「準備を始める前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めなくてはいけない」
三時間目の授業が始めると、ちーちゃんがそう言った。
一、二時間目の授業は山田先生だったが、三時間目はちーちゃんが担当するせいで眠れない。まぁ、今日だけの我慢だ。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席が主な仕事だ。簡単に言うとクラス長。いや、ただの雑用だな。後、一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」
何故、悪い方に訂正したのだろうか?まぁ、いい。めんどくさそうなことには関わらないに限る。
「はいっ。織斑くんを推薦します」
女子の一人がいっくんを推薦した。このまま決まってくれると有難い。
「私もそれがいいと思います」
「私は深夜を推薦します」
このまま決まれば良いと思っていた矢先に黒が俺を推薦してきた。
ちなみに、黒の机は用意されてなかったので、俺の隣でパイプ椅子に座っている。
「おい、黒。何故、俺を推薦するんだ?」
「だって、私と深夜の力を証明する良い機会じゃない。それに深夜が誰かの下につく、っていうのも嫌だしね。雑用がめんどくさいなら私も手伝うわよ」
「そう言うことなら……まぁ、いいか」
て言うか、生徒の時点で教師の下についているんだが。まぁ、気にしなくていいか。
「では候補者は織斑一夏と飛原深夜の二人か。他にはいないか?自薦他薦は問わない」
「何で俺が!?」
今更ながら、いっくんが立ち上がって驚く。
「座れ。お前に拒否権はない。他にはいないのか?いないなら、この二人で多数決して決めるぞ」
「待ってください!納得がいきませんわ!」
さっき話したパッキン女が立ち上がって異議を唱えた。
「そのような選出は認められません。大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ。わたくしにこの「トリビア・オルコット」にそのような、って会話の途中で声を重ねないでくださる!わたくしはそんな豆知識みたいな名前ではありませんわ」
「失礼。噛みました」
「嘘ですわ」
やっぱりツッコミがあると気持ちがいいな。これがウサギだったら、ボケにボケで返してくるからな。
「ナイスツッコミ。いや、不愉快な流れになりそうだったから、笑いを作ろうとしただけだろう」
「極東の猿の考えることは分かりませんわ。とりあえず、クラス代表は実力トップのわたくしがなるべきですわ」
「聞き捨てならないわね。私の深夜が貴女ごときに劣る訳ないでしょう」
まぁ、俺が代表候補生ごときに負けるとは思えないな。にしても、面白くなってきたな。
「そこまで言うなら決闘ですわ!それでどっちが強いか分かりますわ」
「ああ、いいぜ。それと、ちゃんとハンデはやるから安心しろ」
そう言うと、クラスからドッと爆笑が起こった。
「飛原くん。それ、本気で言ってるの?」
「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」
「いくら専用機持ちと言っても経験が違うよ」
みんな本気で笑っている。なるほど、みんな勘違いしているのか。
これはちゃんと勘違いを解かないとな。
「そう言ってもな、ISの起動時間以外に負けているところが見つからないんだが」
「いいですわ。ならわたくしの強さを証明してあげますわ。まず、私のIS。ブルー・ティアーズからですわ」
これで相手を説き伏せれば、俺の方が強いことを証明出来るんだな。
「わたくしのISはイギリスが開発した最新鋭の第三世代機ですわ」
「そんな前時代的なISに私が負ける訳ないでしょう」
「なっ!前時代的ですって!」
顔を赤くして怒った。分かりやすいヤツだな。
「黒は篠ノ之束の技術と俺の趣味で出来た第四世代機だ」
黒の装備はほとんど俺の趣味を元にウサギが造ったからな。まぁ、ウサギが元々造っていた装備もあるがな。
「そんな馬鹿な!第三世代機ですら各国でまだ実験段階なんですのよ!」
「それが出来るからの天災なんだろ」
「くっ!ならばわたくしのISランクはAですわ」
「俺はSだ」
まぁ、これは黒限定なんだかな。
他のISは黒が浮気は駄目、とかいって使えない。他のISに脅しをかけているそうだ。
試しに黒に頼んで一回だけ使ったことがあるがISランクはCだったな。
「わたくしは入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですわ」
「ああ、あれか。俺は倒せなかったな」
「ふん。これでわたくしの――」
「だって、ちーちゃんが強す痛っ!」
いきなりちーちゃんが出席簿を投げてきた。何で口よりも先に手が出るんだよ。
「織斑先生と呼べ」
「貴方の入試の相手って織斑先生だったんですの?」
「ああ、そうだ。マジで強かったな」
ウサギに連れられて初めてIS学園に来たとき、ウサギが煽ったせいでちーちゃんと戦うことになったな。
こっちは第四世代機で向こうは訓練機だったのに十秒ももたなかったからな。
「後はそうだな……才能も俺の方が上だな。さて、パッキン女。他に俺に勝てる要素はあるのか?」
「そ、そんなの関係ありませんわ。わたくしが男ごときに負けるはずがありませんわ」
今度は開き直ってきたか。こういうヤツが一番めんどくさいな。
「いいぜ。男が女に勝てないというなら、まずはその幻想をぶち壊す」
「さすが、私の深夜。格好いいよ」
これで俺の強さを証明出来たな。
「セシリア、ハンデ貰った方がいいんじゃない?」
「そうよね。今の話を聞いていたらセシリアは飛原くんに勝てないような気がしてきたし」
クラスの連中は自らの勘違いに気付いたようだな。
「そんなの関係ありませんわ。ハンデなんていりませんわ」
「安心しろ。お前が何と言おうと俺は全力で手を抜いてやるから、お前は全力でかかってこい」
「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。飛原とオルコット、それに織斑はそれぞれ用意をしておくように。それでは授業をはじめる」
ぱんっと手を打ってちーちゃんが話を締めた。
「えっ!?俺も!」
そして、驚くいっくんを無視して授業が始まった。
「ちっ!!満点だ」
放課後、約束していたテストをして俺は満点を取った。
にしても、IS関連の問題だけだと思ったのに一般教科の問題まで出るとは。何とも性格の悪いテストだった。
「何問か教師でも厳しい問題をいれたのに解かれるとは」
そこまでしていたのか。大人げないな。
「というわけで俺はサボり放題だな」
「約束だからな。だが、IS実習などの重要な授業は受けろ」
「それぐらいは分かってる」
まぁ、そこまでサボったら、何のためにIS学園に来たか分からないからな。
「後、寮の部屋が決まった」
「最初の一週間は自宅から通んじゃなかったのか?」
ずっとウサギの研究所にいたから、久し振りに家でのんびり出来ると思ったのに。
「事情が事情だからな。特別な処置だ」
「そこが私と深夜の愛の巣になるわけね」
「そんな訳ないだろ。相部屋だ。それに仮に一人部屋だったとしても教育機関で淫行を許すわけないだろう」
固いな。そんなんだからいい歳して彼氏の一人も出来ないんだな。
「余計なお世話だ」
この人、読心術まで使えるのか?
「他に人がいたら深夜とイチャイチャしづらいじゃない。個室を用意しなさいよ」
「決定したことに逆らうな」
「うっ……」
黒もちーちゃんには逆えないようだな。確かに俺もこの人は敵に回したくないからな。
「じゃあ、とりあえず家まで荷物を取ってこい。部屋や細かいルールなどは戻って来てから説明する。後、先に一つ言っておく。一年生の寮長は私だ。もし問題を起こしたら厳しい罰を与えてやるからそのつもりでな」
俺、何か目をつけられるようなことしたか?
戦い始める前から色々負けているセシリア。クラス代表決定戦で逆襲はあるのか?
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