

皆の顔を見ると、どの顔にもわくわく、という感情が浮かんでいる。

 

「さて、どれからやろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西へ行って街道灯を交換し、皇帝人参を貰う。

ついでにルナリア自然公園にも寄ろうとしたが、工事かなんかで立ち入り禁止。

しかし、管理人のジョンソンさんは休暇中かな?

で、門の前にいた二人は代理?

街に戻り二手に別れ、俺とエリオットは壊れたほうの街道灯を持っていって報告。

その間に女子チームは太市でベアズクローを貰い、教会へ。

宿の前で合流して今度は東にスケイリーダイナの討伐へ。

俺がやると何の意味も無いからとラウラに言われて俺はただ見物。

戦闘終了後に注意点その他もろもろを指摘して戻る。

依頼人のサウロさんに報告を終え、街に戻ってこれからショッピングでも、と思ったら問題発生。

 

「ふざけんな! ここは俺の店の場所だ!」

「それはこちらの台詞だ! 嘘を言うんじゃない!」

 

商人二人が場所を巡って争っているようだ。

片方は見ない顔だがもう一人の方は知っている。

この街に住居を構える商人の一人だ。

確か名前は、マルコ。

 

「何があったんですか?」

 

とりあえず周囲にいる商人の一人に話を聞いてみる。

ここの商人達には俺のことは結構知られているからな。

 

「あ、リィンさん。何やら場所を巡ってのトラブルみたいで・・・。口論を聞く限りどちらも本物の許可証を持っているみたいなんですが・・・」

 

なるほど・・・しかし、それは妙だな。

こういった許可証の発行、もとい商売場所の管理はアルバレア家の仕事のはずだが。

 

「あっ・・・!?」

 

アリサの声に再び二人の商人を見る。

すると彼らは、互いの胸ぐらを掴み殴り合いを始めようとしていた。

 

「まずい! 止めるぞラウラ!」

「承知!」

 

俺とラウラは二人の商人を引き離し、落ち着かせる。

 

「な、何だね君達は!?」

「げっ、リィン君!? い、いや、これはだな・・・」

「とりあえず、落ち着いてください」

 

「なんの騒ぎかね!」

 

市場の入口から聞き覚えのある声。

誰もがその声の方を見る。

 

「貴方は・・・」

「も、元締め・・・」

「お久しぶりです。オットーさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、いろいろあって一応形は整った。

週ごとに交代で場所を使い、もう一人の方は誰も使っていなかった場所に。

ところで、なぜ同じ場所の許可証がダブることになったのか。

 

「最近、少しばかり面倒なことになっていてな」

「面倒なこと?」

 

オットーさんの話に眉をひそめる。

あまりいい話ではなさそうだ。

 

「実は二月ほど前、太市での売上税が大幅に上がってしまったんじゃ。その割合は、ほとんどの商人が生活に困るギリギリの量での。それを取りやめてもらおうとバリアハートにある公爵家に何度も陳情のために行ったのじゃが、一向に取り合ってもらえず門前払い。しかも、領邦軍もこちらが陳情を取り下げない限り太市には不干渉を貫くと明言してな。諍いの仲裁はもちろん、市場に出すために育てている作物の畑を荒らす凶暴な魔獣の対処も杜撰になっておる」

「・・・マジかよ」

 

売上税の大幅増税。

帝国各地での様々な税金の増税がこんなところまでに来ているとは。

しかも苦情陳情に対する対応が最悪だ。

領民の生活を脅かすようなまねをするなんて・・・。

 

「まぁ、あまり君達に言ってもただの愚痴にしかならんし、このくらいで控えておこう。それより、明日の朝も、今日と同じく幾つか依頼を用意させてもらっておる。急に依頼が増えることもあるかもしれんが、午前中に終わるように調整しておこう」

「「「「ありがとうございます」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、太市へ。

マルコさんが今週の奥になってしまったため、慰めに行く。

 

「マルコさん、大丈夫ですか?」

「ああ、リィン君か。さっきは悪かったな」

「流血沙汰にならなかっただけでも一安心ですよ」

「・・・本当に悪かった」

 

とりあえず、落ち着いたようで一安心。

売上税の増税もあり、こんな奥だとギリギリらしい。

前はこの場所でも大丈夫だったことを考えると、増税の影響は大きい。

それに、増税前はこんな諍いもゼロだったと聞く。

下手すると、ケルディックが廃れることもありうる。

 

 

 

 

 

彼の店は明日開くとのことで、少し買い物を。

幾つか店まわり、お土産や保存の利く食材を買っていく。

ラウラたち3人は両手に買った物を持つが、俺は四次元バッグにポストン。

3人から羨ましがる視線を向けられるのは当然か。

そうして店をまわっていくと、一人の商人が興味深そうに話しかけてきた。

 

「その制服、君らトールズ士官学院生徒やろ?」

 

何か特徴的なしゃべり方、というか関西弁。

学院にも一人関西弁の生徒がいるけどね。

ん? そういえばあいつ、商人の娘だって言ってたよな?

