ISに告白された少年   作:二重世界

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第44話 温泉旅行

俺は今、赤神温泉街というところに旅行に来ている。メンバーは俺と黒とラウラとシャルに刹那っち、のほほんさんだ。

 

「にしても、またここに来ることになるとはね」

 

「ん?刹那っち。前に来たことがあるのか?」

 

「一回だけね」

 

「じゃあ、旅館に着くまで暇だから、どんなところがあるか説明してくれるか」

混浴があるから来たけど、この温泉街は変なんだよな。色々と下調べしたけど、大事なことは隠されているように分からなかった。しかも、ただの温泉街とは思えないほど施設が充実している。秋葉原クラスのアニメショップに室内プール、植物園に球場まで合ったからな。

 

「いいよ。ここは裏の世界における完全中立地帯。つまり、ここは日本で一番安全な場所。海外からの偉い人とかもよく利用している。ここだと暗殺とかされる心配がないからね。実際にここ二、三年は全く犯罪がないらしいよ」

逆に怖いな。て言うか、ここ、そんなところ場所だったのかよ。

 

「ああ、そう言えば私も前に軍の噂で聞いたことがあるな。ありとあらゆる権力が通じない場所が日本にあると。そこでは犯罪者も堂々と捕まる心配もなく休んでるらしい」

物騒なのか安全なのか分かねぇよ。

 

「そう、それがここ赤神温泉街。赤神財閥を中心にして作られた場所」

 

「でも、裏の世界の住人が集まって問題が全く起こらないなんてあり得るのか?」

そんな話は信じられないな。一般人でも全く問題が起こらないなんて有り得ない。

 

「その答えは単純明快。誰も逆らえないほどの圧倒的な力で押さえ付けているだけ。まだ赤神温泉街が出来た頃は犯罪もあった。でも、犯罪を犯した一般人は例外なく次の日に交通事故で死亡している」

 

「一般人は、ということは一般人じゃない場合はどうなったのだ?」

 

「顔以外を認識できないほどに解体して箱詰め。そして、見せしめに仲間にそれを送り付ける」

完全に都市伝説みたいな話だな。

 

「え~と、それって、ただの噂だよね?」

 

「いやいや、違うよ、シャルロットちゃん。実際にウチにも送られてきたからね。当時、ここで依頼で仕事をした私のお父さんが」

あれ?シャルに刹那っちのこと説明したっけ?ラウラに説明してなかったような気がするし。まぁ、いっか。のほほんさんはどうでもいいし。

て言うか、父親が殺された場所でくつろぐのかよ。相変わらず裏は普通じゃないな。……いや、俺も普通に過ごせるな。じゃあ、普通なのか。

 

「でも、ウサギに聞いた人類最強とかなら何があっても返り討ちにするんじゃないか?」

 

「伝説級のプレイヤーは基本的に無駄な争いはしないからね。それに戦闘狂はそもそも中立地帯に何か来ない」

 

「なるほど、そういうことか。じゃあ、そこらへんに伝説級のプレイヤーが普通にいたりすることは?」

 

「普通にいる――ゲッ!」

どうした?刹那っちが今までに見たことのないような嫌そうな顔をしているが。

 

「気付かれる前に行くわよ」

どうやら、刹那っちはお土産屋の中にいる女子中学生をナンパしている針金細工ような見た目をしている変態を嫌がっているみたいだ。

 

「さっきの変態がどうかしたか?」

 

「あれは裏の世界で絶対に関わってはいけないと言われている殺人鬼集団の切り込み隊長をしている男よ。昔、地図から町を一つ消したという噂があるわ」

そんなヤバい人物だったのか、あの変態。普通にそんな奴がナンパしているなんて恐ろしいところだな。

 

「でも、それが何なんだ?ここなら殺人鬼でも殺せないんだろ?」

 

「私が中学生の頃にチャットで女子中学生に語り合っていたことがあるのよ」

何で女子中学生が女子中学生について語り合っているのか、とかツッコまない。

 

「それである時オフ会をして、その時に来たのがあの変態。まぁ、正確には白衣の変態もいたけど。私が女子中学生だと知った瞬間にしつこくメルアドを聞いてきて、オフ会が終わった瞬間から毎日大量にメールが来たのよ。しかも、どうでもいい話ばかり。こっちは返事してないのに。もう怖くてアドレスを変えたわ」

刹那っちが恐れるほどの変態か。て言うか、白衣の変態って兎吊木じゃないよな?

