ルドガーinD×D (改)   作:トマトルテ

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第三章:新たなる審判
二十話:俺の願いは……


身体はトマトで出来ている(I am the bone of my tomato)

 

血潮はリコピン 心は果肉(Pulp is my body, and lycopene is my blood)

 

幾度の食事を超えて不敗(I have created over a thousand meal)

 

ただの一度も残しはなく(Unaware of leftover)

 

ただの一度も妥協は無し(Nor aware of compromise)

 

料理人は常に思案(Cooks always thought) トマトを世に広めるために(to spread tomatoes in the world)

 

故にその料理はトマトと共にあり(Yet, there  dish hands will never hold tomato)

 

その体はきっと……(So as I pray……)

 

 

 

無限のトマトで出来ていた(“UNLIMITED TOMATO DISHES”)

 

 

     

「行くぞ! 固有結界『無限のトマト料理(アンリミテッド・トマト・ディッシュズ)』!!」

 

 

 

果てなき荒野一面が赤く染まっていく。

この空間にあるものは全てが赤色だ。

そう―――無限のトマトによって!!

 

「御覧の通り、お前らが挑むのは無限のトマト、トマト料理の極地。

 恐れずしてかかってこい!」

 

「ちょっ! お、おま、何なんだよぃ! この結界はよぉ!?

 お、俺っち、気分が悪く……うっ!」

 

「美候!? ルドガー、あなたは何と恐ろしい技を編み出したのですか!?」

 

何故か吐き気を催して倒れ込む美候。

そして俺の新技に恐れおののくアーサー。

どうやら、この技は相当に有効らしいな。

しかし、美候が吐き気を催しているのは気に入らないな。

 

「美候、俺のトマト料理を特と味わえ!」

「ぐえっ! こいつ直接脳内にトマト料理の映像を送ってきやがった!?」

「まだだ。まだ俺のトマト料理フルコースは終わらないぞ」

「頼むからやめてくれええええ―――うぶっ!?」

「これで……まず一人」

 

止めに美候の口に生トマト丸ごと一個を叩きこむ。

美候はゆっくりと倒れていき、そのまま起き上がることがなかった。

トマトを侮辱した罰だ、悪く思うなよ?

さてと……後はアーサーか。

 

「ルドガー…っ! あなたは何をしているのか分かっているのですか!?」

 

この空間に耐えられなくなってきたのか。フラフラとしだし。

自らの剣を杖にしながら立つアーサー。

 

「俺はただトマトのすばらしさを世に広めているだけだ」

「やめてください! 誰にとっても不幸な結果にしかなりませんよ!?」

 

そうか……やっぱり分かり合えないのか。

仕方ない、それならやることは一つだ。

スッとトマトを取り出し。両手に構える。

 

「知れ、(トマト)に染まりしこの世界の力を!」

「くっ! こうなりましたらコールブランドで空間を切り開いて―――なっ!?」

「無駄だ。この世界(トマト)からは逃れられないぞ?」

 

この結界から逃げ出そうとして。空間を切り裂くアーサーだったが。

切り裂いた空間からはトマトが雪崩の様に押し寄せてくるだけだ。

 

「これで終わりだ!」

 

「ま、待ってください!」

 

「その身に朝摘みトマトの光沢を刻め!!」

 

トマトに埋もれながらも何とか逃げようとするアーサー。

だが現実は残酷だ。逃げられる時間など俺が与えるはずもない。

高速で近づきアーサーの口に一撃!

 

「ふぐっ!?」

 

―――トマトを叩きこむ!

 

アーサーは吐き出そうともがくが。

そこにさらにもう一撃を叩きこむ!

 

「ブフッ!?」

 

さらに、もう一発!

