企業戦士アクシズZZ   作:放置アフロ

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 最近、思うんです。拙作の目次の上、あらすじのところが大分ごちゃごちゃしてきたなって。



『かなり前からだよ』

 そんな声は聞こえな~い。
 登場人物&組織で一話作ろうと思います。





9 ガルマ・ザビ(中編)

 シャアが不敵に口元を歪めた、その時。

 《ザク》の頭上から瓦礫の破片が落ち、機体との衝突でコクピットまで音を伝える。不審に見上げたシャア。

 モニターに映し出されていたのは、満月を背後に、巨大な両肩を左右に展開させた異形の人型であった。ビルの屋上から上半身を乗り出すようにして、シャア機を見下ろしている。

 その無表情な能面の中で、デュアルアイ・センサーが不気味に光る。

 即座に、そのMSから発せられる『何か』を感じたシャアは考える前に、機体を後方へジャンプさせた。

 咄嗟の機動で右肩に担いでいたバズーカが置いていかれる。それは地上に落下するよりも早く三つに分断された。

 急降下した《キュベレイ》が両手にビームサーベルを形成し、ホバリングしていた。無論、バズーカの砲弾はあえて外して切断していた。

 

「ふふふ、こんなところでお前に出会うとは、な」

 

 夜風に打たれ、満月を眺めていた浜子は酔いも少し醒めていた。そして、今彼女の胸に吹き荒れているもの、それは、

 

「甲斐性なしっ!逃がさん!」

 

 怒気を含ませ叫ぶ浜子は、フットペダルを踏み込んだ。

 

 ビルを遮蔽物にして、巧みに逃げるシャアの《ザク》。追う浜子の《キュベレイ》。

 背を見せて逃げるシャア機が左マニピュレータから投擲榴弾を後方へ投げる。50メートル後方の《キュベレイ》の少し手前上方の空間でそれは弾けた。

 

「クラッカーなど、効かぬっ!」

 

 対人・対車両の榴弾は、《キュベレイ》を覆うガンダリウム合金にとっては水風船に等しい。乾いた音を立てて弾片は跳ね返された。

 

「お前のことが好きだった!狂おしいほどに!」

 

 続いて高さ20メートルほどのコンクリート片をシャア機は盾にする。

 

「いや違う!心が狂うほどにだっ!」

 

 浜子が怒鳴りつつ、刃渡り10メートルの光刃が叩きつけられる。二刀流のビームサーベルを次々と受け、瞬く間にそれは細かい瓦礫へと変わった。後方へジグザグにジャンプし逃れるシャア機。

 

「なぜ、私を受け入れなかった!?

 そう言えば、良かったのか?はっきりと口にせねば、・・・させねば、分からぬほど・・・。

 朴念仁か、お前はっ!!」

 

 追い回しつつ、口は閉じない浜子。まだ少し酔っているのだろうか?

 

「バスローブで抱きついたのに・・・・・・。私の・・・・・・。

 私のおっぱ○まで触らせてやったのに~!!」

 

 やはり酔っているらしい。

 

「貧乳がダメだったとでも言うのか、シャア!!貧乳は高貴なる品位(ス テ ー タ ス)ぞ!物の分からぬ俗物めがっ」

 

 怒れる(イカれた)女の猛追を何とかかわしたシャア機は、ビルに回りこみ屋上に跳躍した。《キュベレイ》からは死角で見えないが、NT能力で浜子は感じ取った。

 

「上に潜んでやり過ごすなど、小賢しい!」

 

 浜子はシャア機と逆方向に回りこんで、フットペダルを床まで抜けよと踏む。

 総推力6万キロの偏向式バインダー・スラスターが、《キュベレイ》をロケットのように打ち上げる。

 高みから屋上のシャア機が背を見せ、眼下を警戒している様子が高感度モニターに映る。

 

「ナタリーにお前を奪われるぐらいなら、いっそここで。・・・・・・さらばっ!!」

 

 肩のバインダーが斜め後方上部に向け、蒼い炎を咲かせる。月明かりを受けた赤いシルエットがみるみると迫る。

 と。

 先ほど同様、シャア機が後ろ向きのまま、《キュベレイ》に向け何かを投げた。

 

「効かぬと言った!」

 

 激情のまま浜子は操縦桿のトリガーを引き、空中でそれを切り払う。

 100分の数秒の中で250万カンデラの閃光がほとばしった。

 

「っ!スタン・・・・・・」

 

 全てを言う前に、《キュベレイ》の正面モニターは画面を真っ白に染めた次の瞬間、ブラックアウトした。

 怒りに駆られた浜子は判断を誤る。NT能力をフルに展開させ、シャアの気配がする方向へ《キュベレイ》を突進させたのだった。

 だが、目が見えぬそれは易々とかわされ、地上に墜落する。浜子は胃から込み上げてきたものを吐いた。

 のろのろと機体を立て直そうとした《キュベレイ》を再度衝撃が襲う。

 うつ伏せの《キュベレイ》。その左バインダーの付け根をシャア機が踏みつけていた。

 全天周モニターの後方はまだ生きている。屈辱に顔を歪め浜子は振り返った。

 赤熱した格闘戦用斧状兵器ヒートホークを両手持ちに高々と振り上げたシャア機が映し出されていた。

 

