龍閃の軌跡   作:通りすがりの熾天龍

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11話です。


実技テスト

4月21日。

 

「それじゃ、予告通り、実技テストを始めましょう」

 

グラウンドに並ぶ俺達を前に、サラ教官が言った。

 

「前もって言っておくけど、このテストは単純な戦闘力を測るものじゃないわ。“状況に応じた適切な行動”を取れるかを見るためのものよ。だから、たとえ短時間で倒せたとしても、何の工夫もしなかったら評価は厳しくなるわ」

 

ゴリ押しだけじゃ駄目ってことだな。

 

「それでは、これより、4月の実技テストを開始する」

 

そしてサラ教官に呼ばれたのは4人。

エリオット、ラウラ、エマ、ユーシスだ。

呼ばれた4人が前に出る。

 

「貴方達には4人で協力してこれと戦ってもらうわ」

 

そう言ったサラ教官が指を鳴らすと、彼女の横に、突然何かが出現した。

これは戦術殻のようだ。

どう考えてもオーバーテクノロジー・・・十三工房製か?

教官曰く、いろいろと設定を変えられる結構便利なものらしい。

分裂する機能もあるとか。

うん、確かに便利そうだ。

今回は少々強めに設定してあるが、倒せない相手じゃないとのこと。

機械が本格的に動き出し、4人が構える。

 

「それでは、始め!」

 

サラ教官の掛け声を合図に、戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺から見てもなかなかの出来だったと思う。

後続のアリサ、ガイウス、フィー、マキアスのチームも負けていない。

 

「さて、実技テストはこれで終了よ」

 

え、ちょ!?

 

「俺は!?」

「え、要らないでしょ。大陸最強クラスだもの」

 

自惚れるつもりではないが“大陸最強クラス”は否定はしない。

でも何で教官がその評価を知っているんですか!? 

 

「リィンの最強っぷりはオリヴァルト殿下のお墨付きだしね」

 

なるほど、オリビエか。

 

「今回は見学してもらったけど次回からはリィンも評価する側に入ってもらうわ」

「マジか」

「マジよ」

 

次回からも実技の特別試験は免除ってことだな。

評価する側っていうのもいろいろなことが見えるしいいかもしれない。

 

「で、今日はこれから、リィンにエキシビションをやってもらうわ」

 

・・・へ?

 

「それじゃ、ルールを説明するわね」

 

そう言ったサラ教官が指を鳴らす。

それを合図に校庭の中央に大量の戦術殻が出現。

数は・・・3桁超えといったところか。

形状もさっきとは違いがある。

 

「リィンには30分間、これらを倒し続けてもらうわ。倒してもすぐ次が湧くように設定してあるから、どんなに早く倒しても30分かけるわよ。但し、校庭を破壊するのは勘弁してちょうだい。私としてはできるだけ多くの技や魔導術が見たいわね。さっきも言ったように、これはエキシビションよ。だから人に見せられないようなエグイものはとかは無しで」

「らじゃ~」

 

できるだけ派手で、かつ破壊力を押さえて行けってことだな。

 

「準備はいい?」

「OK!」

「それでは・・・始め!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開始直後にレーザービーム飛来。

数は30強。

一歩下がって魔導術。

 

「ラシルド!」

 

雷を纏う壁がせり上がり、ビームを反射。

反射したビームは雷を付加され、威力を増大して戦術殻に直撃。

更に貫通して他の戦術殻にも当たり、レーザーの数より多い50体を撃破。

即座に違う術を発動。

 

「ラウザルク! ヘイスト! ピオラ!」

 

スピード強化を重ね掛け。

術式がそれぞれ異なるために実行可能な方法だ。

一気に加速。刀に手を添える。

 

「四の型、奥義《蒼焔・紅葉斬り》!」

 

蒼い焔を纏った紅葉斬りを複数体に纏めて叩き込む。

10体撃破。だが、次から次へと湧いてくる。

次はあえて納刀し、両手に氣を込める。

十数メートル、じゃなくてアージュを一歩で踏み込み、両手を突き出す。

 

「獅子戦吼!」

 