 

「オフッ!?」

 

三発目にしてようやく崩れ落ちるアーサー。

俺はその姿を見ながらゆっくりとトマトを齧る。

うん。美味い。

 

 

 

「うちは好き嫌い、禁止なんだよ。だから他の物が食べたいなんて言うんじゃありません」

 

 

 

 

 

「で、結局のところ、トマト料理を食べるのを拒否したから美候とアーサーを倒したのかにゃ?」

「てへ☆」

「真面目に話すにゃ」

「ごめん、少しやりすぎた。今は反省してる」

 

黒歌に頭を下げて謝る俺。

でも、そもそもの理由は遊びに来ていた美候が。

俺のトマト料理が飽きたから食べたくないなんて言い出したから悪いんだ。

うちは基本的にお残しは許さないので。

どうしても食べたくないと言う。美候には実力行使させてもらった。

 

そこにアーサーが戦闘狂っぷりを発揮して。

いつも通りの三つ巴の争いへと発展していった。

だから、ルフェイちゃんや黒歌を置き去りにして戦ったのは俺のせいじゃない。

………まあ。今もアーサーと美候が、ルフェイちゃんに看病されている原因は俺だけど。

 

「トマト好きも、ここまで来たら尊敬するにゃ…」

「いやー。それほどでも」

「褒めてないにゃ!」

 

ビシッと黒歌にツッコミを入れられてしまう。

今のは良いツッコミだったな。

え? 少しは反省しろ? ルドガーはちゃんと反省してますー。

 

「……なんか別の事考えてない?」

 

な! くそ、これも俺の分かりやすいと評判の顔のせいか!?

こうなったら。おだてて黒歌のご機嫌を取ろう!

 

「いや、黒歌って可愛いなって思ってた」

 

「にゃ!? な、なに急に言ってるのにゃ!?

 そ、そんなこと言ってごまかそうとしても無駄にゃ!!」

 

「あ、ばれたか?」

 

ダメだったか。俺の可愛いと言うセリフに顔を真っ赤にして。恥ずかしがってくれたが。

結局のところ誤魔化すことは出来なかったみたいだ。

それにしても今日の黒歌は何だかいつもと違うな。

 

何と言うか……ジッと俺の方を見ていたかと思ったら。溜息を吐いたりするし。

なにかあったのかと聞いても、顔を赤くして首を振るだけだし。

何かを言おうとして。口を開けても、俺の顔を見たら何でもないって言って逃げるし。

そう言えば、今日はこうして面と向かって話すのは、初めてな気がするな。

 

「もう、嘘言ってお姉さんを誑かそうとしないにゃ!」

 

まだ、少し顔が赤いままそう言う黒歌。

別に嘘は言ってないんだけどな。

 

「いや、別に嘘を言ったわけじゃないぞ?」

 

「だからそうやって――「黒歌は本当に可愛いと思ってるぞ」――にゃううう……」

 

もう一度可愛いと言うと。顔を伏せて何も言えなくなる黒歌。

この際だから、黒歌の可愛い理由を全部言ってしまおう。

嘘だと思われるのも何だか嫌だしな。

 

「見た目はもちろんだけど、俺に悪戯して来たり、猫の姿で甘えてきたり。俺の料理を食べて嬉しそうに笑ってくれたり。今だってそうやって顔を赤くしたりして、そういうところが本当に可愛いよ」

 

「ううう……ずるいにゃ。そんなこと言われたら怒れないにゃ」

 

恨みがましげに上目づかいで俺を睨んでくる黒歌。

そんな仕草が可愛いんだけどな。

 

「まあ。俺なんかが言ってもしょうがないか」

 

「そ、そんなことないにゃ! 凄くうれしいにゃ。ルドガーだから……。

 す、好きな人が言ってくれたから……」

 

「ん? 最後なんて言ったんだ?」

 

最後の部分が良く聞こえなかったけど。何か言ってたのか?

 

「な、何でもないにゃ! なんでも!! ………うう…バカ」

 

少し涙目になりながら、何でもないと言う黒歌。

まあ、何でもないって言ってるから大丈夫だろ。

何か深刻なことを隠しているわけじゃないだろうし。

 

「あの、お兄様と美候さんが起きました」

 

そんな事を考えていると、ルフェイちゃんが二人の復活を知らせに来た。

二人共起きたか。さてと……それじゃあ―――。

 

 

「美候には料理の残りを食べさせないとな」

 

 

「「流石に可哀想だから。やめてあげて(ください)!」」

 

 

結局、美候は起きると同時に、逃げる様に帰ってしまったので無理だった。

美候……次に会った時は気をつけるんだな。

因みにアーサーには美候の分まで食べさせたのでお残しは無い。

悪く思うなよ。アーサー。

 

 

 

 

 

 

今日は大変だったにゃ……。

ルドガーの前でトマトを侮辱するようなことは言うなってあれ程言っておいたのに。

あのバカザルすっかり忘れてたにゃ。

 

