真剣で川神弟に恋しなさい!   作:ナマクラ

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<前回での十夜の戦果>
・【アルバイト】をした。
・【板垣竜兵】と【再会】した。
  ⇒【十夜】は【逃げ出した】
・【葵冬馬】【井上準】【榊原小雪】と【親不孝通り】で出会った。
  ⇒【葵冬馬】【榊原小雪】と知り合った。
  ⇒【三人】と【交友を深めた】   ▽

・現在の友達数:1人
  + 風間ファミリー(9人+1体)



第二十六話 「だが我は考えを変える気はない」

 ―川神院―

 

 八月も半ばとなり、夏休みももう折り返しとなったお盆あたり、俺はある準備をしていた。

 

 ワン子たちはルー師範代に連れられて一週間弱ほど前に山籠もりに入った。しかしルー師範代はワン子以外の修行僧も指導しなければならないし、総代である爺ちゃんがいない今川神院の留守を守らなければならない。そんな状況でワン子と山に籠り続けるわけにはいかないわけだ。

 修行自体はメニューをあらかじめ教えておけば、真面目なワン子はそれを十二分にこなすだろうし、サポーターとして着いていった大和と京がいる以上無理をしすぎる事もないだろう。

 ただ、傷薬とか虫よけとかの消耗品の補充はままならない。ケータイの電波も届かない場所なのだから補給しようにもどうしようもない。本来であればルー師範代がワン子の様子を見に行く際に持って行けばいいだろうが、あえて俺がその役目を引き受ける事にした。

 

 一応マッサージとか応急処置くらいなら昔の経験からできなくもないが、それは大和や京がやっているのだからわざわざやる必要はない。まあぶっちゃけ誰でも出来るような雑用だが、そんな雑用でも俺に出来る事でワン子のためになるのならやりたいと思ったのだ。今している準備はその準備である。……ワン子のためと言いながら大和や京の所望する物も持っていくのは疑問を感じてしまうが、気にしないでおこう。

 

「さて、こんなもんでいいかな」

 

 結構な量ではあるものの俺一人で運べるくらいの量に抑えられたその荷物を纏め終えて、ワン子たちのいる山へ向かう事にする。場所自体はルー師範代から聞いているので、大体昼過ぎから夕方辺りには着くだろう。

 まあ慣れない山道だから多少は遅くなるとみていた方がいいだろうし、早めに出発することにしよう。

そう考えた俺はいざ向かわんと川神院の門を潜り抜けた時、目の前におかしなスピードで走ってきていた人力車が急停車した。この人力車、見覚えがあるぞ……!

 

「フハハハハ! 我、顕現なり! 久しいな、川神弟よ!」

「く、九鬼先輩……?」

 

 その人力車に乗ってきたのは、以前ゲーセンでキャップやハゲ先輩と一緒にいた九鬼先輩であった。ちなみに人力車を引いていたのはKOSの時に俺を川に叩き込んだメイドさんである。

 

「あ、あの……きょ、今日はどういった要件で?」

「うむ。今日は時間ができたので一子殿に挨拶をしようと来たのだ。しかし一子殿の姿が見当たらぬのだが、出かけておられるのか?」

「え、えっと……その……」

「いちいち詰まってないでもっとはっきり喋ってください☆」

「え、は、はいッ! わ、ワン子なら修行のために山籠もりしてます!」

 

 いちいち威圧してくるメイドさんが怖い……KOSの時と口調が違うのも相まってさらに怖い……

 

「何と! 修行のために山籠もりとは……! 流石は一子殿……! しかしそれならば我に言ってくだされば山籠もりなどせずとも我が最新のトレーニング施設や世界レベルのトレーナーを提供したものを……」

 

 ワン子の山籠もりを知った九鬼先輩は、感嘆しながらも頼ってもらえなかった事に対して悔しく思っているようだった。……まあそんな設備を用意されてもワン子としては困るしかないだろうけど。

 

「……否! 今からでも遅くはない! あずみ! 今すぐ手配せよ!」

「はっ! 了解しました英雄様ァァ!!」

 

 って、ええ!?

