ルドガーinD×D (改)   作:トマトルテ

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二話:迷子?

「………いい加減ここが地獄なんじゃないかと思い始めて来たぞ」

 

歩けど歩けど、いつまでたっても人一人どころか水すら見当たらない状況にいい加減嫌気が刺してダラダラと歩きながら一人でぐちる。

今までの経験から大抵の苦難には慣れている……まあ、主に借金関連だけど……。

そんな俺でもただひたすらに歩きまわるというのは流石に辛い。

しかも三日間ぶっ通しでだ。

もちろん食料などないので飲まず食わずの状態でだ、

どうして俺はよりによって人も食料もない場所にいたんだ?

………これも俺が不幸だからで片づけられてしまうのか?

 

「それにしてもこういう時はルルみたいに体に色々と蓄えていた方がいいのか。まさかルルはこう言った事を見通してあの体型になったのか?」

 

もしそうだったとしたのなら自分の飼い猫ながら恐ろしい奴だ……。

猫皇帝(ねこエンペラー)の名前は伊達じゃないという事か…!

………まあ、あれは兄さんが隠れてロイヤル猫缶をあげてたせいなんだけどな。

 

そんなことを冗談で考えながら現実逃避をしていると遠くから

この三日間待ちわびていた人の声が聞こえて来た。

ただし、それは―――

 

「うわあああっ!」

 

厄介なことに男の子の悲鳴だった。

声の聞こえてきた方はあっちか……よし、すぐに行くぞ。

 

「とにかく何か食べ物を―――いや、男の子を助けに行かないとな!」

 

空腹のあまり危うく人命を疎かにしてしまうところだったが

何とか頭を切り替えて声の聞こえた方に走り出す。

しばらく走っていると紅い髪の男の子が

獅子のような魔獣に襲われているのが見えてきた。

 

「こ、来ないでください!」

 

必死に逃げようとする男の子だったが恐怖のせいか

脚がもつれさせて転んでしまった。

そして獅子のような魔獣はまるでその様子を楽しむかのように

ゆっくりと近づいて行った。

 

「ぐるるるるっっ!」

「あ…あ…!?」

 

恐怖のあまり悲鳴すらあげれなくなっている男の子を飲み込まんとして

獅子のような魔獣の巨大な口が開かれる…っ。

不味い、早く何とかしないと!

くそっ、銃があれば―――っ!?

そう思った瞬間、突如俺の手が光を放ち見慣れた銃が現れた。

 

「これは……オリジンが言っていた神器(セイクリッドギア)の能力なのか?」

「ガオオオオッッ!!!!!」

 

唸りあげた魔獣の牙が男の子を切り裂かんとする…っ。

 

「今は考えてる場合じゃない。うおおおおお!」

 

とにかく魔獣の意識を俺の方にに向けさせて

男の子から離れさせるために魔獣の顔目掛けて銃を連射しまくる。

こいつでどうだ!

 

「ぐるっ!?」

 

低い唸り声を上げて俺の方を向く魔獣。

よし、上手くいったな。後は男の子を逃がすだけだ。

 

「君、早く逃げるんだ!」

「っ! は、はい―――あれ、あ、足が…」

 

俺の言葉に従って逃げようとする男の子だったが立とうとして再び倒れてしまった。

そうか、腰が抜けて動けないのか…っ。

何とかして早くあの子の場所に行かないと命が危ない!

 

「グルアアアアアッ!」

 

俺の事よりも今は目の前の獲物を狩ることに集中しようと思ったのか

再び男の子の方に向き直り鋭利な爪のある腕を振り上げる魔獣。

今はとにかく―――あれを弾き返せる重い一撃を放ちたい。

俺がそう願うとハンマーが俺の手に握られていた、やっぱりこの神器(セイクリッドギア)というのは

俺の意志に反応して武器を創りだすものなのか……。

とにかくこれであいつの攻撃を弾き返せる!

 

「はああああっ!」

 

男の子を守る為に魔獣と男の子の間に飛び込む

 

「グガアアアッ!?」

 

そして渾身の力を込めてハンマーを振るい魔獣の腕に思いっきりぶち当てて

魔獣をのけ反らせる、ふっ、見たか!

 

「グルルルルッ!」

 

俺の方を睨みつけながら凄まじい唸り声をあげる魔獣。

ああ、怒ってるみたいだな、すいませんね。

まあ、だからといってこっちは引く気なんかないけどな!

