ドラゴンボールZ ~未来の戦士の戦いの記録~   作:アズマオウ

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更新遅れました。悟飯とトランクスの出会いですが……ここはあまり力をいれませんでした。あえて。

理由は、出会った当時は悟飯はただの筋肉マッチョにしか見えないから。しかもベジータがいないので、一般人と感覚は同じですしね。悟飯に違和感を覚えて当然かもしれない。

ではどうぞ!


幼いサイヤ人との邂逅

 あの惨劇のあと、僕はひとまず家に戻った。するとそこには、母さんだけじゃなく、ブルマさんたちもいた。僕以外のみんなが殺されたと聞いた瞬間、泣き崩れ、絶望へと落とされた。

 立ち向かえる戦士は、一気に消えていってしまった。たった二人の悪魔によって。たった二人の人造人間によって。

 

 僕は、今すぐにでも戦いたかった。けれど、敵うはずもない。何故なら、僕よりも上の実力を持つベジータさんだって殺されたのだ。今からいくのは無謀だと、みんなから止められた。

 

 だから僕は修行した。一度も奴等と戦わずに。

 それに母さんのために勉強もした。僕のなりたい偉い学者さんになって名誉を得るためじゃない。父さんが死んで悲しみに暮れる母さんの望みを叶えるためだ。塾にも通っていたが、わずか1ヶ月でその塾は人造人間に破壊された。

 

 スーパーサイヤ人にも、もう慣れていった。荒ぶる気持ちは消えないが、自在にコントロールはできるようになった。これなら勝てるかもしれないとは思ってはいないが。少なくとも、お父さんを越えなくてはいけない。3、4年前にお父さんが地球に来たフリーザを倒したときのように、強くならないと。

 

 

 

 そう思いながら強くなろうと努力していくと、気づいたらあの惨劇から6年の月日がたっていた。僕の体も成長し、身長も母さんを越えた。もしかしたらお父さんだって越えているはずだ。

 

 エイジ774。僕は16才になった。そろそろもう、人造人間を倒せるはずだと自覚した年であった。

 

 

***

 

 

「あら、いらっしゃい悟飯君」

 

「こんにちは、ブルマさん!」

 

 俺ーートランクスは、眠い目を擦りながら階段を降りていた。話し声が聞こえたから起きちゃったのだ。まだ8才なんだからうるさくしないでよ母さんと心のなかで愚痴りながら、リビングのドアを開けた。

 

「あら、トランクス。ごめんね、まだ6時だわね。ごめんなさい」

 

 母さんーーブルマという名前ーーが、にこやかに俺に謝る。俺はむすっとして抗議した。

 

「うるさいから起きちゃったよ」

 

「ごめんね、けどあと30分で起こすつもりだったのよ。今日学校だもの」

 

「30分って結構重要なんだよ母さん!」

 

 母さんに真剣になって怒る俺は、ふと母さんの横にいる男の人に気づいた。穏やかな表情で俺と母さんのやり取りを見ている。

 

「ねえ母さん、この人誰?」

 

「ああ、紹介してなかったわね。この人は悟飯君、孫悟飯君よ」

 

「よろしく」

 

 男の人は軽く頭を下げた。穏やかで優しそうで接しやすそうだった。服装は、紺色の薄い道着一枚だけだ。けれどそのわりには、筋肉がすごい。開かれている胸は胸襟で膨れ上がっており、腕はくっきりと筋肉が見えている。思わず俺は、目を大きく広げてみていた。

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「はは、ベジータさんの息子だとは到底思えないな」

 

 悟飯さんというひとは、僕を見てそういった。

 

「ほんとね。いい子に育ってくれて嬉しいわよ」

 

「ベジータって……悟飯さんはお父さんのことを知っているんですか?」 

 

「ああ、そうか。トランクスはベジータさんの顔を見たこともないのか」

 

「死んじゃったから……」

 

「そうか。ブルマさんまだ話してなかったんですか?」

 

 悟飯さんは母さんに聞いていた。

 

「ええ。まだ話すのは早いと思ってたし……それに、ねえ……」

 

「まあ確かにわかりますけどね」

 

 二人が何を話しているのか全くわからなかった。けれどいい気持ちではなかった。

 

「何を話していたんだよ、母さん」

 

「まだトランクスには刺激が強い話ってことよ」

 

