臆病な転生ルーク   作:掃き捨て芥

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第25話 地核振動停止作戦、メジオラ高原

 俺達はシェリダン港を出発してアクゼリュスの崩落跡を目指していた。タルタロスでの船旅は快適とまではいかないまでもそれなりに充実している。……ガイの傷は日増しに治ってきている。ほら見た事かとドヤ顔をするガイがちょっとうざい。

 しかしそれにしてもシェリダンの惨劇を回避出来たのは嬉しかった。この世界にある預言(スコア)を変えるという事なら、アクゼリュスの民を崩落させずに救った事で証明出来ていたが、それでも本来死ぬ運命だった人を救えた事は素直に嬉しい。それだけ俺の行動に意味があったという事だからな。

 

 アクゼリュス跡に着いた。海水が魔界(クリフォト)へと流れ込んでいっている。譜術障壁を発動させたタルタロスはその中に飛び込んでいく。タルタロスの底面に展開された譜陣が魔界の泥をかき分けて地核へと侵入していく。様々な光が瞬く空間を抜けて、タルタロスは地核に到達した。

 

「着いた、のか?」

 

「その様です」

 

 ジェイドが冷静に受け答えする。こういういつも冷静な人物というのは居てくれるだけで心を落ち着かせてくれる。ジェイドが居てくれて良かった。

 

「さっき一瞬見えたあれは……」

 

 ガイが何かを考え込んでいる。ああ、そう言えば地核に第七譜石があるんだっけ?

 

「どうかしましたの? 確かに地核に飛び込む直前、何かが光ったみたいでしたけれど」

 

「……ホドでガキの頃に見た覚えがあるんだ。確かあれは……」

 

 ナタリアの質問にガイが答える。それをジェイドが遮った。

 

「詮索は後です。こちらは準備が終わりました。急いで脱出しましょう」

 

 甲板に出た俺達は早速アルビオールに乗ろうとした。言い忘れたが、この作戦には俺、ジェイド、ガイ、ナタリア、ティアの5名だけだ。イオンと護衛役のアニスは万が一の事も考えておいてきた。本来であれば王女であるナタリアも連れてきたくはなかったのだが、「それを言うならルークも王族でしょう!?」と言われ、押し切られたのだ。ナタリアがこなければ最低限の航行に必要な人員はキムラスカ兵でまかなおうと思っていたのだが……。え? 俺? 俺は作戦の立案者だから逃げる事は許されないよ。

 

 さっさと地核を脱出しようとした所で、いつもの頭痛がやってきた。

 

「くぅっ」

 

 痛みが脳を刺す。

 

――我が声に耳を傾けよ! 聞こえるか、私と同じ存在よ。

 

「この……声は」

 

 あまりの痛みにしゃがみ込む俺にティアが駆け寄ってくる。

 

「ルーク? 大丈夫? 癒やせないか、試してみるわ」

 

――私を解放してくれ。この永遠回帰の牢獄から……

 

 ティアが俺の頭に手をかざして治癒術を使ってくれる。その光に接触したからだろう。

 

――ユリアの血縁か……! 力を借りる!

 

 その声がしたら頭痛が引き、代わりの様にティアが立ち上がった。

 

『ルーク。我が同位体の一人。ようやくお前と話をする事が出来る』

 

 俺は立ち上がってその体を白い光に包まれたティアを見た。そういやこんなイベントもあったっけ。

 

『私は、お前達によってローレライと呼ばれている』

 

第七音素(セブンスフォニム)の意識集合体……! 理論的には存在が証明されていましたが……」

 

 ジェイドが驚きの声を上げる。まあ俺にとっては今更だ。頭痛によって何度も交信してきた事は知っていたし。

 

『そう。私は第七音素そのもの。そしてルーク、お前は音素(フォニム)振動数が第七音素と同じ。もう一人のお前と共に私の完全同位体だ。私はお前。だからお前に頼みたい。今、私の力を何かとてつもないものが吸い上げている。それが地核を揺らし、セフィロトを暴走させている。お前達によって地核は静止し、セフィロトの暴走も止まったが私が閉じ込められている限り……』

 

 そこで言葉は途切れ、ティアの体も糸が切れた様にふっと倒れ込んだ。

 

