MUV-LUV ALTERNATIVE ACE   作:もち猫

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仮眠を取ったらこんな時間になってた。
何で?


第3話「人員補充」

2001年3月1日

 

side・黒川

 

 

衛士養成学校。

一応、さまざまの武家の坊ちゃん嬢ちゃんが通う衛士の育成機関。

そこに俺はある人物に会いに来た。

校門を抜けた先の大きな木の下にその人はいた。

髪の色は白銀、顔立ちも日本人では無い、場違いな雰囲気だが逆にそれが少女の雰囲気を出している。

のんびりと手にはおにぎりを持って美味しそうに食べている。

数分後、食べ終わったのかお茶を飲みながらまったりし始める。

 

「リア。」

 

声を掛けるとこちらの方を向き驚いた表情を作ったかと思うと、突如走ってくる。

 

「お父さん!!」

 

抱きついてくるリアを踏み止まって受け止める。

俺の大切な家族、リーリア・黒川の暖かい温もりを肌で感じる。

 

「約束どおり、生きて帰ってきたぞ。」

「そうだよね、お父さんは生きて帰ってくるもんね。」

 

リアの泣きそうな声に心が痛む。

いつもそうだ。この子に気苦労ばかりかける。

あの時も、あの時も、いつもいつもこの子はもう帰らないかもしれない帰りを待ち続ける。

 

「もちろんだ。」

「で、今日はどうしてここに?」

 

抱擁を解いて本題に入る。

 

「あぁ、ちょっとばかり用事がね。」

「用事って?」

「これを渡しに来た。」

 

そう言うと鞄からA4サイズの茶封筒を鞄から取り出しリアに渡す。

リアは早速中身の書類を見始める。

 

「……入隊許可書?」

「そう。この部隊にお前を引き入れたいらしい。」

 

すると少し困った顔を作るリア。

 

「何か書類に不備でもあったのか?」

「いや、書類に不備はないよ。

けど、前提条件として訓令兵如きがこれほどの計画に入ってもいいの?」

 

その言葉を肯定するように頷く。

 

「構わない。お前の演算処理能力と戦術機特性が欲しい。」

「了解。今後はどうすればいいの?」

「その書類の必要事項を記入して学校に提出してくれ。」

「了解。ところで、家族が増えたって本当?」

「あぁ。本当だ。」

 

リアの問いに頷いて答える。

するとリアは笑顔で嬉しそうな表情をする。

 

「会いたいな~。」

「会えるさ。まぁ、昔のお前と同じくらい気難しいぞ。」

「へぇ~、楽しみだな。」

「じゃあ、用事も済ませたし帰るな。」

「うん、道中気をつけてね。」

「ああ、お前も風邪とか引くなよ。」

 

そう言うと俺は踵を返し、訓練校を後にした。

後ろではリアが手を振って見送っていた。

 

 

……1週間後、2001年3月8日

 

 

ブリーフィングルームは少し活気だっていた。

理由は今日、最後の隊員が到着するからだ。

その為か亜矢やあきらが新入りの洗礼を考えている様だし、

イーニァやクリスカは少し落ち着かない様子だ。

しかし、やっと部隊としての行動が取れる。

と、扉を叩く音がする。

 

「入れ。」

「失礼します。」

 

入出する3人の少女達。

 

「そこに立ってくれ。」

「「「了解。」」」

 

そして白板の前に立つ。

 

「左から自己紹介を頼む。」。

「帝国陸軍第4連隊所属、伊隅まりか中尉です。よろしくお願いします。」

「帝国陸軍第133連隊所属、伊隅あきら少尉です。よろしくお願いします。」

「衛士養成学校所属、リーリア=黒川です。

まだ至らない点が御座いますが御指導のほど、よろしくお願いします。」

 

3人の新任が敬礼するが、リアだけ少しぎこちない。

 

「良く来た3人とも。俺は中隊長の黒川敏行少佐だ。以降は俺の指揮下に入ってもらう。良いな。」

「「「了解。」」」

「さて、先にリーリア訓練生。」

「はい。」

「特別出向と言う事で特例で少尉候補生としての階級を与える。

階級に恥じぬ責任をもった行動をしろ。良いな。」

 

少尉の階級証を手渡す。

 

「はい。以後は尉官として恥じぬ行動を取りたいと思います。」

「さて、今からは共に活動する仲間を紹介する。まずは大咲大尉からだ。」

 

そう言うと全員が立つ。

 

「大咲亜矢よ。階級は大尉、よろしくね新入りさん達。」

「八神あきら大尉よ。伊隅さんと名が同じだから、とりあえず今は八神と呼んで。」

「クリスカ・ビャーチェノワ少尉だ。よろしく頼む。」

「いーにぁ・しぇすちなしょういです。よろしくおねがいします。」

「しかし……これは少佐の趣味ですか?」

 

伊隅あきら少尉の視線が微妙に痛い。

 