それでルドガーと戦いになって。そこにアーサーまで加わって。

私とルフェイは置き去りで勝負始めちゃうし。

ルドガーはなんだか良く分からない結界を発生させるし。

何だか訳が分からなかったにゃ。

 

あのバカザルは結界の中で何があったのかは知らないけど。

目が覚めるなり直ぐに逃げ出すし。

まあ、何だか可哀想だったから見逃してあげたけど。

……ルドガーは逃がす気が無いみたいだけど……。

 

アーサーもルフェイの手前だから何でもないように装ってるけど。

台所に置いてあるトマトが目に入る度にビクッって体を震わしてるし。

ルドガー……一体何したのにゃ?

 

それにしても。か、可愛いなんて不意打ちにゃ!

思い出しただけで顔が熱くなるにゃ。

はあ……いつも通りの私を可愛いって言ってくれるから。

いつも通り、悪戯したり。甘えたりしたいんだけど……。

 

本気で意識しちゃうと。恥ずかしくて出来ないにゃ!

今日なんてルドガーに恋をしていると分かってから初めて会ったから。

どんな顔すればいいのか分からずに。

ルドガーを見つめては溜息をつくのを繰り返しているだけだし。

 

意を決して話しかけようとしても。

顔を見たら恥ずかしくなって逃げちゃうし…。

私ってこんな乙女みたいな性格だったかにゃ?

 

それにしてもルドガーのバカ!

折角、女の子が頑張って好きだって言ったのに。

聞き逃すなんて最低にゃ!!

 

ルドガーのバカ! 私を惚れさせたんだから。

絶対に責任は取ってもらうんだからね!!

 

……そういえば、散歩に出たルドガーが帰ってくるのが。

やけに遅いような気がするにゃ。

何かあったのかにゃ?

 

 

 

 

 

 

 

食後の運動に散歩に出た俺。

ふう……最近は何だかんだいって平穏だな。

こんな当たり前の日常がいつまでも続けばいいな…。

 

それでも……昔がどうしようもなく懐かしいのは。

俺が本当の意味で前に進めていないからだろうな……。

今の俺は生きる意味もなくただ生きてるだけ……かもな。

 

「っ!」

 

考え事をしていると。

突然、何かが足もとに飛んでくるのを感じて、間一髪のところで避ける。

これは……医療用ナイフ!?

 

 

「随分とギリギリだな。腕が落ちたんじゃないの?」

 

 

この声! それにこの人をいらだたせる話し方…っ!

何で…何でお前がこの世界にいるんだ!?

 

「―――リドウ!?」

 

「久しぶりだな、ルドガー君。兄貴は元気にしてるか?」

 

「っ!!」

 

「あれー? もしかしてルドガー君。兄貴の命で橋を架けるなんて、酷いことしたの?」

 

こいつ…っ! 俺が兄さんの命で橋を架けたことを知ってわざと…っ!!

こいつはこいつで色々とあったんだろうけど、俺はやっぱりこいつが嫌いだ。

いや、今はそんな事よりも。

 

「どうして、お前がこの世界にいるんだ? 第一どうして生きてるんだ?

 お前はビズリーに橋にされたはずだろう」

 

こいつがどうして生きてこの世界に居るかだ。

 

「ああ。確かに俺はあの人に殺されて橋にされたよ。まったく親子揃って碌でもない奴らだぜ。

 ああ、心配しなくてもルドガー君は入れてないぜ。俺が言いたいのは、社長と前室長のことさ」

 

「兄さんをあんな奴と一緒にするな!!」

 

「おお、おお、怖い怖い」

 

いつもの様に飄々とした風に受け流すリドウ。

こいつ…っ! 嫌味以外に何か喋れないのか!?

 

「さてと、それでどうして俺が生きて、この世界に居るかだったか?

 何でこの世界に居るかはやかましいんだが、生きてる理由は簡単。

 新しい―――“審判”さ」

 

 

――“審判”――

 

 

その言葉を聞いた瞬間。俺の頭は真っ白になる。

………何を言っているんだ? リドウは。

訳が分からない。

 

「……ふざけてるのか?」

「安心しな。ルドガー君。俺は大真面目さ」

 

心底嫌そうに言うリドウ。

こいつも“審判”に関しては思うところがある。

だからこそ、冗談でこんなことは言わない。

つまり、リドウの言っていることは―――真実だ。

 

「俺は新たな“審判”に挑まされる為に生き返らされた。死んでた時の記憶は分からないが。俺以外にも挑まされる奴はいるらしいぜ」

 

他にもいる?

