ルドガーinD×D (改)   作:トマトルテ

9 / 66
九話:神父に会いました

 

どうも、今日も元気に自転車に並走しているルドガー・ウィル・クルスニクです。

まあ、要するに今日も『悪魔のお仕事見学』をしてるんだ。

後、気づいているだろうけどいつものごとく自転車に乗っているのはイッセーだ。

 

『悪魔なのに自転車とか恥ずかしいと思わないのか?』

とかイッセーに言うのはダメだからな?

 

どうしてかって?

いやさ……この前冗談でそれを言ったらガチ泣きして後が大変だったからな……。

まあ、慰めるために『今度、エロ本やるからさ』って言ったら

あっという間に復活したから大したことにはならなかったんだけどさ……。

もう少し、マシな立ち直り方とかなかったのか?

いや、言い出したのは俺なんだけどさ。

 

というか、その様子を見ていた塔城の視線が冷たすぎて俺のガラスのハートは

修復不可能なレベルの傷を負ってしまったからな。

ああ…思い出しただけでへこんでくる……。

 

それに俺はエロ本を持ってなんかいないぞ?

あの時はただイッセーの喜びそうなことを言ってやっただけなんだ!

大体、俺の家にはエロ本なんて一冊もない!

………買ったことが無いわけじゃないんだけどな。

 

ただ、隠されていることにロマンを感じる俺からすれば

イッセーが喜ぶような露骨な物は邪道だ。

なんていうのかな?日常の中で垣間見えるチラリズムこそが俺の中でのロマンなんだ。

隠されているからこそ広がっていく、無限のロマン。それがいいんだ!

因みにその最たるものは裸エプロンだと思ってる。

 

「あれ?何でドアが開いたまま何だ?」

 

おっと、心の中で熱くロマンについて語っていたら

いつの間にか目的地に着いていたみたいだな。

それにしてもイッセーの言う通りに何でドアが開いたままなんだろうな?

俺達が自転車で来るのを知っていたのか?

 

「取りあえず、召喚されたんだし。入ってみるか、すいません、お邪魔します」

「お邪魔します」

 

イッセーの言葉に従い家に入ってみると照明は灯っておらず、

一番奥の部屋だけが薄暗く光を放っていて不気味な雰囲気を醸し出していた。

それだけでも十分に行きたくないと思えるも何だが、奥の方から流れてくる臭いが

さらに俺の足を重くする。

 

「イッセー、血の臭いだ。気を付けろ」

「血!?……ああ、わかった」

 

十分に辺りを警戒しながらゆっくりと進んで行き、奥の部屋のすぐ手前まで来る。

そこで一度イッセーと顔を見合わせて頷き。一気に部屋の中に入る。

 

そこに広がっていた光景は一言で表すと―――凄惨

多分、成人男性と思われる人が上下逆さまに磔にされている。逆十字ってやつか。

なんで、『多分』ってつけたのか?

………死体が顔も分からない程に全身を切り刻まれているからだ。

しかも、切り刻まれた腹や、口からは内臓が飛び出してきている。

酷いな……明らかに普通の殺され方をしていない。

 

「うっ!?」

「イッセー、大丈夫か?」

「……悪いな、ルドガー」

 

その余りの凄惨さにイッセーが吐き気を催していたので背中を擦ってやる。

まあ、無理もないよな。今まで普通に暮らしてきた人がこんなものを見せられたら

普通は耐えられない。何とか吐き出さなかったイッセーはむしろ耐性のある方だ。

それにしても……一体誰がこんなことを―――

 

「おんやー?僕ちんの作品に感動の涙を流してくれちゃってるのかなあ?」

「誰だ!?」

 

声のした方を振り返ると、そこには一目でいかれているのが分かるような目をした

白髪の神父姿の男が立っていた。

 

「んんー?よくよく見ると片方は下種で下種な悪魔くんじゃありませんかー。

 もしかしてこのフリード・ヒルゼン様に殺されに来てくれちゃったんですかあ?

 いやー、僕ちん感激イイイイイイッ!」

 

ニタニタと笑いながらこちらを見るフリード。

ふざけてるのか?イカれてるとは思ったけど、正直ここまでのイカれ具合は予想外だ。

 

「……どうしてこの人を殺したのか聞いてもいいか?」

「だってー、悪魔を呼び出す常習犯みたいだったしぃ、殺すしかないっしょ。

 悪魔くんと交友を持ってるなんて恥さらしなんてデスった方が世界のためっしょ!

