ルドガーinD×D (改)   作:トマトルテ

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七話:多分、闘技場だと思う

「わからない、黒歌に着いて来てだけなのにどうして俺は良く分からない奴と戦っているんだ?」

「私も知らないにゃ……」

 

どうもルドガーです。俺は今、以前黒歌に着いてきてほしいと

言われた場所で絶賛戦闘中だ。いや、本当に意味が分からない。

正直、行きの道すら分からない状態で連れてこられたのに着いてものの数分でこれとか

やってられない。もう少しゆとりというものが欲しかった。

 

そもそも連れられてきて直ぐに中国風(?) まあ俺には良く分からないんだけど

とにかくそう言った服を着た青年、確か美候に

『お前強いんだろ。じゃあ、俺っちと戦おうぜ』

と言われる時点で何か色々と可笑しいと思う。

しかも、何とか美候に勝ったと思ったら今度は眼鏡をかけてスーツを着た紳士っぽい

青年、アーサーにも戦いを申し込まれるし、正直言って意味が分からない。

 

もしかしてここはあれなのか?闘技場なのか?戦って戦って戦いましょうなのか?

そうなんだな。というかそうだろ?そうでなくても俺はそう思うことにするぞ。

だってこれ以上は考える余裕がないからな。というか考えたくもない。

 

もう、開き直って俺も思う存分戦うことにするからな!

 

「どこからでもかかってこい!」

 

少し吹っ切れた俺はそう雄叫びを上げてアーサーに突っ込んでいくのだった。

 

 

 

 

 

勝った……勝ったぞ、相手も本気じゃなかったとはいえ勝てたぞ。

それにしても―――五時間の耐久戦はきつかったな。

いやー、最初に倒した美候がまだ戦えるとばかりに襲いかかってきた時は焦ったな。

そこからはアーサーも交えての三つ巴の争いになったからな。

結局最後は三人ともが武器を捨てての殴り合いでの決着だったからな。

 

まあ、流石に全員が相手を殺す気が無かったから武器を捨てただけで、

実戦だったらどうなっていたかは分からないからな。

アーサーは剣士だから殴り合いなんてあまりしないだろうしな。

だからと言って手を抜ける相手じゃなかったけどな。

 

しかし、あの戦いは熱かったな。

アーサーの渾身の左ストレートは未だに俺の右頬に深いダメージを残しているし

それに美候のアッパーも中々にきつかったからな。

だが、ジュードの『殺劇舞荒拳』ビズリーの『絶拳』を受けて来た俺は

その程度では倒れなかった。……ギガント痛かったけどな…っ!

 

とにかく最後は何となくやってみたら出来た『絶拳』で二人纏めて吹き飛ばしてやった。

いやー、あれは爽快だったな!

あのナス野郎、もといビズリーの気持ちが良く分かった。

出来ればあいつ自身にもお見舞いしてやりたいぐらいだがそれは出来ないので

心の中にしまっておくことにするか。

 

まあ、最初はいきなりの事に戸惑ってたけど、戦い終わった後は男同士の熱い握手を

交わせたので俺は満足だ、うん。拳での語り合いっていうのも中々いいものだな。

何故か黒歌は俺達のそんな様子に頭を抱えて唸っていたが風邪でも引いたのだろうか?

後で栄養の付く物でも作ってやるか。

 

因みに俺達が戦っている間、黒歌は呆れた様に観戦したり

どこからか持ってきたお菓子を食べたり昼寝をしていたりしていた。

まあ……五時間は流石に戦いすぎたよな。

でもアーサーも美候も中々倒れてくれないんだよな……あいつら頑丈すぎだよな。

まあ、それに俺は勝ったんだけどな。

 

その後、俺と何故か戦っていないのに疲れている黒歌は家に帰った。

結局のところあそこは何だったんだろうな。

まあ、俺の中では既に闘技場として認識されているけどな!

間違ってても気にしない、それよりも今日の献立の方がよっぽど大事なんですー。

 

 

 

 

 

 

 

「普通五時間も戦ったらつかれるんじゃないのかにゃ?」

 

テキパキと料理の準備をする俺に向かって呆れた様に言ってくる黒歌。

因みに食事には美候とアーサーも呼んである。拳を交わしたらもう友達だからな!