「はあ?」

 

「あっと、トランクス! もう学校の時間よ!」

 

「うわっ!! やべっ!」

 

「早く朝御飯食べなさい! あ、悟飯君も食べる? ちょっとしかないけど」

 

「じゃあ、折角なんで」

 

 悟飯さんも一緒の朝食になった。

 うちの朝食は、トーストと目玉焼きとオレンジジュースしかない。ただそれだけあれば十分だけど。僕は一人前で限界だ。

 けれど悟飯さんは、トーストを20枚食べ、目玉焼きも10人前食べていた 。一体どこにあんなたくさんの食べ物を入れられる胃袋があるのか。これがちょっとなのかよと疑った。しかも食べ方はきたなかった。母さんは、いつものことよといって、食器を洗い始めていた。

 つくづく変な人が来たものだと僕は思いながら、僕は学校へといった。

 

 

***

 

 

「では、本日の授業はここまでとする」

 

 西の都から外れた中の都の学校で授業が終わった。俺は早速家に帰ろうと、ホイホイカプセルを出した。その中に一人乗り用飛行機が入っている。教室からでて、校庭から帰ろうと思ったその時だった。

 

『全校生徒に連絡します! 人造人間が近くに来ています! 今すぐ校舎に戻りなさい! 繰り返します! 人造人間が近くに来ています! 今すぐ校舎に戻りなさい!』

 

「えっ!? 人造人間が!?」

 

 俺は、放送を聞いて耳を疑った。人造人間といえば、いまこの世界を破壊し尽くしている悪魔と母さんから聞いている。絶対に近寄るなと言われているのだ。

 俺は指示にしたがって校舎へと急いで戻った。そして教室へと戻る。

 

「いいですか! 絶対に勝手な行動はしないように!」

 

 怯えて震えている女子や、強がっている男子に向かって先生が叫んだ。俺は素直にしたがった。戦うなんてできやしない。なんとか立ち去ってくれ……! そう願った。

 

 だけど現実は非情だった。3階から見える町並みが爆音と共に破壊されている。人々の悲鳴も轟音で掻き消され、恐怖を煽っていく。爆音はどんどん大きくなっていき、ついに二人の人造人間が校舎に入っていくのが見えた。

 

「先生! 人造人間が校舎に入ってったよ!!」

 

 俺は先生に叫んだ。先生はライフル銃を取りだし、襲撃に備えた。かっこよかったが、そういってられる余裕はなかった。

 隣のクラスで悲鳴が響く。そして、爆音。いくら小学生でも、この二つの情報があれば何があったか想像がつく。襲われたんだ。みんなが恐怖で震え、失禁してしまった。

 

 その直後。ドアから二つの影が現れた。

 

「ここ、ガキ多いな」

 

「そりゃそうだよ。学校だもん」

 

「あっはは、お漏らししてらぁ」

 

 男女二人組だ。俺は、ただ怖かった。何もできなかった。けれど先生は果敢に挑んで、銃を撃った。銃弾が男の額へと命中し、凄まじい音が響いた。やったかと思った。普通なら死ぬはず。

 そう、普通なら。

 

「どいつもこいつもわかんないのかな……俺たちに銃が効かないってことがさ」

 

 男がニタニタしながら銃を撃った先生に近づいてくる。そして、後退する先生の胸ぐらを左手でつかんで右手を先生の腹に突き出した。

 体をいとも簡単に貫かれた先生からは鮮血が噴き出している。男が腕を体から抜くと、先生は崩れ落ちて、倒れた。息はもうない。

 

「17号、一気にやっちゃおうよ。めんどくさいから」

 

「だな」

 

 女がそう言うと、男は指先に光を宿した。おそらくあれで俺たちを殺すつもりなのだろう。何もできない俺たちは教室の隅で震えるだけだった。それを楽しんでいるかのようににやにや笑いながら、死の一撃を放とうとしたその時だった。

 

 光弾が男と女の背中に命中した。爆発音を上げて、動きが止まる。目つきがきつくなり、さっと後ろを振り返った。

 

「誰だっ!?」

 

 男が鋭い声で叫ぶ。後ろにいる人は、先ほどの光弾でつくられた煙で見えない。

 