巨大な獅子の頭部を模した氣の塊が、数体纏めて戦術殻を撃破。

直後、右足に莫大な焔を纏い、接近してきた複数体目掛けて回し蹴り。

これはオリジナル技と言えるかもしれない。

 

「フレア・レッグナイフ!」

 

ラウザルクによって雷属性も含んだ炎のレッグナイフ。

と、ここでスピード強化術三つが切れた。

・・・次はこれだ。

 

「インディグネイション! ジャウロ・ザケルガ! ジゴスパーク!」

 

上から黄金の雷、白銀のザケルガ十一連撃、地面からの漆黒の雷。

三種類の雷が戦術殻を纏めて屠る。

更に追撃。

 

「風遁・螺旋手裏剣!」

 

振り向きざまに螺旋手裏剣を投擲。

炸裂し風の手裏剣が、こちらも複数体纏めて破壊。

さて、ここからは水系・氷系で行こう。

 

「タイダルウェイブ! マヒャデドス! 水遁・水鮫弾! 氷欠泉(アイスゲイザー)! ウォタガ! フリーズボルト! 水遁・大瀑流! コーラルレイン! ハイドロカノン! 煉獄氷夜!!」

 

最後の煉獄氷夜で全ての戦術殻を凍らせる。

だが、別にこのまま30分が過ぎるのを待つ気は無い。

むしろここからが本番だぜ。

 

「メラゾーマ! 火遁・劫火滅却! 八葉奥義《蒼焔の太刀》! 魔女狩りの王(イノケンティウス)! ギガノ・ラドム! ガンフレイム! ブラストバーン!」

 

ありったけの炎技を放つ。

そして氷を一気に溶かして更に蒸発させる。

蒸発した水は上空で雲を作り出す。

 

「バオウ・ザケルガ!」

 

雷の龍を上空の雲へ撃ち込む。

そして、降り注ぐ巨大な雷の塊。

NARUTOではサスケが使用していた雷遁系最強の術。

自然の雷を利用した極大の一撃。

 

「雷遁奥義・麒麟!!」

 

幻獣の姿を模した雷が炸裂。

見た目もかなり派手だが、今回は威力を抑えた。

だからグラウンドの地面には、被害は少ない。

広範囲にわたって焦げているくらいだ。

 

 

 

 

ここらで脳を休めておこう。

そして、代わりに発動するのは鬼の力。

龍の力と鬼の力は、同時に使う事ができない。

更に鬼の力は完全制御に至っていないため、魔導術を使ったほうが強い。

それでも、この場では十分だ。

 

「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉ――――――神気合一!!』

 

髪は銀、瞳は紅、声も変化し黒雷状の陰の気を纏う。

再び刀に手を掛け、八葉の技を連続して使っていく。

 

『龍炎撃! 残月! 龍翔閃! 龍槌閃・惨! 無想覇斬! 烈火紅葉斬り! 龍巻閃! 無月! 九頭龍閃! 裏疾風! 天翔龍閃(アマカケルリュウノヒラメキ)! 終の太刀《暁》!』

 

一部違うだろという技もあると思うが、これらは九の型になる。

俺が師匠から認められた型で、現在では八葉の隠し技だ。

さて、あと5分かな。

神気合一を解き、再び魔導術を行使。

使うのは俺のオリジナルの魔法。

 

「ドラグレイド・ヘキサ!」

 

俺の背後に6体の龍が現れる。

それぞれ、蒼焔、紫水、紅氷、黒風、白雷、緑光で構成された龍だ。

6の龍を放ち、それぞれが何体もの戦術殻を飲み込む。

時間的に次がラストだな。

大技を決めるか。

今回の中で最も複雑な術回路を構築。

最強技ではないが、〆にはもってこいの術だろう。

 

須佐能乎(スサノオ)!」

 