 ちみも悪魔と一緒に居るっていう以上は―――殺しちゃいます!!」

「イッセー!来るぞ!!」

「わ、わかった!」

 

何か刀身の無い剣の柄らしきモノと拳銃を取り出し、突撃してくるフリード。

正直言って、どういう武器なのかは分からないけど、危ないことは確かなので

すぐに『武器創造(ウェポンシフト)』で双剣を創り出して、構える。

イッセーも籠手を出して戦闘態勢に入るが正直言って危なっかしい。

何とかフォローしながら戦わないとな……。

 

「死ねえええええっ!!」

「そう言われて、『誰がはい』って応えるんだ?」

 

剣の柄から光の刀身が現れ、俺に振り下ろされるのを右手の剣で受け止める。

そしてそのまま間髪を置かずに左手の剣を振り下ろす。

 

「んんー!結構やりますねえ!!」

「くっ!」

 

しかし、俺の剣はフリードのバックステップにより躱されてしまう。

それにしても、以外と動きが良いなこいつ。

もう少し、弱いと助かったんだけどな。

 

「ただ、そっちの悪魔くんはどうなんですかねえ?」

「つっ!?」

「イッセー!?」

 

突如、足から血が吹き出し倒れ込むイッセーに駆け寄る。

一体何が起きたんだ?

 

「ひゃっはっはっは!!どうすか?悪魔くん。弱点の光がたーっぷり籠った光の弾丸はさあ!?」

 

光の弾丸?という事はあの片手に持っている銃の攻撃ってことになるよな?

でも、銃声は聞こえてこなかったよな……ということは―――

 

「その銃、もしかして音がしないような仕組みになっているのか?」

「あんれえ?バレちった?そうなのよ、この銃は音が聞こえない特別性なのよ。

 だからみーんな避けれなくてサヨナラってわけ!勿論ちみもね!!」

「それはどうかな?」

 

フリードが放ってくる弾丸の群れを全て双剣で弾いて俺達から逸らす。

この程度なら造作もないな。

 

「はあ!なんですか、そのふざけた技はさあ!?」

「別に見てから動いても十分間に合うからな。

 それにこの程度ならちょっと鍛えれば誰でも出来るんじゃないのか?」

 

実際、俺はエルを守る為にぶっつけ本番でやってみて出来たしな。

どこにでもいる駅のコックでもこれぐらいは普通習得しているよな?

え?俺が特別?………今は怪我をしたイッセーの方が先だよな。

 

「イッセー、立てるか?」

「痛ってえけど……お前ばかりに頼るわけにもいかないだろ」

「なら大丈夫だな」

 

歯を食いしばって立つイッセーに若干の安堵を感じつつフリードを睨みつける。

こうなったら、大技で一気に決めにいくか?

いや、それだと怪我したイッセーのフォローが難しいか。

それなら―――

 

「きゃあああああっ!?」

 

突如響き渡る甲高い悲鳴にその場にいる全員が振り返るとそこには

金髪が綺麗なシスターが立っていた。

 

「可愛い、悲鳴ありがとうございます、アーシアたん。そっか、そっかあ、アーシアたんはこの手の死体は初めてだったですねえ?ちょーど良かったです。じーっくりご覧になっちゃってください!!悪魔さんに魅入られるような糞人間さんはこんな風になるんですよお!!」

「そ…そんな……え?」

 

フリードの言葉に明らかに戸惑った様子の表情を浮かべていたアーシアだが

その目がふとこちらに向けられると、その目は驚愕で見開かれた。

 

「い、イッセーさん?…どうしてここに」

「あ、アーシアなのか?」

 

驚愕の表情を浮かべたままお互いを見合う両者……知り合いなのか?

そう言えばこの前道に迷っていたシスターを教会に案内したとか言ってたな。

もしかしてあの子がそうなのか?

 

「あれあれ?もしかしてシスターと悪魔の禁断の恋ですか?でも残念!シスターと悪魔の恋なんてダメ、ゼッタイってやつですよ!それに俺たちは神の加護から見放されたはぐれなんで?堕天使様の加護がなかったら生きていけないんですぜ?」

 

はぐれ?フリードはまさにはぐれって感じだけどあの子がはぐれっていうのは

何だか納得いかないな。……だって物凄い癒しオーラを放ってるんだもん。

見ただけで癒し系だと分かるあの子が悪い子な訳がない!

