ルドガーinD×D (改)   作:トマトルテ

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二十六話:人探しも大変だよな

 

月が雲で隠れてしまったために明りがない真っ暗な道をイリナとゼノヴィアと一緒に歩いていく。そして俺の服装は神父服という何とも怪しげな格好だ。

さて、どうして俺達がこんな事をしているのかというとだ。なんでも今回の件でイリナ達が来る前に先にこちらに乗り込んで調査を行っていた神父が何人か居たらしい。

 

しかしながら、その神父達とは今はもう連絡が取れない。その理由は簡単だ、殺されたからだ。

かなりムカつくことだけどその神父達はフリードに試し斬りの為に殺されたらしい。

実際、祐斗がフリードと遭遇した時も神父が一人殺された後だったみたいだ。

 

だが、そこで話を終わらせることはせずに、逆にそのことを逆手にとって敵を見つけ出してしまおうと俺達は考えた。そう、相手が神父を狙うというのなら自分達が神父に化け、餌となって誘き出そうという作戦だ。そのために俺は神父服を着ているというわけだ。

 

因みに、今は二組に分かれて捜索中なのでイッセー達悪魔組と俺達人間組に分かれて行動している。どちらかが敵を発見次第、すぐに連絡をして駆けつけるようになっている。

俺としては出来れば俺達の餌の方にかかって欲しいと思っている。

 

正直言って、リドウが出てきたらあいつらじゃ辛いだろうからな。……本当にあいつは人の嫌がることばっかりしてくるな。俺は少々の苛立ちを込めて息を吐き出す。するとそれに気づいたのかイリナが気遣ったように俺に声を掛けてくる。

 

 

「どうしたの、ルドガー?」

 

「いや、どうしてこうもリドウは俺の邪魔ばっかりするのかなって思ってな」

 

「……因縁の相手なのよね。どういう繋がりなの?」

 

 

どういう繋がりか……俺にとっては高額負債者になる切っ掛けを作らされた人物であると同時に

元上司でもある奴か……いや、最後は俺の方が立場は上になったけどな。

まあ、でもあれはビズリーが俺をクランスピア社に縛り付けるためのものか。

 

……いや、もしかしたら本気でビズリーは未来の事を考えて俺を副社長に任命したのかもしれないな。ビズリーも何だかんだいって人間の為に戦っていたのは間違いないんだし。

 

審判が無かったら俺達は普通の親子だったのかもしれないな……。

結局の所はビズリーもリドウも俺も審判の犠牲者なんだろうな。

まあ、だからと言ってあいつらのやったことを俺は認めないけどな。

 

 

「どういう繋がりかって言われると……難しいな。全ての切っ掛けであって、元上司でもあり、同族の被害者でもある……とにかく複雑な関係性なんだ」

 

「複雑なのね……でも、悪い奴なら悩まずに天の裁きを下しちゃえばいいのよ!」

 

「ははは! ………裁き…か」

 

 

まるで、やっつけちゃえ! とでも言いたげに拳を突き出すイリナ。

その様子が子供っぽくて思わず少し癒されながらもイリナが言った裁きという言葉について考える。もし、リドウが裁きを受けるのなら俺も受けないとダメだろうな……。

 

同じ罪を背負っていると言っても過言じゃないしな。

まあ、俺は裁きなんてものは受ける気はない。

俺は生きて幸せにならないといけないんだ。それこそが俺に出来る唯一の償いだからな。

 

 

「ルドガー・ウィル・クルスニク……もう一度聞こう。君は何者なのだ?」

 

 

不意にそれまで黙っていたゼノヴィアが声を掛けてくる。

その顔は真剣そのものだ。目に至っては抜身の刃のような鋭さを放っている。

 

俺のことはイッセー達が来たときにオカルト研究部の部員だって伝えて悪魔と関わりがあるっていうのは教えたから、そういうことが聞きたいわけじゃないんだろうな……。

多分、俺の正体を知りたいんだろうな……。大きく深呼吸してから口を開く。

 

 

「なあ……ただ愛する一人の為に全てを壊すのは…罪なのか?」

 

「難しいことを言うな……」

 

「もし罪だとしたら、俺は―――大罪人さ」

 

 

世間一般から見れば間違いなく俺は大罪人だろうな。でも、それがどうした?

