「王よ、ただいま参上致した次第」
「張遼か、よく来てくれた。入るがよい」
「御意」
一体何を言っているのか、と張遼は扉の前で笑う。自分がどれほど高みに上り詰め、人々に傅かれているのか理解しているのか。
礼というものをろくに知らぬが、最大限の敬意をもって入室する。入室したのちに扉の前で膝を折って座り、左手の拳を右手で包んで礼をする。
部屋の主はそれを見て、寝台に腰かけたまま笑った。
張遼はそれ受けて部屋の主の顔を見る。随分と老け込み、毒気が抜けてしまったかのように思える。しかし内から発する強力な気配は未だに顕在。即ちそれ龍の呼吸である。
かつて自分が仕えた呂布に武は及ばぬ。ただし呂布のそれが暴のそれだったに対し、このお方のそれは理と天のそれだ。単純な強さではなく、確たる信念と天佑に裏付けされた武の気配。それは誰にも真似できぬ呼吸であり、故にこのお方は誰よりも強い。
既に死去した関羽に人徳は遥かに及ばぬ。社会の悪を闇から闇に葬ることを生業とし、それを為政と戦で振るってきた彼の者に比べれば、人心は離れやすく反しやすいだろう。しかしそれに対し、このお方は誰よりも法を重んじた。人心や人徳などという移ろいやすいものを軽々しく信用せず、その代わりに普遍の法によって諸侯をまとめ上げた。それもまた理と天佑に基づく独特の呼吸であった。
人は言う。魔王の如し熾烈であると。非情であると。
しかしそれは法を尊重するがゆえ。罪を罪として裁き、誰であろうと漏れなくその対象としただけのこと。より多くのものを救済し、今と未来に多くの者を生かそうとした結果、今助からぬ者を切り捨てただけのこと。その折々で最も合理、かつ最も結果に繋がる手段を選択しただけのこと。
それは武人として、武将として、そして政に携わる者として必要な気質を不足なく備えていたがゆえ。
だがそれゆえに人々はこのお方を恐れ、畏れ、そして高みに押し上げた。
ついにはこのお方は天子より王の位を授かる。その身分ゆえ、このお方の気質ゆえ、呼ばれれば何があっても応じなければならない。
なればこそ、夜もすでに深まった頃合いであっても参上したのだ。よく来てくれたという労いはそもそも的外れである。
「改めて見ると、なんだ。お前も年を食ったものだ」
「それを言うならば殿もでありましょう」
「おいおい、なんだその畏まった物言いは。まったく似合わん。変に恰好を繕わんでいいから、いつも通りの声を聞かせろ。俺はそれが聞きたいのだ」
「己の肩に乗っておる位の重みくらい、いい加減に自覚すればよかろうに。だが、殿がそう言うのであればそうしよう」
このお方は曹操――曹操孟徳である。天子から魏王の位を授けられ、漢の政をこの手に担うお方だ。しかしそれでいて武人。大乱世に相応しい王であり、指導者だ。しかし自らが天子になろうとはしなかった。
血を吸った剣を履き、血を纏った鎧を着た天子などおらぬ。曹操は政を行なうために地位を授かったにすぎず、天子たらんとする意志はない。
それを知るがこそ、多くの者が曹操に付き従った。天を知りて天を畏れず、しかし天を敬いそれを支える。
だからこそ曹操にとって地位や位など大した意味はないのだ。単に己が行使できる権限の尺度を明確にしているにすぎぬ。ゆえに王の位だろうがなんだろうが、何の重みには感じてはおらぬ。だからこそ曹操は曹操なのである。
「もうこれ以上は行かぬぞ」
「そうであろう。この上はもはや天子しかない。天子たる意志がないのであれば、これ以上はなかろう」
「然り。だがそういう意味ではない」
そういうと曹操は窓を開けて空を見た。今宵はよく晴れており、月も星もその輝きを誇らしげに晒している。