それとアーサーは妹も呼んでくるらしい。どういった感じの子なのか少し気になる。

………いや、だから俺はロリコンじゃなくてエルコンだからな。

 

「まあ、以前はもっと忙しい時もあったからな」

「例えば?」

「朝起きて朝ごはんを作って、(借金返済のためにモンスターと)戦って、戦って、昼ご飯を作ってまた戦って、戦って、晩ごはんを作って戦って、戦って、寝るって感じの一日を送ってたこともあるぞ」

「………ルドガーってもしかして戦闘狂かにゃ」

 

いいえ、ただの元高額負債者です。

流石にエルを連れて行くわけにはいかなかったからレイアとかに預けてその間に

ひたすら金稼ぎをしてたなあ………

まあ、どうしても早く金が必要な時だけしかやってないけどな。

 

流石に毎日は俺でもきつい。そういう時は大体一人でやってたしな。

ごはんも何故か俺が基本的に作ってたからな、ジュードの料理も美味いんだけど

ジュードは忙しかったからな。他のみんなも仕事があったしな。

まあ、絶賛無職状態の俺が作るのが一番合理的だったよな……言ってて悲しくなるな。

 

「え、どうしたのにゃ!? まるで『居候ってニートのことでしょ?』って言われたような顔を急にして!」

「ごめん、黒歌。それ以上言われたら俺は間違いなく泣く」

 

子供の純粋な言葉って偶に心に深い傷跡を残すことがあるよな?

いやさ、今までずっと見ないようにしてきた事実をエルに突き付けられた時は

そのままふて寝をするところだったからな。

で、でも、就活期間中だったからギリギリ、ニートじゃないよな?

 

「………何に同意して欲しいかは分からないけど同意してあげるから捨てられた子猫のような目で私を見るのはやめるにゃ」

「うぅ……黒歌が居てくれて俺、本当によかったよ」

「何だか……こんなことで言われるのがもったいないような言葉だけど取りあえず、どういたしまして」

 

ああ…理解者が居てくれるっていうのは本当にいいことだな。

これだけで俺は頑張れる。

さあ、俺、渾身の一品を作るぞ!

 

「因みに今日は何を作る気にゃ?」

「『トマト入りカレー』と『トマトスープ』それとデザートに『トマト・ア・ラ・モード』だ」

「………トマトを使わないって選択肢はないのかにゃ?」

「ないな」

「即答かにゃ……分かってたけど」

 

むしろ今の俺からトマトを取ったら何が残るんだ?エルコンと猫好きしか残らないだろ。

え、十分すぎる?………いや、体はトマトで出来てるからさ。

補充しないといざという時に力が出ないだろ。

 

「そう言えば、ルドガーの一番得意な料理は何なのにゃ?」

「一番得意な料理か?」

 

そう言われて少し考える。スープはエルの大好物だったし、

俺にとっても思い入れのある料理だ。

でも一番得意な料理じゃないよな。俺の一番得意な料理か……ああ、あれだな。

そう思うと何の考えもなしに口から出てしまう。

 

「『トマトソースパスタ』だ」

 

俺が初めて作った料理だよな。それで―――

 

「ふーん、でも私食べたことないにゃ。今度作ってほしいにゃ」

「ああ、今度作る―――」

 

 

 

――『トマトソースパスタ、食べ損ねたな』――

 

 

 

「っ!」

「ルドガー!?」

 

あの日の言葉が頭をよぎり、思わず持っていた包丁を取り落してしまう。

そうだったな………俺にはまず最初に『トマトソースパスタ』を食べさせないと

いけない人がいたんだったな……。

震える手で包丁を拾い上げようとして再び取り落してしまう……

その手の震えを無理やり抑えるためにもう一方の手で痛いほどに握りしめる。

 

そうか………俺は今まで無意識のうちに『トマトソースパスタ』を作らないように

していたんだな……そうだよな、まず最初に兄さんに作ってあげないといけないもんな。

俺以上にトマト大好き人間なんだから他の人よりも先に食べさせてやらないとな。

 

「ルドガー……大丈夫かにゃ?」

「ああ……ちょっと疲れてただけさ」

 

心配そうに俺を見つめる黒歌に無理に笑顔を作って笑って見せる。

震えはまだ止まらない。目をつぶって深呼吸をする。

すると不意に自分の手に柔らかな感触を感じて目を見開く。

 

「どう、少しは震えが収まったかにゃ?」

 

すると目の前には俺の手を握ってくれている黒歌が立っていた。

浮かべている笑顔もいつもの悪戯じみた笑顔ではなくまるで怯えている子供を

あやす母親のような笑顔だ。

 

「ああ……大分収まったよ。ありがとうな、黒歌」

「辛いなら、休むかにゃ。お姉さんが添い寝してあげようか?」

「いや、大丈夫さ。それよりも料理を作らないとな」

 

