Seelen wanderung~とある転生者~   作:xurons

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ユウキの容姿はALOの顔立ちに、キリトの上下紫ver.の装備です。
あとキャラ紹介に後筆を加えました。


砂漠平原

 

 

…結論から言うとしよう。

 

 

「せいっ!はっ!」

 

「グルォォォ!」

 

「ナイス!はぁぁっ!」

 

 

現在、俺は完全手ぶら状態にある。それは何故か?

それはユウキが目にも留まらぬ速さでワサワサと湧いてくるトカゲ型Mob共をズババーンと斬り裂き、そこに3m程度に巨大化したアッシュが固有スキルの一つ《戦吼(ハウリング・ウォー)》による超音波で傷を負った奴らに一時的なスタン(怯み)状態を付加して隙を作り、またユウキがザックザクと次々にHPを刈り取っていく…という見事な連携が出来上がっている為、完全に俺は蚊帳の外…もしくは第三者の立ち位置にある。…いや、俺‘‘達’’か。

 

 

「あはは…やる事無いね私達…」

 

「…そうだな。まっ、楽出来て良いけどな」

 

「もう…怠けは命取りになるのよ?」

 

「解ってるよ。…まぁ当分は平気そうだがな」

 

 

そうYes・ハンター化した二人から一歩引いた位置にいる俺の隣に立ち苦労顏を浮かべる彼女…レイナはすっかり有名になった血盟騎士団ことKobの副団長であり、普段は今の様にふんわりと柔らかい物腰なものの、戦闘時の気迫は女性とは思えない鬼気迫った気をを発する‘‘白の遊撃手’’の異名を持つSAOでも数少ない女性プレイヤー。

その力は片手剣・短剣・片手槍・弓の四種類の武器を操る臨機応変な戦闘方を得意とし、攻略組みとしても上位に名を連ねる実力者である。

 

実力に関しては今更言わなくても感はあるが、何せ彼女も俺と美弥同様1000人のβテスターの一人として先駆けてこの世界に入り浸った分、この死の世界を生き抜くに対する予備知識は豊富なのだ。相応の実力者であっても全く不思議は無い。

因みに、目の前で我が相棒とドッタンバッタンやってる少女に俺を現在絶賛敢行中のクエストに誘う様促したのは何を隠そうレイナであり、ユウキとはKobに以前誘う為に一悶着あった結果、現在は意気投合した姉妹の様な関係にあるらしい(因みにその際二人がKob勧誘をかけて決闘を繰り広げたが、僅差でユウキが勝利した模様)。

そして、今は俺をクエスト同行者に推薦させた詫びにこうしてギルドから離れ、ユウキも含めたパーティを組んでいるという訳だ。

 

 

「…いつもお前はこんな感じなのか?」

 

「え?あ、うん。人が増えたから各部隊の育成とかね。大体…一部隊6人が今は4つかなぁ?」

 

 

そして俺の問いかけに対しサラッとメンバーの大体を語った彼女だが、つまり現在Kobのメンバーは部下の6部隊×4=24人+アスナ・レイナ(副団長)・ヒースクリフ(団長)の合計27人という事になる。

その内団長のヒースクリフは正念場となる攻略以外は滅多に姿を現さず、実質的リーダー権限はアスナとレイナのW副団長に握られ交互に指導や訓練に臨んでいるらしい。

そんな以上の何処ぞの会社員染みた事を幼馴染みで同い年の彼女が成している、と思うと…

 

 

「…お疲れ様です」

 

 

それくらいの労いは言ってやりたくなる。で、

 

 

「え…あ、ありがとう…?」

 

 

返答は戸惑い気味のコレ。どうも指導者として力を付けても、巷で有名な‘‘女子力’’とやらが上がるわけでは無いらしい。

俺は男でその辺りの方面にはかなり疎い自信があるから解らないが。

 

 

「(まぁいいか…)おいユウキ。ノルマはまだか?」

 

「えーとね〜…うん、まだあと1残ってる。」

 

「一体…か」

 

 

