臆病な転生ルーク   作:掃き捨て芥

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第27話 ラジエイトゲート、後片付け

 

 さあ外殻大地を降下させようか! 行くぜ行くぜ行くぜ!

 

「な、何かテンション高いな、どうした?」

 

 最近なんかダウナーだからテンション上げていかないとな!

 既にキムラスカ、マルクト、ダアトへの周知は終わっている。後はラジエイトゲートで最後のパッセージリングの操作を終えるだけだ。ローレライ関係は俺とアッシュだけの個人的……個人的? な用事だから皆は関係無い。そうだアッシュの野郎、やっぱり連絡よこしやがらねぇ。何か手段を考えないとな。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 アルビオールでラジエイトゲートにやってきた。アブソーブゲートのさらに北。バチカルなどから見ると南海に当たる場所だ。俺の原作知識だとここはアブソーブゲートほど面倒ではなかったはずだ。

 その予想通り、俺達はゲートについて簡単にパッセージリングに辿り着いた。

 

「なぁんか拍子抜け~」

 

 などとアニスは言っているが、簡単な方が良いに決まっている。俺は早速リングに超振動を放出し始めた。いつもの様に両手を空にかざし、中空に浮かんだ樹形図に超振動を照射する。すでに樹形図で全てのセフィロトは繋がっているのだ。ラジエイトゲートから全てのセフィロトに第七音素(セブンスフォニム)を送り込んでいく。

 

(ぐ、ぐぅっ)

 

仲間の皆には平気な顔を見せているが、結構きついぞ。そういや原作でのルークが力が足りないとか言ってアッシュに助けて貰ってた様な? 今からでもアッシュを探して助けて貰うか?

 

(ざけんなっ!)

 

 俺は最後の力を振り絞って超振動に力を注いだ。ここまできてアッシュに頼るなんて軟弱な事してられるかよ。最後まで、俺の力で事を完遂させる。

 第七音素に俺の意思が反応したのか、超振動はその力を緩める事なく照射できた。

 

「想定通り、障気がディバイディングラインに吸着していますね」

 

 俺の隣に歩み出てきたジェイドが言う。それなら、障気の問題はこれで解決できる。よし、終わった。アッシュに頼らず俺の力だけで何とか終える事が出来た。良かった。

 

「障気を隔離しておくにはパッセージリングを全部停止させる必要があるんだよな」

 

「ええ、その通りです。操作をお願いできますか?」

 

 任せろ、と答えて連結した全てのパッセージリングを停止させる。これでOKだ。

 

「終わった……のか?」

 

 ガイが聞いてくる。ああ、終わったよ。

 

「ああ、これで全ての作業は終わりだ。外殻大地は全て降下してユリアシティとか既に降下したケセドニアとかと地続きになった筈だぜ。パッセージリングも停止させたから障気の問題も解決できた筈だ」

 

 俺はそう答えると全身の力を抜いた。アレ? もしかして俺……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 目を覚ましたらバチカルの屋敷だった。どうやら俺はラジエイトゲートで気を失ってしまったらしい。ガイが慌てていたと聞いた。そっか、全てが終わったという事で気が抜けたんだろうな。ゆっくり休むといい、と言う父親の言葉通り、しばらくは休むか。外殻大地が完全に降下するという世界にとって大きな出来事が起きた後だしな。

 さてゆっくり休むといった所で何をしたらいいのかしら、と思い帳面(ノート)を開いた。あ、あれをやり忘れてる。あれもだ。ああこれはあいつの返事待ちだな。そんな事を考えていたら休んでいる暇なんて無い事に気づいた。早速行動せねば!

 俺はいいから休んでいろよ、と押しとどめてくるガイとナタリアを説得し、後片付けの旅に出るのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 俺とガイ、それと強引について来たナタリアはまずアルビオールを借りる為、シェリダンにやってきた。

 

「ルークさん!? もう大丈夫なんですか?」

 

 ああもう大丈夫だよ。とギンジさんに答える。

 

「そんですみませんがギンジさん、またアルビオールを借りたいんですが」

 

 俺がそう申し出るとギンジさんは快く返事をしてくれた。えっと、まずはグランコクマだな。ジェイドに会わないと。

 

 

 

 グランコクマに到着。さすがにアルビオールは早いぜ。

 

「それで? 倒れたばかりだというのにどんな用事ですか?」

 

 この嫌味な感じ、さすがジェイドである。

 

「ああ、ヴァン一味の利用していたフォミクリーの装置があるんだよ。それを破壊して回ろうかと思ってるから、一応お前も連れて行った方が良いと思って」

 

「…………」

 

 ジェイドはその言葉を聞いて沈黙したが、最終的に俺達について来た。やはりフォミクリーの装置となると気になる様だ。

 

 

 

 次に移動した先はコーラル城である。原作では立ち寄る場所だけどこの世界ではタルタロスを使ってショートカットしたからな。来るのは初めてだ。

 

「こんな所にフォミクリーの装置があるとは……」

 

