戦闘描写メインで始めたのになぁ。
ネタがないから、もうタイムマシンに乗せるしかないと思った。
勢いでやった。後悔はしてい、・・・。
4 地球降下作戦(前編)
西暦1989年4月3日月曜日。
春である。新生活のスタートである。そして、恋の季節でもある。
『次はぁ~、鳥ノ宮ぁ。鳥ノ宮ぁの次は高田馬場ぁ~・・・』
朝から酔っ払っているのかと思う、独特の車内アナウンスを背に
(『たかだのばば』じゃなくて、『たかだのばばあ』って聞こえるよな)
くだらないことを考えつつ、定期券を改札口にかざす。空は真島の心情を映したように曇り、ぽつぽつと小雨も降っていた。
会社に向かいつつ、真島は後輩の後姿に声をかける。
「よっ、
「おはようございます、変態先輩」
「お前ねぇ、・・・先輩に向かって、事情もよく知らないお坊ちゃんがよくそんなこと言えるな!!」
言いつつ、暮巳にアイアンクローを喰らわせる。
「よぉ、お前ら。朝から元気だなぁ!」
新たなダミ声は
「元気じゃないっすよ」
1月に起きた『
社内では、『ロリコン』、『
おまけに、当事者の女子中学生、
「まぁ元気出せ。俺はお前のことを信じてるからなっ!」
「はぁ・・・」
ばんばん、と真島の背を叩きつつ威勢のいい後藤に、彼も曖昧な返事である。
実は、真島が憂鬱なのは他にも原因があった。
アクシズ建設の朝礼である。
隙を見て真島が隣の暮巳に囁く。
(うわぁ。・・・俺、最近社長が入ってくると、頭ん中でベーダー卿のテーマ曲が流れんだよなー。
♪ジャーン、ジャーン、ジャーン、ジャジャジャーン♪ってさ)
(先輩分かります、それ。僕もです)
社長の後ろに付き従う
そして、苦痛の時間が始まった。
「先日、我らが親会社である
困ったものだ。ヌケヌケとアウトソーシングだ、たかが下請けだとほざく。連中は仕事の頼み方を知らないようだ。
私は言いたい。恥を知れ、俗物!と。このアクシズ建設、見くびっては困る!!
だが、
長い、辛い。
時々、拳を突き上げ、振り上げながら浜子の演説は続く。
(どうしてこうなった?社長、早く昔の『はにゃこ』さんに戻ってくれよ・・・)
真島が心中で懇願している間にも、浜子は『時代は確実に動いている!』だの『我らはこんなところで朽ち果てるわけにはいかない!』だのと熱い、いや暑苦しい言葉を吐き続けている。
永遠に続くかとも思われたそれは、始業開始のチャイムが鳴り、雰囲気が(・・・やれやれ、)といったものに変わる。しかし、
「待て!!今日は皆に新しい同志を紹介しよう。入れっ」
初々しいリクルートスーツに身を包む二人の若い娘が浜子の眼前に並び、そして、・・・
真島は固まった。
自己紹介が始まる。
「宮崎短大住居デザイン専攻卒の
それと中里は『なかざと』じゃなくて『なかさと』です。濁りませんので、よろしくお願いします!」
そこはなにやらこだわりがあるらしい有紀であった。
しかし、そんなことは真島の耳には入らなかった。なぜならば、彼女の隣に例の栗毛の少女がいたからである。
「初めまして!来栖麻里です。まだ中学を卒業したばかりで、夜学に通いながらこちらで働かせて頂くことになりました。右も左も分かりませんが、頑張ります!」
今日は鳥の巣頭をきっちり整髪して来たらしい。麻里がにこっと微笑み、礼をする。
「中里さんは設計課で、来栖さんは営業課に配属されます」
辞令を伝える入谷の言葉に真島の片膝はがくりと崩れた。
「うおぉ!リアルに北の国からの純じゃねーか!なぁ、真島!
