連邦軍のMS『白い奴』を追跡していた《ガウ》と飛行編隊は突如、背後からの攻撃を受けた。
最後のときに、『木馬』討伐作戦の責任者にして、地球攻撃軍司令官ガルマ・ザビは悟った。
敵を追い詰めていると思いながら、実はのど元にナイフを突きつけられていたのは、自分であった、と。
「180度回頭だ」
被弾の衝撃で《ガウ》の艦橋に転がったガルマは、歯噛みしつつ立ち上がる。
「ガ、《ガウ》を木馬にぶつけてやる」
「やめてっ!」
妙に甲高い少女の声がガルマの背後から起こった。振り返ると、
「なにっ!なぜ、子供が乗っている?
それに、・・・・・・なんだその格好は!?」
敵の強襲揚陸艦からメガ粒子砲も含めた激しい攻撃。その絶体絶命の状況にもかかわらず、ガルマはその栗毛の少女の姿にあらゆる注意を奪われた。
それは緑と薄い黄色の服装だったが、内容に大変問題があった。
トップスはへそ出しの半袖シャツ、腰の辺りをかろうじて隠している超ミニスカ、そして、・・・・・・太ももへ伸びるガーターベルトとオーバーニーソックス。
しかも、サイズが合っていない。どれも15歳の
肌もあらわな二の腕やウェストは、きゅっ、と締まった反面、胸やヒップはピチピチの質感があふれている。そして、太ももの絶対領域に食い込むガーターベルトは危険な香りをかもし出していた。
(ありえない。こんな子供が。こんな・・・・・・、
いや、ありなのかも・・・・・・。むしろ、良いっ!)
拳を、ぐっ、と握り締めたガルマは新たな可能性の扉を開けつつあった。
ガルマの正面に回った
「何言ってるの、こんな時に!この飛行機にだって、たくさんの人が乗っているんでしょ?その人たちを巻き込んで、意地のために死なせてしまっていいの?」
(い、いや、そんなことより君の格好が、目に焼きついて・・・・・・)とはガルマ・ザビ。
その時。一条のメガ粒子の光軸が《ガウ》を貫通。激しい衝撃となってガルマにツッコミを入れる。彼はかろうじてジオン公国軍人とザビ家四男という誇りを取り戻した。
「・・・・・・私とてザビ家の男だ、無駄死にはしない。どくんだっ!」
「ふぁっ!?きゃぁぁっ!!」
ガルマは
しかし、少女のおっぱ○を押しては、『ザビ家の男』だとか『無駄死にはしない』などと言っても、まったく説得力がない。
手が届きそうな視線の先に迫る白亜の巨体。『木馬』の姿。
《ガウ》に特攻をかけながらガルマは高鳴る気持ちを抑えることができなかった。
「ジオン紳士に栄光あれぇぇぇ!」
あ、・・・・・・あれぇ?