いつだったかこのお方は言っていた。斯様な夜は天が近い。天下を論ずるに相応しい夜であると。天が近いから己の天命が手に取るように分かり、それ故に天下が動く時なのであると。
そうだ。呂布がこの方に倒され、主君であった呂布の死に殉じようとしたとき。このお方が俺を用いると言い出したときもこんな夜であった筈だ。冷静の中に激情を隠し、激情の中に理念を孕ませたこのお方の武にもっと触れていたい。己の武だけでなく、他者のそれを巧みに操り上り詰める武。個ではなく群の武。あるいは軍の武。己には、呂布にはなかった武だ。
ならば張遼はそれを知らねばならぬ。武の頂点を目指すものとして、個の武だけでなく群の武を知らねばならぬ。そう思い、死の覚悟を反故にしてこのお方に仕えることにした。畏れ多くも言葉にするならば、このお方の天命に俺の天命が動かされた夜だった。なるほど、確かに天下が動くのはこのような日であるのだろう。
――であるならば、今宵はどのような天下が動くというのだろうか。
「張遼よ。俺が信を置く将や軍師、そして臣には既に話をした。今宵はお前の番である」
「おや、畏まっているのは一体どちらかな。殿ならば、何の前触れもなく重大な決定を投げてよこすものとばかり」
「俺もそうしようかと思ったが、どうもそういかんらしい。口うるさい軍師やらが後生ですからと泣きつきやがってな。己のことすら自由に決定できぬとは、身分や位というのも度を過ぎれば面倒ばかりが増えるものだ」
曹操は一度大きく息をし、両手の平で腿を打った。
今宵は何かが違う。曹操という人物が何か己の決定について下知を行なうとき、決してこのように神妙に行うものではなかった。まるで天を切り裂くように、目を見開くようなことを言ってのけるのが常である。
だから今宵は何かが違う。曹操に何か変化が起きている。――それも致し方ない事なのか、このような天下が動くに相応しい夜ならば。
「張遼」
「何だ」
「俺はもうすぐ死ぬぞ」
思った以上に衝撃はなかった。いずれ来る、遠くない未来にそれは起こると覚悟していたからだろうか。ただ一点のみ驚いたのは、まさか自分の死すらこうもあっけらかんと言い放ってしまうこの人にである。
しかしそれでこそこの人らしい。今わの際が近いからといって覇気を無くしてしまっては、それはもはや曹操ではないだろう。
「人はいずれ死ぬ。それも定めであろうな」
「なんだ、お前も死ぬのか?」
「当たり前だろう。不死などこの世にある筈もない」
「泣く子も黙る張遼がいずれ死ぬと言われても、どうにも信じられぬな。関羽のように祀ってやるべきか」
「俺は関羽のような徳はない。ただ武を追い求め、お前の剣となりて駆け抜けただけだ。ただの剣が折れたからと言ってそれを祀るような者はいまい」
「道理であるな。……だが残念である。お前はまだ生きるが、俺は本当に先がない」
とてもそうは見えないが、この人がそう言うのであれば事実なのだろう。老いで耄碌した爺様が言うならばまだ元気であろうがと笑い飛ばせるが、この人が言えばそれは即ち事実だ。
「老いたとはいえ、未だに健常に見えるがな」
「見た目の上ではそうかも知れん。だが内より気が漏れ出てしまい、もうそれを止める力もない。人から見れば俺から気が出ていることには変わりなかろうが、それが放たれているのか漏れているのかは大きな違いだ」
「なるほど、言われれば確かに相手を威圧するような気ではない。ついに自身から龍が抜け出てしまったか」
「然り。俺が天命を全うするより先に、俺の天運が尽きてしまったよ」
「それで、俺を呼んだのは介錯が必要だからか? お望みとあらば、痛を感じる暇もなくその首を落としてみせるが」
