MUV-LUV ALTERNATIVE ACE   作:もち猫

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まぁ、オマケの様なものです。


第8話「反省会と謀略」

side・黒川

 

演習終了後、強化服から軍服に着替えて髪を整える。

一応は公の場。身だしなみを整えなければ。

 

「伊隅少尉か、どうした。」

「少佐、ひどいですよ。」

 

ロッカールームから出てきて早々、伊隅少尉に酷いと言われる。

しかも身に覚えが無いので、酷いと言われてもピンと来ない。

 

「伊隅少尉、主語を明確にしろ。でなければ分からん。」

 

尋ねてみると、半泣き状態で詰め寄られる。

 

「どうしてさっき僕を突き飛ばしたんですか!?」

「被弾しそうだったから。」

 

ハッキリと言い切る。

あの状況下、被弾するよりは突き飛ばして被弾させない方が効率は良い。

 

「あの後、管制ユニット内の天地が逆だったんですよ!!」

「それは済まない。だが少尉、君がもう少し警戒しておけばこうはならなかったぞ。」

 

とりあえず彼女の言い分は認めながら、釘を刺す所は刺しておく。

 

「そ、それは……。」

「周りが見えなくなるほど熱くなるな。冷静で居ろ。」

「……はい。」

 

少し言い過ぎたか。

一応はそこまで激しく怒っていないが、少し心配だな。

 

「だが、あの状況下で逃げずに戦ったのは褒めよう。」

「あ、ありがとうございます。」

 

とりあえず激励はしておいたが、効果は分からない。

しかし、女性の心とは難しいものだ。

 

 

 

伊隅少尉と一緒に会議室に入ると既に大半のメンバーが座っていた。

 

「少尉、いつもの席に。」

「あ、はい。」

 

真面目状態の大咲に促され、席に着く伊隅少尉。

 

「総員起立、敬礼。」

 

八神の号令で敬礼をする。俺はそれに手で着席を指示する。

 

「着席。」

「さて、今日はご苦労様。良い経験になったと思うが、それは後回しだ。

まず大咲大尉、八神大尉。」

「「はい。」」

 

二人とも丁寧にも起立する。

そこまでしなくても等と内心、思いながら口を開く。

 

「小隊長としての立場から見て、彼女達の腕はどうだ。」

「シュミレーターでの訓練で鍛えられていますので、実戦には耐えれます。」

「しかし、実際の経験が少なさ過ぎるのが難点ですね。」

 

やはり実機での経験が不足しているか。

今度、シュミレーターのデータを弄くって奇襲からの出撃でも造ってみるか。

あるいは……。

 

「虎の穴にでも放り込むか?」

「敬礼。」

 

ほぼ反射的に号令と敬礼を同時にする。

全員起立し敬礼する。

 

「おう。楽にしてくれや。」

「着席。」

 

号令をかけて再び座り直させる。

俺は立ったままだが。

 

「副司令から何かありますか?」

「そうだな……、黒川少佐、赤点ギリギリだな。」

 

手厳しいが、伊隅少尉たちの一件を含めれば妥当か。

 

「そうですね。今回は否定できません。」

「予測はしていた?」

「一応は。」

 

正直、まだ連携が甘い所があり、その結果が伊隅少尉が被弾しかけたことだろう。

だから、今の状態では満足できない。

特に、ここは少数精鋭で行かなければならないのだから。

 

「なら問題点は直せるな。」

「一ヶ月中には。」

 

副司令の言葉に力強く頷く。

さて、リアに言ってプログラムを製作しないとな。

大見得を切った以上、有言実行するのみ。

 

「じゃ、後は任せたよ~。」

「副司令、どちらに?」

「デート。横浜の海の幸を堪能しようと思ってね。」

 

横浜の海の幸。

だいたい誰と会うのか分かった。

まあ、数名は分からないのか疑問を浮かべているが問題ないだろう。

隠語などそんなものだ。

 

「了解。ついでに、黒ウサギにお菓子でも買ったらどうですか?」

「あ~、そうするか。」

 

すると、副司令が佇まいを直したので、俺たちもそれに習う。

 

「諸君、今回の演習はご苦労だった。今後も精進しろよ。以上だ。」

 

言い終わると足早に部屋から出て行く。……押しているのだろうか、副司令は。

 

「伊隅中尉。」

「はい。」

「ここが宿泊所だ。」

 

俺は地図を渡す。

場所は帝都城のお膝元。俺の親父の実家である。

今は掃除だけ頼んでおり、それ以外は手をつけられていない。

無論、今日の為に食材は搬入しているがな。

 

「敷地外だから事故や怪我に注意してくれ。」

「了解です。」

「我々は書類を提出する。予定では夜までには帰る。」

「はい、では失礼します。」

「あぁ。」

「みんな、行くよ。」

 

伊隅中尉の号令の下、全員出て行く。

 

