怪我から復活した日の放課後、俺は生徒会室の前にいた。
たっちゃんの見舞いに来ていたので、既に生徒会メンバーとは会って挨拶はしているが生徒会に本格的に参加するのは今日からだ。
生徒会室のドアを開ける。
「失礼します」
「失礼します、じゃないでしょ。ただいま、でしょ」
「昨日ぶり~。ヒハランに黒ちゃん」
「今日からよろしくお願いします。飛原くんに黒さん」
生徒会室に入るとメンバーが挨拶してくる。
のほほんさんが生徒会だと知った時は予想外で驚いたな。
「本音ちゃん、冷蔵庫からケーキを出してきて」
「はーい」
「お嬢様、私はお茶をいれますね」
挨拶が終わるといきなり、何かの準備を始める生徒会メンバー。仕事はいいのか?
「深夜くんと黒ちゃんはそこに座ってて。すぐに歓迎会の準備終わらせるから」
「歓迎会って言われても、私、食べらないんだけど」
「俺も食べて飲むだけの歓迎会には興味ないな」
「え~!じゃあ、ヒハランに黒ちゃんはどんなのがいいの?」
冷蔵庫を開けたところでのほほんさんが驚く。
電気代がもったないから早く閉めろよ。
「私は深夜と二人でイチャイチャできれば」
「そうだな。歓迎会だけに芸とかどうだ?」
回りの空気が冷たくなるのを感じた。くそっ!いっくんのせいだ。
「……深夜。今のは私でもフォーロー出来ないわ」
「深夜くん。さすがにそれはないと思うよ」
「ヒハラン~、おりむーと同じで寒いよ~」
殺せ!俺を殺してくれ!
「あの、それよりもいきなり芸って言われても準備してませんよ」
おお、うっちゃんがフォーローしてくれた。助かったぜ。
ちなみにうっちゃんはのほほんさんの姉で布仏虚という名前だ。
「芸じゃなくても、何かして仲良くなろう、ってことだ」
「なるほど、良いアイディアね。でも、何するの?」
「だったらコスプレとかどう?色々服ならあるよ~」
「おお、それで深夜にあんな格好やこんな格好をさせるのね」
せめて、建前ぐらいつかえよ。欲望に忠実過ぎるだろ。
「まぁ、いいけど。俺もコスプレは好きだ」
初日に女装して、ちょっとハマったからな。
「じゃあ、去年までの文化祭の衣装が生徒会の備品室にあるから私が取ってくるわ」
「ああ、俺も手伝うぜ。黒も来い」
「分かったわ」
三人で生徒会の備品室まで服を取りにいく。
その間、うっちゃんとのほほんさんが御菓子とお茶の準備をすることになった。
「さて、持ってきたが結構あるな」
「そうね、予想以上だわ」
目の前には備品室から運んだ大量の衣装がある。おい、少しぐらいは処理しとけよ、IS学園。
「お~。これ、いいね~」
「深夜、これとかどう?」
何故、俺に薦めるのが女物なのだろうか?黒に女装が気に入ったことを言ってなかったと思うんだが。
「じゃあ、早速着替えるか」
そう言って、俺は早速服を脱ぎ出す。
「え!?何でいきなり脱ぎ出してるんですか!?」
うっちゃんが顔を赤くして焦っている。
「そりゃあ、今から着替えるからだろ」
「だから何で今、着替えるんですか!?女の子と一緒に着替える気なんですか!?」
「俺は気にしないけど」
「私達が気にするんです!」
逹?何を言っているのだろうか、この人は。
「私は気にしないわよ」
「私も気にしないよ~」
「むしろ、見たいし、見せたいぐらいよ」
やっぱり誰も気にしていないな。大体、思春期のガキじゃあるまいし、気にしなくていいだろ。
そして、黒の痴女発言は後で人前では止めるように言っておくか。
「何で誰も気にしないんですか!?もしかして私がおかしいんでしょうか?」
「じゃあ、そういうことで」
「……えっと、あの。そうだ。皆で一緒に着替えるよりも、バラバラに着替えて、後で見せあった方が何というか……」
何か無茶苦茶だが、とりあえず言いたいことは分かった。
「なるほど。一理あるな。じゃあ、皆バラバラに着替えるか。黒、覗きに来るなよ」
「ほっ。助かった」
「さすが深夜!可愛いよ!」
俺が着替えて戻ってくると、いきなり黒が俺の写真を撮り出した。
ちなみに俺は魔法少女のコスプレだ。前にかんちゃんと一緒に見たアニメの主人公の服装だ。
「……黒、写真を撮るのはいいが、そのデジカメは何処から持ってきたんだ?」
「ああ、これ。これはあのウサギが箒ちゃん逹を撮ってくれ、って言って私の後付装備にインストールしてきたわ」
何、その話。俺は聞いてないんだが。
元々、趣味で作られた物だから後付武装に武器以外もインストールしていたのは知っているが。
「侍娘逹を撮っていないけどいいのか?」
「深夜以外の写真なんていらないわ。それにウサギの言うことを聞く必要もないわ」
ウサギのヤツ、自分で作った物の手綱ぐらいちゃんと握っておけよ。
「それよりも深夜。ポーズをとってみて」
「俺じゃなくて、お前のキャラがぶれてどうするんだ?」
「そんな可愛い深夜の格好を見たらキャラもぶれるわよ」
そんなに似合っているのか?自分じゃ、よく分からないけど。
「ところで何で黒はコスプレしてないんだ?」
「ああ、深夜と同じ服にしようと思ったのよ」
そう言うと、黒の服装が俺と同じ格好になった。
黒はISだから自由に服装を変えられるそうだ。便利で羨ましいな。
「どう?深夜くん、似合ってる?」
たっちゃんが戻ってきた。
服装は猫のコスプレだ。かなり露出度の高い格好だ。学園祭でしていい格好なのだろうか?そして、耳と尻尾が動いている。どんな素材で作られているのだろう?