「ティア! 大丈夫か!」

 

「……大丈夫。ただ、目眩が……。私どうしちゃったの……?」

 

「ここは危険です。とにかく今はアルビオールへ移動しましょう」

 

 俺は頼りないティアの体を支えて、アルビオールへと移動した。格納庫から譜陣の力によって上昇したアルビオールは取り付けられた音機関で障壁を発生させ、地核を抜けて魔界に来る事ができた。魔界へ上昇して出るのは初めてだったが、ギンジさんは難なく操縦してくれた。

 ローレライの言った言葉は気になったが、突然ローレライに体を乗っ取られたティアを皆が心配した為、ベルケンドでティアの体を検査する事になった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ベルケンドでの検査では、ティアの体に問題などある筈もなく、無事に終わった。そこで俺はティアと話す事にした。

 

「ティア。あのな」

 

「どうしたの? ルーク」

 

「リグレットの……事なんだけど」

 

「…………」

 

「謝るのも変、というか筋違いだと思うけど、俺……」

 

 筋違いと分かっていても謝ろうかと思った。

 

「そう。貴方は、リグレット教官が私の教官だって知っているのね」

 

「ああ」

 

「一つだけ……一つだけ聞かせてくれる? 貴方の知る未来では、教官はどうなったの?」

 

 それは。

 

「同じ、だよ。俺達との戦いで命を落とすんだ」

 

「…………そう」

 

 そこで俺は、原作において存在した一つのイベントを思い出した。

 

「そう言えばティア、リグレットが君のペンダントに手紙を仕込んでいたと思うんだ」

 

「え? ……あ、そう言えば」

 

 ティアは自分のペンダントを探ると、中に仕込まれたリグレットの手紙を取り出した。

 

「『メシュティアリカへ。この手紙を貴方が読んでいるという事は、私はもうこの世にいない。今だから告白できる。ティア。私は貴方の兄、ヴァンデスデルカを殺そうとした大罪人だ。私は弟をヴァンに殺された。それすらも預言の定めた所だったが……。』」

 

 

 

『ヴァン・グランツ! 弟の仇!』

 

『お前は神託の盾(オラクル)の兵か。』

 

『貴様がっ! 貴様が預言で殲滅されると知っていながら弟を……。お前を信頼していたマルセルをケセドニア戦に送り込んだのだな!』

 

『……一介の教団兵が秘預言(クローズドスコア)を調べるのは死罪に相当するぞ』

 

『だからなんだ? ケセドニア北部戦は明らかにキムラスカの負け戦で、戦略的意義もダアト介入の意味もなかった』

 

『しかし預言に詠まれていた。覆す訳には行かない』

 

『貴様の理想の教団作りとやらにマルセルを巻き込んでおきながら、むざむざ死なせたくせに!』

 

『私の為に働きたいと言い出したのはお前の弟の方だ。強要した覚えはない。……私が憎いか?』

 

『……憎い!』

 

『ならば私はお前を副官に任命しよう』

 

『……貴様っ! ふざけているのか!』

 

『公然と私の横に立ち、隙を見て私に手をかける事が出来るぞ』

 

『……何が狙いだ』

 

『フ……! 私の命が預言に勝てるのか。それを確かめようというだけだ』

 

『後悔するぞ。……私は必ず貴様を討つ』

 

『フ……フハハハハハッ』

 

 

 

『……こうして私は閣下の副官になった。私が貴方の教官についたのも、貴方を使ってヴァンを討ち取る為だ。だが、その結果、私はヴァンの過去に触れてしまい、惹かれるようになってしまった』

 

 ちょ、ちょろい。ちょろすぎるぞリグレット。

 

『だから私は、貴方の指導が終わった時、過去の自分を捨てる事に決めたのだ。貴方を指導している間、貴方の信頼を感じながら、私は貴方を裏切っていた。許して欲しいとは言わない。私は貴方が私を何の疑いも無く理想化している事に不安を感じていた。私はただの人間だ。貴方は私の後を追うのではなく、貴方の理想を追いなさい。最後になったが、私は貴方の幸せを祈っている。いつまでも壮健で。ジゼル・オスロー』

 

 ティアは、手紙を、読み終えた。

 