 

「ちょ、ちょっと待った!」

 

 予想外の展開に思わず大声をあげてしまった。

 

「む? どうした川神弟? 何かおかしな事でもあったのか?」

「い、いや、その、ワン子からしたら、九鬼先輩にそこまでしてもらってもどう反応していいか困るんじゃないかと……」

「我が好きでやる事だ。ただ一子殿のお役に立てればそれでよい!」

「でもその、なんというか……」

「英雄様の決定を覆すとはいい度胸ですね☆ お仕置きしてあげましょうか?」

 

 それでも俺が食い下がっていると、メイドさんが笑みを浮かべながらその腰にある小太刀に手を伸ばしていた。あ、これはヤバい……

 

「待てあずみ。川神弟よ、思うままに述べるが良い。我が許す」

 

 と、俺が身の危険を感じてた時、九鬼先輩がメイドさんを制して俺の言葉を促した。

 

「……俺は、正直ワン子が九鬼先輩の事をどう思ってるのかとか、知らないです。でも、そういうの関係なく、ワン子はその好意を背負ってしまう。それが悪い事だとは言わないけど、きっとそれは、ワン子にとっても九鬼先輩にとっても、今後重く圧しかかってくる、と思うんです」

 

 ワン子は誰かに何かをしてもらったら、ちゃんと恩返しをしようとする。ただ、相手が九鬼先輩の場合、九鬼先輩の想いに応えるというのが一番のお返しになるだろうが、しかしお返しとして恋人になるというのは何か違うと断言できる。ワン子もそう思うだろうし、九鬼先輩としてもそれは望まないだろう。

 

「その、だから、ワン子も九鬼先輩の想いに返事を返しにくいというか……えっと、何というか、上手く言えないんですけど……」

「いや、お前の言いたい事はおおよそわかった」

「じゃあ……」

 

 どうやら俺の拙い説得が通じたようで何よりである。…………そう思った時期が俺にもありました。

 

 

「だが我は考えを変える気はない」

 

 

「……え?」

 

 その九鬼先輩の言葉に、絶句した。そんな俺を知ってか知らずか、そのまま俺に語りかけてくる。

 

「お前の言っている事は正しいのやもしれぬ。我が良かれと思った事で一子殿の重荷になる可能性は否定せん。だが、我は一子殿を想うからこそ我自身が最善だと思う事を行うべきだと考えている。ならばこそ! そのような仮定の話などどうでもよい! 一子殿のために何かをしたいからこそ、我は我に出来ることをして差し上げたいのだ!」

「いや、でもそれで状況が悪くなるかも……」

「そのような可能性に怖れていては、何も掴み取る事は出来んぞ。それに例え状況が悪くなったとしても、また再び立て直せばいいだけの事。違うか?」

「……!」

 

 その言葉に俺は何も言い返せなくなってしまった。

 

「では行こうではないか。一子殿のおられるその修行場まで。川神弟よ、案内するがよい」

「……え?」

「元々はお前も行く予定だったのだろう。ならば丁度良いではないか。早く乗るが良い」

「え? え?」

「……英雄様の命じゃなきゃテメェなんぞ乗せねぇんだ。さっさと乗れや」

 

 戸惑う俺を半ば無理やり人力車に乗せて、人力車は走る体勢へと移った。

 

「いざ往かん! 愛しの一子殿の下へ!」

「了解しましたっ! 英雄様ァァァァッ!!」

「えええええええ!?」

 

 

 ……こうして俺は九鬼先輩たちとともに山籠もりしているワン子の下へ向かう事となったのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 ―山中―

 

 俺の予定よりも早い昼前にワン子たちが山籠もりの拠点にしている地点についたのだが、川神院前でしていた最高のトレーニング施設を用意するという話を九鬼先輩は宣言通りワン子にも提案していた。当のワン子はどうしてそこまでしてくれるのかと疑問に思っていた。特に理由もないのにそこまでしてもらうわけにはいかない、というワン子らしい理由からくる疑問だった。

 

 その際に、九鬼先輩は自身の子供のころの話をした。

 

