「よし。これで準備終了だな」
一旦、IS学園から下宿の準備をするために家に帰ってきていた。
「ついでだから軽く掃除していくか。黒も手伝ってくれ」
当分、戻ってこれないし、一応やっとかないとな。
「じゃあ、まずは深夜の部屋からね」
「何故?」
「こういう時はエロ本を探すのが定番なんでしょ?」
なるほど。定番は確かに重要だな。まぁ、俺の部屋にエロ本はないがな。
「深夜の部屋って、初めて会った時以来ね」
あの時、窓を壊して侵入してきたんだよな。さすがの俺もびっくりしたな。
そういや、その時に壊した窓の修理費すら出さなかったんだよな、ウサギのヤツ。
「んー。エロ本はないわね。でも深夜が全くそういうのに興味がないとは思えないし」
「今の時代、ネットで手に入るからな。だから、いちいち買う必要ないんだよ」
「そのわりに漫画はいっぱいあるわね。それもネットで手に入るんじゃないの?」
「分かってないな。紙には電子書籍にはない良さがあるんだよ」
やっぱりエロ関連はネットだが、他は紙の方が良い。
「て言うか……漫画か。ついでだから持っていくか。また、手伝ってくれ」
漫画の他にも小説やアニメDVDも持っていくことになった。
予想以上に荷物が多くなったな。運ぶのがしんどそうだ。
「何だ、その荷物は?必要のない物まで持ってくるな」
学園に戻ってくると、いきなりちーちゃんに怒られた。
ちなみに家で男子の制服に着替えてきた。今日、1日女子の制服で過ごしたけど違和感がなくて途中から女装していたことを忘れてしまっていた。
「いいじゃないか。どうせ、明日から暇なんだから」
「だったら、まじめに授業を受けたらいいだろうが」
「だったら、何のためにテストをしたか分からないじゃないか。それに授業を受けても簡単だから、どっちにしろ暇だし」
「ちっ!!」
生徒に対して不愉快そうに舌打ちした。この人、本当に教師なのだろうか?
「まぁ、いい。寮について簡単するぞ。夕食は6時から7時、寮の一年生用食堂を使用しろ。後、大浴場があるがお前は使えない。各部屋にあるシャワーを使え」
マジか。大きな風呂でのんびりするのが好きなのに。
「何でだ?」
「お前は同年代の女子と入るつもりか?」
「俺は別に気にしない」
パァン!!
「お前が気にしなくても、他のヤツが気にするだろ」
何で叩かれたんだ?
「私と深夜の二人で風呂に入りながら、月を見て風情を楽しもうと思っていたのに」
「風情は良いものだな。だが、IS学園に露天風呂はないぞ」
「だったら、近場の銭湯に行ってきていいですか?」
「いいわけないだろ」
ちっ!!ケチだな。
「不満そうな顔をするな。ほら、鍵だ。さっさと部屋に行け」
そう言って、ちーちゃんは鍵を俺に投げてきた。
「ここが俺の部屋か。どんな人が同居人なんだろうな?」
「どんな人でもいいよ。私と深夜の邪魔をしなかったら」
とりあえず、扉を開けて中に入った。
「……男?まさか織斑一夏!」
部屋に入ると、いきなり中にいた水色の髪の女の子に敵意のある視線を向けられた。
俺のことを知らないからいっくんと間違ているようだな。
て言うか、いっくん。どんな恨みを買ったんだ。
「そうたが。知り合いか?悪いな。君のことを覚えてないんだ」
何となく面白そうことになる気がして、いっくんのふりをする。
「貴方が知らなくても、私は知っているのよ。で、何でこの部屋にいるの?もしかして貴方が私の同居人なの?」
「そうだ。ところで俺に何の恨みがあるんだ?」
「それは――」
「かんちゃん~。遊びに来たよ~」
そう言いながら、誰かが部屋に入ってきた。そういや、扉閉めてなかったな。
「本音。何か用?」
「暇だから遊びに来ただけだよ~。ところで、何でヒハランと黒ちゃんがかんちゃんの部屋にいるの~?」
ヒハラン?何だ、その雑魚モンスターみたいな呼び方は。まぁ、どうでもいいか。
「……え?織斑一夏じゃないの?」
「違うよ~」
もう少し弄って遊ぼうと思っていたのに。まさか、こんなに早くバレるとは。残念だ。
「じゃあ、誰?」
「俺の名前は飛原深夜。こっちは俺の「恋人」の黒だ。って、声を被せるな」
「えー、いいじゃない。本当のことなんだから」
「つまり、貴方は自分の部屋に女を連れ込んだ、ってこと?」
この女、おとなしそうな顔して毒舌だな。
「間違っていないが間違っているな」
「どういう意味?」
何か不機嫌そうだな。何かしたか?それとも元々こんな感じなのか?