おい、・・・真島??」
興奮気味の後藤の呼びかけに、反応がない。
「そっ、そっ、そっ!」
いきなりどもり始めた真島に周りの人間は度肝を抜かれた。
「外回り、行ってきます!!」
逃げる真島。
「あ、お兄ちゃ、・・・じゃなくてマスタ、・・・ではなくて、・・・先輩っ!」
その後を常人とは思えぬ俊足で
「いいなぁ、先輩。出会って5秒で懐かれてるなぁ・・・」
非常にうらやましげな
その夜は新入社員歓迎会、ようは飲み会となった。麻里は夕方から定時制高校へ向かった。
元来、酒を浴びるように飲んで面白い事をするのは、厚生課所属の通称『肝臓強化人間』と呼ばれる
そして、『はっ!』と気が付けば、真島はまた居酒屋はざまのカウンターで突っ伏していた。
「
やはり、隣で冷酒を手酌するのは、
「社長ぉぉぉ、聞いてく
「分かってる、分かっている。今日のお前は飲み過ぎだ」
飲むほどに白くなる顔色の浜子は無限の慈愛を見せる。
「聞け、真島。
あの娘はプルシリーズの生き残りだ。そして、一度は苦界に落とされた身。哀れな娘だ。それをお前が救ってやった。あの子はお前を主人と仰ぎ服従するだろう。
だからお前も麻里を裏切るな。分かったな?」
「えと、・・・プルなんとか・・・よく
「ま、今は分からずともよい」
浜子は席を立った。
「ふふ、今日は私が付いて行ってやろう。お前一人では宇宙世紀で何をやらかすか分からんからな」
長身の真島の肩を持ち上げるようにして支え、店を後にする。
のれんをくぐると、二人の時空は跳躍した。
遠くから響く雷鳴のような砲撃音。戦争をやっている。
(それなのに、俺はなんなんだ。なにやっているんだよ・・・)
乾いた砂を蹴って歩くその少年兵フラスト・スコールはひどく不機嫌だった。
「なんで俺たち水、運んでばっかりなんだ。こんな雑用するために挺身隊に入ったんじゃねーぞ」
フラスト少年の文句を同意するかのように、両手で運ぶ木箱、その中に満載した水入りビンがガチャガチャとうるさく音を立てる。
「なぁ、お前もそう思うだろ、ギルボアぁ?」
振り返ると、アフリカ大陸に降り注ぐ強い日差しを受け、フラストの輝く金髪から汗が飛び散った。その先にギルボアと呼ばれた同世代の黒人少年が空を見上げたまま、呆然とたたずんでいた。
「おい、・・・」
再度、声をかけても反応がないことにただならぬことを感じたフラストはギルボア同様、雲ひとつない青空を見上げた。
そして、
「うわあああぁぁぁ・・・!!」
少年の絶叫は直後に沸き起こった轟音と衝撃にかき消された。落とした木箱内で水ビンが割れる音も聞こえない。立ち上る凄まじい砂埃。
少年二人の直近の街路に20メートル級、全備重量50トン超のMSが2機墜落、いや不時着した。
バランスを崩して片膝と、右マニピュレータを地面についた1機は、二人が見慣れたジオン公国軍主力MS《ザクⅡ》と同じ緑の塗装だ。
だが、そのフォルムはまるで違う。
汎用機動歩兵として様々な携行火器を扱う《ザク》は、人によく似た5本指を持っていたが、このMSはただの3本の鉤爪のみ。頭部からはニョキニョキと多数の角状アンテナ?が伸び、まるでハリネズミのようだ。大きく張り出した肩部は旧世紀のアメフト選手のそれ以上だ。異形の人型である。
だが、異形さならばもう1機も負けてはいない。
真っ直ぐ屹立した機体は白基調ながら、装甲各所に設けられたスリットと胸部装甲はピンクに塗られ、気品と同時に、兵器でありながら不思議と可愛らしさがうかがえる。
このMSは《ザク》同様5本指だが、それは女性の付け爪のように長く尖っていた。頭部はモグラとヤギを掛け合わせ、前後に長く引き伸ばした不気味な面相である。