叫び間違いに気付いたときは、すでに手遅れだった。
メガ粒子砲の光軸が艦橋のすぐ下を貫く。
去り行くガルマの脳裏に、金髪と緑の瞳を持つ女性の姿がよぎる。
(イセリナ、すまない・・・・・・いろんな意味で)
このような状況においても、ガルマの下半身は荒ぶっていた。
一際、大きな衝撃に機体高度は、ぐん、と下がる。
「お兄ちゃん!!」叫ぶ
(ああ、なんということだ・・・・・・。あの少女が私のことを身内同然に、・・・・・・。
もう、思い残すことは、なにもない・・・・・・)
続く、メリメリと何かを引き裂くような轟音の後、ガルマ・ザビの意識は昇天するかのように持ち上げられ、途切れた。
《ザクⅢ改》は大推力のおかげで、なんとか撃墜間際の《ガウ》に追いついた。
《ガウ》の上部へ強行着艦する。凄まじい衝撃荷重が一気に高度を押し下げた。
メインスラスター噴射。一挙動で艦橋に迫る。
急制動後、片膝を付きヒールクローと足底のマグネットを使い、機体を固定する。
艦橋の天井に当たる装甲を《ザクⅢ改》のマニピュレータが引き剥がした。
『お兄ちゃん!!』
外部マイクが眼下の
『早くこの人を!』彼女はガルマを指差す。
すぐに真島はガルマが腰掛けた操縦席ごとマニピュレータですくい上げた。シートの固定ボルトが引きちぎられる。
「お前もっ!」と真島。
皆まで言う前に麻里もマニピュレータへ、その手の平へ飛び乗った。
モニターでそれを確認しヒールクロー、マグネット解除。
《ザクⅢ改》を立ち上がらせると同時に、背部スラスター・ノズルが火を噴く。
全天周モニターの頭上には、ギリギリですれ違う白亜の巨体、強襲揚陸艦の底部が屋根のように覆い、後方へと流れていった。
振り返ると、下方では墜落した《ガウ》の轟音と爆発が起こっていた。四散した《ガウ》なのか、弾かれた瓦礫なのか、上空まで飛び上がり黒煙の尾を引いている。
「これで本当に終わった、……な」
真島が額を拭いながら、視線を正面に戻す。そして、飛翔する《ザクⅢ改》の手の平に乗せる
見返す
風が吹く。強く。栗毛がなびいた。
次の瞬間、少女がバランスを崩し転落した。
「麻里ぃぃぃ!!」
高度がない。みるみる地上が迫る。
少女の小さなシルエットが瓦礫に飲み込まれる。
その直前。
煙を吐きながら飛翔するMSが、
巧みにマニピュレータを操り、墜落の衝撃を減衰する。
浜子の《キュベレイ》だった。
役に立たなくなったファンネルコンテナを切り離し、半死半生の姿となって《キュベレイ》は飛んでいた。左バインダーの噴射具合も息継ぎするようで、見るからにおかしい。
《ザクⅢ改》へ近づけるや、回線用ワイヤーを飛ばす。
『真島ぁ!何をやってるか!!』
(うわっ、めっちゃ怒ってる)とは真島の心情。
慌てて、
「い、いや。ほんとに、……。焦った。麻里、助かって良かった。
社長、ありがとうございます」
『何がありがとうだ、大うつけがっ!私がいなければ、麻里は今頃、地面の染みになってただろうに!
まったくもって、使えない男だ。西暦でも宇宙世紀でも本当に・・・・・・』
九死に一生を得た麻里。まだ死の恐怖に体が震える。しかし、彼女は不思議に思った。
真島を切りつけるような浜子の口調。にもかかわらず、彼ら二人の間に流れる空気は柔らかく、温かく絡み合っていたから。ニュータイプの持つ洞察力で麻里は気が付いた。
麻里が寝そべる《キュベレイ》の
麻里は感じ取って、どきっ、とした。
南に向けて飛ぶ彼らの左側、地平線から太陽が姿を見せつつあった。