 

「にしても昨日、家族で旅行中だと書いていたけど、ここだったのか」

 

「今でもチャットしてんのかよ!」

こいつに常識が通じないのは知っていたが、予想以上だ。

 

「あっ!叔父さんだ」

 

「叔父さん?」

刹那っちの視線の先にいるのは叔父さんというよりもお祖父さんにしか見えない老人だ。

 

「子作りが趣味のエロじじい。去年、私の姉、ちなみに女子高生と子供を作ったのよ」

 

「あの歳で性欲が枯れてないのかよ。て言うか、子作りが趣味って……。凄い趣味だな。どれくらいの子供がいるんだよ?」

 

「さぁね。私の知ってるのは四、五人ぐらいしかいないわ。まぁ、子供を産んだら女は用済みらしいけど」

凄いゲスだな。本当、裏にはマトモな奴がいないな。

 

「多分、温泉がてら子作りの相手を探しにきたんでしょ。関わったら私は大丈夫だけど、代表候補生だと知ったら子供を産まされるかもね」

 

「ラウラにそんなことをしたら俺がぶっ殺すから大丈夫だ」

 

「あれ?僕は助けてくれないの?」

 

「自分でどうにかしろ」

わざわざ敵を助けるほど俺は優しくない。

 

「でも、そんな強姦みたいなことして大丈夫なのか?」

 

「大丈夫なんじゃない。あのエロじじいなら上手く相手を口説いて合意の上でヤるでしょ。何たって生涯無敗の男なんだから」

 

「は?」

 

「だから生涯無敗。生まれてきてからジャンケンですら一回も負けたことがないらしいよ」

そりゃ、規格外だな。天災とか人類最強よりも桁違いだ。でも、強そうには見えないな。つまり強さとは別の何かを持っているということか。俺の理想とは違うが興味深いな。

 

「ところで話は変わるが、こんな場所なんだ。非合法な店とかはないのか?」

 

「普通に一般人も来るからね。あまりないよ」

 

「じゃあ、少しはあるのか?」

 

「地下にカジノとかエロい店なら少しはあるよ。でも、未成年は入れないよ。私も前に来た時に入ろうとしたけど力ずくで追い出されたわ。誰かの紹介があれば入れるらしいけど、誰もいなかったし」

カジノか。一回は行ってみたいな。でも、紹介してくれる人物に心当たりがないな。ここはデバイスの出番だな。女バージョンだけじゃなくて大人バージョンも作っておいてよかった。

 

「お、着いたな」

喋っている間に目的の旅館に着いたみたいだ。

 

 

 

 

「あれ?隊長に飛原さん。どうして、ここにいるんですか?」

部屋に移動する途中の売店で姐さん達、黒ウサギ隊のメンバーに会った。

 

「こっちは旅行だが。そっちは?」

 

「こちらも旅行です」

 

「おー、美味しそうなお菓子があるよ~」

のほほんさんが売店のお菓子を食べたそうに見ている。

 

「もうすぐ昼飯だから我慢しろ」

何か母親みたいなことを言ってるな。

 

「え~、ヒハランはケチだな~」

 

「そういう問題じゃない」

とりあえず、かんちゃんとシャルは先に部屋に行かせて姐さんと話すことにした。のほほんさんはお菓子の試食を食べている。後で昼飯を食べれなくなっても知らないぞ。

 

「私達は飛原さんに夏コミを案内された後、何ヵ所か整地巡礼をして今はここで休養をしているんです」

俺が薦めといてなんだが軍人として、それでいいのか?