「後藤副司令に聞いてくれ。あの人が選んだ面子だ。」

「所でお父さん、あの二人が新しい家族?」

「そうだ。……知っているのか?」

 

少し驚いた声を出す。知っているとは思わなかったからだ。

 

「勿論。イーニァ、クリスカ、久しぶり。また会えたね。」

「りあ、またあえたね。」

「な、何故ここに!?」

 

イーニァは普通に挨拶をし、クリスカは驚愕した。

やはり昔のあれを知っているからなのか。

 

「危うく死に掛けたけど拾われてここにいるよ。」

「そ、そうか。」

「気にすることは無いよ。選んでここにいるんだから。」

「そうか……。」

 

やはり彼女もあの頃のあの子を知っているのか。

ならここまで変化したことに驚くのも頷けるな。

 

「それに、割と面白い人生だから、後悔も何もしてないよ」

「うん、わかる。あのひとはつき。いつもそこでみまもってる。」

「正解。そう言う事よ、クリスカ。」

「私にはまだ分からない。」

「そっか。でもね、何時かは分かるようになるよ。」

「そうだな。」

 

どうやら話は纏まったと思ったので俺は手を叩く。

 

「さて、本日から俺達の拠点となる所に案内するから、付いて来てくれ。」

 

そう言うと俺は隊員を引率する。

 

side・まりか

 

正直、驚いている。

私みたいな衛士が帝国軍でも屈指の精鋭部隊、鋼の槍連隊の外接部隊とは言え、隊員になれた事に。

 

「ここが格納庫だ。今は機体が来ていないから空だが、8機も揃えばかなり壮大になる。

そこの君、榊さんとシゲさんは居ますか。」

「班長と主任ですか?ちょっと待ってて下さい。」

 

呼び止められた整備兵がある部屋に入っていき、少しして二人の整備兵がこちらに向かってくる。

 

「おう、黒川か。女侍らせてここに来るたぁ、いい度胸だな。」

「ほ~んと、いい身分だよね黒川君。」

「あはは、勘弁して下さいよ。」

 

少佐と談話する壮年の男性と若い男性。

壮年の整備士は曹長、若い男性は軍曹と佐官と対等に話せる筈じゃないのに、どうして?

 

「さて、紹介しよう。

右が榊清太郎整備班長。左が斯波繁男整備主任。

俺達の愛機を一手に担う整備班の長達だ。」

「よろしくな、お嬢ちゃんたち。」

「よろしくね~。」

『よろしくお願いします。』

 

全員で敬礼をして返答する。

しかし、整備班の長ならば少佐と談話していてもおかしくないか。

 

「無理を言うかもしれませんが、その時は。」

「出来れば、徹夜だけは勘弁して欲しいな。」

「おれっちは良いけど、効率が落ちるからね。」

「了解です。」

 

榊整備班長と斯波整備主任が少し笑みを浮かべ、少佐が苦笑する。

 

「あと、あまり整備員に迷惑を掛けるな。彼らが居て初めて俺達は安心して戦場に出られる。

まぁ、流石に先方が原因なら、こちらもそれなりの対応は取るから安心しろ。」

「まぁ、家の若けぇ奴らが暴走したら直ぐに言ってくれ。それなりの処罰をさせるからな。」

「了解です。よし、次の場所に行こうか。」

『失礼します。』

「おう。頑張れよ。」

「頑張ってね~。」

 

榊さんや斯波さんに見送られながら次の場所に向かう。

 

 

次の部屋には戦術機のコックピット部分が複数置かれた部屋だった。

 

「ここが部隊専用のシュミレータールームだ。各国の全ての戦術機データが入っている特製仕様だ。

だから、ここはほぼ俺達専用になる。」

 

部屋の中に案内される。

 

「さて、全員今からシュミレ-ターに向かい、新人の歓迎会を行うぞ。」

 

その瞬間、扉が閉まり鍵が掛かる。

 

『!?』

「そうね。私たち相手に時間無制限の耐久レース。」

「泣き喚き叫んでも救いは無いわよ。」

「久々だからか気分が高揚するな。」

 

少佐達の顔が笑っているが、私達には笑っているようには見えない。

むしろ、般若の微笑み。

 

「笑顔が怖いよ、お父さん。」

 

リーリア少尉候補生が、青い顔で声が震えながら言う。そして自分も含めた他の子もガタガタ震えている。

 

 

その後の記憶があやふやで、どうにも思い出せないが、とりあえず気付いた時には朝だった。

 

 




本来は陸軍なので少尉候補者が正しいのですが、

>この陸軍少尉候補“者”は現役の准士官・下士官の中から特に選抜されて
現役少尉となる教育を受ける者のことである。
(wiki原文抜粋)

ってな訳で、候補者だと個人的に語呂が好きじゃないし、説明からも何か違うと思うので、
少尉候補生とします。

2012年11月09日、一部文章を修正。

因みに、少尉の階級所を渡したのは自分の趣味です(笑)

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