「お兄ちゃん・・・・・・」
膝を付き合わせ、ぺたん、と座る麻里は不安に目を潤ませて、《ザクⅢ改》を見上げる。
すると、風が彼女のミニスカをまくり上げ、ショーツを、そしてガーターベルトの上端もあらわにした。
朝日を受けた、なまめかしい姿態と悩ましい表情をモノアイ・センサーが見返す。
『ちょっ、バカっ!麻里、なんて服着てるんだ!?ロリコンに襲われたいのか!!』
真島の声は歳の離れた妹を叱咤する口調であった。
それは麻里を愕然とさせ、大事なところを覆い隠すことを忘れさせた。
時間を少し戻そう。
連邦軍『木馬』と《ガウ》飛行編隊が交戦した地点より、南へ10キロ。
『木馬』捜索命令を受けていた、ジオン公国軍特殊実験部隊『闇夜のフェンリル隊』の《ザク》1個小隊は、本隊の通信が途絶えた北へ急行していた。
ところが、一列縦隊の最後尾、ニッキ・ロベルト少尉の乗る《ザク》が急停止する。
「警戒!熱源反応!3時の狭い路地」
ニッキの急を告げる無線に、大通りを先行するル・ローア少尉、オースティン軍曹の《ザク》がきびすを返す。
大通りへ通じる路地の出入り口を扇状に取り囲む3機。
正面のニッキ機が高感度モニターにズーミングをかけ、奥に潜む熱源の正体をうかがう。
(なんだろ、これ)
サーマルセンサーもそれが瓦礫とは異なる熱を持っていることを示している。
『なんなんだ、ニッキ。報告しろ』
ル・ローアの一本調子な声がスピーカーから流れる。
「なんというか、・・・・・・不気味な、巨大な、オブジェみたいな・・・・・・」
単色のモニターに映ったシルエットはチューリップにも似ているが、ハチの尾部にも似ていた。もっとも、宇宙で生まれ育ったニッキには、植物や虫に例えるのが難しい。
『オブジェぇ!?バカひよこが!そんなもんほっとけ!本隊が一大事なんだよ!』とオースティン軍曹。
「しかし、何か連邦の新兵器かもしれません!」反論するニッキ。
『俺たちの急務は本隊と合流することだ。そいつの回収も詮索も仕事じゃない。行くぞ』
小隊長ル・ローアの決定にニッキは少し後ろ髪を引かれる思いだったが、その後、本隊の惨状を目にし、そんなことはどこかへ消えてしまった。
その後、浜子が廃棄した《キュベレイ》のファンネルコンテナは再建されたシアトル市に回収され、戦前の芸術性を示す前衛的オブジェとして、人々の憩いの広場に飾られることとなった。
西暦1989年10月5日木曜日。
東京郊外、アパート『ジンネハイツ』。
目覚めた真島は勢いよく布団をめくる。
隣には誰もいない。
(だよな。さすがに、あの鬼太郎みたいな髪の男が寝てたら、俺も引くわ。
・・・・・・
シャワーを浴びて、早々に出勤する。
真島はアクシズ建設社屋の前で、見知った先輩・後輩と顔を合わせた。
「うーっす」と先輩・
「おはようございます」と後輩・
真島も応えかけたところで、後藤がこちらを指差したまま、「あわ、あわ、あわ・・・・・・」と目を丸くしている。
「?」
不審に思い、真島が自分のスーツのあちこちに手をやるがそうではないらしい。
「おはよう、みんな!」
背後から明るい声がかけられ、真島は振り返り、・・・・・・。
後藤同様、固まった。
紺のショートスーツに身を包む浜子が微笑んでいた。その笑みはかつての癒し系、猫っぽい雰囲気の『はにゃこ』を思わせたが、少し恥じらいを含んだ顔は、より女らしさを際立たせた。
(うわっ、短けっ!)
視線を落とした真島はそのスカートの丈に驚愕する。そして、美脚を強調する黒タイツ。
(うわっ、エロい!)