 ジェイドは驚いている。俺も驚きだよ。だってここ放置されているとはいえファブレ公爵の別荘地だよ。なのにヴァンの野郎はここに装置を設置しやがって。どんだけ厚かましいんだよあいつ。

 

 ヴァンもなー、原作ではカリスマがあって深謀遠慮の人物だという「設定」だけど、ゲームをプレイしている人間からしたら隙だらけの穴だらけなんだよな。タルタロスで一般兵にルークが殺されていたらどうするつもりだったんだあの髭。アッシュに仮面も付けさせずルークの前に姿を現すのを自由にさせてたけど自分がレプリカだって気づかれたらどうするつもりだったんだあの髭。あの髭、髭め。髭野郎め。

 

 とにかく今はフォミクリーの装置だ。せっかくなので(?)ジェイドの譜術で壊して貰う。剣を振り回すのも面倒だしな。装置でかいし。

 

「これで一つは終了だな。あともう一つ……じゃないか二つかな」

 

「そんなにあるのか」

 

 ガイは辟易した様な顔をする。俺だって面倒で嫌だよこんな作業。

 

「……ふと思ったけど、この城を貰ってもいいのかもな」

 

「何の話ですの?」

 

「ああ、今アッシュの奴と連絡を取ろうとしてるけどさ、あいつが帰って来たら俺の居場所はなくなるだろ? その時に別荘地であるこの城を貰い受けて、別荘地の管理人になるってのも楽でいいかなーと」

 

「…………」

 

「……そういえば貴方はイオン様とフローリアンの時も同じ事を言っていましたね。同じ顔、姿形の人物がそばに居るのは好ましくないという事ですか?」

 

「それもあるけど、単純に今は俺がアッシュの居場所を奪っている状況だからな。俺はそれが嫌なんだよ。アッシュが帰ってくるかどうかは分からないが、あいつの居場所は空けておきたい」

 

 コーラル城の城主か、思いつきだけど良いかもな。七年間の考察期間の間に考えた「全てが終わった時の身の振り方」ではマルクトで気ままに暮らすとか、エンゲーブで農夫をやるとかがあったけど、それも悪くないかもな。

 

 

 

 次の破壊活動の場所はワイヨン鏡窟である。フォミクリーの装置ではないが、ここもヴァン一味の隠れ家なので施設を破壊しておこうと思ったのだ。

 ジェイド の ふじゅつ が さくれつ

 さー終わった終わった。次に行こう。

 

 

 

 次にやってきたのはダアトだ。何故ダアトかというとシェリダンで捕らえられたヴァン一味が牢屋に入れられているのがダアトだからだ。フローリアンの居場所を聞き出した時はまだキムラスカの牢屋だったけどな。今は移送されてダアトに居るのだ。

 

「ルーク。手続きはしてきましたが、アリエッタに聞きたい事とは一体……」

 

「ありがとうイオン。ヴァン達の隠れ家がある筈だから、それを聞き出したくてな」

 

 俺がアリエッタに聞く事は二つ。フェレス島廃墟群の場所とエルドラントの事だ。シンクも知ってるだろうがあいつにはフローリアンの事を聞いたからな。もう俺には何も話してくれないだろう。エルドラントは確か海の中に隠してある筈なんだよな。辿り着くには潜水艦とかがないと駄目なのか。ああ面倒だ。

 

 アリエッタに聞いた所、フェレス島は常に移動しているので逮捕された今どこにあるかは分からないとの事。エルドラントについてはホドがあった辺りとの事。ホドがあった辺りか、そういやホドのセフィロトもレプリカで作って浮上するんだっけか。

 余談だが、大詠師であったモースは更迭されたらしい。放っておくとどんな悪さをするか分からないので、厳重に監視しておくように言っておいた。ディストもまだ捕まってないしな。

 

 

 

 フェレス島廃墟群である。探すのにめっちゃ時間がかかった。海のどこかを移動している浮島なのは知っていたが、ゲームと違って現実は移動するのに時間がかかるんだよ! 

 更にここは敵を倒さないと開かない扉があって面倒だった。まあ弱体化していないジェイドがいれば楽勝だ。俺とガイはジェイドの譜術が邪魔されない様に前衛を務めればいい。あ、ナタリアは安全な所から矢を撃っていればいいよ。

 

「雷雲よ、我が刃となりて敵を貫け――サンダーブレード!!」

 

「貫く閃光! ――翔破裂光閃!!」

 

「紫電の光! ――獅吼爆雷陣!!」

 

 ま、楽勝だ。

 俺達は一番奥にあるフォミクリー装置を壊すと、その場を立ち去ったのだった。

 

 

 

 さて、海中にあるエルドラントに来たぞっと。だがこのエルドラントについては扱いが難しい。原作でも最終決戦から二年経っているのにその場に放置されていた気がするし。そこでホド諸島を領土としていたマルクトのピオニー陛下に伺いをたてた。かつてのホドをそのままレプリカで作った島があるのですがどうしたらいいでしょうか? とな。とりあえず浮上させてみろとの事、それももっともだ。海中にあったのでは扱いも何もあったものではないしな。