そして、このMSは前述の1機よりもはるかに長く突き出す肩を持っていた。それは後年、スラスター・バインダーと呼ばれ、高機動を可能にする推力偏向装置であるのだが、そんなことを、10歳前後の
尻餅をついたフラストとギルボア。二人の少年が呆然としたまま、そのモグラもどきのMS、《キュベレイ》を見上げていると、その頭部でデュアルアイ・センサーが不気味に光り、人の目さながらに彼らを睨み付けた。
『・・・ウーイ、・・・
《キュベレイ》の外部スピーカーから突如響く、女性の声。呂律が怪しい。
『
質量を持ったかのようなそのプレッシャーに、金縛りにあっていたフラストとギルボアは、小便を漏らしながら来た道をダッシュで逃げ去った。
ギルボア少年が落っことした小さな軍帽が、ぽつりと黄土の街路に取り残された。
『おい、
(いや、あんたの方こそ大丈夫か!?)と秘書兼総務課長の
外部スピーカーで怒鳴る
応答のない《ハンマ・ハンマ》を見て、(
立ち上がったモニター別枠のウィンドウ、【SOUND ONLY】と注意書き付きのそこから、
『うげえええぇぇぇ!』
盛大に
「ふふふ、お前も憎しみを
ひとりで言って、ひとりで受ける浜子。それが抑圧から開放された浜子の本性なのか、アルコールが見せる一時の偽りに過ぎないのかは分からない。
2機のMSはアフリカ大陸の青天、高度5000メートルに突如出現した。すぐに重力に引っ張られた機体は10秒後には約500メートル落下、速度はすでに時速350キロに到達しなお加速した。
手足を振り回してパニック状態の真島を助け、《ハンマ・ハンマ》のマニピュレータを掴んだ《キュベレイ》が逆噴射をかけた時には高度600メートル、時速は1000キロを超えていた。
まさに墜落に近い不時着だった。地面への衝撃荷重で《キュベレイ》は下半身の関節各所をやられ、モニターに表示されたダメージ・コントロール・システムが、【歩行機能50%ダウン】と警告している。
《キュベレイ》よりも20トン以上重い《ハンマ・ハンマ》はより重傷である。見れば、膝立ちの曲げた関節部から電気的な青白いスパークが時折爆ぜている。
『はぁ、・・・すっきりした』
楽になった真島がようやく《ハンマ・ハンマ》の右マニピュレータで低い街路樹に鉤爪を食い込ませながら、機体を立て直す。一時的とはいえ、80トン近い巨体を支えた細い樹は中間の幹からぼっきりと折れた。
『社長、・・・また、ここは宇宙性器ですかぁ?』
「
落下しながら《ハンマ・ハンマ》を捕まえることに必死だったが、二人が着陸した郊外の街、そこから南に展開している軍を浜子はモニターに捕らえていた。
(2個中隊、・・・いや、それ以上か)
地上に置かれた卵形とも円錐形とも言える特徴的なシルエット。上空1000メートルからでも、垂直離着陸式の大量離昇機HLVが確認できた。相当な数から浜子は部隊規模を推測するが、
(あれほどの大部隊がまだアフリカにいることも驚きだが、あんな
浜子はモニター下方に写る街路に落ちた軍帽をズーミングさせる。そこには旧ジオン公国軍を示す紋章が入っていた。
浜子は思い違いをしていた。それは今この時は『
「
『ていうか社長!ちょっと何言ってるか分からない・・・』
真島を無視して、《キュベレイ》はマニピュレータをバインダーに格納すると、ホバリングしつつ前傾姿勢を取り、次の瞬間、高速飛行を開始した。
低空飛行を続ける《キュベレイ》のコクピットの内で、浜子はミノフスキー計を確認する。
(それにしても、・・・このミノフスキー戦闘濃度。まるで、大戦時並みではないか!?)
