ルドガーinD×D (改)   作:トマトルテ

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少し遅いですが、あけましておめでとうございます(^^)

それでは本文どうぞ。


十五話:強さって色々あるよな?

 

「俺…本当に強くなれてるのかな?」

「どうしたんだ、イッセー? そんなに改まって」

 

山籠もりの修行も佳境に入ったある日の夜。

俺はイッセーから相談があると言われたので、イッセーを部屋に迎い入れていた。

そして、開口一番でこのセリフだ。

 

「そもそも、何でそんなことを俺に聞いてくるんだ?」

「ルドガーなら強えから俺が強くなれてるのかなれてないのかも分かると思ったのと一番付き合いが長いのが理由だな……それに部長は部長で大変だからな」

「付き合いは確かに長いだろうけど……基本的にイッセーがイケメンは死すべしで俺を目の敵にしていたのがほとんどだと思うんだが?」

 

そう言って、軽くジト目で見るとイッセーは罰が悪そうに頬を書いた。

まあ、こいつが悪い奴じゃないのは分かってるからそこまで恨んでないんだけどさ。

 

「今でも俺はイケメンは死すべきという考えは捨ててねえけどよ……」

「いや、捨てろよ」

 

そんな物ゴミ箱にでも投げ捨てろよな。

 

「ただ、俺もお前が男好きだって噂を流したのは本当に悪いと思ってんだ」

「悪いと思うなら最初からするなよ!!」

 

お前のせいだからな!

最近、俺が木場と話すだけで周りの女子から黄色い悲鳴が上がるようになってきたのは!

ちょっと欠伸をしただけで『昨日は木場きゅんと……キャーッ!』とか言われるのは全部お前のせいだからな!!

 

「はあ……もう、考えてもしょうがないからさっさと話を進めるぞ。結局の所なんでそんな風に思うようになったんだ?」

「いやよ……山籠もりに来てずっと鍛えて来たけど、結局俺はまだ、木場から一本も取れていないし。小猫ちゃんにも勝てたことが無い。それに魔力の操作だってアーシアに負けてる。……それで俺本当に強くなれてるのかって思ってさ」

 

なるほどな、そういう事か。

鍛えてはいるけどその成果が見られなくて焦っているってところだな。

 

「それにお前の腹パンを食らうたびに気絶するのは変わらないし……」

 

お前が流した噂の恨みはキッチリ『絶拳』で払ってもらってるからな。

お前には俺の全力をぶつけてる。拳で分かり合える友情っていいよね?

 

「心配するなって、本物なら即死の攻撃を気絶で耐えてるんだから、お前は凄い」

「お前そんな物、俺にやってきてたのかよ!?」

「てへ☆」

「『てへ☆』じゃねえよ! 野郎がやっても可愛くねえんだよ!!」

 

そうか? ジュードなら結構似合うと思うんだけどな。

もしかしたら、どこかの分史世界にはキャピキャピなジュードがいたのかもしれないな。

『うるさい! うるさい! うるさーい!! 殺劇舞荒拳! てへっ☆』みたいな感じでさ。

 

「まあ、取りあえず落ち着いて座ったらどうだ、イッセー?」

「どっちかというとルドガーのせいだろ……」

 

何、気にすることは無い。

さて、結構深刻そうな悩みではあるから俺も少しは真面目に答えてやるか。

………普段だって、俺は真面目だぞ?

 

「ゴホン! 取りあえず、一番最初の質問に返すとな、お前は間違いなく強くなってるぞ」

「……慰めじゃないよな?」

「ああ。気絶時間が最初は十分だったのが今は五分を切ってるからな」

「喜びづらい成長だな!?」

 

そう言われると、ただ単に慣れただけにも取れるか……ふむ。

それだったら、耐久力以外の側面で話していくか。

 

「じゃあ、祐斗との修行で、ある程度避けられるようになったとか、小猫に攻撃がかすったりしたとかはどうだ?」

「確かにそうだけどよ……それで強くなったって言えるのか?」

「修行前は、まるでできなかった事がほんの少しでも出来る様になってるんだぞ? それを強くなってると言わないで何て言うんだ?」

 

そう言ってやると少し嬉しそうな顔をして自分の手を見るイッセー。

しかし、その顔はすぐにまた暗くなっていった。

今度は何なんだ、一体?