 

「まあそこの辺はどうでもいいんでえ……とにかく俺様、そこの悪魔くんと人間くんを殺さないと気が済まないんすよねえ!今すぐ、首チョンパしてやるぜえ!!」

 

狂ったように叫びながらフリードが銃と剣を構える。

それにつられて俺達も構え、戦闘が再開されると思った、その瞬間―――

先程まで呆然としていたアーシアが俺達とフリードの間に入り

俺達を庇うように腕を広げ、フリードをじっと見つめた。

 

「……おいおい、マジかよ。アーシアたん、キミ、自分が今何をしてるのか分かっているのでしょうかあ?ああん?」

「……はい、フリード神父。……この方達を―――イッセーさん達を見逃してもらえないでしょうか?」

「アーシア…お前…!」

 

やばい、アーシアいや、アーシアさんマジで聖人。

何と言うか俺がイッセーのおまけのような感じで扱われているような気がするけど

そこはスルーしておこう。

それよりも俺は今アーシアさんの聖人っぷりに感動するのに忙しい。

 

「はあああっ!?こんの糞シスター!頭湧いてるんですかあ!?悪魔はゴミ屑で、全部殺すべき存在って教会で習っただろうが!!」

「悪魔でも………悪魔にだって良い人はいます!」

「いるわけねえだろ!!!アーシアたん早く、目を覚まそうぜ!!?そこの糞悪魔くん達を殺してよおおっ!!!」

「嫌です!!イッセーさんは良い人です!!こんな私を助けてくれました!だから私は悪魔だって良い人がいるって思うんです!!」

 

フリードのいかなる言葉にも決して曲がることなく断言し続けるアーシアさん。

もう、彼女は天使か何かじゃないのか?

正直言って今すぐにでも拝んでしまいたくなるような聖人っぷりに

心の中の涙が止まらない。

 

そのせいだろうか、フリードの振り上げた剣がアーシアさんに

振り下ろされるのに気づくのが遅れたのは。

 

 

 

「アーシアああああああああっ!!」

 

 

 

足が痛むのも忘れたかのようにイッセーがフリードに突っ込んでいき

籠手を着けた左腕でフリードを殴り飛ばしてアーシアさんを救った。

危なかったな……イッセーがいなかったら間違いなくアーシアさんは死んでたな。

 

「イッセーさん…!」

「大丈夫か?アーシア」

「は、はい!私は大丈夫です」

 

助けられたのはいいことなんだけどな……何と言うかその…なあ?

二人の周りからピンク色のオーラみたいなのが出てきて

見ている俺が何だかいたたまれない気分になってるんだよな。

 

それとアーシアさんの登場後から俺の存在が

若干空気になりつつあるのは気のせいだと思いたい。

 

「痛ったった……あー、ふざけやがって!この借りは今すぐ10倍にして返してやりますよ!!」

 

何だ、復活が早いな。生命力はあの夏場に台所に現れる黒いやつ並だな。

それになんとなくしつこそうなところも似ている気がする。

そんな、考え事をしてたら、部屋の一点に赤い、グレモリー家の紋章が現れた。

もしかして援軍か?

 

「やあ、二人共…助けに来たよ」

「木場か、助かるよ」

「僕達の相手は……あそこにいる神父だね」

 

スッと目を細めて剣を握る木場。

その仕草が余りにもイケメンだったのが何だか無性に腹が立つ。

イケメンはいかなるときでもイケメンだって言うのかよ!

 

「二人共、ゴメンなさいね。まさか、この依頼主のもとに『はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)』の者が訪れるなんて予想外だったわ」

 

そう言ってフリードを睨みつける部長。

イッセーが怪我してるからか、かなり怒ってるな部長。

 

「少々、おいたが過ぎましたね。はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)さん」

「……吹っ飛ばします」

 

手に出した雷をバチバチと鳴らしゾッとするような笑みを浮かべる姫島先輩に

グローブを装着してシャドーボクシングを始める塔城。

うん、みんなやる気満々だな。

 

「ありゃ?これって僕ちんの状況やばくない?まあ、こういう時は逃げるのが一番!

