ルドガーinD×D (改)   作:トマトルテ

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六十三話:最恐の骸殻能力者

 ――最強――

 

 最強とは、他と比較や勝負をして最も強い状態にあることである。

 一番強い事。誰にも負けない状態。

 

 

――――――・・・・

 

 

 

 いつビズリーが来てもいいように集まっておいたルドガー達はここ最近どこかに消えてしまったオーフィスについて話し合っていた。

 

「なあ、イッセー。オーフィスはどこにいるんだ?」

「それが出かけるって言ってそれっきりなんだよな……イリナとアーシアも凄く心配してるから早く帰ってくるといいんだけどな」

「そうか……色々あるよな―――っ! イッセー、みんなを!」

「ああ! ついに……始まるのか」

 

 ルドガーはいち早くその存在に気づき呼び寄せておいたヴァーリ達とグレモリー眷属を呼ぶ様に叫び、来たりし者の元へと小さく文句を言いながら出て行く。

 

「何も、こんな時間に来なくともな……」

 

 子どもは家に帰り、親も仕事から帰る。

 そんな家族団らんの穏やかな時間が流れる夕暮れ時。

 だが、そんな穏やかな時間はある一人の男によって破られる。

 ルドガーは赤いコートを着た男を見つめる。そこには親子の絆など存在しない。

 

「来たのか……ビズリー」

「時間は限られている。それに、そちらも準備は出来ているのではないのか」

 

 ついに駒王町に足を踏み入れたビズリーに対してルドガーが立ち塞がる。

 ビズリーはルドガーの後ろに並ぶ黒歌達とヴァーリ達にジロリと目を向ける。

 ルドガーはそれに対して当然だとばかりに左目で睨み返す。

 

「貴様らは関係のない世界の為に命を捨てる気か?」

「世界のためじゃねえ、仲間のためだ!」

「ふん。そうして大計を見誤るか」

 

 イッセーのセリフに皮肉のように言い返すビズリー。

 ビズリーという男は命を数と見ることが出来る冷酷な人間だ。

 だが、その数が命であることを誰よりも知っている。その上で小を切り捨て、大を取る選択を行う。

 常にゴールだけを見据え最善の選択を下す。

 その力を大企業の社長としても、クルスニク一族としても存分に振るってきた。

 二度目の生であろうとそれは変わらない。

 

「さて、人払いをするとしよう」

 

 ビズリーが軽く指を鳴らすと特殊な術式が発生し、辺りの景色が様変わりしていく。

 町は消え何もない荒野へと姿を変えていく。改めて言おう。

 この荒野は彼が創り出した(・・・・・)物だ。

 

「結界? いえ、私達が別の空間に転移された?」

「これは結界だ。正し、辺りを覆うだけの物ではない。別空間に対象を閉じ込めるものだ。中から抜け出すことは出来ん」

 

 突如として景色が変わったことに少し驚きながらリアスが尋ねる。

 ビズリーはそれを結界だと言う。これはビズリーが北欧に訪れた際に手に入れたルーン魔術の一種である。

 中からの脱出は結界の創り手である彼の意思以外では不可能だ。

 簡単には習得出来る物ではないのだがあっさりと使いこなしてしまうあたりに彼の非凡さがうかがえるだろう。

 

「……あなたは拳一つで戦う人だと思っていたけど」

「数ある選択肢の中から最善の手を引き出しているまでだ。使えんわけではない」

 

 若干引きつった顔で呟くヴァーリに対して淡々と答えるビズリー。

 拳で戦うからと言って何も拳以外が使えないわけではない。

 その気になればいかなる武器であろうと十全に扱える。彼がルドガーの父親であるという事を考えれば何もおかしいことは無いだろう。

 だが、彼は己の拳一つで戦う。何故か?