「……ごめんなさい。しばらく一人にしてくれる?」

 

「分かった」

 

 その場を立ち去る寸前「教官……ごめんなさい……」というティアの弱りきった言葉が聞こえてきた。だが俺はそのままその場を立ち去った。

 

 ……結局、原作序盤のルークがヴァン師匠を盲信していた様に、ティアもリグレットを盲信……とまではいかなくても、理想化していたのだ。リグレットの死と、彼女の手紙で、ティアもそこから一歩踏み出す機会が訪れたという事だろう。

 

 俺は、自分が手にかけて殺した相手の事を思った。預言から、自分の愛する男に信じるものを変えた女を。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 地核振動停止作戦は問題なく終わった。そこでパッセージリングの操作……降下作業を続ける事となったのである。次の目的地はメジオラ高原だ。ここではガイが必須となる。

 

「俺が? 何でまた?」

 

「パッセージリングに行くまでに、昇降機があるんだが、動力が死んでいて動かないんだよ。そこで同じ場所にある機械人形から動力を奪って動力を補填する必要があるんだ。その作業をガイにやって貰いたいんだよ」

 

 俺が詳しい事情を説明すると、ガイは張り切った表情をして任せろ、と胸を叩いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 メジオラ高原のパッセージリング操作の前にやっておかなければならない事があったのを思い出した。……はいそうです忘れてました。すみません。俺は誰に謝っているんだろう?

 さて、やらなければならない事とは捕らえた六神将……の内シンクへの尋問だ。これを怠ってしまうとマズイ事になる。

 

「で? 何が聞きたいってのさ?」

 

 キムラスカの牢屋で、傷を回復したシンクはふてぶてしくそう言った。仮面が取られているので、素顔であるレプリカ・イオンとしての顔がむき出しになっている。

 

「お前には前置きなんていらないだろうから単刀直入に聞くぞ。シンク、お前と同じ導師イオンのレプリカはどこにいる?」

 

「……!!」

 

 おーおー驚いてるな。まあ自分達の機密情報を俺が知ってるとなればそりゃ驚くか。

 

「アンタ……」

 

「そう、俺は知ってるんだよ。俺達が導師と呼ぶイオンと、お前以外のレプリカ・イオンが存在する事をな。でもその正確な居場所は知らないんだ。でもなぁ、お前達ヴァン派の主要メンバーが捕らえられた事で、そいつの保護も充分じゃなくなってるんじゃないか?」

 

 俺が危惧するのは、そのレプリカ・イオンが食べる物もなく放っておかれている状態になってるのではないか? という事だ。俺達がヴァン派の主要メンバーを捕らえた事でそいつが餓死でもしたら寝覚めが悪いなんてもんじゃない。

 

「…………」

 

「と、言う訳で頼む。シンク。そいつの場所を教えてくれないか? こっちで保護するからさ」

 

 俺がそう言うと、シンクは顔を横に背けた。

 

「僕がそれを素直に喋ると思うかい?」

 

「思うね」

 

 俺は即答した。

 

「!?」

 

「お前はこの世界を呪ってる。俺はその事も知ってる。だけどそんなお前が唯一呪っていない相手がそいつだ。これといった役割を与えられず予備としてだけ存在する筈の彼。そんな彼はお前の唯一の同類だ。その同類が放っておかれて餓死でもしたらお前だって気分良くないだろ? だからお前は教えてくれる筈だ」

 

「…………」

 

 その後、だいぶ時間はかかったが、シンクはレプリカ・イオンの居場所を教えてくれた。俺は急いで彼を保護しに行った。予想通り誰も傍に居ない状態だったので、少しばかり衰弱気味だったが、何とか間に合った様だ。だが、困ったのは彼の処遇だ。

 

「処遇……ですか。珍しいですね。貴方が困るというのは」

 

「そうは言うが、ホントに困ってるんだよ」

 

「未来の知識を持つ、貴方が?」

 

 相変わらず嫌味な奴だな、こいつも。俺はジェイドに向き直ると相談するていで話しかけた。

 

「俺の持つ未来の知識じゃ、彼はダアトで保護される事になるんだよ」

 

「ダアトですか。まあ妥当な所ではないですか?」

 