 俺達は海中にあるエルドラントをどうにかこうにか操作して(レプリカのセフィロトを利用した)エルドラントを浮上させた。一大スペクタクルだなこりゃ。ガイもジェイドもついてきたマルクト兵も皆驚いていた。

 それとここではやらなければならない事がもう一つ、いや二つあるのだ。エルドラントの中を進んでいる時だった。

 

「ここは……俺の……」

 

 俺達が立ち寄ったのはとある家のレプリカだった。煉瓦の暖炉がある。なるほど、ここが……。

 

「やっぱりそうだ。……俺の屋敷跡だ。」

 

「ここはホドのレプリカだ。おかしくはないだろ」

 

 ホドをそのままレプリカとして作ったのが、栄光の大地・エルドラントだ。ガイの家があっても不思議ではない。

 

「……そうか。ここは本当にホドなんだな。もう二度と、ここに戻れる日は来ないと思ってた。不思議な気持ちだ」

 

 せっかくならティアも連れてくれば良かったかな。ティアにとってもここは故郷だ。もっともティアはユリアシティの生まれ、ホドが崩落した時は母親の腹の中だからそこまで望郷の念はないかも知れないが。

 それはそうと、俺はやらなければならない事の為、ナタリアに合図を送った。

 ナタリアが口を開く。

 

「ガルディオス家の跡取りを護れたのなら本望だわ」

 

「!?」

 

 さあ、どうだ?

 

「……思い、出したっ!」

 

 どうやら上手くいった様だ。ガイは幼い頃に目の前で姉を殺されている。そしてその体でガイを庇ったのだ。ガイはその時の恐怖と女性に護られた事が一緒くたになって、女性恐怖症になってしまったのだ。俺はそれを原作知識で知っていたけれど、原作においてガイが記憶を取り戻すイベントを潰してしまったので、今回ナタリアに一芝居うってもらった訳だ。ガイが姉に庇われた時の台詞を言って貰ってな。

 

「ガイ、思い出したか」

 

「…………ああ、これもお前は“知っていた”のか」

 

「ああ、悪いな。ガイ」

 

 俺達はしばらくその場で休憩する事にした。ガイも急に記憶を取り戻して少し混乱しているだろうからな。

 

「わたくし、フォミクリーという技術を嫌いになれませんわ。使い方次第で素晴らしい事が出来そうですもの」

 

「なんでもそうだと思いますよ。全ての道具は、素晴らしい事にもくだらない事にも使える」

 

 ナタリアとジェイドが話してる。

 

預言(スコア)や俺の未来の知識もそうだよな」

 

 そういえば、ここでティアが七番目の譜歌を思い出すんだっけ。やっちまったか、な。まあいいか。ユリアの譜歌が失伝してしまっても世界にとって問題ないだろう。しかし結果的にではあるが強引についてきたナタリアさんはファインプレーだった。というか俺がもっと計画的に動けよって話なんだけどね。七年間の間、自分の命に関する事以外は全然想定してなかったからなぁ。ガイのイベントとか起こすつもり全然なかったのよ。

 

 ガイが回復した様なので先に進む。光の譜術か闇の譜術で倒す事で玉を落とすゴーレムなどの仕掛けを解いて、隠された扉を開いた。

 

「……綺麗だな」

 

「……誰かのお墓の様ですわね」

 

 そのナタリア達の言葉通り真っ白なお墓がそこにはあった。ガイがその正体を教えてくれた。

 

「ユリアだ……。ガキの頃、ヴァンに案内して貰った。フェンデ家はユリアの子孫として密かにユリアの墓を守ってるって話だったな」

 

「すると始祖ユリアはホドで亡くなったという事か」

 

 ジェイドが瞠目している。なおの事フェンデ家の人間であるティアを連れてくれば良かったな。俺はそんな事を思いながらその墓の前にある杖を抜いた。

 

「それは?」

 

「惑星譜術っていうすげー譜術の触媒だよ」

 

「ユリアの墓にあったという事は、彼女に縁の品なのでしょうか」

 

「そうだな、ユリアは預言士(スコアラー)だったらしいし。これは彼女が使っていた杖なのかもな」

 

「その杖、持って行くのか?」

 

 ガイの質問に、俺は意味ありげに答えた。

 

「そうだな。ちょっとあることに使うんだよ」

 

 後はマルクト軍がエルドラントを調査して、ここでやる事は終了だ。さて、屋敷に帰るかね。

 




 外殻大地が無事降下しました。前々から言っているとおり第三章であるレプリカ編はやりません。あと細々した後片付けが残っていたのでくっつけました。
 とってつけた様なガイの女性恐怖症克服イベント。原作と違う流れにして潰してしまったので、ここで起こしました。ナタリアさんは金髪で、ガイの姉に似ているのも利用してあります。

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