 それは実に簡単な理由だ。彼の拳はどんな武器よりも―――強いからだ。

 

 刹那、一瞬で間合いを詰めその拳を振りかざすビズリー。

 ルドガーも素早く双剣を創り出して拳を防ぐ。轟音と震動が響き渡り彼の手を震わせる。

 そして、耳に届く刃が軋みひび割れる音。

 彼は嘘だろと叫びたくなりたくなりながらも続いて襲い掛かって来たもう片方の拳を防ぐためにアルヴィンの大剣を創り出す。

 

「ぐう…っ!」

「武器が神器(セイクリッドギア)で命拾いをしたな、ルドガー」

 

 流石に大剣は壊せないのか受け止められた拳を引き、隙を突く様に斬りかかって来たイリナと滅びの魔力を撃ちだしていたリアスの攻撃を避け元の位置まで下がるビズリー。

 ルドガーはそれに対して短く息を吐き気合を入れ直す。

 まさか、ただの拳で武器を砕いてくるとは思わなかった。

 今度からは真正面から受け止めるのは避けようと考えるがそれがどこまで役に立つかは分からない。

 なぜなら―――

 

 

「慣らしは終わりだ。ここからは本気でいかせてもらう」

 

 

 ―――彼の本気は今ここからなのだから。

 

「ぬぉぉおおおっ!」

 

 黄金の時計を構え、雄叫びを上げながらその姿を変えていくビズリー。

 辺りには業火が撒き散らされ、時折黒い雷の様な物が宙を舞う。

 力の波動は嵐へと変わり荒野を吹き荒らす。

 ルドガー達はその凄まじい力に押され、まともに立っていることすら難しい。

 そして、この世の災厄を全て詰め合わせたような現象も終わりを告げ、ビズリーが姿を現す。

 

 黒を基調とした装甲が全身を覆い、彼の心に燃え上がる憤怒の炎のように赤い模様が身体に現れる。

 だが、特筆すべき点はそこではない。

 その背中から生えるものだ。

 

 常夜の闇を思わせる漆黒のドラゴンの翼。それが六対十二枚。

 オリジンの無の力と融合したようにどす黒い靄を発しながらそこにあった。

 

「なんて……禍々しい力だ…っ!」

「何だか……肌が痛いですぅ」

「これが世界の頂点に立つ力だとでも言うのですかっ!」

 

 ―――最強。

 

 そうとしか言い表せないような姿にゼノヴィアが額から冷たい汗を流し、ギャスパーは突き刺さるような威圧感に身を震わせる。

 アーサーも普段の冷静さを忘れ、声を荒げる。

 それほどまでにビズリーの姿は異常だった。常人であれば巨大すぎる力に飲み込まれてしまうだろう。

 だが、彼の強すぎるまでに強い意志と肉体は軽々とその力を扱う。

 

「どうした? ゴングは既になっているぞ」

「来るぞ、みんな!」

 

 ルドガーが叫び声を上げ注意を促す。今回の戦いでルドガーは骸殻を使うことが出来ない。

 時歪の因子化(タイムファクターか)の進んだ今、骸殻を使用すればどうなるかは既にヴィクトルが証明している。

 故に使わずに正史世界の最強の骸殻能力者(ヴィクトル)、いや―――最恐の骸殻能力者(ビズリー)に勝たなければならないのだ。

 その事実に軽い絶望感を感じながらルドガーはビズリーを見る。

 

 ―――黒い閃光。

 

 ルドガーはビズリーの突撃に対してそう思う事しか出来なかった。

 反射で何とか防ぐことは出来たが今度は大剣ごと吹き飛ばされてしまう。

 

「ルドガー!」

「よそ見している暇があるのか?」

「くそっ!」

 

 吹き飛ばされたルドガーの方に向かおうとしたイッセーだったがビズリーに立ち塞がられてしまう。

 悪態をつきながら禁手状態の拳で顔面に殴りかかる。

 同時にゼノヴィアが背後からデュランダルと借り受けたアスカロンで胴体に斬りかかる。並大抵の相手であれば必殺の技だ。

 だが―――

 

 

「それがパンチか? いい機会だ。パンチの仕方を教えてやろう」

 

 

