ISに告白された少年   作:二重世界

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第37話 漫才

「ふむ。何で俺はこんなところにいるのだろうか?」

現在、俺以外の専用機持ちと教師が集まって、ある問題に対する会議を行っている。俺はウサギと会議が行われている部屋の屋根裏から中を覗き見している。

 

何でこうなったか思い出してみよう。

俺は専用機持ち全員が集まられているのに一人だけ魔王から室内待機をくらってしまった。おそらく俺みたいな何を考えているか分からないイレギュラーは邪魔だということだろ。それなら刹那っちも室内待機にしろ、と思うが。

そして次に情報を得るためにウサギのところに行った。そしたら『着いてきてね』と言われてので着いて行ったら、こんなところに来てしまった。

 

「こんなところにいるとスパイになったみたいで楽しいね」

 

「それは良いが、いつまでいるんだ?」

 

「もうちょっと待ってね。一番インパクトのあるタイミングで登場する予定だから」

確かにインパクトは大事だな。

暇だし、中の会話でも聞いておくか。

簡単に話をまとめると二時間前にハワイ沖で試験稼働していたアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が暴走。そして、この近くの空域を通過するので、それを専用機持ち達で倒すことになった。しかし時速二四五〇キロを越える速度で超音速飛行をしているのでアプローチは一回が限度。だから一撃必殺の攻撃力を持っている、いっくんの零落白夜で倒すという内容だ。

 

「よし、今だ!」

そう言うとウサギは顔だけ出した。

 

「待った待った。その作戦はちょっと待ったなんだよ~!」

 

「……山田先生、室外への強制退去を」

 

「えっ!?は、はいっ。あの篠ノ之博士、とりあえず降りてください」

 

「とうっ!」

そしてウサギは空中で一回して着地した。

 

「よっと!」

続いて俺は普通に降りた。

 

「……おい、飛原。何で貴様がいるんだ?貴様には室内待機を命じたはずだが」

 

「知りません。ウサギに無理矢理つれてこられたので」

 

「酷いなぁ、しっくん。怪盗になって一緒にちーちゃんの激レアな写真をとろう、って言ったじゃない。あ、今のは盗ると撮るを掛けたんだけど分かったかな?」

いっくんじゃないんだから、つまらないダジャレを説明するな。

 

「√25点」

 

「何で√!?普通に五点で良いでしょ!しかも点数が低い!」

 

「……ぷふっ!」

かんちゃんが何故か吹き出していた。

 

「ほらっ!あの髪が水色の女の子は笑ってるよ!しっくんとは違って分かってるね!」

 

「かんちゃんは笑いのツボが他の人と違うんだよ」

かんちゃんの笑いのツボは本当に分からん。今のどこに笑う要素があったんだ?

 

「……夫婦漫才をするんだったら帰ってくれ」

 

「あ、そうそう。夫婦漫才と言えば今度、しっくんとの結婚報告を――」

 

「しないわよ!」

黒が人型になってウサギに蹴りかかった。

 

「おっと、危ないなぁ。束さんの周りは暴力的な人が多くて困るねぇ。命がいくつあっても足りないよ」

しかし、ウサギはそれを軽々と避けた。

 

「深夜と結婚するのは私よ!」

 

「人間とISって結婚できるのか?」

 

「愛があれば関係ないわよ」

こういうことを言う奴が将来ヤンデレになったりするんだろうな。まぁ、黒は大丈夫だろうが。

 

「この非常時にいつまで楽しいやり取りをしているんだ、馬鹿者共!」

 

ごすっごすっごすっ!

 

鈍い音が三連続でした。いつもの出席簿の代わりに手に持っていた情報端末で殴ってきた。外側が金属で出来ており、かなり痛い。今すぐ保健室に行って頭を冷やしたいぐらい痛い。

そして無理矢理、正座させられた。

 

「ちーちゃん、そんなに怒ってたらシワが増えるよ。スマイルスマイル」

 

「……貴様らが余計なことをしなかったら怒る必要もないんだがな」

さすがにそろそろマズイな。真面目にやるか。

て言うか、ほとんどウサギの責任だろ。

 

「そろそろ本題に入ったらどうだ?俺もまだ聞いてないし」

まぁ、大体は想像はついているが。

 

「本題?何だっけ?ちーちゃんに叩かれたショックで忘れちゃったよ」

 

「次は本気でやるぞ」

魔王が情報端末を構えながら言ってきた。

 

「ウソウソ!しっかり覚えてるよ!」

 

「じゃあ、速く言え。こっちは時間がないんだ」

 

「さっきの作戦だけどね。ここは紅椿の出番なんだよっ!」

予想通りだな。

 

「何?」

 

「紅椿のスペックならパッケージなんかなくても超高速機動が出来るんだよ!しかも調整時間は√四九分あれば余裕だね!」

何で俺の真似をして√で言ったんだ?普通に七分でいいだろ。

 

「よし。では本作戦は織斑・篠ノ之の両名による目標の追跡及び撃墜を目的とする。作戦は三十分後、各員、ただちに準備にかかれ」

俺とウサギがふざけすぎたせいで時間がなく、他の連中には詳しい説明もないまま作業が始まった。さて、俺は作業を押し付けられる前に逃げるか。

 

 

 

俺はすることがなく暇なので作戦開始の時間まで風呂に入ることにした。全員、作業をしているか室内待機なので貸切状態だ。

 

「ヤッホー、束さんも浸かりにきたよ」

そろそろ時間なので出ようとしたところで全裸のウサギが入ってきた。何回、思ったか分からないが何故、俺の周りの女は羞恥心がないのだろうか?