 

「誰がいるんだ?」

 

「さあな。そればっかりはオリジンしか知らない。俺が生き返ってからルドガー君以外の奴らとはあってないからな」

 

「じゃあ、何で他にもいることがわかるんだ?」

 

会っていないと言うのなら、何でわかるんだ?

まあ、普通に考えれば審判に単独で挑まされるわけはないだろうけど。

 

「ルドガー君。今回の審判の条件は分かるか?」

 

ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべるリドウ。

それに腹が立つが今の所こいつに聞くしかないので、黙って首を横に振る。

 

「半年の期間の審判に挑んだ者のうち。最後まで生き残った一人の願いを叶える。

 要するにだ、審判に挑む者同士の―――殺し合いさ。最後の一人になるまでな。

 しかも審判を達成できなきゃ、以前の様に俺達の世界の人間は滅びる」

 

「ふざけるな!!」

 

それを聞いた瞬間、俺は怒鳴っていた。

どうして俺達がそんなことをしないといけないんだ!

俺達はただ―――クルスニク一族に生まれただけなのに!!

 

「その気持ちはよーく分かるぜえ。ルドガー君」

 

今までの表情とは打って変わって、真面目な顔になるリドウ。

こいつも同じクルスニクの被害者なんだよな……。

凄く気に入らないけどな。

 

「だけど、ルドガー君は俺達とは少しだけ違う。審判を越えたんだろ? ユリウスの命を使ってさ」

 

「……どういうことだ?」

 

「審判に関わるか関わらないか、それを選択する機会が与えられるらしいぜ。

 審判を越えたルドガー君にはさあ。羨ましい限りだぜ」

 

審判に関わるか関わらないか、それを選択する機会が与えられる?

それなら、俺は関わらない。

もうこれ以上審判に俺の人生を狂わされたくない…っ!

 

「俺は審判に関わらない。今の生活で俺は満足している」

 

そう。俺は今の生活に満足して―――。

 

「本当にそう思ってるのかよ? ルドガー君」

 

「っ!? お、俺は―――」

 

「会いたいんだろ? 兄貴に。―――“偽物”のマクスウェルに」

 

「リドオオオオオオオッッ!!!」

 

限界だった。俺は『武器創造(ウェポンシフト)』で双剣を創り出し斬りかかる。

だが、リドウはヒョイと簡単に避ける。

くそっ! どうして当たらないんだ!?

 

「いやー。動揺してるねえ。ルドガー君。そんなに動揺してたら当たる物も当たらないぜ」

 

「俺は……俺はっ!」

 

剣を握る手が震える。

否定できない。今まで自分では気づいてなかった。

……いや。気づかないふりをしていた。

俺は兄さんに会いたい、ミラに会いたい、エルに会いたい。

でも……もう会えないからと諦めていた。

 

「“審判”を越えることさえ出来れば。また昔に戻れるんだぜ?」

 

悪魔の囁きの様に、リドウの言葉が俺の心を揺さぶる。

 

「お前はどうなんだ!? お前は何か叶えたい願いがあるんじゃないのか!!?」

 

「俺はルドガー君みたく、過去に囚われていないんでね。ただ、自由に。自分の生きたいように、長く生きられれば十分なのさ。だから俺は全力で生き残らせてもらうさ。別に審判に敗れても、こっちの世界は滅びるわけじゃないしな」

 

そう言ってナイフで俺に斬りかかってくるリドウ。

俺はそれを何とか防ぐ。その間にも俺の頭にはリドウが先ほど言った、言葉が響いてくる。

 

『また昔に戻れるんだぜ?』

 

また昔みたいに“みんな”と一緒に―――っ!?

 

「足元がお留守だぜ?」

 

「しまった!?」

 

いつもなら見ていなくても。

避けれるレベルの足払いを受けて、転ばされる。

その拍子に時計も落ちてしまう。くそっ! 油断した!!

 

「ルドガー君が審判に挑むと。俺の邪魔になるからここで殺させてもらうぜ」

 

俺の両手を足で踏みつけ動けなくするリドウ。

こんなところで終わるのか……。兄さん…ミラ…。

ゆっくりとナイフを振り下ろすリドウ。

そして俺の喉まであと少しになり―――

 

 

 

―――ガキィィインッ!!

