~休止中~ ラブライブ!出会いが全てを変えた世界で 女神達の夢の囁き   作:文才皆無。

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七夕編第六話目ですよ

皆さん一年ぶりです。文才皆無。です。生きてます。
多くは語りません、楽しんでいただければそれで結構ですから…

どうぞ


番外編 七夕、夜空の星になれたら…

「私のお願い事…それは『引っ越した先でも真姫ちゃんとずっとお友達でいたい』…だよ。」

 

今…彼女はいったいなんて言っただろうか。聞き間違いだろうか?だって今、星那の口から出た言葉は…

真姫は混乱していた。今目の前で話している彼女はなんて言った?分からない。分からない…そんな言葉がずっと警鐘を鳴らすように響き続いていた。なんで?どうして?そういう言葉で埋め尽くされていく。

星那ちゃんの言葉の衝撃はまるで鈍器で殴られたように真姫を揺さぶった。

 

「…嘘、よね?」

「………。」

「だって…やっと仲直りしたのよ?それなのに」

「本当だよ。引っ越すのは夏休みに入る直前。」

「…あと二週間じゃない!なんで教えてくれなかったの!?」

 

ヒステリック気味に慟哭するように声を荒げていた真姫。それが理不尽な怒りであることは本人も分かっているようだった。…それでも真姫は事態が飲み込めないでいるからだろうか、自分を抑えられていないようだった。歯止めが効かない事もあるだろう。

だが、それで傷付くのは自分自身であろうという事に気が付いてない。これは止めるべきだと行動に移そうとした…。だけども俺はその行動を止めて己の至らなさに恥ずかしくなった。

 

…星那ちゃんが動いたからだ。

 

「…私ね、真姫ちゃんと喧嘩したまま引っ越せるって心の何処かで救われるような気がしてた。狡いよねそんなの。背負わせたまま逃げようとしたんだよ。」

 

独白するようにいう星那ちゃん。

嘘だ。俺は知っている…そんなの嘘だって、それに真姫だってそれが嫌で泣いていた星那ちゃんを目視している。そんな嘘で塗り固めて誤魔化そうとしているのはここに居る全員知っている。だけど、星那ちゃんは責めて欲しいというように嘘で罪を被ろうとしている…。

確かに星那ちゃんは謝って嫌われても居なくなれるんだからいいよね…って自分を嘲るように痛ましく嗤ってたよ。だけど今はもう、分かってるんだろうが!

それが間違ってて、その想いは尖って自分に突き刺し続けて血を流すように瞳から雫を流す事になったんだって事を。

 

だけど、続く星那ちゃんの言葉を俺も真姫も怒りを抱きながらも黙って聞いていた。どうしてかなんて知らない。だけど何故か切り出すことを躊躇う自分がいた。

…否定しちゃいけないような…そんな気がしてしまっていたんだ。

 

「それが仲直りするまでの私。」

「っ…!?じゃ、じゃあ今は!」

「勿論今は違うよ。引っ越すのは…真姫ちゃんと離れ離れになるのは辛いよ…でもね?悲しいけど、辛いけど…だけどね、頑張れるんだよ。」

「そんなの無理してるだけじゃない!」

「そう…かもしれない。だけど真姫ちゃんにはしっかり聞いてほしいの…。」

 

俺は何も言えなかった。星那ちゃんの瞳の奥にあったその色を知っていた。幾度となく見続けてきた色、俺の好きで嫌いなその色が見えてしまった。そして分かってしまったから…俺にはもう留める言葉は出せない出来るのは背中を押してあげることだけで、それももう星那ちゃんには必要もないのだろう。だから俺には二人のやりとりを黙って見守るだけだ。

星那ちゃんの瞳の奥にあったのは揺らぐ事の無い強い決心と引くことの出来ない愚直なまでの真っ直ぐな想い、そしてほんの少しの後悔。幾度となく経てきた別れの色であり、そして旅立ちの色だった。

別れは嫌いだ。悲しいから。でも旅立ちは嬉しい。これから起こる全ての事象に一喜一憂し成長する糧となるのだから…。だから嫌いでも好きなのだ。

 

「真姫ちゃんは私にこう言ってくれたよね?『出会えないってくらい遠く離れてるのに手が届くんじゃないかって位置に見えて…それで星座として繋がり続ける。ずっと遠くても繋がっている』って」

「………。」

「私はね?真姫ちゃんとどんなに離れてても繋がっていたい。離れていてもそれでもいいんだって言ってもらえたように思えた…。

だから悲しかった引っ越しも別れじゃなくてずっとずっと…真姫ちゃんとお友達でいてもいいんだって言ってもらえたような気がして…だから!だから…」

 