後藤は鼻を手で押さえる。いわゆる柄タイでバラとリボン柄があしらわれた上、太ももの上部は透け透け仕様になっていた。
(しかも、かわいい・・・・・・)と真島。
スーツの下には黒白チェックのフリル付きブラウス。首元から胸の中央にかけて、『フリフリフリー♪』と言ってもよいほど飛び出している。
(社長、かわいいよ、社長・・・・・・)と後藤。
髪は幼女がするように二つ結びにされていた。垂らした髪の先が肩に届かないそれは、後年のツインテールの亜種ピッグテールである。
「もう少し髪が伸びてからの方が、いいのかと思うけど・・・・・・」
「いやいやいやいやー!めっちゃ似合いますよ!」と後藤。
「アクシズよ!はにゃこさんは帰ってきたーーー!」真島は猛っている。
「そ、そうか・・・・・・。ありがとう・・・・・・」
ばら色に頬を染める浜子に真島はまた、どきっ、とした。
浜子の後ろで
(ううう、・・・・・・社長の近くにいると、みんなよくはしゃぐ。でも・・・・・・
社長は
入谷は顔をそむけ、一人悔し涙を隠した。
興奮冷めやらぬ後藤と真島。
「いいなぁ、社長。いいなぁ・・・・・・。なぁ、
「僕は15歳以上の人はお断りです」と暮巳。
「死ねぇぇぇ、ロリコン!!」
真島の正拳突きが炸裂した。
彼らの様子を50メートル離れた電柱の影から見ている者がいた。
暗い表情の
(ハイミスなのに。無理して・・・・・・)
それを負け惜しみという。
最強のエルピー・プル仕様で臨んでも太刀打ちできなかった麻里に、現状を打開するすべは無い。
(※ハイミス:年のいった未婚の女性。バブル期によく使用された。死語)
事態はその日の午後に急展開する。
3時休憩のチャイムがアクシズ建設のオフィスに鳴った。
厚生課・
「さーて、緑茶割りでも飲みながら、世界情勢でも見るかい」
「割りじゃないよ、やよいちゃん!お酒ダメ、職場では!」と、同じ厚生課の
「わかってるって」と投げやりに応えつつ、チャンネル選択のつまみを『ガチャッ!ガチャガチャ!』といじくっていたやよい。
突如、画面を流れたワイドショーのテロップに驚愕する。
〈奇跡!生きていた佐備建設の
〈記憶喪失の十年間。
〈昭和を代表する建築界の帝王・
「さ、佐備 駆馬は生きていたって、・・・・・・何コレ!?なんなのこの『ケネディは生きていた!?』みたいなノリは!ニュースソースは東スポじゃないよね?」
やよいにツッコミを入れる余裕もなく、その場の社員全員が呆然としていた。
「入谷っ!」
立ち上がった浜子はすぐに入谷と佐備建設本社に向かう。
タクシー車中で。
(なるほど、死ぬはずの人間が生きていたり・・・、もしや、生きるはずの人間も死んでいるのか・・・?
神か、仏の仕業か、それとも運命のいたずらか。いずれにしろ、ご都合主義なことだ。
だが、・・・面白いな。ならば、)
浜子は『はにゃこ』の容姿のまま、口元に邪悪な笑みを浮かべる。
(ふふふ、俗物どもめ。その首、よく洗っておくことだ)
佐備建設本社は蜂の巣を突いたような騒ぎで、浜子の出向の話など吹き飛んでしまっていた。
(次回予告)
(※BGM「アニメじゃな~い?」、ナレーション:
♪デ、デ、デ、デ~ン♪
「ついにアクシズZZ休載のお知らせだ。
つまりね、飲みすぎたのよ。風邪引いたのよ。
アイデアやプロットはメチャメチャ。
高熱出したりで、なんか作者は阿賀間建設の社員じゃないのって錯覚してる。
でもね、お酒の亡者、
次回、アクシズZZ『ヤヨイ出撃(仮)』
酔っ払いの修羅場が見れる、・・・・・・のかなぁ~?」
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(登場人物紹介)
ガルマ・ザビ →
でも、Gガンダムは見たこと無いんです。今度見てみようかな。
そして、ガルマに対するアンチ・ヘイト全開!
キシリア「残念です。あのガルマがJKのガーターベルトの前に倒れたと」
ドズル「あ、兄貴、俺はまだ信じられん。あいつがあんなロリコン弩変態だったなんて」
来栖麻里、16歳。エルピー・プル地球降下時衣装。あひる座りで瞳うるうる。人によってはコロニーレーザー級の威力・・・・・・か?
しかし悩殺失敗。分かってないね。パンツ丸見えにされても、ちょっと、・・・・・・ね。見えそうで見えないチラリズムというものを勉強したほうが良い。しかし、麻里のフラグは全壊じゃありません。もう少し真島のフラグを乱立させて話をややこしくさせたい。
はにゃこは頑張った真島へのご褒美です。