 

 

 

「何とか間に合ったようですね。ルドガー、大丈夫ですか?」

 

「アーサー!」

 

「ちっ!」

 

アーサーの剣がリドウのナイフを受け止める。

リドウは軽く舌打ちをして俺の上から飛び去る。

俺はその隙に素早く時計を回収する。

 

「アーサー。どうしてここにいるんだ?」

 

「あなたが散歩に出てから余りにも遅いので、黒歌が心配して仙術で場所を探り当てて来たのです」

 

「ルドガー! 私達が来たからもう大丈夫にゃ!!」

 

「ルドガーさん。私も戦います!」

 

どうやらアーサーだけでなく。

黒歌とルフェイちゃんも来てくれたみたいだ。

……ありがたいな。

 

「ちっ、相変わらずお友達が多いな。ルドガー君……流石に不利か。今日の所は帰らせてもらうぜ。」

 

「私達から逃げられるとでも?」

 

そう言って凄味を出すアーサー。

黒歌もかなり怒った表情だし。

ルフェイちゃんもやる気満々だ。

 

「それ、逃げられるフラグだぜ?」

 

そう皮肉気に言い放ち。

赤い文様の載った白金の時計を構えるリドウ。まずい!

 

「生憎、逃げるのは得意なんでね!」

 

そう言い放ち、赤と黒の骸殻を纏うリドウ。

手には同じ模様の医療用ナイフを片手に三本ずつ。

背中に生えている変なのがない。これはリドウのクォーター骸殻なのか?

そう思った瞬間に奴は消える様に動き始める。

そして―――

 

「ルフェイ!?」

 

「こういう時は一番弱そうな奴を狙うのが定石だろ?」

 

楽しげに笑いながら。

ルフェイちゃんに斬りかかるリドウ。

くそっ! 普通に行っても間に合わない!! それなら―――

 

「はああああっ!!」

 

「相変わらず、ガキを狙われると弱いな。ルドガー君はさ」

 

俺もクォーター骸殻になって。リドウとルフェイちゃんの間に飛び込む。

そして奴のナイフを槍で受け止める。

くっ! 重いっ!

 

「だから動揺しているルドガー君じゃあ。俺には勝てないって」

 

「グアッ!?」

 

まるですべる様に動いたかと思ったら。

俺の脇腹に強烈な蹴りを繰り出して来る、リドウ。

そのまま吹き飛ばされる、俺。

くうっ…俺は……何を…っ!

 

 

 

「自分の欲望に素直になれよ、ルドガー君。俺達は―――クルスニク一族だぜ」

 

 

 

最後にそれだけ言い残してその場から消えていくリドウ。

 

「待……て。リドウ…っ!」

「ルドガー。今は傷の手当の方が先にゃ」

 

俺の身を心配して駆けつけてくる。黒歌。

アーサーも追うのはやめて俺の方に向かってくる。

ルフェイちゃんも申し訳なさそうに俺の方に寄ってくる。

 

「また……“みんな”と一緒に居られる。……昔に戻れる」

 

「ルドガー?」

 

何度も何度も頭の中で昔に戻れると繰り返される。

俺は……俺は……どうしたいんだ?

 

「昔に戻る為に全てを壊して……。俺の願いを…っ!」

 

叶えることが出来るのか?

いや、俺には出来るはずだ、俺にはそれだけの力がある。

他の奴らにも遅れなど取らない。

クルスニクらしく、俺の欲望の為にまた全てを壊して―――

 

「ルドガー!!」

 

黒歌の叫び声にハッとする。

俺は……何を考えていたんだ?

また、全てを壊そうとしていたのか?

 

「大丈夫ですか? ルドガーさん」

 

「あの男との間に何があったのですか?」

 

ルフェイちゃんとアーサーにも心配そうに声を掛けられる。

俺は……どうしたいんだろうな?

 

「ごめん。しばらく一人にしてくれないか?」

 

俺は三人にそう言い残して一人で歩き出すのだった。

俺の本当の願いは…………何だ?

 

 




ネタ回だと思った?
残念。意外と真面目に書きました。

後、リドウさんがルドガーさんの前に現れてのは九割、嫌がらせの為ですww

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