凄まじい砂塵を巻き上げながら《キュベレイ》と遅れて追随する《ハンマ・ハンマ》は、南に展開するMS大隊に接触しようとしていた。
浜子はここがアフリカ、第一次ネオ・ジオン戦争後のUC.0089、4月だと思っていた。確かに、アフリカではある。
だが、
UC.0079、4月4日。
ジオン公国は地球侵攻作戦の最終段階として、第四次降下作戦を開始する。主たる目的としては、三次までに占領した地域の安定化、損耗した戦力の増強であった。
しかし、ここアフリカにおいては状況が違う。
戦域が広すぎて膠着した戦況を打開すべく、地球攻撃軍第五機動師団第3MS大隊は連邦軍アフリカ方面前線司令部が置かれる旧スーダンの大都市オムドゥルマンへ敵前降下を敢行した。
ジオンは第一次降下作戦でのオデッサ攻略を成功させ、勢いのまま第一機動師団(ヨーロッパ方面軍)はカスピ海東岸を南下。連邦の中東方面軍を蹴散らし、スエズ運河を渡ってカイロに迫った。
スーダンには本来、連邦軍の3個歩兵師団が駐留していたが、カイロ防衛のため2個師団が抽出されていた。
オムドゥルマンの北約20キロに位置するワディサイーダ空軍基地。ここに残された連邦軍1個師団はナイル川西岸に沿って南下する敵MS大隊を食い止めようと孤軍奮闘。特に対MS特技兵はジオンの《ザク》に携行ミサイルを使用した接近戦を演じ、数機を撃破することに成功した。
しかし、力及ばず、連邦軍司令部は南のナイロビへと撤退した。
この時。
半ば勝利を確信した第3MS大隊野戦司令部に不審な情報が入る。
「後方にIFFに反応しない不明機出現!数は2。モビルスーツと推定!」
暗い移動司令部内。瞬くのは数多く設置されたモニターの光。MS運搬車両《サムソン》のトレーラー部を改造したそこで、通信兵が緊迫した声を上げる。
それに応えたのは、大隊の参謀だった。
「原隊からはぐれた《ザク》か?・・・にしては、挙動が怪しいが。
敵基地の制圧状況はどうか?」
「敵は散発的な応射のみです」
即座に通信兵が呼応する。
「ほぼ制圧完了と見てよいな。では、《ルッグン》偵察機を不明機に差し向けろ」
「現在第1航空偵察隊が前線で敵残存を監視中。第2隊は補給中です」
その報告は瞬間的に、余力で動かせる《ルッグン》が無い事を意味していた。
「む。では、機動偵察隊はどうか?」
参謀はパーソナル・ホバー・バイク、通称《ワッパ》で構成された部隊名を挙げる。
「いけます!内線警戒中の第1小隊と連絡可能です」
「では、急行させろ・・・」
「《ザク》2機も、だ」
参謀の命令を遮ったのは、ターバンを巻いた黒い肌の中年男だった。太い眉の下には猛禽のように鋭い眼。顔の真ん中に大きく鎮座する鼻は傲慢さを感じさせる。
大隊長のロンメル少佐だった。彼の口にした意外な言葉に参謀が呻く。
「《ザク》を、でありますか?」
「万一ということもありえる。連邦に鹵獲された《ザク》の可能性も捨て切れん。おかしなタイミングだが、もしも敵ならば背後を脅かされる」
ロンメルが言うことも、(もっともだ)と同意して頷く参謀。
「はっ!直ちに、《ワッパ》小隊と《ザク》2機を向かわせます」
「増援を送れるよう、他の部隊にも準備をさせておけ!それと、・・・念のため私の《ザク》も、な」
「了解!」
(次回予告)
(※BGM「アニメじゃな~い?」、ナレーション:
♪デ、デ、デ、デ~ン♪
「やっかいな事を抱え込んだら、決着をつけなくてはいけない。
しかし、二人とも飲みすぎだよ。
しかも、砂漠に逃げ場はないんだから!
ストレス溜めすぎなんだって!
次回アクシズZZ『地球降下作戦(後編)』
浜子さん、無茶するなよ」
(登場人物&組織紹介)
ザビ家 →
ユウキ・ナカサト →
ユウキさんはこの先使う予定あるのだろうか。モブで良かったような気がする。
ていうか、浜子さん呑まれ過ぎ!ちょっと何言ってるのか分かんないよ!!