 

「でもよ…それだけじゃ、部長の役には立てない。俺はやっぱり弱い……」

 

これは弱音…なのか?

イッセーは今まで、弱音一つ吐かずに俺から見てもオーバーワークの修行をこなしてきた。

そんなイッセーが弱音を吐いたことに少なからず動揺を覚える。

はあ……これは発破をかけてやらないとダメかな?

 

「……そうだな。いくら強くなったと言ってもお前は弱い」

「…………………」

「諦めて部長が連れ去られていくのを見ることしかできない。いや、出来ないんじゃなくて、しないの間違いか?」

「そんなこと―――」

「じゃあ、お前に何が出来るんだ? 弱い、力のないお前に何が?」

 

反論しようとするイッセーの言葉を口調を強めて遮る。

グッと唇を噛みしめて悔しそうに俯くイッセーにさらに追い打ちをかける。

 

「お前は弱いんだ。全部諦めてただ見ていればいい」

「……められるかよ…諦められるかよ!! 部長は俺の俺達の大切な人なんだぞ!! それを何もせずに諦めきれるかよ!!!」

「もう一度聞くぞ、じゃあお前に何が出来るんだ?」

「出来る出来ないじゃねえ!! やるかやらないかだ!!!」

 

そう言いきったイッセーに思わず、笑みが零れてしまう。

そうだ、その姿勢がお前のあるべき姿で、お前の誰にも負けない強さだ。

お前は最初から強さを持っていたのに何、弱音を吐いていたんだか。

 

「それでいいんだよ、お前はさ」

「は?」

「アーシアの時もそうだったけどお前は本当に諦めが悪いよな。それがお前の持っている誰にも負けない強さだ」

「俺の……強さ?」

 

俺の言いたかったことが分かったのか茫然と強さと言う言葉を口にするイッセー。

諦めが悪いってのは何物にも止められない強さだと俺は思うんだけどな。

 

「出来る出来ないじゃない、やるかやらないかなんだろ? 弱音なんて吐かずにいつもの様に諦めが悪いことをすればいい。それがお前の―――強さなんだから」

「諦めが悪いのが俺の強さか……はは。ありがとうな、ルドガー。元気が出たぜ」

「どういたしまして」

 

そう言って、二人で笑い合う。

難しいことなんか考えずに、諦めずに進んで行くのがこいつの強さなんだからな。

元気のない顔はこっちが見ていて調子が狂う。

だから笑っている今の顔の方が良い。

 

「よし、そうと決まったら、残された時間をがむしゃらにやってみるぜ!」

「ああ、俺も『絶拳』の練習をがむしゃらにやってみるさ」

「お前俺を殺す気か!?」

「てへ☆」

「だからお前がやるんじゃねえよ! それとちょっとはまってるだろお前!?」

 

なんか『てへ☆』って言うと体に元気が湧いてくるな。

まさか、技の最後に言ったら威力が上がるとか!?

……のは流石にないよな。ミラだったら本気でそう言って試してみるかもしれないけど。

 

「はあ……もういい。今日はもう寝る。」

「ああ、お休み」

「お休み………て、今、質問したいことが出来たけど聞いてもいいか?」

「何だ? 別にいいぞ」

 

どうせ、暇だしな。いつもなら猫黒歌を撫で回している時間だけどそれもないしな。

……帰ったら心ゆくまで撫でさせてもらおう。

 

「ルドガーの強さは何なんだ?」

「俺の強さか? ……そうだな」

 

戦闘センスとか物まねとか骸殻とか色々とあるけどさ……そんな物は全部付属品みたいなものだよな。俺の強さは一つだけだ―――

 

「何に代えてでもただ一つを守り抜く覚悟……だな」

「この前言ってた『大切なら、守り抜け、何に代えても』ってやつか?」

「ああ……」

 