そんな下らない評価を気にして大切な者を失う気なんて俺にも全くと言っていいほどない。

大切な者を守る為ならいくらでも汚名を被ろう。罵倒を受けよう。投げつけられる石も全て受け止めよう。

 

だが、彼女を傷つけようとするのなら俺は一切の容赦はしない。

もし、世界が彼女を傷つけようとするなら俺は再び―――世界を壊そう。

邪魔する物は全て壊す、それが俺にとっての守るという行為であり

ルドガー・ウィル・クルスニクにとってのアイデンティティだ。

 

 

「っ!? 大変、ルドガー、ゼノヴィア! イッセー君達が敵に遭遇したみたい!」

 

「分かった、直ぐに行くぞ。ゼノヴィア」

 

「あ、ああ……そうだな。ルドガー・ウィル・クルスニク……これ以上は聞かないよ」

 

 

携帯を片手に持ったイリナが今しがたイッセー達が敵との戦闘を開始したと伝えて来たので話を切り上げてすぐに走り出す。ゼノヴィアは俺の答えに少しの間、茫然としていたがすぐに気持ちを切り替えて一緒に走り始めた。ここで深く聞いて来ないのはありがたいな。

出来れば話したくはないことだからな。さてと……居るんなら待っていろ、リドウ。

 

 

 

 

 

イッセー達が戦闘を行っていると思われる場所に着くとすぐにはぐれ神父らしき奴らをまるで無双ゲームのようになぎ倒していく小猫の姿が見えたので一安心する。

べ、別に後輩が怖くて近寄りがたいとかは思ってないからな。

 

その姿を見て若干引き気味なイッセーと匙なんかも別に目に入っていないからな。急いで祐斗の姿を探して辺りを見回しているのも心配なだけであって現実逃避なんかじゃないからな。

ル、ルドガー、怖くなんかないしー。

 

て、考えているうちにゴキ○リ並の生命力を持つフリードと戦っている祐斗を発見した。

うん、どうやら冷静に戦えているみたいだな。……ただ、若干押し切れていないな。

祐斗自身の実力は間違いなく上回っているんだけど、あいつの魔剣がエクスカリバーの攻撃に耐え切れずにひびが入っている。

 

祐斗も直ぐに取り替えてはいるんだけどその分時間を使うために決定打まで持ち込めない。

流石はエクスカリバーといったところか。魔という名の付く物にはとことん強いな。

仕方ない……助太刀に入ろう。俺は大きく助走をつけてフリードに突っ込んでいき、

そして―――

 

 

 

「ラ○ダァァァッキィィィック!!」

 

 

 

「ほげああああっ!?」

 

 

飛び蹴りをフリードにかます。フリードは俺の飛び蹴りをもろに食らって吹き飛んでいき壁にぶち当たった。が、爆発はしなかった。まったく、そこは気を利かせて爆発するべきだろう。折角、仮面○イダークルスニクなんて題名まで考えていたっていうのに、失礼な奴だ。次はサンオイルスターレッドの技でも使ってみるか。そして、勝利の言葉は性格イエローなサンオイルスターブルーの『トロピカルヤッホー!』だな。

 

 

「痛つつ、一体誰が僕ちんにこんなことを――ゲッ!? オッド眉毛君じゃないですかあ!?」

 

「よし、今の言葉でお前の死は決まった。覚悟は良いか? 俺は出来ている」

 

「こっちは全く出来てないっつーの――て、なんですか! このウザったい黒いラインはよおおおっ!?」

 

「見たか、これが俺の『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』だ! やっちまえ、ルドガー!」

 

「ああ、任せろ、匙!」

 

 

はっはっは、フリードの奴め、また俺のこのこだわりのメッシュ眉毛を馬鹿にしたな。

待っていろ、直ぐに下ろしてやる。俺は匙の神器(セイクリッドギア)で身動きが出来ないフリードに向かって走り出す。

 

手には双剣をしっかりと握りニッコリと笑顔を浮かべながら近づく俺にフリードが何やら恐怖を感じているみたいだが全く理由が分からないな。俺はこんなにもニコニコと今から起こるであろうことが楽しくて笑っているのにその顔を見て恐怖するなんて心外だな。