「それは魅力的な申し出だ。苦しみの中死ぬより、武人らしい死を頂戴するほうが曹操らしい。だが、そうではない」
そういうと曹操はどこか遠い目をする。彼方に居る敵のことを思い描いているのやら、それとも己が亡き後の世を思っているのやら。
張遼には何とも判断できなかったが、そもそも曹操が思っていることを推測できた事など数えるほどしかない。それが死に直面した者の思考とあっては猶更である。
「張遼、お前は俺よりも生きるだろう」
「さて、明日にでも討ち死にするやもしれぬ身。何とも言えんな」
「いや、お前は生きるよ。お前が誰かに敗れるものか。ゆえにお前は俺より生きる。よってお前に頼みがあるのだ」
「ほう、これは珍しいこともあったものだ」
「かもしれぬ。命令ではなく頼み事をしたのは久方ぶりな気もする。で、頼みの前に一つ問を出したい」
曹操はそこで言葉を区切った。言葉を選んでいるようでいて、単に焦らしているだけのようにも思える。
ややって再び口を開いたとき、それは考えもしなかった言葉であった。
「人は死したらどうなると思うね?」
「……よもや死後の世界が怖いのか?」
「まさか。そうならばもう少し徳を積んだ」
「だろうな。さて、その問いに答えるのは本当に難しい。何せそんな事は初めて考える。しかしあえて言うのならば、どこかこの世ならざる場所で転生を待つのではないか」
「その心は?」
「例えば人の心や魂が消えてなくなるのかと言えば、それは可笑しな話だ。もし消えてなくなるのであれば、俺の心はどこより生じたというのだ。しかし地獄や天上の世界があるかは知らぬ。何せそこに行って帰ってきたと言うものがおらん。地獄が凄惨な場所で、天上が極楽であるならば、一人くらいあの世の事を覚えていても良いものだ。ゆえに人は死すれば、揺蕩う湖のような場所で一時の眠りの後に全てを忘れ去り、忘れた後に魂が新たな生に引き継がれるのではないか」
曹操はその言葉を愛おしむように頷く。張遼の言葉を口の中で繰り返し、反芻し、吟味する。ひとしきりそれらが終わった後に顔に浮かんだのは笑顔であった。
「ならば確たる意志があれば、あの世のことを覚えたまま再び生を受けることも不可能ではないということか」
「あるいはそうだろう。誰もそれを成し得たものはおらぬが」
「ならば俺が最初にそれを成す。俺は死んだ後も曹操でいたいのだ。生まれ変わったとしても曹操でありたい。それが可能だというならば、もはや死後など憂うに値せず」
あの世でも政を行なうつもりか、と張遼は笑った。曹操はそれを否定せず、ただ薄く笑うだけであった。それが肯定を意味する反応であることは、長年にわたる付き合いの中で自ずと知れた。
張遼はその言葉に心打たれた。死してもなお曹操で居たい。言うは容易いが、果たして本心からこう言える人間がどれほどいるだろうか。
誰しも己の中に至らぬ点があることを知っている。願わくば、生まれ変わった後はより理想に近い人間になりたいと思う。しかしこのお方にはそれがない。自身の優れた点も至らぬ点も含めて、それら全てが己であると認め、それを愛している。
他の者が言えば自惚れであると一笑に付されるであろう言葉も、何故かこのお方が言うとそうは思えぬ。だからこその曹操であり、その曹操と共に歩めたからこそ張遼もまた張遼たらんとしているのだ。
「俺も、死してなお張遼でありたいものだ」
「そうであれ。それが俺の頼みごとだ」
「……俺が理解するにはまだ言葉が足りぬ」
「張遼。お前も決して先が長いとは言えぬ。故に! もしも死したら、あの世で会おう。曹操と張遼としてだ!