 うん、俺もそう思うよ。原作通りならな。

 

「ただ、俺の知る知識では、俺達が導師として認識している方のイオンが“いなくなった後”にダアトに保護されるんだ」

 

「……それは……」

 

 そう、原作で彼が保護されるのはイオンが死んだ後なのだ。それであったとしても死んでしまったイオンと重ねて見る人がいたりして大変だっただろうに、この世界ではイオンは生きたままなのだ。彼をダアトで保護するという事は、同じ場所に全く同じ顔、姿形をした人物が居るという状態になってしまう。それはあまり良くないのではないかと俺は思うのだ。

 

「だから困ってるんだよ。彼をどうしたらいいか」

 

「…………」

 

 悩み、仲間達(特にイオン)とも話したが、一時バチカルのファブレ公爵家で預かる事となった。家にいる母親に相手をして貰おうという考えだ。

 

「ルーク、本当にいいのでしょうか」

 

 イオンが心配そうな顔をする。

 

「つってもなぁ。何度も話したけどお前と同じ場所におくのは望ましいと思えないからなぁ」

 

「ルーク、いっちゃうの?」

 

 まだ精神が成熟していないのだろう。赤ん坊の様に俺にすがる彼を優しく宥める。

 

「ああ、やらなくちゃいけない事があるからな。家の人の言う事を聞いて大人しくしてるんだぞ」

 

「うん」

 

 そこでナタリアが声を上げた。

 

「ところで、彼はなんとお呼びすればよいのかしら?」

 

 あ、そっか。名前。何か俺忘れてばかりだなぁ。疲れてるのかな?

 

「それならちょうどいい名前がある。フローリアン だ。」

 

「古代イスパニア語で無垢なる者……ですか」

 

「ああ。お前の名前はフローリアンだ」

 

「ふろーりあん……」

 

 自分の名前だという実感がないんだろう。ぽつりとつぶやいている。

 

「それじゃ、メジオラ高原に行こうか」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 メジオラ高原に着いた。いつものメンバーでだ。もう六神将を警戒する必要は無いのでヴァンを引き立てている人数が減っている。ダアト式封咒はすぐに見つかった。岩壁ばかりの場所で緑と黄色に彩られたダアト式封咒はよく目立つ。

 

「じゃあイオン、頼むな」

 

「はい」

 

 そしていつもの様に封印を解く。ふらついたイオンの体はアニスが支えた。……そういえばイオンは自分がレプリカである事を皆の前で告白したんだよな。アニスはどう思ってるのだろう?

 

「妙な気分です。……私が始めた研究が、こんな形で広がってしまうとは」

 

 その時ジェイドが不意にそう言った。……自分の考えとは違う形で広まったレプリカ技術に、思う所があるのだろう。

 

「……前も言ったと思うけど、俺はマジ感謝してる。ジェイドがフォミクリーを考えてくれなきゃ俺は生まれてねーからな」

 

 ふと気づくとお綺麗な貴族言葉ではなく素の言葉で話している自分に気づく。このメンバーで行動するのも長いからなぁ。俺ももう慣れちゃったのかな。

 

「…………」

 

 ジェイドが俺の言葉にどう思ったかは分からない。少しは救いになったのだろうか? そんな事を思いながら歩を進めた。

 

「はぁ~ん。こんな所にこんな音機関があるとはな!」

 

 ガイが発奮しとる。

 

「嬉しそうだなー。お前」

 

「キムラスカで暮らす様になってから、すっかり譜業に目覚めちまったからな」

 

 ガイは余程嬉しいのだろう。きょときょととあちこちを見回している。

 

「やっぱ、創世暦時代の音機関は出来がいいなぁ!」

 

 ……女性陣はそんなガイに呆れている。まあ女性には分からない世界だよな。

 

「いいんだよ。女には分からないロマンなんだからさ。さ、奥に行ってみようぜ!」

 

 そうして先に行ってしまったガイを追いかけて俺達は奥に進んだ。大きな半円状の扉を通ると原作で見た機械人形がいた。

 

「おおっ! すっげー! 機械人形だぜ!」

 

「喜んでいる所悪いけど、ガイ、それが動力を取る機械人形だからな」

 

 俺がそう言うと、ガイは何とも情けない顔をした。

 

「これの動力を取らなけりゃならないのか……」

 

 ええい! 情けない顔をするな! さっさと作業するのじゃ!