 

「なるほど。それで、いつ帰るんだ?」

 

「実は今日の午後に帰るんです。それで本国にいる他の隊員のためにお土産を買っているんです」

 

「だったらラウラも昼飯を食べたら一緒に行ったらどうだ?短い時間とはいえ、久し振りに会ったんだ」

 

「では、お兄ちゃんとお言葉に甘えるとしよう」

妹の幸せが兄の幸せだ。

 

「おい、のほほんさん。そろそろ行くぞ」

 

「え~、もうちょっと待ってよ~」

店員が試食を大量に食べて買う様子のない、のほほんさんを不愉快そうに睨んでいる。あれもプロだな。変態ではないからレベルは低そうだが。

 

「帰りに買ってやるから我慢しろ」

 

「分かったよ~」

のほほんさんが渋々、納得して食べるのをやめた。

 

 

俺は昼飯を食べ終えて早速、風呂に入りにきた。昼飯は豪華海の幸を使った鍋だ。

ちなみにラウラは黒ウサギ隊のところに、かんちゃんはレトロゲームのところに行っている。ゲームは後で俺もプレイしよう。のほほんさんは昼飯を食べて部屋に戻ると寝てしまった。かなり自由だ。

 

「さてさて、男のカップルはいるかな?」

シャルがキラキラした笑顔で言っている。

 

「基本的に普通のカップルか夫婦だと思うぞ」

 

「そうだよ、シャルロットちゃん。いるのはホモじゃなくてレズに決まっているでしょ」

 

「お前、人の話を聞いていたか!」

何で変態は人の言うことを聞かないんだ。もしかして、これが俺の変態が苦手な理由か?

 

「私は深夜がいれば、それで充分よ」

 

「……一人ぐらいは俺の言うことを聞いてくれ」

せめて、かんちゃんだけでも連れてくるべきだったな。

 

そして更衣室に来たので男女に分かれて着替える。ここは水着の着用が義務付けられている。

着替え終わって浴場に行くと女子はまだみたいなので先に浸かることにした。サウナとかもあって結構、広い。しかも露天風呂で景色もいいが時間が時間なので人数は少ない。カップルが数組と変な男が二人いるだけだ。男の片方は顔面に刺青、もう片方は死んだ魚みたいな目をしている。て言うか、死んだ魚みたいな目をしている男は前にプールで可愛い幼女と一緒にいた奴じゃないか?かなりヤバい雰囲気だったから覚えてる。

 

「さて、私もそろそろ出るかな」

さすがに男子更衣室にいれるわけにはいかず指輪になっていた黒が人型になると俺に抱き付いてきた。もちろん、水着を着ている。

 

「男のカップルがいるよ!」

 

「残念。レズカップルはいないか……」

二人もやって来たみたいだがテンションが全然違う。

 

「夜は若者が多い女子風呂に行くわ」

何故だろう?性別を考えたら刹那っちは女子風呂に行くのが普通なのに犯罪にしか思えない。

 

ブシャャャャャーーー!

 

「あの二人は凄く妄想がはかどって死にそう」

シャルがいきなり鼻血を出しながら幸せそうに倒れた。風呂がシャルの血で凄いことになってる。別のところに移動しよう。

 

「刹那っち、シャルの看護を頼む」

 

「え?何でわた――」

 

「気絶しているシャルに色々、やり放題だぞ」

 

「任された!」

刹那っちが凄く良い笑顔でシャルを更衣室に運んでいった。入ったばかりなのに忙しいな。

別の風呂に移動しようときた時にシャルが倒れた原因の二人の会話が聞こえてきた。

 

「せっかくの混浴なのに何で僕は君と一緒に入ってるんだ?本当なら歳上のロリメイド三人と入りたいのに」

 

「かははっ!奇遇だな。俺もお前みたいな陰気な奴じゃなくて綺麗なお姉さんと入りたかったぜ」

 

「傑作だな」

 

「いや、戯言だろ」

ふむ、妙に息の合ってる二人組だ。まるで鏡写しだ。

ところで、その二人を更衣室の入口から見ている女子二人が気になるな。一人は前にプールで見た可愛い幼女、もう一人は両腕が義手でニット帽をしている。何故、風呂に入るのにニット帽なんかしてるんだ?て言うか、二人もシャルほどではないけど鼻血を出している。ホモが嫌いな女子はいないということか。

関わりたくないし一旦、サウナに逃げるか。




針金細工の変態と子作りが趣味のエロじじいの話は書く予定のなかった刹那の裏設定です。最後なので、ついでに書いておきました。

次回はついに最終回。亡国機業も登場します。

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