さあ―――始めようか。

 

 

「残念だけど、そう上手くいかないのが人生だろう? ルドガー君」

 

「ちっ!? また、お前か―――リドウ!」

 

 

いざ、始めようとしたところに医療用ナイフが飛んで来たので足を止めて舌打ちをしながらそれを弾き飛ばす。本当にこいつは人をイラつかせることに関しては天才的な才能を持っているな。

俺は苦々しげにこっちとは対照的に飄々とした様子のリドウを睨みつける。

フリードは後回しだ。どうせ、匙が逃がさない限りは逃げられないはずだからな。

リドウはここで俺が倒す!

 

 

「おお、リドウの兄さん! もしかして僕ちんを助けに来てくれちゃったんですか?」

 

「お前はエクスカリバーの回収のついでだ。バルパー・ガリレイ博士のご要望さ」

 

「そうだ。フリード、何をそんな物に手間取っている、エクスカリバーに因子を集中させて斬れば直ぐに斬れるだろう」

 

「因子を集中、集中……って、おお! スパッと逝っちゃいましたねえ!」

 

 

何やら親しげにリドウに話しかけるフリードに対して面倒くさそうに相手をするリドウ。

その後ろから少し年老いた声が聞こえてきてフリードに指示を出す。感じからして今回の件の首謀者に近い奴だろうな。

 

そして、そいつの指示に従ったらしいフリードが何やらエクスカリバーにオレンジのオーラを集中させたかと思うと次の瞬間には匙の出したラインは切り裂かれていた。そのことに匙が動揺しているが、そこは無視する。

 

 

「バルパー・ガリレイ……『聖剣計画』の首謀者か」

 

 

ゼノヴィアの呟きに祐斗の殺気が高まる。今まで抑えれていた感情がここに来て抑えが利かなくなったか。……いや、まだ冷静さは残っているか。直ぐに斬りかかって行かないのがその証拠だ。それでも……ずっと抑えるのは難しいだろうな。

 

感情が高ぶれば自分では制御できない行動に出る可能性は高い。……以前俺がリドウに斬りかかった時みたいにな。特にリドウはそういう人の感情を弄ぶことには長けているからな。

少しでもこっちの弱点を見つければ嫌らしくそこを突いてくる。

 

本当に今すぐにでも殴り飛ばしてやりたいような嫌な奴だよ、お前は。

そんな意味合いを込めて祐斗に向けていた目を再びリドウに向ける。

だが、リドウは相変わらず飄々とした様子でニヤニヤと俺達の方を眺めているだけだ。

 

 

「……魔剣創造(ソード・バース)か。あらゆる属性、あらゆる力の魔剣を創り出せる神器(セイクリッドギア)使い手によれば無類の力を発揮する……“随分と”いい神器(セイクリッドギア)を持ったものだな」

 

 

「バルパー・ガリレイィィィッ!!」

 

 

バルパーのその言葉で祐斗の中の何かが切れた。

何もかもかなぐり捨てる様にただ一直線にバルパーに斬りかかる祐斗。

そして後少しで刃がバルパーの喉を切り裂こうというところで―――

 

 

「やれやれ、ナイーブな若者だ」

 

 

「ぐあっ!?」

 

 

瞬間的に間に割り込んできたリドウによって蹴り飛ばされた。

俺は瞬時に動き、蹴り飛ばされた祐斗を受け止める。本当に嫌味ったらしい奴だ……。

わざわざ、こっちから攻撃してくるのを待つなんて本当に趣味が悪い。

 

祐斗はなおも憎悪の籠った眼でバルパーを睨み続けている。すると、その視線に興味を持ったのかバルパーが祐斗をまるで道具でも見るかのように見つめる。

そして、何やら合点がいった様子で口を開く。

 

 

 

「もしや、君は『聖剣計画』の―――モルモットの生き残りかね?」

 

 

 

祐斗を抑えていなければ間違いなく俺がバルパーを殺しに行っていた。

それだけの事をあいつは言った。正直、このまま俺の腕の中で暴れまわる祐斗と一緒にあいつを切り刻んでしまいたい。でも、それだと相手の思うつぼだ。

 