 子供のころ、九鬼先輩は野球に打ち込んでいた。その才能は当時小学生にして『奇跡の剛腕』とまで称されるもので将来を期待されていたらしい。

 九鬼先輩自身も野球という競技の面白さにのめり込んでいき、父親の許可を取り野球界に九鬼の名を残すつもりだったという。

 

 

 だがその夢は、外国で起きたひとつのテロによって崩壊した。

 

 

 日本でも大きなニュースになったあのテロに九鬼先輩は巻き込まれ、多くの人が死んでいった中で、それでも奇跡的に生き延びた。

 

 しかしその時に負った腕と肩のケガが、九鬼先輩から投手生命を奪ったのだった。

 

 夢を断たれた九鬼先輩は、同じように夢を目指すワン子にかつての自身を重ねて、ワン子には夢を叶えてほしいと思うようになった。だからこそ自分に出来る限りのサポートをしてあげたいのだそうだ。

 

 それを聞いたワン子は、その九鬼先輩の想いに感謝をしながらも、その誘いを断った。

 

 ワン子曰く、最高の指導者なら既にルー師範代がおり、サポートは大和や京がしてくれている。何よりも、九鬼先輩のその思い自体が既に自分にとっての力になった。それが理由だった。

 そのワン子の言葉に、メイドさんは納得いかない様子だったが、他ならぬ九鬼先輩はその言葉で納得していた。

 

「我の想いが、少しでも一子殿の力になれたのなら、よかった」

 

 そう言い残して、九鬼先輩とメイドさんは去って行った。

 

「……いきなり来ていきなり去ってったな」

「でも元気出たわ」

 

 九鬼先輩がここに来たのは半ば無理やりだったんだが、ワン子の役に立てたようで何よりである。ただ俺自身が特に何もしていないので何やら複雑な気分ではあるのだが……

 

「ま、元気出たならよかったぜ」

「あ、十夜いたんだ」

「京、ヒドくね?」

 

 確かに九鬼先輩たちのインパクトが強くて影薄かったけど、色々と物資を持ってきてやった相手に対してその態度はないと思う。

 

 その時、自然物ばかりに囲まれたこの場所でいきなり電子音が鳴り響いた。

 

「お、九鬼が来たおかげで電波が入ったぞ」

「大和のケータイに恐ろしい勢いでメール来てる……」

 

 ちなみに電波の届かないはずのこの場所に電波が入ったのは、先行してワン子たちのいる場所を探っていたメイドさんが立てた簡易アンテナのおかげである。それにしても大和のケータイが鳴りっぱなしで止まる気配がないのはどうかと思う。

 

「あ、アタシのケータイにも……メール、スゴイ数……」

 

 そして大和ほどではないにしてもワン子のケータイからも着信音が鳴り続けていた。

 

「そうか……九鬼クンだけじゃなくて、他にもたくさんの皆がアタシの事を想ってくれてる……」

 

 着信したいくつものメールに目を通したワン子は、それらから何を感じ取ったのか、そのままケータイの画面をジッと見つめていた。

 

「……ルー師範代の言ってた事、わかった気がする」

 

 そしてそう呟いたワン子は、愛用の薙刀を手にして川に入って滝の前まで行き、そこで構えた。

 

「みんながいるからアタシはこうしていられる。こうして修行出来る事自体に感謝して、振るっていく!」

 

 その言葉と共に薙刀が滝に向かって振るわれた。

 

 その一振りは、ワン子にとって納得のいくものだったようで、その顔には先程までなかった清々しい笑みが浮かんでいた。

 

「あはは! 修行ってステキー!」

 

 

「……ワン子、吹っ切れたみたいだな。アレでこそワン子って気がする」

「そうだね。その切っ掛けもワン子らしいね」

「……てか俺がする事、なさそうだな」

 

 薙刀を振るうワン子を見て安堵しながらも、しかし俺はまた別の事について考えていた。具体的に言えば九鬼先輩の言ってたある言葉についてである。

 

 九鬼先輩の提案というか行動力に確かにワン子は困惑していた。そこまでは俺の予想通りであった。

 でも、九鬼先輩が来た事でここに電波が入ってみんなの思いがワン子に届き、何より九鬼先輩の言葉自体もワン子にとっての励みになった。若干滅入っていたらしいワン子の心を立て直す結果になった。

 

 

 つまり、九鬼先輩の行動はワン子にとってプラスになった。

 

 

 可能性を怖れていては、何も掴む事は出来ない。九鬼先輩の言う通りだった。

 

 何かを掴みたいのなら、行動するしかない。ならば……

 

 

 

 

 ――俺は、一体何を掴みたいのだろうか……?