俺は、出来た人間じゃない。

大切な者を守りたいっていう覚悟だけで今まで戦ってきた。

世界を救いたいとかそんな大それたことよりもただエルとの約束を守りたかったんだ。

もし、『魂の橋』を架けるときに世界を取るか兄さんを取るかだったら俺は間違いなく兄さんを守る為にみんなと戦っていたはずだ。

 

でも、それをせずに兄さんを殺したのはエルが―――約束の方が大切だったからだ。

より大切な物を守る為に他の大切な物を壊す……それが俺の生き方なんだ。

最後に自分の命を使って世界とエルを両方救って見せた。

だけど、どちらか片方しか選べなかったら俺は迷わずエルを選んでいた。

 

もし、両方を守れるなら自分の命を使ってでも守り抜いて見せる。

だけど、片方しか選べないのならより大切な方を選ぶ―――他の全てを壊してでもな。

 

まあ……今の俺にはそこまでして守りたい物がないんだけどな。

それにしても…守り抜いたその後は何をして生きればいいんだろうな?

もしかしたらさ、俺には誰かの為に生きることしか出来ないのかもしれない。

だからこそ、そうやって生きて来た昔が懐かしいのかもな……。

 

「ルドガー?」

「っ! ごめん。眠くてちょっとボーっとしてた」

「そうか、悪かったな。こんな時間に相談なんかして」

「気にするなって。困った時はお互い様だろ」

 

そう言って、笑顔を浮かべて何とか誤魔化す。

いやー、イッセーが単純な奴で助かったな、うん。

 

「……なんか今そこはかとなく馬鹿にされた気がするんだけどよ?」

「気のせいだろ」

 

何故ばれた!?

まさか、考えていることが出やすいと評判の俺の顔のせいか!?

これは早急にポーカーフェイスを習得しないとな……。

目標はガイアスレベルだ。

 

「まあ、いいか…じゃあ、今度こそお休みな」

「ああ、いい夢見ろよ」

 

ふう……結局、俺はまだ眠たくないけどすることもないし寝るか。

俺もいい夢が見られたらいいんだどな。

 

 

 

 

 

『…ピ、ピンキスト』

 

『ダメです! もっとピンクへの想いを込めてください!!』

 

『くうぅ……ピンキスト!』

 

『バホー! そんなのじゃいつまでたってもプロピンキストにはなれないんだからな!』

 

『いや、別になれなくても―――』

 

『『次は成功させてくださいね(るんだぞ)!!』』

 

『くそっ! こうなったら、やけくそだ! いくぞ!!』

 

『解放します! ピンクの力!』

 

『ピンクゥゥゥゥゥ!』

 

『ピンカァァァァァ!』

 

 

 

「ピンキストオオオオオオオッッ!!!」

 

 

 

「……朝からうるさいです」

 

「オウフッ!?」

 

どうも、たった今、後輩から目覚まし代わりのジャンピングニーをプレゼントされたルドガー・ウィル・クルスニクです。

多分、小猫は俺が寝言で魂を込めたピンクへの愛を叫んでいたのが気にいらなかったんだろうな。寝ていた俺の腹にジャンピングニーを決めたのにも関わらず。

さらに追い打ちをかける様にマウントから拳を振り下ろしているのが良い証拠だ。

まあ、おかげで目はバッチリ覚めた。しかし、顔が痛い。

 

「……いいウォーミングアップが出来ました」

「なっ! まだやるのか!?」

「……私の爽やかな朝を邪魔した罰です。……てへ☆」

 

無茶苦茶いい笑顔で後輩から死刑宣告を下されたルドガー・ウィル・クルスニクです。

明日の朝日どころか今日の朝日が拝めるかどうかも心配になってきました。

結局、騒ぎを聞きつけた来てくれた祐斗が小猫を引きはがしてくれるまで俺はサンドバックになり続けていたのだった。

……俺、今日の修行休んでいいかな?