「ファンネ・・・・・・っ!!」

 

 だが、浜子がサイコミュを通して命じるより早く、ヒートホークは振り下ろされた。

 浜子の頭はリニアシートのヘッドレストに叩きつけられ、超高温の刃部が装甲を融解させながら、《キュベレイ》の背中を裂いていく。リア・アーマー内ファンネルコンテナのリンクが断ち切られた。

 苦痛に涙を浮かべ浜子は後方をにらむ。

 シャアは敵機にトドメを刺すべく、ヒートホークをもう一度振りかぶった。

 突如、浜子は時間が引き延ばされたかのような奇妙な感覚に陥った。

 

(そうか・・・・・・。また、か)

 

 浜子は何かを悟ったような穏やかな表情へと変わる。操縦桿を握る手の力が抜ける。

 

(まだ・・・・・・綺麗な体のまま。シャア・・・・・・)

 

 目を閉じる。ヒートホークが振り下ろされた。

 

 

 

 その時、強く浜子の心を揺さぶるものが入り込んだ。

 

(守る!!)

 

 同時に、シャア機は左方向からタックルを仕掛けたMSと激突する。シャア機と新たなMS、互いのスパイクを生やしたショルダーアーマーがぶつかり、激しく火花を飛ばし、シャア機は吹き飛ばされた。

 

『社長っ!大丈夫ですか、怪我ないっすか!?早く逃げて』

 

 外部スピーカーで叫ぶ真島の声。

 

 言うや、闇に沈む濃緑の《ザクⅢ改》はシャア機を追撃する。

 

 久しく彼女はその温かさを感じていなかった。

 

真島(マシュマー)、お前の想い・・・・・・)

 

 痛みで流したものとは違う種類の涙。それが浜子の瞳からこぼれ落ちていた。

 

 

 

「このヤロー!社長のロボットをよくもメチャクチャしやがったなっ!」

「私にプレッシャーをかけるパイロットとは、・・・・・・一体何者なんだ?」

 

 ひたすら激昂する真島と冷静の中にも焦りを見せるシャアは好対照だった。

 敵に鹵獲された《ザク》なのか。それにしては異常な性能。『木馬』に搭載された別のMSか。

 だが、そういった疑問を思考の間に入れる余地はない。

 見慣れぬその《ザク》は、推力を量産型(F 型)の30%増しにしたシャアの指揮官用(S 型)に易々と追随した。

 ビルを盾にフェイントをかけ逆方向に跳躍しても、やり過ごしたかと高架ハイウェイの橋脚に機体を潜めても追ってきた。

 MSの性能は明らかに敵が上だが、操縦技術ならシャアが上。

 

「しかし、なんなのだ。奴の執念とも思えるしつこさは」

 

 コクピットに警告音が響く。燃料切れ寸前を示していた。S型は推力を増した一方、燃料タンクの拡張はなく、相対的に稼働時間が短くなっていた。

 

「ちぃ!『白い奴』と『モグラ』の戦闘で使いすぎたか」

 

 敵機がひたすら格闘戦を求め、射撃してこないことから火器を持っていないらしい。シャアにとってせめてもの救いだった。

 撃破できずとも一撃を加えた上、追撃を諦めさせる。

 

「今この場で機を捨てるなど」

 

 シャアは自分でも気付かぬうちに、敵機の性能とパイロットの腕を過小評価しているところがあった。

 そして、気付かぬうちに『赤い彗星』という二つ名のプライドを胸に抱いていたのである。

 

「よし、やる」

 

 シャア機は足元、1メートル四方のコンクリート片を左マニピュレータで拾い、隠蔽していたビルの谷間から出る。

 すぐにシャア機のセンサーが敵機《ザクⅢ改》の足音を捕らえる。戦い慣れていないのか、パイロットは戦闘区域を無秩序に歩き回っているようだった。

 

「まるで、素人だな。やはり木馬のパイロットか」

 

 瓦礫に機体を伏せさせながら、シャアは攻撃のタイミングを計る。《ザクⅢ改》はシャア機に気付かぬまま近づいていた。

 シャア機のメインスラスターの一噴射で接近できる距離に、《ザクⅢ改》が近づいたとき。左マニピュレータに握るコンクリ片を9時方向へ投げる。

 大きな物音に、《ザクⅢ改》が回頭しシャアへ左側面を見せる。

 

「もらった!」

 