 ビズリーはそれを受けてもびくともしない。

 あり得ない、と驚愕の表情を浮かべる二人を無視して彼はまず、軽く(・・)イッセーの腹部に拳を叩き込む。

 ミシリと鎧が歪む音と共にイッセーはボールのように吹き飛んで行く。

 

「イッセー!」

「次はお前の番だ」

「あうっ!?」

 

 イッセーが為す術なく吹き飛ばされたことに怒りの叫びを上げるゼノヴィアだったが素早く打ち出された裏拳で同じように吹き飛ばされてしまう。

 ビズリーはそのまま間髪を入れずに拳から炎の塊を飛ばし、遠距離から攻撃をしていた朱乃とルフェイに攻撃をしかけてくる。

 その攻撃は間に入ってきた美候により打ち消されたがビズリーの猛攻はまだ止まらない。

 

「せいっ!」

 

 気合いの声と共にビズリーが地面を殴るとそこから先が真っ二つに割れ地面が抉り取られる。

 そして、割れ目は真っ直ぐに突き進みながら黒歌と小猫の元に向かっていく。

 完全に常軌を逸した攻撃にも黒歌は冷静に避け、背中の魔方陣から青白いエネルギーの弾幕を撃ちだす。

 小猫も姉にならうように同じように、白色の炎の弾幕を撃ちだす。まるで辺りに青と白のカーテンが引かれたかのような光景にもビズリーは怯むことなく拳を構え―――

 

「怒号犀!」

 

 拳の一撃で弾幕の半数以上を軽々と打ち消した。

 ビズリーはそのまま攻撃を仕掛けてきた黒歌と小猫の元に行こうとするが弾幕のすぐ後ろに着いてきていた者達に気づき軽く舌打ちをする。

 その者達とはアーサーと祐斗である。

 彼等は弾幕を目眩ましに距離を詰めていたのである。

 二人同時に多彩な剣技で攻めたてる。

 さしものビズリーもこれには前に進み出ることが出来ずにガードに徹する。

 だが、二人の猛攻も長くは続かない。すぐに剣技を見切り二人の剣をわしづかみにする。

 そして、人間をやめた握力で祐斗の剣を跡形もなく砕く。

 流石にコールブランドを砕くことは出来なかったが逆にそれを利用して剣ごとアーサーを地面に叩きつける。

 

「くっ!?」

「お兄様!」

「全てを無に返してやろう―――烈醒拳!」

 

 すぐに体勢を立て直し逃げようとするアーサーだったがビズリーの光を放つ拳の方が一瞬速くアーサーに到着する―――

 

「ソード・バース!」

 

 その一瞬を祐斗が大量の魔剣をビズリーの拳の前に創り出すことで引き延ばした。

 ビズリーの拳はまるで紙でも貫いているかのように魔剣を砕いていくがアーサーが逃げる時間を作るには十分だった。

 拳は魔剣を貫き、何もない地面にぶつかるがそこを中心にして巨大なクレーターが生み出される。

 

「助かりました」

「こっちはチーム戦だから当然だよ。それよりも……」

「ええ、テクニックを嘲笑うかのような圧倒的なパワーと防御力……正直に言って勝てるヴィジョンが浮かびません」

 

 素直な感想がそれだった。今まで数多くの強者と戦ってきた二人だったがビズリーは別格だ。

 己の肉体一つで戦う彼だがその実、彼の肉体はそれ一つで“戦争”に勝てるだろう。

 どんな強者であっても個では多には勝てない。

 そんな当たり前にして絶対の真実を彼は平然と破ってしまった。

 そう感じてしまうほどに彼は個として完成されていた。

 

「勝てるヴィジョンが見えないのなら―――作ればいいじゃない」

「来るか、白龍皇」

 

 白銀の輝きが辺りを照らしだす。ヴァーリとビズリーが相対する。

 そして、僅かの時間もおかずにぶつかり合う。

 

 ―――荒野に煌めく白銀。

 

 ―――全てを飲み込む漆黒。

 