そして願わくば、転生した後も俺に従え。俺はまだやり残したことが山のようにある。故にお前は俺が亡き後の世をしっかりと記憶し、あの世で俺に伝えよ。そうしたらあの世で軍議を行ない、しかる後に期がきたらば転生するのだ。さすれば、また俺とお前でこの世の武を極めることができる。この荒れた世を治めることができるぞ!」
老人の戯言と言えばそうなのだろう。だがどうしてもそうは思えなかった。
どこまでも本気だ。本気でそれを成すつもりなのだ。
「どういう訳かな、これが出来ぬ筈がないと俺の中に微かに残った龍が囁くのだ。これを成したならば、再び我が内に戻ってくれようと龍が語りかけるのだ!」
「ならばこの張遼、死してもなお殿のために武を捨てるわけにはいかぬな。俺は殿にどこまでもついていき、この手で天を穿ち、天まで殿を護ってやらねば」
「それでこそ張遼だ。老いたからと言って剣を捨てるには早いぞ。我が覇道は死してもなお続く。お前の武もまだまだ続くのだ」
死後もなお武を追い求めることが叶うのであれば、それは張遼にとって最上の喜びだ。それが張遼の生きる道であり、生きる術である。行住坐臥の全てを武に費やし、今の場所にいる。
しかしそれでもなお、武という険しい山脈の頂には立てていまい。何合目なのかもわからぬ。既に八合目まで上ったのかも知れぬし、まだ中腹にすら立っていないのかもしれない。ただ一つ分かっているのは、これより上が未だ存在しており、ただしそれを上る時間は己には残されていまいという事のみだ。
それがどうか。死後もそれを上ること許されるのであれば。それは至上の喜びに違いない。
「殿。しからば死後も忠誠をここに誓おう。張遼は死後もなお二君を抱くことなく、殿ひとりに従う」
「ふむ。それは嬉しく思うが、それに拘る必要はない」
「どういう事かな?」
曹操はやや考える。回答を吟味しているようであり、張遼にも理解できるように噛み砕いているようでもある。
しかしあらかじめ回答そのものは定まっていたのだろう。思慮に費やす時間はさほど長くはなかった。
「張遼、お前は武の道を進んでこそ美しい。しかし俺はもう死ぬぞ。俺しか主として認めないと言うのであれば、我が子である曹丕にも従わんという事だろう。もっと言えば、俺より優れた主がいても仕えぬという事だ。それでは誰がお前を用いてやるというのだ? 戦場に出ねばお前の武は鈍ってしまうのではないか? それはいかん。故に、お前は主たる素質があると見たならば俺に構うことなく忠誠を誓うといい」
「心遣いを嬉しく思うが、俺が誰か主を抱いている時に殿が転生したらどうするのだ。俺は二人の主に仕えるほど器用ではないぞ」
「その者を俺が殺してお前を奪おう」
「……それでこそ殿である。ならば殿が好敵手と認めるような者を主に抱かねばなるまいな」
「楽しみにしておこう。お前が一層の精進を果たせる主君であることを切に願う」
きっと人によっては感涙のあまり言葉にならなかっただろう。このお方に死してもなお会いたいと言われることが、どんなに重みのある言葉か分かるならば胸が熱くなるだろう。
張遼もまた然り。張遼はそれらを飲み込み、強く頷いた。
「殿! 万の宝にも値する言葉を頂戴し、有難き幸せ! 故に! 曹操孟徳に問いを発したい!」
「おお、張遼が俺に問いを投げるとは珍しい。いや、初めてか? まあ良い。それで、この曹操に何を問いたいというのだ」
張遼は張遼として転生したい。殿の真似事であっても、そうありたいと思った心は本物だ。
しかし、それでもなお一つだけ己を改めてみたいと思うことがある。それを成すには、おそらくこのお方の許しが必要だ。ゆえに張遼は問うた。
「俺は剣によって生み出され、鐙の上で育ち、鬣の上で死ぬ! それに適うもの、俺を打ち倒すものを望んでやまぬ! 俺は武の道を歩むに憚らず!