 

「元締めから聞いとるで。君ら、実習とやらでここに来たらしいな?」

「はい、そうですけど・・・?」

 

アリサが疑問符を浮かべつつ答える。

 

「実はウチの娘も士官学院の、君らの同級生でな。ベッキーちゅうて、ミラ勘定以外はさっぱりな出来の悪い娘何やけど・・・」

 

やっぱりか。

 

「ええ、知ってますよ。トールズにはもう一人商業系の生徒がいて、よく二人で討論してます。仲は悪くないみたいですよ。後は、トリスタのあちこちでバイトしてますね」

「おぉ、そうか! 元気にやっとるみたいやな。ほんなら、君らとはどうや?」

「二人の討論をたまに聞いたりとか、買い物途中でバイト中の彼女と雑談したりとかしてますね。まぁ、仲良くやってますよ」

「お、おぉ、そうか・・・それは、うん、よかったなぁ・・・」

 

ベッキーのお父さんが若干震え声になったのは、俺が話している途中で約2名が不機嫌なオーラを発し始めたからである。なぜだ。

 

「二人とも、何で睨むんだよ?」

「別に。なんでもないわよ」

「私は睨んでなどおらぬ」

 

・・・なんでさぁ。

 

「ま、まぁ、君らも学院ではあんじょうしたってくれ。いろんな意味で頼むわ」

「「「わかりました」」」

 

空気が少し落ち着いた。

ベッキーのお父さんは一息ついて続ける。

 

「ほんで君ら、調子はどないや? 実習とやら、上手くやれとるんか?」

「あ、はい。それなりに頑張ってます。あはは」

「至らぬことも多いが、それでもいい勉強をさせていただいている」

 

エリオットとラウラの言葉にそうか、と頷くベッキーのお父さん。

 

「お、今ええこと思いついたで!」

「「「「?」」」」

「君らも疲れてるとは思うんやけど、もしよければ、店番をやってみないか?」

 

なんと、店番とな。

 

「なんせ商売っちゅうんは交渉術。士官学生にとってこういった経験は決して無駄にはならんはずや。どないや、いっちょ、やってみいひんか?」

 

面白そうだな。

 

「皆はどうしたい? 俺はやりたい」

「そうね・・・こういった経験をしておくのも悪くないわね」

「ちょっと自信はないけど、やってみたいかな」

「うむ、面白そうだとは思うし、是非やらせてもらいたいところだ」

「よし、決まりだな」

「ほんなら、早速始めよか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引き受けたのは夕方のセール。

ベッキーのお父さん、もといライモンさんは、“利益より数”という商売理念を持っていて、より多くの顧客に満足してもらうことで店の評判を上げ、更に多くの客に来てもらう、といった、長期的な目で見ると利益が増えるような商売をしている。

大貴族達にはぜひとも彼のやり方を見習ってもらいたいものである。

まぁ、それはさておき、俺達の店番体験だ。

俺たち4人が時間交代で一人ずつ店番をする。

で、4人で売り上げ対決をしようぜって話。

店番は、俺、ラウラ、エリオット、アリサの順。

一人15分でそれぞれが自分のやり方で商売をし、結果・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリオットは値引きをあまりしなかった。

結果、利益はそれなりに出たが数は少ないかな、といった感じ。

逆にラウラは値引きをしすぎて赤字気味。

数は多く売れたがちょっと商売としてはやっていけないかな。

総合順位2位は俺。

売り上げ、販売数共に並みの商人クラス。

旅は経験の宝庫だとコメントしておいた。

で、それを上回ったのがアリサ。

売り上げ、販売数共に俺を上回り、上位の商人達に迫るほど。

本人は商売経験は無いと言っていたが・・・。

経験がある俺より上とは・・・これも血筋か、才能か。

とにかく、楽しめたからよしとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急に大幅な増税を行うのはかなり危険だ。

当然、反発が出るし、場合によっては税を払うどころか生活に必要な金すら無くなってしまい、文字通り無一文になってしまう人もいる。

増税を行う理由はある程度予想が付く。

貴族派と革新派の対立。そろそろ戦争になりかねない。

各大貴族はそのための準備に金が必要なのだろう。

だから税を増やした。

しかし、貴族達の生活が全く変わらないのに対して、平民の生活だけが厳しくなっていく。

つまりは格差がより大きくなるということ。

領民達の信頼を保ちつつ、かつ増税を行うのであれば、増税する割合を小さくし、自分達の身を切る政策、つまり貴族が自ら節制を行い、それを知らしめるくらいの事をしなければならない。

そうでなければ領民だけが苦しみ、貴族は相変わらず裕福な生活をしている状況に、平民達の不満や怒りは溜まっていく一方だ。

こんな状況が続けばどうなるか。

考えられることは幾つかある。

領民による革命運動や、領民の国外・領外逃亡。

革命は、最終的には領邦軍と武装した領民のぶつかり合いになるだろう。

領民が勝った場合は貴族の没落が起こり、領邦軍が勝った場合には領民達の戦死や生き残った領民の逃亡などにより税収が大幅に減り、どちらにしろ貴族にとって苦しい結果になる。

領民逃亡の場合は税を納める人が減ることにより税収が減り、貴族の生活が苦しくなる。

ここで、貴族が更に増税した場合、逃亡する人が更に増え、という負のループに陥る。

どう足掻いても誰にとっても嫌な結末が待っているからこそ、急な大幅増税は愚策なのだ。

 

「と、こんなところかな」

「「「へぇ~」」」

 

俺の説明を聞いて感心する3人。

現在俺達は、風見亭の1階で夕食中。

 

「商人だけの問題ではなく、領全体の存亡にも関わるのだな」

 

ラウラの言葉に肯定の意味をこめて頷く。

 

「ねぇ、そろそろ部屋に戻らない? レポートも書かなきゃいけないし」

「あはは、確かにそうだね。これ以上のんびりしてると眠くなってきちゃいそうだよ」

「んじゃ、戻るか」

 

そうして俺達は部屋に戻る。

皆で協力してレポートを書いて、今日という日が終わる。

明日は問題が起こりませんようにと願いをこめて、おやすみ、皆。




一番最後はフラグ。
原作知っていればわかるとは思いますが。

次回はケルディック編中編です。
ですが来週は諸事情により投稿無し。
次回投稿は17日予定です。
それでは!

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