 

 

 

 

~おまけ~

 

「ルドガーがいないとつまらないにゃー」

「あの……」

「ルドガーも私に黙ってどっかに行っちゃうなんて酷いにゃ」

「あのー」

「なに? ルフェイ」

 

突如としてどこかに行ってしまったルドガーに対してブツブツと文句を言っている所に

ルフェイから話しかけられたので思考を中断してルフェイの方を向く。

 

「ルドガーさんと喧嘩したのですか?」

「にゃ? 別に喧嘩はしてないけど、ルドガーったら私に何も言わずにどこかに行っちゃったら怒ってるだけにゃ」

 

まあ、本当はどこにいるかぐらい仙術で分かってるんだけどね。

ただ、何も言わずに行ったことに怒ってるだけにゃ。

 

「え? それって……浮気じゃないですか?」

「へ?」

 

一瞬、ルフェイの言っていることが分からず変な声が出る。

浮気? 別にルドガーはそんなことでいなくなったんじゃなくて合宿の為に居なくなったわけだし。そもそも、ルドガーは誰とも付き合ってないから浮気が発生するはずがない。

もしかして私が知らない誰かとルドガーが付き合ってる?

……あれ? 何だか考えてたらむしゃくしゃしてきたにゃ。

て、それより、ルフェイは一体何を勘違いしてるのにゃ?

 

「ルフェイ何でそんなことを聞くのにゃ?」

 

 

 

「えっと、ルドガーさんと付き合ってるんじゃないんですか?」

 

 

 

「にゃっ!? にゃにゃにゃにゃに言ってるのにゃ!!?

 べ、別に私はルドガーとつ、付き合ってなんかないにゃ!!!」

 

にゃうー!? どうしてこの子はそんなことを言ってるのか全く分からないにゃ!!

ルフェイは盛大な勘違いをしているか、あのサルに変なことを吹き込まれたに違いないにゃ!! そうにゃ! そうに決まってるにゃ!!

 

「でも、最近は毎日のようにルドガーさんのお家に行ってますし。口を開けばルドガーさんの事を話してますよね?」

 

た、確かに最近は毎日のようにルドガーの家に行ってる気が……。

と言うか私ってそんなにルドガーのことばっかり話してたの!?

にゃうー……何だかすっごく恥ずかしいにゃ。

ううう……今、絶対、顔が赤くなってるにゃ。

と、とにかく今は誤解を解かないと!

 

「いいかにゃ、ルフェイ? 確かにルドガーはイケメンで強くて優しくて一緒に居ると楽しくておまけに料理もプロ並みに出来たり、家事万能だったりするけど私達は別に付き合ったりとかはしてないにゃ」

「………えっと、今のは惚気ですか?」

 

ポカンとした顔でそう返される。

分からないにゃ。私はルドガーに対して思ってることをそのまま言っただけなのに。

解せないにゃ。

 

「とにかく、私達はそういう関係じゃない! そういうことにゃ!!」

「そうですか…でも、私はお二人はお似合いだと思いますよ」

「そんなこと言っても何も変わらないにゃ」

 

……か、顔がにやけるにゃ。

そんなこと言われると……ちょっとルドガーのことを意識しちゃうにゃ。

今でもふと気づいたらルドガーのことを考えたりしてるけど、それ以上に意識――あれ?

い、今まで気づかなかったけど、ふと気づいたら相手の事を考えていたり。

ずっと、相手のことを目で追ったりするこの行為って、も、もしかして―――恋!?

 

「だ、大丈夫ですか? 顔が真っ赤ですよ」

「だ、大丈夫にゃ! 大丈夫!!」

 

慌ててそう返すけど、内心はパニックを起こして全然、大丈夫じゃない。

どうしよう、こんなのじゃ次に顔を合わす時どんな顔して会えばいいか分からないにゃ!

にゃあああ!? どうすればいいのにゃあああ!!?

 




キャピキャピなジュード君が見たい人は「分史世界でオムレツを」のドラマCDを調べて見てください。
有能なルルと自重しない兄さんが聞けます(笑)

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