 

「作業は終わったのか?」

 

「モチのロンだよ!天才束さんにかかれば昼飯前だよ!」

よく意味が分からない。

とりあえずウサギも風呂に入ってきた。

 

「いやぁ、箒ちゃんもサプライズパーティーを喜んでくれてるかな?」

 

「サプライズパーティー?」

単に妹を晴れ舞台でデビューさせたいだけだ思っていたが違ったのか?

 

「ん?あれ?もしかして、しっくん忘れたのかな?今日は箒ちゃんの誕生日だよ」

なるほど。何か忘れているような気がしていたけど、それだったか。

そして、このために紅椿が完成しているのに渡さなかったのか。

 

「そのためだけにこんな事件を自作したのかよ?」

 

「可愛い妹のためにお姉ちゃんが頑張るのは当たり前の話だよ」

頑張る方向が間違ってる気がする。まぁ、俺は楽しめてるからいいが

 

「それよりも束さんの裸を見てムラムラしてこない?時間まで後少しあるし、どう?」

 

「妹の晴れ舞台の前に何を考えてるんだ!?」

 

「束さんは相手がいなくて欲求不満ぎみなんだよ」

最近、欲求不満な奴が多いな。

 

「だったら帰ってからクロエとヤっとけ」

クロエだったら喜んでヤってくれるぞ。

 

「え~、ケチだな~」

 

「この作品はR15だからな。したくても出来ないんだよ」

 

「でも黒ちゃんとは毎晩ヤってるんでしょ?」

別に毎晩ではないな。

 

「それは描写されてないから良いんだよ」

 

「だったら束さんとも描写されてウワッ!」

 

「さっきから我慢してたけど私の前で何してんのよ!」

黒がウサギに向かってお湯をぶつけた。

 

「目に入ったらどうするのさ?」

 

「そのまま失明したらいいじゃない」

 

「酷いね。だったら三人でヤらない?束さんは歓迎だよ」

 

「どっちでもいいけど後にしろ。そろそろ時間だ」

 

「ああ、それもそうだね」

そう言うとウサギは空中投影のディスプレイを呼び出すと、そこには福音といっくんを背中に乗せながら超高速機動をしている侍娘が映った。

 

「後少しで戦闘が開始するね」

 

「そういや、黒のパッケージには何の意味があったんだ?俺は風呂でのんびりしていいのか?」

 

「大丈夫だよ。今回はしっくんの出番はないから」

今回は、ねぇ。次があるみたいな言い方だな。まぁ、侍娘も専用機を貰って浮かれているようだし失敗してもおかしくないか。

 

「それにちゃんと、しっくんも楽しめるように工夫してるから心配しなくていいよ」

 

「それは楽しみだな。そういや、福音のスペックはどんな感じなんだ?」

 

「うん、それはこんな感じだよ」

そう言うとウサギは別のディスプレイを呼び出した。そこには『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』の詳細なスペックデータがあった。

操縦者は『ナターシャ・ファイルス』。広域殲滅を目的とした特殊射撃型でオールレンジ攻撃が可能。そして攻撃と機動の両方に特化している。

性能の高い高出力の多方向推進装置(マルチスラスター)に砲口が三六個もある特殊型ウイングスラスターを装備している。

 

「軍用ISって、こんなに性能が高いのかよ」

 

「これは他の軍用ISと比べても性能が高いよ」

 

「大丈夫か?」

紅椿があったとしても操縦者がアレだからな。正直、厳しい。

 

「大丈夫だよ。お、戦闘が始まったみたいだよ」

ディスプレイを見てみると、いっくんの零落白夜が避けられていた。最初の一撃で倒す予定だったみたいだけど失敗か。いっくんは続けて攻撃をするが全て回避されている。そして福音の反撃が始まった。

 

「データで分かってても、あの火力は凄いな」

狙いはそれほど正確ではないが連射が無茶苦茶速い上に爆発するエネルギー弾丸。しかも、それを回避行動をしながらしてるんだから恐ろしい。

一対一で勝つ自信はないな。

 

「行っけー、箒ちゃん。カッコいいー!」

そして侍娘が紅椿の機動力と展開装甲による自在の方向転換、急加速を間合いを詰めていく。そして福音の隙を作ることに成功した。

黒の展開装甲は試作品だったから使ったら、すぐにエネルギー切れをおこして使い物にならなかったが、本気で使えば、あんなことも出来るのか。

 

「これで決着か。俺の出番はなさそうだな」

 

「いやいや、しっくん。それは早計というものだよ。あそこを見てごらん」

ウサギに言われた場所を見てみると、そこには船があった。海上は封鎖されているはずだ。

 

「密漁船か。もしくはウサギが手配したのか?」

 

「そんなわけないでしょ。そんなことして何の意味があるっていうのさ?」

 

「知るか」

 

「根拠もないのに人を疑ってはいけません、って学校で習わなかったの?束さんは習ってないけど」

相変わらず嘘臭いな。

 

その後、いっくんは密漁船を庇いエネルギー切れ。そして、次に具現維持限界になった侍娘を庇って気を失った。




真面目な話になると思っていたのに、ここまでふざけた話になるとは。自分でも驚いています。

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