 それではみなさんバイチャ!」

「くっ!?閃光弾か!?」

 

懐から取り出した閃光弾を投げつけて俺達の目を眩ます。

ようやく目が慣れて開けれるようになったときには既にフリードの姿はなかった。

………逃げ足が速い所も黒いあいつに似てるな。

 

「逃げられたみたいね……イッセー怪我は大丈夫?」

「え?あ、はい。何とか」

「イッセーさん、少し動かないで下さい」

「アーシア?」

 

アーシアさんがイッセーの足に手を当てると暖かな光がそこから溢れてきて

あっという間に傷を治してしまった。……凄いな。

 

「これで大丈夫です。イッセーさん」

「ありがとうな、アーシア」

「悪魔でも癒せるなんて……かなり珍しい神器(セイクリッドギア)ね」

 

部長が何やら興味深そうに呟く。

まあ、俺にはどうして珍しいとかは分からないんだけどな。

俺に分かることは、アーシアさんが癒し系ということだけだ!

 

「イッセー、その子がこの前言っていたシスターなのね?」

「はい、アーシアって言って凄えいい子なんすよ。さっきも俺を庇ってくれたし」

「あうう…そ、そんなことないです」

「そう………」

 

イッセーの言葉に何やら複雑そうな表情を浮かべる部長。

そう言えば、悪魔にとったら教会は敵だったな。

そのことで悩んでいるのか?

 

「―――ッ!部長、この近くに堕天使のような気配が近づいて来ていますわ」

 

何かに気づいた姫島先輩が部長にそう言うと、

部長は手を開いてその場に魔法陣を出現させた。

 

「イッセー、話しはあとで聞くから今は帰るわよ?」

「じゃあ、アーシアも――「駄目よ」――どうしてっすか!?」

「この魔法陣は眷族しか転移されない。だからその子は無理なの。そもそも彼女は堕天使に関与している者。……私達、悪魔とは相容れない存在よ」

「そ、そんな……」

 

部長の言葉に打ちのめされて俯くイッセー……。

確かに部長の言う通りではあるよな……簡単な問題じゃない。

でも……納得出来ないよな…!

 

「…イッセーさん」

 

ふと気づくとアーシアさんがイッセーの背中を押していた。

 

「アーシア…?」

「私は大丈夫です……だから行ってください」

「何言ってるんだよ!?アーシア!!俺は―――」

「イッセーさん、大丈夫です…またきっと……会えます!!」

 

……アーシアさんは涙を流しながらもイッセーに笑いかけていた。

イッセーはその笑顔を苦しそうに見つめながら魔法陣の中に入る。

 

「……また、会えるよな?アーシア」

「はい……また、です。イッセーさん!」

 

そうして、俺は俺たちは光に包まれ、

そしてそのまま駒王学園の部室へと転送される…………

 

 

 

 

 

………て、あれ?

 

 

何で景色が変わらずに俺だけ取り残されてるんだ?

アーシアさんも何だか訳が分からずに俺を見つめてるし……。

 

まてよ……そう言えばさっき『この魔法陣は眷族しか転移されない』とか言ってたような気がする

………あれ?俺って眷属じゃないよな?

つまりだ―――俺、置いてけぼりにされたんだよな!?

 

まずいな……ギガントまずいぞ、俺。

何がまずいって空気が気まず過ぎる。

いっそこのまま残って戦った方がカッコが付く気がするな……

よし、そうと決まればすぐに戦闘準備―――

 

 

「あの……私の事を心配してくださるのは嬉しいですけど、私は大丈夫ですから、あなたも行ってください」

 

 

痛い!アーシアさんの優しさが物凄く痛い!!

やめてくれ!そんなに純粋な目で俺を見ないでくれ!

俺は意図せずして置いてけぼりにされただけなんだ!!

だから『きっと私の事を心配してくれたんですね』的な視線を送らないでくれ!?

 

「さあ、早く」

「う…うおおおおっ!!」

 

その言葉に背中を押され、俺は窓から飛び出し夜の闇の中へと駆け出して行った……。

恥ずかしさの余りに雄叫びを上げながらな!!

 

 

 

 

「………あの方は私を救えずに苦しんでくれたんですね。あんなに苦しそうな声を上げて……優しい人ですね、もし、また会えたらその時はお友達になりたいです」

 

 

 




置いてけぼりにされルドガー。
そしてアーシアに勘違いもされルドガー。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。