今度はしっかりと包丁を握り正真正銘の笑顔を浮かべて笑いかける。

それに少しは安心してくれたのか下がってくれる黒歌。

さてと、少し時間が経ったし今から急いで作らないとな。

ああ、後、言わないといけないことがあったな。

 

「『トマトソースパスタ』はさ……先に食べさせないといけない人がいるんだ。だからさ、その人に食べさせたら黒歌にも作るよ」

「……………分かったにゃ」

 

しばらくの沈黙の後に同意してくれる黒歌。

……多分気づいているんだろうな。

そんな日が来ることなんてないって……

 

 

だってその人は―――もうどこにもいないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

美候やアーサー、アーサーの妹ルフェイちゃんを加えての食事を終えての感想は一つだ。

 

 

ルフェイちゃんマジ天使!

 

 

いや、アーサーの妹だから戦闘狂かもしれないと思ってたけど凄く礼儀正しい子だったし

食事の準備を手伝ってくれたり後片付けもしてくれたりでいい子だった。

しかも珍しく俺を疑ったりとか、いじったりとか、

戦いを挑んできたりとかしない子だったから凄く癒された。

 

ただ、調子に乗ってルフェイちゃんの頭をなでなでしたらアーサーが俺を

射殺すような目で見て来たのは誤算だったな。なんか黒歌もジト目で見てたし。

美候はその様子を見て笑ってたけどな。

 

それにしてもアーサーは意外とシスコンだったんだな……

ルフェイちゃんに近づく奴は殺してやるみたいなオーラを放っていたからな。

帰り際にまた戦おうと言っていたけど、あの冷たい声からして今度は俺を

本気で殺しに来るつもりなんだろうな……俺はただエルみたいに接しただけなのにな。

 

そう言えば今日は本当に珍しいことに黒歌が後片付けを手伝ってくれたな。

いつもは手伝わないのに……ルフェイちゃんが手伝っているのを見て触発されたのか?

何はともあれ後片付けが早くすんで助かったけどさ。

おかげで今日は早く寝られる。明日はオカルト研究部にでも顔を出してみるか。

 

 

 

 

 

 

 

はあ……今日は結局ルドガーを『禍の団(カオス・ブリゲード)』に入れることは出来なかったにゃ

いきなりあのサルが喧嘩を売ってきたせいでルドガーは多分

何の組織に来たのかも分かってないだろうから、直ぐに入れるのは無理そうにゃ。

まあ、美候とかアーサーとは仲良くなったみたいだけどさ……男って分からないにゃ。

殴り合いした後に熱い握手とか女の私には分からないにゃー。

 

それはともかくとしてルフェイにデレデレするなんてルドガーのバーカ!

 

折角お姉さんが優しく励ましてあげたのに、あんな小さな子に会っただけで

元気、出ましたみたいな顔して………ルドガーのロリコン!

『俺はロリコンじゃない。エルコンだ!』どこからかそんな声が

聞こえたような気がするけど無視にゃ。というかエルコンって何?

 

何だか後片付けまでルフェイと一緒にやってたから、偶には私もと思って手伝ったにゃ

……べ、別にルドガーがとられたような気がして嫉妬したわけじゃないんだからね!

これは……そう、あくまでいつもの恩返しにゃ。それ以上でもそれ以下でもない。

ただの黒猫の気まぐれが起こしたものにゃ。

 

それにしても………ルドガーは誰を失ったのか……。

その人の為に自分が縛られていることを分かっているのにそこから抜け出そうとしない。

むしろ縛られ続けることを望んでいる……それがただ繋がりを保ちたいからなのか

自分への罰としてなのかは私には分からない。

 

ただ一つ分かるのはルドガーが大切な人を失ったという事にゃ。

………しかも割り切れないようなことで。

にゃあ……手のかかる子にゃ。

誰かが傍で支えてあげないと立てないような傷を負っているのに、

それを誰にも見せないように一人で無理して立っているんだから。

 

本当に手のかかる子にゃ……仕方がないからお姉さんが支えてあげるにゃ。

まあ、私も色々と隠し事とかがあるし、犯罪者だからあんまり深くは関われないんだけど

ルドガーが泣きたいときぐらいは特別にお姉さんの胸を貸してあげてもいいのよ?

……べ、別にこれは本当にお姉さんとして何だか放っておけないだけで、

好きとかそういうのじゃないんだからね!

 

 




選択は二つに一つ、どちらを選ぶかで未来は変わる。
でもそれはもう少し先の話。





少しツンデレな黒歌が書いてみたかったから書いてみました、後悔はないです。はい。

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