 白と黒の戦いはまるで演武のように行われる。

 白は目にも留まらぬ高速の連打を繰り出し、黒は全てを一撃で葬り去る重い拳を繰り出す。

 呼吸をすることすら忘れるようなせめぎ合いだったが、ヴァーリの拳がビズリーに触れた瞬間に転機が訪れる。

 白龍皇の力である半減が働く。そう確信したヴァーリは一気に攻めに転じる。

 頭部を刈り取るように空で回転して強烈なかかと落としを決める。

 しかし―――

 

「残念だったな、白龍皇」

「うそ……半減が効いていない!?」

 

 ビズリーは僅かにのけぞるものの、その攻撃にあっさりと耐えてみせた。

 ヴァーリはそこで気づいた。半減が無効化された理由を。

 半減の力は神格クラスではうまく機能しない。だが、人間はどこまでいっても人間なのだ。

 神を殺す神滅具(ロンギヌス)の持ち主であっても所詮器は人間で半減の対象にはなるのだ。

 だというのに、ビズリーにはうまく機能しないどころか一切機能しなかった。

 だがそれは彼の扱う力をよくよく考えれば簡単だった。

 

「“無限”と“無”をどうやって半減するつもりだ?」

「あぁぁあああっ!?」

 

 白銀の鎧を軽々と砕き腹部に突き刺さる拳の痛みに絶叫しながらヴァーリは地面を転がっていく。

 慌ててアーシアが駆け寄り治療を施したことですぐに立ち上がることに成功はしたが彼女の心にはあの拳が焼き付いていた。

 ただの一撃で命を刈り取る死神の鎌の様な拳。

 こちらの攻撃は通らないにも関わらずにあちらの攻撃は殆どが即死級という理不尽。

 ハッキリ言ってこれがゲームならクソゲーと言って投げ捨てていただろう。

 だが、ここは現実。逃げ出すことも、放り出すことも出来ない。

 それにこの絶望的な状況においても―――諦めない者はいる。

 

「これでも喰らえぇぇえええっ!」

「ぬっ、赤龍帝か!」

 

 先程吹き飛ばされていたイッセーが戻ってきて再びビズリーに殴りかかったのである。

 先程は毛ほども効かなかった攻撃であるが故にビズリーは避ける事もせずにそれを受け止めたがすぐに違いに気づく。

 腹部に繰り出されたアッパーカットが自身の体を僅かではあるが持ち上げたのである。

 そのことに僅かに驚くが、よくよく考えれば時間を置けば倍加の力で先程よりもパワーが上がるのは不思議ではないと切り替え、すぐに殴りかかる。

 赤い鎧が砕け、破片が飛び散るがイッセーは踏ん張りを効かせその場に踏みとどまる。

 そして決死の雄叫びを上げながら拳を振り回す。

 

「絶対に引かねえっ!」

「無駄なあがきを…っ!」

 

 いくら先程よりもパワーが上がったと言ってもビズリーにとっては大した変化ではない。

 攻撃を受けながらカウンターを返していく。その度に鎧が砕け皮膚からも赤が飛び散っていく。

 だが、それでもイッセーは引かずに殴り合いを続ける。

 その執念についにビズリーが根負けをする……といったこともなく容赦のない攻撃を与え続けていく。

 

「ぬおりゃあああっ!」

「ガハ…ッ!?」

 

 腹部に拳を突き刺しそのまま異常なまでの腕力でイッセーを持ち上げ天高く吹き飛ばすビズリー。

 イッセーは為すすべなく地面に叩きつけられるがすぐに口元の血を拭って立ち上がる。

 アーシアが心配そうに治療を始めるがイッセーは自身の目を一時たりともビズリーから逸らさない。

 ビズリーはそのことに軽い感嘆の念を抱くがそれはすぐに中断せざるを得なくなる。

 炎をその身に纏ったルドガーがかつて“ミラ達”が握った剣を携え一直線に斬りこんで来ていたからだ。

 