 言いつつ、フットペダルを踏み込む。

 瓦礫を乗り越えたシャア機。右マニピュレータが手にしたヒートホークを大上段に構えたまま、背部スラスター・ノズルは限界まで展開し、蒼い炎を吐く。

 気付いた《ザクⅢ改》が機体の方向を戻す。

 

「遅いっ!」

 

 振り下ろしたヒートホークは敵機の装甲を焼き切りながら、コクピットを叩き潰す、

 はずだった。

 シャアの予測より一段速い突進で間合いを潰され、手刀形状にした《ザクⅢ改》の左マニピュレータがシャア機の右のそれを受け止めていた。

 

「まだだっ!」

 

 即座にシャア機は左マニピュレータで拳を作り、《ザクⅢ改》の赤く塗られた胸部へ一撃を狙う。

 だが、それも《ザクⅢ改》の右手にブロックされた。

 攻撃の一瞬のスキをついて、《ザクⅢ改》が機体を密着させた。接触回線が開く。

 

『覚悟ぉぉぉ!!』

 

 怒声が聞こえたときには、モニターの映像が縦回転していた。

 それは柔道でいうところの一本背負い投げだった。

 背部から落ちる《ザクⅡS》。コクピットのシャアもしたたかにシートへ叩きつけられた。四点式シートベルトが体に食い込む。

 

「化け物めっ!」

 

 うめきつつ、シャアは機体をすぐに引き起こし、索敵する。モノアイ・センサーがガイドレールを左右に走るが、敵の姿がない。

 

「上かっ!」

 

 頭上には、《ザクⅢ改》が怪鳥のようにマニピュレータを大きくひろげ、跳躍していた。

 その装甲の隙間から月光とは違う、グリーンの発光がにじみ出ていた。

 

「じょ、冗談ではない!」

 

 戦闘中、単なる驚きではない、狼狽をシャアは見せた。彼の気持ちそのままに《ザクⅡS》が後ずさる。

 彼はこれより13年後、再度この現象を見ることになる。

 だが、今この時はサイコミュもサイコフレームもなく、ただ真島 世路(マシュマー・セロ)の内よりわき出る気合が、生み出した謎の光であった。

 背部メインスラスターを全開にして、《ザクⅢ改》は突っ込む。左脚部は綺麗に「く」の字に折畳まれ、右脚部はまっすぐシャア機の頭部へ向け伸びていた。

 

「ライダァァァ、キィィィック!!」ほとばしる必殺の叫び。

 

 《ザクⅢ改》の足底は正確にシャア機の頭にめり込んだ。

 間、髪を入れず足底から吹き出すスラスター噴射。華麗に宙返りし着地。

 蹴りとスラスターでシャア機の頭部は分離し、どこかへ飛んでいった。機体は思い出したかのように仰向けに、どうっ、と倒れる。

 すぐにコクピットハッチが解放されシャアは脱出した。

 振り返った彼の仮面が一瞬、《ザクⅢ改》のモニターに映る。

 

(ウルトラセブンみたいな奴だな・・・・・・)とは真島の感想。

 

 シャア・アズナブルの姿はその真っ赤なコスチュームも含めて、特撮ヒーローに似ていなくもなかった。

 すぐに彼の姿は瓦礫の街と闇にまぎれる。

 

「終わった、……か」

 

 真島が膝立ちの《ザクⅢ改》を立ち上がらせた、その時。

 

お兄ちゃん(マスター)、どこ?)

 

 その意識が入り込むと同時に、背後で砲撃の音と光が沸き起こった。

 

麻里(マリーダ)っ!!」

 

 真島の鋭い勘は上空で激しい対空砲火を受ける《ガウ》に向けられた。そこに少女の気配を感じる。

 真島はフットペダルを底まで踏み込んだ。

 

 




(次回予告)
(※BGM「アニメじゃな~い?」、ナレーション:明日 修道(あした・しゅどう)

♪デ、デ、デ、デ~ン♪

「真島さんがシャアをやっつけたけど、ガウの坊ちゃん指揮官が楽をさせてくれない。
 麻里ちゃんまで、えぇ~!?なんでそこに?
 しかも、なに、その格好?
 空気読まないホワイトベースはメガ粒子砲、ドーン!
 次回アクシズZZ『ガルマ・ザビ(後編)』
 麻里ちゃん、それはまずいって・・・・・・」



(あとがき)

 スタングレネード一発で、チーン、はないでしょ。いくら何でも。スイマセン。重ね重ねですが、筆の力が無いんですよ!《キュベレイ》だって対抗装置を備えていると思うんですが、うまく書けねっす。
 自分で書いててなんですが、いくら気持ち悪いからって、浜子さん泣かすなよ、シャア。ちょっと後悔。まあ、アプローチがねちっこく、粘りまくっているのは認めますが。
 まぁ、これも(自分が書く)シャアの包容力の無さということで。

アムロ「三冠王は伊達じゃない!!」


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