「黒は俺の専用機だからな」
「は?」
とりあえず、俺と黒のことを軽く説明することにした。
途中でボケを挟んだら、また毒舌にツッコまれた。これはこれでアリだけど、ずっとこの調子だったらボケづらいな。どうにかしないと。
「なるほど。事情は分かった。いや、正直、ついていけないけど」
「じゃあ、次はそっちの自己紹介だな。これから同じ部屋で暮らすんだから、コミュニケーションは重要だ」
「私の名前は更識簪」
それだけか?なんというか、弄りづらそうだな。もしかして、だから俺の同居人に選ばれたのだろうか?だとしたら、ちーちゃん。かなり性格が悪いな。
「他にないのか?例えばクラスとか」
「クラスは4組。これでいい?」
ここまで大人しいのは新しいパターンだな。どうしようか?
「ところでお前は誰だ?」
「え~!?私のこと知らないの?クラスメイトだよ~」
そうだったのか。全く気付かなかった。
「しょうがないでしょ。深夜は私のことしか見てないんだから」
「そういう訳じゃないがな。で、名前は?」
「私の名前は布仏本音だよ~。ちなみにかんちゃんのメイドだよ」
メイド?そんな風には見えないな。こんなのんびりとしたヤツにメイドが勤まるのか?
「そういや、黒も初登場時、メイド服だったな」
「もしかして深夜ってメイド好きなの?」
「いや、違う」
俺に特定の好みはないからな。熟女と人妻は駄目だが。
「そういや、かんちゃんは何で俺のことを知らなかったんだ?もう学園中に噂が広がっていると思っていたんだが?」
「かんちゃん?馴れ馴れしすぎない?」
「それはかんちゃんに友達がいないからだよ~」
なるほど。確かにそんな感じだな。
「つまり、ぼっちか?」
「グッ!!」
何か傷付いたみたいだな。もしかして、気にしていたのか?弄りポイントを見つけたな。
「まぁ、そんな不機嫌そうな顔をしていたら当然だな」
「グワッ!!」
「つまり、授業で仲良しの人とペアを組む時に毎回一人残るタイプ、ってこと?」
「そ、そんなことない。今まで、本音と組んでいたし」
何とも寂しい言い訳だな。それに今は違うクラスだから一緒に組めないな。
「でも、かんちゃんって、私以外の友達いないし~」
バタンッ!!
「かんちゃん、大丈夫?」
唯一の友達が声をかけるが返事はない。ただの屍のようだ。
「そうだ。のほほんさんにしよう」
「ほへぇ。いきなりどうしたの?」
「いや、呼び方だ。布仏本音を略してのほほんさんだ」
我ながら良いネーミングセンスだ。雰囲気もピッタリだし。
「……それより、深夜。この倒れている女、どうする?」
「そうだな。とりあえず、ベットに寝かせるか。というわけで悪いな、のほほんさん。来たばかりだけど、こんなことになって」
「いや~、別にいいよ~。じゃあ、また明日ね~」
こうしてIS学園での初日が終わった。楽しくなりそうだな。
遂にかんちゃんとのほほんさんが登場しました。次回は生徒会長が登場します。
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