「始まりの力、手の内に―――」

 

 一太刀切り裂き、炎の羽が消えぬうちに剣を振り上げ巨大な水柱を創り出す。

 

「我が(しるべ)となりこじ開けろ―――」

 

 そして、風の刃を飛ばしビズリーを再び切り裂く。次に鋭利で巨大な岩石を雨のように降らせ押しつぶそうとする。

 止めは地水火風全ての属性による魔法陣を作り上げそこから同時に巨大な魔弾を降り注がせる精霊の主から借りし秘奥義―――

 

 

「スプリームエレメンツ!」

 

 

 ビズリーを中心にして眩い光を放つ大爆発が起き、その中に姿を消していく。

 だが、ルドガーはこの程度でビズリーが終わるとは思ってなどいない。

 その証拠に煙が晴れた先には何事もなかったように悠然と佇む姿が見えた。

 

「精霊の技すらお前の物としたか、ルドガー」

「俺は真似をしているだけだ」

「ふ、真似事だけでこの私が倒せるとでも?」

 

 不敵に笑いファイティングポーズをとるビズリーにルドガーは黙って構え直す。

 正直の所、このままではジリ貧だろう。ビズリーが時歪の因子化するまで時間を稼ぐという手もあるにはあるが、そこまで悠長に相手が時間を与えてくれるとは到底思えない。

 こちらから、仕掛ける以外に道は無いだろう。

 だが、仕掛けても勝てる確率は絶望的なまでに低いことは明らかだ。

 それでも諦めるわけにはいかない。そう改めて決意した時だった―――

 

 

「我、助けに来た」

 

 

 それは小さな少女の声だった。小さいが紛れもなく世界最強の一角を担っていた存在。

 オーフィスがそこにはいた。

 

「オーフィス、何でここに!? 今のお前は力が出せないんだ、早く戻れ!」

「分かってる。だから―――助っ人連れて来た」

 

 その場にいる者全員に影がさす。この荒野に雲など存在しない。

 あり得ない現象に全員が空を見上げて見るとそこには赫いドラゴンがいた。

 空を覆うかのような巨体にどこまでも赫い鱗。無限と対をなす、存在しえぬ夢幻。

 ドラゴン・オブ・ドラゴン―――グレートレッド。

 もう一つの超上存在がそこにいた。

 

「これが……グレートレッド。私の目標……」

「助っ人? 世界最強の存在が?」

 

 ヴァーリは自身の目標が現れた事に戦闘中である事も忘れ見入り、イリナは信じられない出来事に呆然と呟いていた。

 オーフィスはそんなイリナの言葉に反応してコクリと頷いて答える。

 

「我、お願いした。グレートレッド戦わないけど力貸してくれる」

 

 それはつまりどういったことだと聞こうとしたイッセーの脳内に声が響いてくる。

 どこか気だるげではあるが、楽しんでいるようにも聞こえる声で世界最強は赤き龍を宿す青年に声をかけた。

 

 

 ―――俺の力をほんの少し貸してやると。

 

 







「本当にもう行くのか? お主は病み上がりじゃろう」
「ああ、今すぐにでもいかないと間に合わないからな」

 オーディンは一人の男に心配そうに問いかけるが男の決意は揺るがない。
 今行かなければ自分の“全て”を失うと男は分かっていた。
 だからこそ、この手足が千切れようともそこに辿り着かなければならない。

「……どうして、そこまで必死になれるんですか?」
「どうして……か」

 ロスヴァイセが自ら死地に足を踏み入れることを戸惑わない男に問いかける。
 どうして、そこまで必死になって他人に尽くせるのか。純粋に疑問だったのだ。
 男はその質問に少し考え込んでいたがやがて柔らかな笑みを浮かべる。
 その笑みにロスヴァイセは思わず頬を赤らめてしまう。


「―――大切なら、守り抜け、何に代えても。理由なんてそれだけさ」


 男は最後にそう言い残してオーディンが作り上げた転移の魔法陣の中へと進んで行くのだった。

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