――しかれども、いまだ武の全貌はこの目に写ることがない。その山が険しいことは分かっているが、どこが頂点なのか……いや、そもそも武とは一つの山なのかすらわからぬ。ゆえに曹操孟徳に問う。武とは一つの山なるや否や」
「いくつもの山が連なった山脈である。百人いれば百の武の道があり、それぞれに頂点がある。それらが重なって一つの山に見えるが、実際は幾重にも連なった山々なのだ」
「では武を極めるとは何か」
「己の山を登り切る事にはあらず。山脈を全て己のものとすることである」
期待した通りの言葉だったのだろうか。張遼は満足げに頷いた。
「ならば。この張遼、そろそろ隣の山に目を向けても良い頃合いかもしれませぬな」
「むしろ己の山に目が行き過ぎだ。それゆえ人よりも高みにいるが、人の山の形を全く知らぬであろうが」
「然り。ゆえにこの張遼、転生叶ったならば他の山を己のものとしよう。叶うならば、そうだな。殿のようにどこか常人離れした者がいい」
「それはいい。人外であっても面白いな。あの悪鬼羅刹のごとき恐れられている張遼が妖怪や物の怪の類に仕え、人々を震え上がらせる。これはこれで胸躍る」
「確かに面白い。だが俺は、誰かと共に歩む武を選びたい」
「ほう。それはいかなる心境か?」
「一人で歩む武とは、すなわちそれ暴と同じ。――ならば。きっと俺はまだ武にすら至っていない」
ただ一振りの剣は武に非ず。ただ一矢の矢は折れるのみ。
ゆえに剣を携えた軍こそが武。数多に束ねた矢を砕くこと難い。
だから初めて他人を見た。自分に付き従う兵卒はいとも簡単に死に逝き、自分が全力の進軍を敢行すれば誰もそれに付いてこれず。
しかしそれを改めたとしても、自分の悪名高く、それを払拭すること難い。
ならば。 それを来世で己のものとしよう。
張遼は張遼のまま、新たな武を会得する旅に出るのだ。
「その言葉で全て悟った。お前の武に必要ならば好きにすればいい。さあ、こっちに酒を用意してある。来世で会うまで暫しの別れになろう、餞別として受け取れ」
「頂戴しよう」
見れば確かに部屋の隅に酒が置いてあった。曹操の酌でそれを受け取り、唇を潤す前にその香りを確かめてみる。
この胸の高鳴りのせいだろうか。今まで飲んだどんな酒よりも芳醇な香りが鼻腔をくすぐった。口を付ければ、喉の奥まで甘さと香しさが突き抜ける。文句のつけようもなく極上の一献だった。
「殿。このような極上の酒を心行くまで楽しみたいとは思うが、この一杯までにしておこう。この続きは殿と再び見えたときに」
「そうするか。来世ではこれ以上の酒に出会えると良いな」
「ならば、俺が先に生まれ落ちたならば十分に味見と吟味をしておこう。その上で届けに参上するとするか」
「おう、張遼の酒を飲む日を楽しみにしているぞ」
張遼は入室した時と同じように抱拳礼で退室した。その背中を見送りながら、曹操は一人つぶやく。
それは己に語るようでいて、どこか誰かに言い聞かせているようでもあった。
「己の人生はこれ一個。ゆえにこの死を以て曹操の生は完結する。
しかし俺がやり残したこと、まだやるべきだった事は数知れず。然らば我が天命はまだ潰えてはおらぬ。そうだろう? ゆえに来世で生まれ落ち、曹操は曹操のまま、それでいてまっさらな己になって再び新たな一歩を踏み出すのだ」
そうだろう、天よ。俺の天命がまだ終わらぬのだから、多少は良きに計らってくれ。
誰に言うでもなくそう呟いた。
「しかし張遼め、まるで俺のほうが遅く生まれるような口ぶりだったな。……ああ、俺が先に生まれたら、また俺の死に目を見なくちゃいけないからか? 何人も切り殺してきたというのに、まったくおかしな奴だ」
しかし、それはそれで良い。何せあいつが酒を吟味して待っていてくれている。
水のように酒を飲む張遼の事だから、これも美味いあれも美味いとあらゆる酒を山のように用意してあるのだろうな。
そうしたらあいつは言うのだろう。俺に酒を届けに参上して、門を叩き壊す勢いで鳴らしながら、嬉しそうな顔をして。
――遼来々! この張遼が来たぞ!
皆様お久しぶりです。一年とちょっとの期間を経て、完結したNextに番外編を投下することと相成りました。
完結となった以上、それ以上続けるよりも断ち切るべきだと考えていたのですが、こういうのも悪くないかなと。
また番外編を思いついたら書くかも知れませんが、その時はまた見てやってくれればと思います。