我慢していたんだろう。粗方言い終えた星那ちゃんは嗚咽を漏らしながらも頑張って最後まで言おうとしていた。だけど最後の言葉を言ってしまえばそれは悲しくて寂しくてどうしようもないその想い全てを肯定して認めてしまう事になってしまう。

現実が受け入れられなくて、だけど前に進みたくて…でもそこに居続けたい…そんな想いが見え隠れしているのを俺は気付いた。真姫も勿論気付いたのだろう。気づけば真姫は怒っていた顔から一転、その目尻に涙を浮かべていた。でも真姫は泣かない。それはきっと星那ちゃんが泣くのを堪えているのに自分が泣くのはいけないと思ったのかもしれない。彼女なりの意地で、友人として最後まであろうとする高潔さが伺えた。

 

「…そうよね。離れていても友達…寂しいけど、私も星那とずっとずっとずぅっと一緒。でもね!寂しいなら泣いたっていいじゃない!!仲直りする前の私はね、そうやって我慢して我慢して…それがずっと正しいって勘違いしてた大馬鹿なのよ。我慢して何が変わるの!私は何にも変わらなかったわ。意味がない訳じゃないわ…でも、少なからず星那が泣いても迷惑だなんて私は思わない!!」

 

言い切った真姫の顔は凛としていてカッコ良かった。

そして、本来なら救う筈の自分でさえ心の何処かで救われたような気がして…その言葉が胸にスッと染み込んでいった。教えるつもりが教えられたというのはこういう事なんだなと、少し遠い目になりながらも成長を嬉しく思う。

 

「あり…がとう。私、真姫ちゃんに言い出すの怖かった!仲直りする前からずっと…言い出せなくて…黙ってたこと責められるのも嫌だった。喧嘩して離れててそれが間違ってるって分かったけど…でも怖かった!」

「馬鹿ね…そんなの誰だって怖いわよ。

私が星那の立場でもきっと怖かったわ。だから星那、よく頑張ったわね」

「う…うあ…っ…うわぁぁぁぁぁん」

 

 

 

抱き合う二人は星に照らされ輝いていた。

真姫は優しく星那ちゃんの背中を撫でながら大丈夫だからと声をかけ続ける。星那ちゃんも仲直りの時に吐けなかった言葉を、胸の内を曝け出せたからだろう…俺にはその涙は悲しみではなく安堵だったような、そんな気がした。だからこれが本当の意味での仲直り、二人が真の意味で心を通じあわせた瞬間だった。そしてその後日談。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の仲は元通り以上になり別れなど感じさせずまるで姉妹のように仲良く遊んでいる姿が見受けられた。

だけど現実は残酷で楽しい時間は早く過ぎ去ってしまう。刻んだ時間は二週間…丁度星那ちゃんの引っ越しの当日になってしまっていた。

見ているものはそんなに仲良く遊んでいる姿に別れの日を想い心配にもなった。だけど二人には哀しみではなく幸せが目の前にあったのが分かるが故にその事を言う気が起きず、水を指すぐらいなら見守るしかないのだろうという結論に行き着くのだった。

 

「そういえばママがこの前言ってたんだけどね?」

「真姫ちゃんのママさん?」

「うん。星那のお母さんとママが喧嘩別れしたお話の後の話で言われたの。

人の記憶って感情と強く結び付いてるらしくて最後の記憶が一番新しい記憶になるから印象に残っちゃうんだって言ってたの。ママ達の仲は喧嘩で離れ離れになってしまって楽しかったけど悲しい記憶になっちゃったから私と星那にはママ達みたいに寂しい記憶にしないで欲しいって言われたの…。」

「…うん。私も、真姫ちゃんとの記憶を悲しい思い出にしちゃうのは嫌だな。」

 

二人の言葉のは節々から一緒にいたい。と思いやる気持ちがよく感じられた。二人は気持ちが通い合っていると言える。この二週間で二人はともだちから本当の親友と呼べる者になれたのだと分かる。

 

「だからね、私明日は星那にお別れ言いに行かない!」

「え?」

 

突拍子もない真姫の発言。それを聞いた星那ちゃんも俺と同じように何を言ってるのか分からないと言わんばかりにキョトンと呆然とする。

 

「星那とバイバイしたら私絶対泣いてちゃうもの。だから私、今日此処でまたねって言って笑ってお別れする。だって、星那との楽しかった思い出が全部悲しくなるのなんて嫌なの…。だから!」

「…うん、そっか。私もそうだよ。真姫ちゃんと仲直りして、前みたいに笑っていられるようになったのに、その思い出も喧嘩したときみたいに悲しい記憶になっちゃうのは嫌。最後に真姫ちゃんに見送って欲しいって思ってたけど…そういう事なら仕方無いよね。」

 