 

 

 

 

 

 そんな疑問が頭に浮かんだ時、またも電子音が流れた。しかしそれは大和やワン子のではなく、かといって俺のでもなく、何と京のケータイから発せられていた。さらに言えば、着信音の長さから言ってメールではなく電話である。

 

「京に電話? 山籠もりの事を知ってるファミリー以外に京に電話を掛ける知り合いがいるのか……?」

「失敬な。いやまあ私も驚いたけど」

 

 さっきの意趣返しに皮肉を返してみたが、あまり効果はないようだ。というか京本人も驚いてた。

 

「というか早く出た方がいいんじゃないか?」

「それもそうだね。もしもし……」

 

 大和の言葉を受けて京は電話に出た。…………もし大和が促さなければ居留守を使ってたかもしれない、と思ってしまった俺の性根は腐っているのかもしれない。

 

「……え?」

 

 そんなバカな事を考えていたのだが、何やら京の様子がおかしい。一体どうしたのかと思ったが、その答えはその後すぐに京の口から零れ落ちた。

 

 

 

「――お父さんが倒れた……?」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 京の父親が倒れた。

 

 幸い、もう意識は戻っていて本人曰く元気らしいが、念のために検査入院をすることになったらしい。

 

 なので娘である京は一度実家に戻る――もっと正確に言えば父親の入院している病院に行く事にした。そして動揺していた京を心配した大和も一緒についていく事になった。

 京は「これは大和を親に紹介するいい機会」とか何とか言っていたが、いつもの張りがなかった事から空元気であるのが俺でも見て取れた。あまり家族の事を良く言わない京でも、父親の事は心配なのだろう。

 

 

 なので一度見舞いに行く事になった二人の代わりに、俺がワン子のサポートをする事になった。

 

 

 大和と京は俺にサポートのために必要な注意事項を短時間で叩き込んで急いで山を下りる事になった。

 ワン子も心配はしていたものの、京から大したことではないから気にせずに今は修行に集中するように、と説得されて意識を再び修行モードに移行させた。京の事が心配だろうに、それを修行に特に持ち込まずに気持ちを切り替えられているのは、さすがの集中力である。

 

 

 そうしてワン子の本日の修行が終了した。が、俺にとってはここからが本番である。

 

 実際にワン子が薙刀を振るっている時に俺がサポートできることはない。

 

 なのでワン子のサポートというのは、修行終わりのワン子のケアという点に集約される。……まあワン子の修行中も、大和の置いていった図鑑を片手に食べられる野草を集めたり、木の枝とかで釣竿を作ったりとかしてたが。

 飯を作るのも一苦労だった。まあ四苦八苦しながらも何とかちゃんとしたものは作れたからそこは良しとしよう。

 そして今はワン子の身体のケアをしていた。

 

「手ぇこんなんにまでして……痛いだろうによくやるわな」

 

 ワン子の潰れたマメだらけの手を消毒してからグルグルと包帯を巻いていく。

 

「じー……」

「……ん、何だよ?」

「何か包帯巻くの手馴れてる感じだなーって思って」

「まあ、昔取った杵柄ってヤツだな。応急処置が限度なんだけど……っと、これで良し」

 

 意外と体は覚えているものだと自分でも少々驚きながら、包帯を巻き終える。

 

「じゃ、次はマッサージするからうつ伏せになって」

「ハーイ」

 

 返事をしながらうつ伏せになったワン子に、俺はマッサージをするために跨るように、しかし体重はかけないように膝立ちの状態に移行した。

 

 しかし、平常心を保っているように見えるかもしれないがこの時の俺は凄まじい程に緊張していた。

 

 仮にも、多少なりとも好意を抱いている女子に跨って、マッサージのためとはいえ普段の軽いスキンシップ以上に体に触れるのだ。

 

 

 

 健全な男子高校生である以上、緊張しないわけがない!