俺中心とした空間に人型の上半身が出現。

NARUTOでは左右で異なる万華鏡写輪眼を開眼させた者だけが使える奥義。

但し完全体ではない。

この術は術者によって形が違うのが特徴で、俺の場合は頭部が龍。

更に腕が6本と、鉤爪の付いた6つの翼。

三つの宝玉を持ち、背後には円盤。

わかる人にはわかるだろう。

“超神星アポロヌス・ドラゲリオン”の上半身そのまんまである。

これが完全体須佐能乎になれば下半身も再現され、全体が巨大化して俺はドラゲリオンの胸の中央に位置する虹色の宝玉の中に入ることになる。

そしてこの龍、口からブレスを出せる。

 

「龍神奥義、《七曜龍の轟咆》!」

 

ゼムリアの七属性を込めた虹色のブレスがグラウンドに広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついでに言っておくと、完全体須佐能乎からは比較的脳への負担が少なく《シン・ベルワン・バオウ・ザケルガ》という超大技を放てる。

生身でシン・ベルワンを放つのと完全体須佐能乎を通してシン・ベルワンを放つのでは合計としては後者の方が負担は少々大きいが、完全体須佐能乎を使うとより広い範囲から空気中の霊力や魔力を大量に取り込むことができ、威力を底上げできるのだ。

須佐能乎や完全体須佐能乎の内部にも体内と同じ程度の負担で回路を組めるため、より複雑な魔導術式が組めるという利点もある。

完全体使うためにはかなりの量の魔導力が要るんだけどね・・・。

つまり空気中の霊力や魔力、それに氣やPSIエネルギーも大量にいるわけで。

いざという時の為に普段から魔導力を生成して蓄えておいた方がいいって話。

特にPSIエネルギーは龍の力をOFFにしているときは出ず、ONにしているときのみでて、かつ単位時間で一定量しか出ないから、普段からため込んでいくしかない。

 

 

 

 

まぁ、そんな話は置いといて、エキシビション終了!

皆が唖然としているが、まぁいつものことだし気にしない。

 

「と、とりあえず、これから《特別実習》の説明をさせてもらうわね」

 

いよいよか。

 

「君達には、A班とB班の二つのチームに分かれてそれぞれ、こちらが指定した実習先に行ってもらうわ。そこで実習の期間中、用意された課題をこなしてもらう。で、今から配るのが、班分けとそれぞれの実習先、それと実習期間が書かれたプリントよ。さ、一部ずつ受け取って頂戴」

 

えっと・・・ふむふむ。

A班は俺とアリサ、ラウラ、エリオット。

で、実習地がケルディックか。

B班がエマ、マキアス、ユーシス、フィー、ガイウス・・・っておい。

いやいやいや、マキアスとユーシス同じ班は拙いでしょうよ。

とにかく、B班はパルムか。

で、実習期間は・・・4月の24と25の二日間。

注釈で移動時間を含むと書いてある。

 

「なお、移動手段はA班、B班共に鉄道を使っていくわ」

 

最後に、各自英気を養っておけとのサラ教官の言葉と共に解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、やることは幾つもある。

まずは食材を購入。

蜂蜜、小麦粉、鰹節、梅干し、その他もろもろ。

鰹節を粉にして小麦粉や他の粉と混ぜ、蜂蜜などで固める。

兵糧丸を知っているだろうか?

地球では主に戦国時代に多用された携帯食料である。

水渇丸というものもあり、それは兵糧丸とは違うらしいが、ここでは割愛。

俺もよく知らん。

魔導術による時間加速で速攻完成。

タッパに入れて四次元バッグへ投入。

乾燥させるときに一緒にドライフルーツと干し芋を作っておいた。

それも容器に入れて四次元バッグに。

これにて食糧補給は完了っと。

 

 

 

 

後は銀行でミラをおろしておく。

ケルディックに行くのなら金は必須だ。

更に技術部へお邪魔してARCUSの調整。

ついでに幾つか特製クォーツを作っておこう。

全部作るのに今日を含めて三日かける予定。

制作に術式技術を使用し、特別な効果を持たせる。

このクォーツは23日金曜日の夜、それぞれに渡すつもりだ。

一応普段から四次元バッグに入れて常備している機械も調整しておこう。




ただリィンが無双しているだけ。
術にはオリジナルが幾つか混じっています。


次回はいよいよケルディック編です。
投稿はいつも通り来週土曜予定。
それでは!

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