まぁひとまずそれはさて置くとして、俺は手元付近に正方形の形で展開したマップを見やった。

現在、俺達3人と一匹の一行は先日踏破されたばかりの第25層主街区の北方…迷宮区の真反対に位置するフィールドダンジョン(以下:FD)『砂漠平原』に来ている。

名の通り辺り一面真っ平らな砂漠が広がるここは、先程のトカゲ型Mobも然り非常に強い日差しが照りつける灼熱のエリアであり、まだ踏破されたばかりでプレイヤーの姿は俺達以外無い。

そしてそんな激熱砂漠に何用かと申せば…あるクエストの報酬を狙っているからに他ならない。しかも、それは俺達プレイヤーにとって全員が全員恩赦があるエクストラスキル(以下:Eスキル)であり、俺が面倒ながら行く気を起こし、レイナが付いて来たのたもそれが理由なのだ(因みに情報源はユウキ…と通し俺に回したレイナ)。

で、そんなEスキルを報酬とする『灼熱の禁地』と名付いたこのクエストの内容は…

 

 

 

FDに湧くレッドリザードマン×29倒す

FDボスのサンドウェイバー×1を倒す

Eスキル《戦闘治癒(バトルヒーリング)》

 

 

 

…という段取りだ。

因み《戦闘治癒》とは、名の通り時間が経過する毎にHPが10秒間の感覚を開け回復し続ける補助スキルの一種。

これまたゲームによって変わるが、このSAOでは基本減ったHPはポーションやヒールクリスタルなどの回復アイテムを使わぬ限りHPゲージを戻す手段は無い。

そして今、デスゲームと化したこの世界においてHPは最重要の能力であり、無くなればそこでジ・エンドな理不尽極まりない場所。

だからこそ、ここで《戦闘治癒》を手に入れられれば後々命を引き延ばすにしろ戦闘にしろ兎に角大助かりするスキルなのだ。だからこそ…この戦い、負ける事は許されない。

 

 

「二人共。武器の耐久値やアイテムは大丈夫か?」

 

「うん!まだまだやれるよ!」

 

「クルッ!」

 

「大丈夫。しっかり準備したからね」

 

 

気合い十分な様子の二人とアッシュに、内心ホッと胸を撫で下ろす。が、緊張するのも解って欲しい。

ここは何度も言うが最前線の僅か2層下で、このFDの情報は前持って頼りにしてる情報屋に教えては貰ったものの…正直勝てるか怪しい所なのが本音だ。

 

 

「…よし。じゃあ行こう」

 

「うん!/えぇ!」

 

「クルッ!」

 

 

が、それは今更とやかく言う程俺は腰抜けちゃいないし、もう覚悟はとうに出来ている。万が一にも死ぬ事など想像もしていない正に諸刃の剣と言える今の俺達が連想すべき言葉は…

 

 

「…必ず、勝つ」

 

 

その呟きは、ボッボッと砂に音を立て決戦に向かう俺達の足踏みにより消し去られていった。やがてポーションによる回復を終え、更に北へ歩く事5分前後…もう層外周に近づいて来たある範囲へ踏み込んだ瞬間、何も無かった砂の地に突如赤く輝くラインが迸り、それは幾つも伸び繋がり一つのインドで見そうな模様となった。そして…

 

 

『ジュルル…』

 

 

次々と目の前に膨大な数のポリゴンが組み合わさっていき、それは軽く10mはありそうな赤い大蛇《サンドウェイバー》を形創った。

奴はジュルル…と蛇特有の舌舐めずりを鳴らし、10分の1程度のサイズしかない俺達をこことは無縁な海を連想させる青い瞳で見下ろし戦闘態勢を取っている。

 

 

「来た!」

 

「うん…!」

 

「グルル…!」

 

 

それに伴い前衛の俺とユウキはそれぞれ愛剣を、後衛のレイナはまだ使用者は少ない弓を実体化させ、アッシュの背に跨る。特に後衛のレイナには弓を射る間、僅かにだが動けない隙が存在する。もし、そこを狙われれば大ダメージは必死…だからこの戦闘法を考案した。動き回りながら戦えは、少しでも大ダメージのリスクを減らせると思ったからだ。

で、後のやり方は…まぁ戦いながらやるのみだ。

 

「さ…行くぞ!」

 

「「うん!」」

 

「グロロォ!」

 

 

俺とアッシュとユウキとレイナ。

攻略組みでもあり、未踏破の地に命かけ挑み続ける死闘がまた、こうして再び幕を開けたのだった。

 

 


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