 やがて煙が薄れていく。すると、そこに人が現れた。紫色の道着を着ている。大きく開かれた胸からみて、かなりの力のある男だろう。現れた顔は厳しそうな表情をしており、襲来した二人の顔を睨みつけている。

 

「誰、お前?」

 

 女が突然現れた男に冷ややかに聞いた。

 

「僕は、孫悟飯だ」

 

 現れた男は厳しい声で告げた。その瞬間、俺は驚いた。今いる人は、今朝、母さんの近くにいた青年だ。

 

「孫……。孫悟空とは違うのか」

 

「お父さん……孫悟空は死んだよ。8年前にね」

 

 突然現れた悟飯さんは、静かな声で答える。

 

「おいおい、まじかよ。それじゃあ俺たちの目的がなくなるな」

 

「なるほどな、お前たちの目的はお父さんを殺すことだったのか。残念だな」

 

「まあいいけどな。どうせ俺たちふたりでやれば倒せない敵なんていないからさ」

 

 男は自信たっぷりに答える。悟飯さんは何も反応せず、一層表情を厳しくする。その瞬間俺は、本能的に恐怖を感じた。

 

――怒ってる……!

 

 表情が少し厳しくなっただけだ。なのに、体中ににじみ出ている怒りが見える。気のせいだろうか、髪の毛がゆらゆら揺れている気がした。

 

「で、どうするんだ? 俺たちの邪魔をしたからにはタダで済むと思うなよ」

 

「そう簡単にいくかな……?」

 

「自信満々だね」

 

 女が挑発するような目つきで悟飯さんを見る。けれど悟飯さんはまるで動じず、ますます怒りを増幅させていく。

 

「僕は……俺はずっと待っていた。お前たちを倒し、ピッコロさん、ベジータさん、クリりんさん、ヤムチャさん、天津飯さん、餃子さん、ヤジロベーさんの仇を討つ日を……。だからこの日まで修行してきた。貴様たちを――」

 

 ぎりっと歯が鳴った音がした。すげえ、怒っているんだなって感じた。俺は、後ずさることしかできなかった。

 

「殺すっ!!」

 

 小さく吐き出されたその言葉とともに、悟飯さんは飛び出した。男は、飛び出された拳をやり過ごし、カウンターのけりを入れる。それを悟飯さんは自身を消して躱した。

 

「き、消えた!?」

 

 クラスメイト全員が叫ぶ。男のけりが宙へと流れて体勢が不安定になった。そこを悟飯さんは、組んだ両手で殴りつけた。男は吹っ飛び、廊下の窓へと突っ込んだ。ガラスが割れ、男は地面へと落ちて死ぬはずだ。俺はやったと思い込む。

 

 だが、甘かった。ガラスを突き破りはしたが、ふわっと空中で”停止”した。悟飯さんの顔を覗くが、驚きはない。

 

「へえ、少しはやるじゃないか」

 

「ああ、修行してきたからな」

 

「そう。じゃ、ふたりでやろ、17号」

 

 17号と呼ばれた男は、こくっと頷く。そして二人で悟飯さんに飛び掛かった。

 

「お前たち! 早くここから出るんだ!!」

 

「わ、わかった!」

 

 ここは危険だと判断した悟飯さんは、俺たちに鋭く叫んだ。俺は急いで教室のドアから逃げて、学校から出た。

 

 今頃、凄まじい死闘を繰り広げているのだろう。殴り合う音、破壊される音、空気が揺れる音、地面にぶつかる音が、短時間で響き渡っている。けれど俺は振り返る間もなく、ひたすら逃げた。

 

 そしてカプセルをポケットから取り出して飛行機を出し、家のある西の都へと向かった。

 

 他の友達もうまく逃げてくれていることだろう。僕はエンジンを最大出力にして母さんのもとへと向かっていった。

 

 

 

***

 

 

(トランクスは逃げてくれたようだな……あとは――!)

 

 トランクスたちを逃がした僕は、人造人間と闘った。二人を一人で相手するのは辛い。けれど次第に慣れていった。やはり強くなっているんだ。そう思うと、気持ちが楽になり、相手の攻撃も見えてくる。

 

「うらっ!!」

 

 二人の攻撃が外れた瞬間を狙い、回し蹴りを繰り出す。仰け反った二人は、こちらを睨みつけるが、隙ができている。それを狙って僕は気功弾を放つ

 

「ぐわっ!」

 

「ちっ!」

 

 二人が若干吹き飛び、間ができる。今度は、僕の番だ。怒りをぶつけてやる!!