星那ちゃんの気持ちも真姫の言葉も互いに理解できた。だからこそ胸が痛くなる。星那ちゃんの我儘、真姫の残していたい思い出、互いが互いを想うが故の選択。

俺はそんな二人に掛ける言葉は持ち合わせていない。そんなことしてしまえば、二人の思い出を傷付けてしまう…。だけど、どうしても…理不尽で傲慢で最低だとしても…俺は、星那ちゃんの想いも、真姫の意見も尊重してあげたかった。

なんとかならないか、どうしたら救ってあげられる。救うなんて言葉で着飾ったが、それは違った。傲慢に、独りよがりに二人に悔いが残らないようにしてあげたかった。

これは他でもない俺の我儘。真姫でも、星那ちゃんの為でもない、俺の為の行為だ。

 

きっと別れというものに俺が真姫と星那ちゃんに昔の俺を重ねてしまっている。そして、昔の後悔が無くなる訳がないと分かっていながらそれでもその先に居る自分が彼女達がこうならないように…今いる自分の場所に至らぬ様に…ただそれだけ。

 

それは昔言われたヒーローとは違う、俺の行動。

でも、気持ちに嘘をついたら傷ついてしまう。気付かなくても傷付き、疼くように己を蝕むものだ。だからこれはいつもと違うようで結局いつも通りの俺の我儘。

それをただ自分本位に押し通すだけ

 

決意は改めて固まった。

俺はどう、彼女達に自分の意見を、意思を、理念を捻じ曲げさせ、互いのすれ違いを解き、新たな継ぎ目を紡ぐかに思考を巡らせる。

絶対に悲しい別れなんかにさせてやらない。そんな結果を俺は許さない。

新たな決意の炎を一つ胸に灯し、目の前にあった想いを紡がせる。寄り添うようにあった糸をこの手で結び合わせてみせる。きっとそれが俺のできる二人への最後の施しだろうから。

 

 

 

 

そしてその夜俺は真姫に夢の中で出た反則的で無理矢理捻じ曲げ、屁理屈のようなその案を授けた。

どうするかは真姫に委ねるが、きっと彼女もこの案に乗る。それは互いが互いを思い合うからこその反則技。互いを譲歩させた上で互いの意見を汲み取らせたものだから。

 

だがそれはあくまで自分は互いの案の衝突を回避したにすぎない。星那ちゃんの、別れを避けられないなら最後に真姫ちゃんに見送られたいっていう考えと真姫の笑った顔のまま別れを言いたいっていう思いを尊重させたままそのどちらも譲らない折衷案を伝えただけだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーside 真姫ー

そして、私は星那との別れの日を迎えた。

私はお母さんに頼んでとある服を一緒に探す。そして、探していた服はお母さんがあっさりと見つけてくれた。

 

紫色の生地の背中側の裾の所に虹、その虹の上の背中の中央に輝く白い星が入った服。

最近気に入ってるシンプルな黒地に赤色の星が胸にあるデザインが入った服は今日はお休み。胸に星を刻み続けた、星那と見た天の川を思い出すから好きなのだ。

 

でも今日は…今日だけはお休み。

思い出を思い出すんじゃない。最後に残しに行く!

夢斗は私と星那が互いに笑えるように、笑ってまた会えるように、そういってこの作戦を練ってくれた。それどれだけ嬉しかったか、きっと夢斗自身は気付いてないでしょうね…。

私はその作戦の要になるそれを知らなかった。でも、ママも星那のママさんも好きだったらしいからきっと分かるだろうって…夢斗が歌ってくれたその曲はスッと私の胸にも届き響かせた。歌詞の言葉が今も残っている、残響するかのように夢斗の声とその余韻に浸ったぐらいだったわ。

ママ達が好きになったこの曲…自分達に重ねたのかなって思うとやっぱりママも私も似ているんだと思った。そして聴いた私も同じように重ね合わせてしまう。

それは星那と星那のママさんにも言えるのかな?

そして、私はお母さんに渡されたその服を着た。

私はその曲に私の想いを全て託すことに決めた。

 

私達は別れて自分の道をあるいていく…だけど今のわたし達はそうじゃなくてもきっといつかまた同じように笑い合える日が来るって思えるから。

だからこそ、託せる。

 

星那の引っ越しまではあと少し…。

不安も沢山ある。言いたい事も沢山…沢山ある。だけどそれすら押し込めてその服を一撫でした。

 

籠める想いは全てあの歌に詰まっているのだから

だから、話す言葉は必要ない。ただ、星那が笑ってくれるだけでいいんだから!私は私の出来る最高の私を彼女に見せつけてやる。

離れても私の姿が霞まないくらい盛大に記憶に刻ませてあげるわよ!!

 

 

 




七夕編、あと一話で7話なんですよ…つまり分かりますね?

ご愛読ありがとうございました!(うちきりじゃないです。)

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