 

 

 

 だがしかし! これでも俺は紳士だと自負している。そんな俺がここで変態的に興奮するわけがない。

 

 たとえ掌が汗でビッショリになってて、思わず生唾を飲み込み、さらに息が荒い状態で指をワキワキと動かしていても、決してそんな変態的な感情があるわけではないと言っておく。

 

 そしてその手付きのまま、ワン子にマッサージを施すべくゆっくりと手をワン子の背中に近づけていく。あと少し……あと少しでワン子の身体に……!

 

「あ、そういえばなんだけど……」

「ふぇッ!? な、何だ、どうした?」

 

 あと少しで触れるという所でワン子が話しかけてきたので、変な声が出てしまった。……声が裏返ったのは別に焦っていたわけではない。現在進行形で焦っているわけでもないし、パニックで頭の中がぐちゃぐちゃになってるわけもない。

 

 

 

「十夜はどうして武道をやめたの?」

 

 

 

 しかし、そのワン子の一言によって俺の思考は硬直した。

 

 紳士的思考も、変態的思考も、パニックも、言い訳を考える事も、すべてが止まった。

 

 その思考の硬直は一瞬の事だったが、しかし俺の沸き立った頭を冷やすのには十分すぎた。

 

「……何でそんな事聞くんだよ? 理由なんて知ってるだろ?」

「確かに理由は大和から聞いた事あるけど……でも、よく考えてみたら十夜本人からは聞いた事なかったなぁって思って」

 

 ……確かにその通りである。俺は自分の口から武道をやめた理由を誰かに話したことはない。

 別に俺が話さなくても大和とかが話してくれるから話す必要がなかったっていうのもあるが、しかしそれ以上に俺自身が話したくなかったというのが強い。

 

 本当の理由(・・・・・)なんて、誰かに知られたいとは思わない。

 

 ただ、ワン子の気持ちも分からなくはない。

 

 師範代の夢が閉ざされるかもしれない中で、まあ「才能が勿体ない」とか何とか言われている俺が、何を切っ掛けに、どういう心境で武道をやめたのか、詳しく知りたくなったのだろう。

 ワン子の心境がわかる俺は、どうするか少しの間悩んだ後に、口を開いた。

 

「……俺にもさ、夢があったんだ」

「夢……?」

「まあ夢というよりは目標って言った方が合ってるのかもしれないけどさ。そんで、今回のワン子みたく壁にぶつかった。」

 

 それは夢を叶えるために乗り越えないといけない壁。しかし、その壁は高くて高くて越えられるかどうかわからない程だった。

 

「そんな壁に直面した時、ワン子が諦めずに乗り越えようとしたのに対して、俺はそこで諦めた。ただそれだけの話だよ」

「それって……」

「はい、話はこれで終わり!」

「ぎにゃーーーっ!? か、体がぁっ!」

 

 ワン子が何か言おうとしたが、これに関して言える事はこれ以上ないのでマッサージを開始することによって強制的に話を中断する。

 

「マッサージしてやるからおとなしく休んでな。じゃないと持たないぜ?」

「あふぅ~~~!!」

 

 変にシリアスに入ったせいか、ワン子の身体を意識して変に興奮することもなくマッサージをする事が出来た。

 

 

 ……なお余談ではあるが、マッサージを終えた後に、その、ワン子の感触とか、マッサージの時に上げていた声とかで、その……ひたすらと悶々としてしまったのは仕方ない事だと思う。

 




<今回での十夜の戦果>
・【九鬼英雄】【忍足あずみ】と山中を往った。
  ⇒【九鬼英雄】と交友を深めた。
  ⇒【忍足あずみ】の好感度が下がった。
・【川神一子】の気力が戻った。
・【椎名京】の【父親】が倒れた。
  ⇒【椎名京】【直江大和】は山を下りた。
・【川神一子】の【ケア】をした。
  ⇒【精神的な疲労】が溜まった。   ▽

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