 

「はあっ!!」

 

 僕は怒りを開放した。気が膨れ上がり、オーラは金色になった。体から力が湧き上がってくる感じが好きだ。僕は、あふれんばかりの怒りとともに飛び出して、人造人間たちに向かっていった。

 

 短い黒髪の、17号という男の人造人間は、そんな僕を見て笑いを濃くした。僕のラッシュについてこれている。

 

「そういえば、18号に殺された奴もこんな髪の色してたな」

 

「言っておくが、俺はその人を超えたぞ」

 

「なるほどな。まあたしかにそうらしいが、まだまだだな」

 

「なにっ!?」

 

 僕は癪に触って、重いヘビーブローをした。それは深く刺さったのだが、さほど苦しんでいなかった。

 

「その程度の威力か? それで勝とうだなんて、甘いなおい!」

 

「がっ!!」

 

 17号は僕の顔面を殴りつけた。僕は吹っ飛び、ビルへと衝突する。そこはちょうど会社のオフィスだったようで、デスクやらなんやらにぶつかっていった。僕は高速で飛び立ち、奴へと殴りかかる。

 

 しかし、金髪のショートカットの女、18号が立ちふさがる。一瞬立ち止まってしまったのがいけなかった。18号は手から何発もののエネルギー弾を放出したのだった。僕は躱す暇もなく全段くらってしまった。

 

「があ……!」

 

 うめき声わげてらっ化していくが、奴らがそれを見逃すはずもなく、俺に殴り掛かってくる。17号と18号が僕を挟み撃ちにしてリンチにした。しかも全くシンクロした動きで。その後僕を打ち上げて、再び下へと突き落とした。

 

「うわああああっっ!!」

 

 ドゴオオオオオオン!! という轟音と共に僕は地面にたたきつけられた。もはや動く力すらなかった。7年間修行してきたのに……全く歯が立たない。無念だった。涙が出そうだった。

 

――ち、ちくしょう……! 手も足も、出ないなんて……。

 

 

「どうした? こんなもんか?」

 

「ち、ちくしょぉ……!」

 

「まあ、とりあえず消しておこうよ」

 

「そうだな」

 

 すっと17号の手がかざされる。終わりだと思った。こんなにも簡単にやられるなんて。悔しかった。

 

――敵とれなくて……ごめんなさい。ピッコロさん……。

 

 僕の意識は、頭に浮かんだ恩師の姿と共に、目映い光に包まれて消えていった。

 

 

 

***

 

 

「あら、気づいたのね、悟飯君」

 

 俺の母さんがベッドで寝ている悟飯さんに声を掛けた。悟飯さんはゆっくりと目を開けて、起き上がるがすぐに沈み混む。傷が痛むのだろう。

 

 すごい怪我だった。全身を包帯で巻かれ、血液がにじみ出ていて、終始呻き声をあげている。

 

「中の都で倒れていたから運び出したんだけど……大丈夫悟飯君?」

 

「がっ……く、くそぉ……!」

 

 悔しそうに涙を流していた。母さんはなにも言わなかった。こういうとき母さんは強いと思う。たまに避難とかするけど、その時だってなにも動揺とかせず、僕を守ってくれている。

 さっきの悟飯さんだってそうだ。駆けつけてくれて、僕たちを助けてくれた。殺されるかもしれないのに、戦っている。俺は、憧れを感じていた。

 

「何かあったらそこの電話機で呼びなさい。すぐ駆けつけるわ」

 

 母さんは俺の手を突然引いて言った。一人にさせたいのだろう。子供の俺でもわかった。けれど悟飯さんは、かすれ声を発した。

 

「待って……くだ、さい……。トランクスと、話がしたい、です」

 

「トランクスと?」

 

 俺は驚いた。あのときすぐ逃げたことを怒るんじゃないのか? そう思うと少し怖くなった。悟飯さんが逃げろと言ったとき、さっきの二人組・人造人間ーー母さんから聞いたーーと向き合ったときのあの怒りのオーラ。俺はそれを思い出してしまった。

 

「ええ……言いたいことが、ある」

 

「だ、そうよトランクス。行きなさい」

 

「う、えぇ……わかったよ……」

 