 

「く、来る……あ、あなたは逃げてください。あなたまで巻き込むわけにはいきません……!」

 

未だに座り込んだままではあるが俺に逃げろと促す男の子……。

優しい子だな……自分のことよりも他人を優先するなんてな。

まあ、そんな優しい子だから―――絶対に守りたくなる!

 

「こいつを―――こんな優しい子を怖がらせる奴をぶった切る力をくれ!」

 

光と共に現れる慣れ親しんだ双剣……大切なものを守るために兄さんに教わった剣。

 

「グオオアアアッッ!」

 

口から何やら黒い魔力の固まりのようなものを吐き出そうとしている魔獣。

あれに当たったらまずそうだな……でも関係ない…俺はただ―――斬るっ!

 

「うおおおおお!」

 

右から左から斜め上から雄叫びを上げながらとにかく滅多切りにしていく

だが何も食べてないせいかいまいち押しが弱く決めきれない…。

このままじゃ―――『そんな覚悟じゃ何も守れないぞ、ルドガー!』

―――っ! そうだ、覚悟を決めろ、俺。

 

「いくぞ! これが、俺の覚悟だあああああっ!!」

 

もっと早く。もっと鋭く。この剣に俺の全てを込めて斬りつける!

そして最後の力を込めて―――押し切る!

 

「双針乱舞っ!」

「グギャアアアアアッッ!?」

 

魔獣は断末魔の悲鳴を上げながらとゆっくりとその巨体を地面に横たえ

そしてそのままピクリとも動かなくなった。

良かった、俺は守れた………。

 

「ミリキャス!」

 

女の人の声、あの子のお母さんかな?それならもう大丈夫か………な……

 

「大丈夫ですか!?」

 

意識が無くなる寸前に聞いたのは紅い髪の少年の悲鳴に似た声だった。

 

 

 

 

 

目を開けると見慣れない天井が広がっていた、そして体はやけに柔らかいベッドの中。

顔を上げて辺りを見回すとやけに豪華な装飾が目立つ。

花受けに使ってある壺ですら一つ何百万とするだろう、

もし割ってしまったらまた借金地獄に……

そこまで考えてブルリと体を震わす、やめよう。

もう世界も違うのだし考えてもしょうがないだろ

それに全額返済したしな!

あの時は本当に感動した……でもどうせならエルと一緒に喜びたかったな。

そんなことを考えていると扉が開いて銀髪でとても綺麗なメイドさんが入ってきた。

 

「気づかれましたか?」

 

この声はあの時の女の人だな、それならあの子が大丈夫か知ってるだろうな。

 

「はい、あの…あの紅い髪の子は大丈夫ですか?」

 

俺がそう聞くと目を丸くするメイドさん、そしてその後すぐにクスリと笑った。

 

「起きて、第一声が他人の心配ですか、ふふ随分とお人良しなんですね」

「よく、言われます……それで」

「はい、あの子は―――ミリキャスは元気ですよ、随分とあなたのことを心配しているみたいなのでよろしければ後で顔を見せてください」

 

そう言って優しそうにほほ笑む姿を見てやっぱりこの人が

ミリキャス君のお母さんなんだなと確信する。

そう言えばミリキャス君の髪の色は紅色だったよな。

この人の髪は銀色だからきっとミリキャス君のお父さんが紅色なんだろうな。

 

「グレイフィア! 彼が起きたのかい!?」

 

そんな風に考え事をしていると勢いよく扉が開いて

紅髪のイケメンの男性が勢いよく入って来た多分この人が―――

 

「サーゼクス様、ご自分の立場を考えて行動して下さい」

「今はミリキャスの父親として来ているのだ、固いことは言わないでくれ」

 

やっぱり、ミリキャス君のお父さんだ、それにしてもメイドさんもいるし部屋も豪華だし

自分の立場とか言ってたから身分の高い人なんだろうな。

俺みたいなやつが気軽に会っても良い人なのだろうか。

いや……よく考えたらガイアスも俺が会えるような身分の人間じゃなかったから

今更気にしてもしょうがないか。

 

「まずはミリキャスを助けてくれた礼を言いたい……本当にありがとう、言葉では言い表せない程に感謝している」

 

そう言って俺に深く頭を下げるミリキャス君のお父さん。

何だかこそばゆいな……。

 