「伊隅中尉、平和な時なら保母さんだったかな?」

「なら少佐は軍人でしょうね。」

「何故そう言い切れる?」

 

八神が決め付けるように言う。

少し心外と思いながら、とりあえず理由を尋ねてみる。

 

「単純よ。それ以外の仕事が見つからないし。」

「分からんぞ。存外、保父さんになっているかもしれないぞ。」

 

次の瞬間、二人が噛み殺すように笑う姿を見て、不思議に思う。

 

「何だ?」

「「似合いすぎる(よ)。」」

「むっ。」

 

自分では想像できないが、この二人はどんな想像をしたのだろうか。

……聞いてみるか。

 

「因みに、想像では?」

「ひよこ柄のエプロンを着て、子供達を寝かせつけている姿とか。」

「私は子供達と無邪気に遊ぶ姿ね。」

「……。」

 

何となく想像はできたが、今の自分とは余りにもかけ離れすぎている。

 

「もしもの事だ。現実は軍人で、人殺しだ。」

 

そう、俺は所詮人殺し。

大義を掲げようが、信念を持とうが、人殺しは人殺し。

この手で未来を守ることは出来ても、未来を育てることは出来ない。

 

「でも楽しいかもね。暇つぶしには。」

「……暇つぶしも良いけど、そろそろ時間よ。」

 

俺達は今回使用した分の弾薬や推進剤などを書類に記載していく。

結局、終わったのは夜9時だった。

 

 

side・????

 

密室で1人の男と2人の女が密会していた。

無論、これはそれほど色っぽい物ではない事は3人とも承知している。

 

「で、あんたの情報ってのは?」

「こっちの商品は部隊の練度の向上と新型機。

そっちの商品は例の計画の遂行と例の物10kg程かな。」

「高いわ。もう少し安くしなさい。」

 

男は苦そうな顔を作る。

 

「妥協だよ、人生は。そもそも何故妥協が必要かと言うと……。」

「無駄話は止しなさい。あんたの御託聞いてる暇はないの。

大体、あんたの後輩と同じ事を言わないで。面倒だから。」

 

バッサリと切り捨てられた。

 

「酷いな。兎にも角にも新型機には新商品を二点もつけるんだよ。

相場的にはこっちが損するんだよ。」

 

体勢は項垂れているが相変わらず表情からは何も読めない。

隣の少女も不思議そうに首を傾ける。

 

「知ったことじゃないわ。」

「ですよねぇ。」

 

男は体育座りをし床にののじを書く。

 

「……じゃあさ、害虫に対する面白い情報をあげるよ。」

「へぇ、どんなのかしら?」

「これだよ。」

 

男は懐から1枚のCDケースを取り出す。

 

「無料体験版だからね。中身は軽いよ。」

「待ちなさい。」

 

女性はCDを受け取ると慣れた手つきでパソコンに読み込ませる。

 

……

………

 

女性は椅子から飛び上がる。

その拍子に椅子が倒れる。

 

「こ、これは!?」

 

女性は青い顔をする。

まるで開けてはならないパンドラの箱を開けたかのような表情で。

パソコンのモニターを凝視する。

 

「どうだい?あれを10kgじゃ少ないくらいだよ、この情報は。」

「……信憑性は?」

「90%。」

「90%ですって!?」

 

男の自身を持った答えに女性はさらに驚く。

その表情はまるでありえない物を知ったような顔だった。

 

「勿論。ソースは確かな物だし、君自身も薄々は感じてたんじゃないのかな?」

「………。」

「さて、どうするかね、自称天才君。

この世界には君の認識を遥かに上回る物事があるのだよ。

だが、君はそれを知る権利を持った。どうする?」

 

これは毒だ。しかも身を滅ぼしかねない毒だ。

しかし、毒だと分かりながらも女性は男の話に乗ることにした。

それ以外に道は無いと自身に言い聞かせながら。

 

「……分かったわ。10kg譲渡するわ。」

「交渉成立だね。さてウサギちゃん、人参だよ。」

 

男は少女に抱き枕サイズの人参を渡す。

 

「……人参、嫌いです。」

「好き嫌いはだめだよ。ま、家の白兎達と何時か会わせてあげるよ。」

「はい……。」

「さて、と。」

 

男が立ち上がる。

 

「では私はお暇させてもらうよ。そろそろ忙しくなりそうでね。」

「……もし、世界に機械仕掛けの神が居るとしたら、あなたはどう思う?」

「そうだね~・・・・・・。」

女性の不意な質問に数拍の間の後、男はいつもの飄々とした表情で。

 

「この戦争は人間と糞虫との戦争だ。手前らは首を突っ込んでくるな!!

とかどうだね。」

 

そう言うとそのまま出て行った。

 

 

 

女性はコーヒーを一口。

 

「後藤、あんたは何処に進みたいの?」

 

女性~香月夕子~の問いに答えるものは誰も居なかった。

 


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