 乗る気じゃなかったけれどすべては晩御飯のためだ。母さんの機嫌が悪くなると、俺の晩御飯が半分になる。

 

 俺は、手を振る母さんを恨みたっぷりな目で見て、悟飯さんに向き合った。足は震えている。

 

「トランクス」

 

「は、はいっ!」

 

「んな畏まるなよ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「はは、まあいいか。トランクス、お前ーー」

 

 怒られると思った。ギュッと目を瞑り、怒声が響くのを待った。

 だが、悟飯の口から発せられた言葉は意外なものだった。

 

「お前、空飛べるか?」

 

「は?」

 

 なんと、そんなことを言ったのだ。しかも微笑んで。

 

「と、飛べるわけないでしょう。俺なんかが……」

 

 俺は、拍子抜けした声で言った。正直冗談いっているようにしか思えなかった。だが、悟飯さんは真剣な声音で返した。

 

「そんなわけないぞ。お前はベジータさんの息子だ。サイヤ人の王子の血を受け継いでいるんだ。それに地球人だって空を飛べるんだ」

 

「そ、そうなんですか……」

 

「ああ」

 

 俺には不思議だった。人が空を飛んでいるなんてあり得ない。でも、人造人間だって飛んでいた。それに悟飯さんだって。だからといって俺ができるわけはないけど。俺は、戦いたくなんかない。

 

「あ、あの……俺悟飯さんみたいに強くないから……」

 

「いや、僕は強くない」

 

「そんなっ! 人造人間とあんなにまともに渡り合えたじゃないですか?」

 

 俺は必死に悟飯さんに言うが、悟飯さんは自虐的な笑みを浮かべながら返す。

 

「そう見えただけだ。一歩的に押され、負けたよ」

 

「そんな……じゃあどうすれば、いいんですか?」

 

「強くなる、しかないな。そのためにはまずは舞空術からだ」

 

 この人は何をいっているのだ。逃げればいいんだ。そう、なぜ戦おうと考えるんだろう。戦わず、隠れてればいいじゃないか。

 

「隠れればいいじゃないですか」

 

 だが悟飯さんはすぐに返す。

 

「無駄だよ。奴等は全てを破壊する。7年間ずっと見てきたんだ」

 

「なら、他の人に任せれば……軍隊とか」

 

「軍隊なんかで勝てればここまで被害は少なくない。奴等は化け物なんだぞ」

 

 ことごとく論破された俺は、ただ唇を噛み締めるだけだった。

 

「ともかくそういうことだ。トランクス。お前が生きたかったら強くなれ」

 

 悟飯さんは俺の目を見ていった。俺は頷くことはできなかった。なにも返さない俺にむかってふっと笑い、いっそう穏やかな声で言った。

 

「じゃ、ブルマさんのもとへもどれ」

 

「わ、わかりました」

 

 俺はそそくさに出た。正直聞きたくない。俺のお父さんがベジータだと言う話は。まるで俺が宿命を背負っているようじゃないか。とりあえず今日は早く寝よう。そう思い、寝室へと向かった。

 

 のちに、俺にとってかけがえの無い師匠になるなんて思いもしなかったのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー…………

 

 

「これが、俺と悟飯さんの出会いです。最初は俺は悟飯さんのことがそこまで好きじゃなかったんです」

 

 俺ーートランクスは、目の前にいるビーデル先生に話した。

 

「そう……そんなことがあったんですか……」

 

「ええ。俺はその気持ちを汲み取ることが出来なかったんです。仇をとれなかった悟飯さんの無力感も……」

 

 俺は下をうつむく。

 

「いえいえ、そのときはまだ子供ですから……」

 

「まあ、そうですけどね」

 

 俺は、苦笑いで、ビーデル先生のフォローに答える。

 

「さて、今度はそっちの番ですよ。悟飯さんは、学校ではどうだったんですか?」

 

 俺は、単刀直入に聞いた。空は相変わらず青い。ビーデル先生は、その空を見上げながら、懐かしそうに口から言葉を発する。

 

「悟飯君と初めて会ったのは……こんな空模様でした」

 

 俺は、ビーデル先生の言葉に耳を傾けた。俺の知らない悟飯さんが、今語り出された。

 

 

 

 




次回から悟飯とビーデルの話になります。章も変わりますんで。では感想お気に入りなどお待ちしております。

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