「顔を上げて下さい俺は当然のことをしたまでですから」

「それだけのことを当たり前に出来るものは存外少ないものだよ……そういえばまだ君の名前を聞いていなかったね、すまないが名前を聞かせては貰えないだろうか?」

「ルドガー・ウィル・クルスニクです」

 

ミリキャス君のお父さんにそう答える。

 

「ルドガー君か、いい名前だね、私はサーゼクス・ルシファー、この冥界で魔王を務めさせてもらっているものだよ」

 

冥界か……強ち地獄と言っても間違いじゃなかったんだな。

それにしても、ミリキャス君のお父さんは魔王だったのか……ん、魔王?

 

「えっと…魔王ってもしかして……あの魔王ですか?」

「君がどの魔王を思い浮かべているかは分からないが私は魔王だよ、そういえば君は人間だったね。悪魔については余り知らないのかな」

 

愛想笑いを浮かべながらオリジンにもらった情報を思い出す。

検索結果;魔王・冥界を支配するもの、すごく偉い。

何と言うか……俺は身分の高い人と結構縁があるのだろうか。

と言うか、サーゼクスさんが魔王だということは

ミリキャス君は魔王子(?)になるのだろうか?

まあ、とにかく俺は偉い人と出会ったみたいです。

 

 

―――――――・・・

 

 

 

 

 

あれからサーゼクスさん―――サーゼクス様の方がいいか?

とにかく色々と話した結果、俺は駒王学園という高校に通うことになった。

………あれ? なんでこうなったんだ。俺はれっきとした社会人だよな。

しかも成人しているはずなんだが……あっ。

そういえば今の俺は見た目年齢、十五歳だったな。

それなら高校に通うのもある意味納得だな、うん………。

 

「いや、やっぱ可笑しいだろ!」

 

どうしてこうなった!?

よし、ここはまず落ち着いて先ほどの出来事を思い出してみよう。

 

 

 

 

 

魔王や冥界についての説明を簡単に聞いたり

俺の神器(セイクリッドギア)が『武器創造(ウェポンソフト)』と言う名前の

武器を創りだせる神器(セイクリッドギア)だという説明を受けたりした後に

人間である俺がなぜ冥界にいたのか聞かれたので

正直に気づいたらいつの間にか居たと答えた。

そのあとサーゼクス様が『次元の狭間にでも落ちたのだろう』

と呟いていたが何のことかわからなかったので適当に頷いておいた。

まあ、ここまではたいして重要なことじゃないだろ。

 

それから元いた場所に送り届けたいと言われたが

別世界にからきたので当然帰る場所などあるわけがないので

素直に

 

「帰る場所は特に無いのでそれはいいです、それよりも仕事を紹介してくれませんか?」

 

と言った、仕事を紹介してくれと言ったのはただ単に無職が嫌だったからだ、

また前みたいに『居候ってニートのことでしょ?』

と言われる羽目になるのはごめんだからな。

あの一言は俺の心に深い傷を残していったからな……忘れられない。

 

それなのに何故かサーゼクス様とグレイフィアさんはやけに同情した顔になり

 

「まだリアスよりも幼いのに苦労しているのだね……よし、ここは私が一肌脱ごう! グレイフィア」

「はい」

 

などと言ってグレイフィアさんに俺の転入手続きを整え始めさせた。

いや、止めようとしたよ。

でもさ慌てて止めさせようとしたけど何を勘違いしたのかグレイフィアさんが

 

「無理に話されなくて結構です、こういった事例は神器所有者には良くあるんです」

 

とやけに優しそうな目で言い、さらにサーゼクス様が

 

「人は異質なものを恐怖する生き物だからね……悲しいことだが君のような境遇の子も少なくはない」

 

物凄く悲しそうな顔をしてそんなことを言ってきたのだ。

いや、違うから! 別に誰かに迫害されて帰る場所が無いとかじゃないから!

確かに借金時代は周りの人から白い目で見られたり

人生詰んでるなとかは言われたけど…あれ?

目から汗が、変だな……。

 

「辛かったのだね……だが安心して欲しい、このサーゼクス・ルシファーの名に懸けて恩を返すことを誓おう!」

 

違う、これは涙なんかじゃない、汗なんだ!

だからそんなに決意に満ちた顔で宣言しないで下さい!