リドウが居なければ何とでもなるだろうけど居るから下手には動けない。

あいつも何だかんだ言って正史世界に四人しかいないハーフ以上の骸殻能力者だからな。

それにしても…もし、バルパーの発言もリドウの計算のうちだとしたら恐ろしい奴だ。

まあ、恐ろしく憎たらしいのは今もなんだけどな。

 

 

「僕達をモルモットだなんて言うな! この魔剣はあなたにさんざん利用され殺された同士の無念の固まり! だからこそ僕はあなたをこの剣で―――殺す!」

 

 

「ふん、せいぜい吠えていればいい。私は計画があるので引かせてもらうよ、行くぞ」

 

 

祐斗の悲痛な叫びを聞いてもバルパーは興味が無いといった感じに鼻を鳴らして背を向けて歩き出す。あいつ……人を何だと思っているんだ!

思わず、そう思った瞬間にリドウと目が合う。するとあいつはニヤリと笑い口を開いた。

 

 

「ルドガー君。今、人を何だと思ってるんだって思っただろ?」

 

「……っ!」

 

「でもさあ、何の罪のない人を大量に殺してきた奴がそんなこと思うのはおかしいよなあ?

 ああ、でもルドガー君はそんな人じゃないか」

 

 

リドウの言葉に何も言い返すことが出来ずに俯く。

そうだ……俺達にはそんなことを思う資格は無い…っ。

分史世界を偽物として壊し続けて来た俺達には…!

でも……そうだとしても、許せないことはある!

俺はキッとリドウを睨み返す。そのことに少し驚いた顔をするリドウ。

 

 

「前に会った時よりもいい顔してるな、ルドガー君」

 

「ああ、俺は決めたんだ。もう、迷わない」

 

「あっそ、じゃ、また会おうぜ」

 

「待て! 何が目的だ、リドウ!」

 

「そいつは後のお楽しみってやつだぜ」

 

 

目的を聞こうとしたがリドウは後のお楽しみとだけ言い残して背を向けて手を振る。

そしてその直後にフリードが閃光弾を投げつけて俺達の目くらましをする。

しまったな……二度も同じ手に引っ掛かるなんてな。それにしてもリドウの奴何が目的だ。

 

どうせろくなことじゃないんだろうけど……ただ、誰かに認められようとしているのは変わっていないんだろうな。そのために平然とあくどい事をするから嫌いなんだけどな。

そんなことを考えながら一端家に戻ろうと思い祐斗を掴んでいた腕を離しコキコキ音を立てながらと背筋を伸ばす。

 

家に帰ってこれからの行動を確認したり情報の整理をして来るべき戦いに備えないとな。

と、今後の予定を考えている俺の横を二人の人物が駆け抜けていった。

その無鉄砲な二人の人物の名前はイリナとゼノヴィアだ。

 

 

「逃がさん!」

 

「逃がさないわよ!」

 

 

バルパー達を追っていく二人に思わず、ため息が出る。深追いは危険だと習わなかったのか。

相手の罠かもしれなんだぞ。よく言う『孔明の罠だ!』かもしれないのに。

……ところで孔明って誰なんだ? エレンピオスやリーゼマクシアにいなかったからこっちの世界の人間か。今度調べて見よう。そんなどうでもいいことを考えていたら祐斗が二人を追って走り出そうとしていたので、俺は―――

 

 

「ピコハン!」

 

 

「うわっ!?」

 

 

ピコハンで祐斗を気絶させた。ありがとうエリーゼ。習っておいて本当によかったよ。

さてと……このままだとイリナとゼノヴィアが危ないし、行くか。

と、その前に祐斗をこのままにしておくのは不味いか。祐斗を気絶させた俺……。

そんな状況を見られたら、また、変な噂が一部の女子から流れ出すかもしれないしな……。

まあ、後はイッセー達に任せればいいよな。ということで、ルドガー行きまーす!

 

 

「イッセー、俺は二人が心配だから追って来る。後、祐斗を頼んだ!」

 

「はあ!? お、おい待てよ!」

 

 

俺はみんなの戸惑った声をBGMにしながら走り出すのだった。

 

 




ヴァーリをTSさせてもいいかな…いいよね?

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