「……その耳、触っていい?」
「深夜、駄目!触るなら私の耳を触って!」
そう言うと、黒に耳と尻尾が現れる。
にしても、猫耳魔法少女か。なんというかマニアックだな。
「ふにぁ~」
俺が耳を触ると猫みたい声で嬉しそうにしている。もしかして、耳に感覚があるのか?結構いいものだな。今度は別の獣耳をしてもらおう。
「お~。ヒハランが黒ちゃんにやらしいことしてる~」
「生徒会室でいやらしいことをしてはいけません」
布仏姉妹も戻ってきた。
のほほんさんは狐の着ぐるみ、うっちゃんはフリフリのメイド服。これまた露出が高い。
て言うか、生徒会室じゃなかったら、していいのだろうか?
「うっちゃん、その格好の方がいやらしいと思うけど」
「こ、 この格好はその……。本音に無理矢理薦められて」
照れて顔を赤くしている。
俺は黒の手から目にもとまらぬ速さでデジカメをとる。
――カシャ
そして、黒が俺から目にもとまらね速さでデジカメをとり、今撮った写真のデータを消した。
「何故、写真を消した?」
「深夜こそ何で写真を撮ったの?」
「いや、つい」
「確かに今のは私でもドキッ、ってきたけど。それでも浮気は駄目よ」
「はいはい、痴話喧嘩はそこまでね」
たっちゃんがニヤニヤしながら仲裁に入ってきた。
「じゃあ、次は私は撮ってね」
「次はヒハラン、私ね~」
何故か写真撮影会が開始してしまった。まぁ、楽しそうだからいいか。
「そういや、仕事はしなくていいのか?」
撮影会が終わってお茶会が開始すると俺は聞いた。
「うん、大丈夫よ。深夜くんがしてくれるから」
「は!?」
この女は何を言っているのだろうか?意味が分からない。
「深夜くん、授業に出なくていいんでしょう?だったら、その間に生徒会の仕事をしてくれれば私が助かるわ」
何て自分本位な発言なんだ。人を気遣うとかはできないのか。
「いやです。お断りします」
「……深夜くん、敬語を使うキャラじゃないよね。織斑先生にもタメ口だし。そこまで嫌なのかしら?」
当たり前だ。面白いこと以外は出来るだけ、いや全くしたくない。
「当たり前よ。そんなことをしたら私と深夜がイチャイチャする時間が減っちゃうじゃない」
だったら、朝、ちゃんと起きろよ。
「というわけでお断りします」
「だったら、さっき撮った写真、学園中にばらまくわよ」
ニヤニヤしながら俺を脅すような口調で言ってくる。この人は、まだ俺を理解していなのか?
「勝手にどうぞ。その程度で俺は困りません」
「んー。じゃあ、どうしようかな」
「どうもしなくていい。放課後はちゃんとするから、それでどうにかなる」
「凄い自信ね。分かったわ。じゃあ、そうしましょう」
あ、今思い出した。あのこと、まだ聞いてなかった。
「そういや、まだかんちゃんのことを聞いてなかったな」
「ああ、その話ね。ちゃんと説明するわ」
そして、俺はかんちゃんの専用機といっくんの専用機の開発元が同じであること。そして、いっくんの専用機に人員を回したせいで、かんちゃんの専用機がまだ完成していないことを聞いた。
後、更識の家のことと姉妹の関係についての説明も聞いた。
「なるほど。大体の事情は分かった。かんちゃんのことはクラス代表決定戦が終わってから対処するか」
「え?どうにか出来るの?」
「多分な。それにアニメ好きに悪いヤツはいない」
「じゃあ、任せたわよ」
「了解」
そして、その後はのんびりお茶会をして終わった。
本当に仕事をしなかったな。それでいいのか?まぁ、楽しそうだからいいか。
本当はセシリア戦を書くつもりだったけど、何となく思い付いたので書きました。
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