 ガイが機械人形から奥にある昇降機に動力を映してくれた。機械人形との戦闘は特に言うべき事もなく終わった。そりゃ水属性が弱点なんだからそーなる。ディストのロボットと同じ倒し方するだけだし。俺達は昇降機に乗って下へ移動する。パッセージリングはすぐそばにあった。さあいつもの様にヴァンを近づけたら俺の超振動の出番だ。

 

「終わったぜ」

 

 無事に降下準備の文言を刻み終えた。その時だ、ヴァンの姿を見ていたガイがおもむろに質問してきた。

 

第七音素(セブンスフォニム)はどうして障気に汚染されているんだ?」

 

「障気は地中で発生している様ですから、あるいは地核が汚染されているのかも知れません」

 

 ジェイドがガイの質問に答える。

 

「って事は星の中心が汚染されてるって事か。中和なんてしきれないんじゃないか?」

 

 俺は既に答えの分かっている質問をする。これはジェイドが閃く為に必要な会話なのだ。

 

「いえ、地核が発生源なら、活路が見いだせそうですよ」

 

「え? え? 障気を何とか出来るの?」

 

 アニスが嬉しそうに声を上げる。

 

「ええ。星の引力を利用できれば。ただそれは私の専門ではないので、確約は出来ませんが……」

 

「それでも可能性はあるんだな」

 

 どうやらジェイドは閃いてくれたらしい。

 

「ええ。それにベルケンドでは引力についても研究が盛んです。私の知識よりは頼りになると思いますよ」

 

「ならベルケンドに戻ろうぜ」

 

 俺の原作知識が確かなら、ベルケンドのスピノザがこの研究を進めてくれる筈だ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ベルケンドにやってきた。ジェイドは物理学に優れた研究者が必要だと言うので、俺はスピノザに協力して貰う事を提案した。

 

「スピノザさん? でも……彼は」

 

 ティアが言葉に詰まる。俺を作った犯罪者だと言いたいのだろう。だがこの研究には彼が必要なのだ。

 

「貴方にやって貰いたい事があります」

 

 ジェイドが切り出す。

 

「な、なんじゃ?」

 

 スピノザはどうやらこちらに怯えている様だ。それもそうか。自分の罪が人の形をして具現しているのだから。

 

「障気の中和、いえ、隔離の為の研究です。これには貴方が専門にしている物理学が必要になる」

 

 しばらくの間ジェイドの話を聞いていたスピノザは、どうやらやる気になってくれた様だ。

 

「やらせてくれ。わしに出来るのは研究しかない」

 

「俺はこの人を信じてもいいと思うんだ。スピノザ、あんたに任せるよ」

 

 この人は小心者だが、心底の悪人じゃない。信じてやれば力を発揮してくれる筈だ。

 

「この研究、粉骨砕身で協力する。信じてくれて本当にありがとう……」

 

 さて、これで外殻大地に降下させた後の障気についてはめどが立った。次は……俺はズボンに入れておいた帳面(ノート)を見た。……あ、あれも忘れてた。

 けど、これは……ああそうか。コーラル城を回避したから、ディストはチーグルのレプリカを作ってはいないのか。んじゃいーや。

 俺は思考を切り上げると、次に行くべき場所。ロニール雪山に思いを馳せた。

 

 




 消化試合その1。メジオラ高原。機械人形との戦闘はバッサリカットです。本編でも言ってるけどカイザーディストと全く同じ倒し方になるだけだし。ジェイドのセイントバブル無双ですよ。
 主人公が最後に考えた事は、原作ではワイヨン鏡窟にいるチーグルの事です。チーグルがいれば貴重な完全同位体ですから保護する必要がありました。この世界ではコーラル城でルークの体をディストが調べていないので、完全同位体のチーグルレプリカが作られていません。それで、んじゃいーや、となったのでした。
 イオンのレプリカバレなども含めて色々と事が起こっていますが、主人公以外の人物の心情描写はする気がない(出来ないとも言う)のでバッサリカットです。皆様で想像してみて下さい。

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