 

「サーゼクス様、手続きが終わりました」

 

て、あれ? いつの間に。

と言うか俺の意見は一つも聞いていないよな。

 

「さて、ルドガー君、君に通って貰う高校には実は私の妹も通っていてね……ここからは君の選択しだいなのだがもし良かったら妹の眷属悪魔になってみる気はないかい?」

「サーゼクス様、それは行き過ぎた行動です! リアス様の眷属はリアス様が決めるべきです」

 

俺にサーゼクス様の妹の眷属にならないかと言った瞬間にグレイフィアさんがサーゼクス様を叱る。サーゼクス様は叱られたせいか傍目に見てもシュンとしているのが分かる。

魔王と言えど奥さんには勝てないんだな……何だかこの世の真理を見た気がする。

 

「確かにそうだが私はぜひともルドガー君を悪魔に引き込みたくてね」

 

俺を悪魔にしたい、なんでだ?

俺が疑問に思っているとそれを察したサーゼクス様が説明してくれた。

 

「君はあの魔獣を倒したのだろう。あの魔獣は上級悪魔レベルの強さを持っている、ゆえにそれを倒した君はそれ以上だ、しかも満身創痍の状態でね、そんな有望株を悪魔陣営に引き入れたいのは当然だと思わないかい?」

 

ようするにヘッドハンティングというわけか何だかビズリーを思い出すな……。

まあ、サーゼクス様の方がよっぽど信用できるけど。

実の父親なのになんで赤の他人よりも信用できないんだろうなあいつは………。

 

「まあ、それは学園生活を送る中で考えてくれたまえ、恩人に対して無理強いなどしたくはないからね」

 

そう言って爽やかな笑みを浮かべるサーゼクス様とその横で溜息をつくグレイフィアさん

……何だかグレイフィアさん苦労してそうだな。

 

「ひとまず話しはここまでにしましょう、食事の用意が出来ていますのでそちらを食べてからにしましょう。ルドガー様は服を着替えてからお越しになってください、外に出れば使いの者がおりますのでその者にご案内させます、では一先ず私たちは失礼します」

 

そう言って優雅にお辞儀をして去っていく二人を見送り

俺は言われた通りに服を着替え部屋を出ようとしてはたと足を止める。

 

「いや、やっぱ可笑しいだろ!?」

 

そこで上に戻る。

 

 

―――――――・・・

 

 

 

 

取りあえず考えてもしょうがないので食事を食べるために案内された場所に行くと

ミリキャス君がいた。

 

「ルドガー様!」

 

俺を見つけるなり笑顔でこちらに駆けてくるミリキャス君、正直かなり癒される。

これでしばらく俺は闘える!!

 

「ケガはなかったかい、ミリキャス君」

「はい。ルドガー様が助けてくださいましたので!」

「そうか、俺も頑張ったかいがあるよ」

 

そう言ってミリキャス君の頭をポンポンと叩いてあげる、

そうするとさらに嬉しそうに笑ってくれた。

ああ……エルもこんな感じに笑ってたな、今も笑ってくれてることを祈ろう。

 

「どうしたんですか、ルドガー様」

 

ちょっと、感傷に浸っているとミリキャス君が心配そうに見つめてくる。

 

「何でもないさ、ちょっと考え事をしてただけさ」

「そうですか……あの……ルドガー様にお願いがあるのですが」

「何だい?」

「神器を見せていただきたいのですが……」

 

そう言ってもじもじとするミリキャス君。

くっ…なんて破壊力だ!

あちらでサーゼクス様が鼻を抑えているのがいい証拠だ。

 

「ああ!」

 

こんな風に頼まれて断れるわけがない、もちろんOKだ!

剣や銃、ハンマーを創り出して次々にミリキャス君に見せていく。

ミリキャス君は目をキラキラと輝かせて

もっととせがんでくるので俺も調子に乗ってドンドン出していく。

 

それとやっていて気づいたんだが

どうやらこの神器は俺が望んだ武器は基本なんでも作れるらしい。

そういうわけなのでミリキャス君には記念に

キャットテールをプレゼントしてあげると満面の笑みで喜んでくれた。

ああ……癒されるな本当に……。

 

結局その後、ミリキャス君におだてられて調子に乗った俺は高校の事を完全に

忘れていたのだった。

はっ、まさか、これはサーゼクス様の策略なのか!?

 




次回からヒロイン出すぞー!!

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