ISに告白された少年   作:二重世界

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第35話 諦め

「「ハァー、今日は酷い目にあった」」

現在は夕食の時間、俺といっくんは同時に呟いた。

ちなみに俺の隣はシャルとラウラ。ラウラを挟んだところに、いっくんが座っている。パッキン女は俺の手回しにより遠い席に座っている。侍娘に関しては手回しをする必要がなかった。何か、いつもと様子が違ったな。ウサギが来ていることと関係しているのか?そう言えば、他に何か忘れているような気がするな。まぁ、忘れるようなことだからどうでもいいだろ。

 

「どうしんだ、お兄ちゃんに嫁よ」

今、気付いたけどいっくんとラウラが結婚した場合、いっくんは俺の弟になるのか。そうなったら、あの魔王とも親戚か。それは嫌だな。

 

「ああ、いっくんがダウンした後に魔王に襲われてな」

とりあえず俺はラウラの頭を撫でて癒されることにする。ちなみに本人の前以外では呼び方が、ちーちゃんから魔王に変わった。

 

「お兄ちゃんの撫で技術は日に日に上がっているな」

 

「当然だろ。常に限界(おれ)を越え続けるからこその俺だ」

 

「僕もその漫画、大好きだよ。BL要素はないけど面白いよね」

 

「……おい、シャル。余計なことを言うな。恥ずかしいだろ」

相手が分かっていたら良いけどラウラは理解出来ずにポカーンとしているし。

 

「その漫画は面白いのか?」

 

「最高に面白いぞ。俺のお気に入りの一つだ」

 

「だったら後で借りてもいいか?漫画はクラリッサも好きだし、何より私も日本のことを知りたいからな」

漫画で日本の勉強をするとシャルや姐さんみたいに間違った知識を覚えそうだな。まぁ、その場合は俺が訂正すればいいか。

 

「ああ、帰ったら他の漫画も貸してやる」

 

「ああ、楽しみにしている」

楽しみが一つ増えたな。

あっ!そう言えば、大事なことを忘れていたな。

 

「そういや、いっくんの部屋はどこなんだ?海で聞こうと思っていたけど鼻血を出して惨めに倒れたから聞きそびれていた」

 

「深夜がやったことなのに、そこまで言われる覚えはないぞ」

失礼だな。確かに止めを刺したのは俺だが、その前に二回当てていた刹那っちの責任でもあるぞ。

 

「それよりもどこなんだ?」

 

「千冬姉と同じ部屋だ」

何だと!確かに、それなら夜中に女子がいっくんの部屋に忍び込んだりすることは出来ない。そして、それを口実に魔王は愛しの弟と同じ部屋で過ごすことが出来る良い手だ。だが、それでは別の問題が起きてしまう可能性がある。それこそ世界が注目するような大スキャンダルが。

 

「よし、とりあえず適当な女子を部屋に連れ込め」

 

「何でだよ!?そんなことしたら千冬姉に俺が殺されるぞ!」

確かに、いっくんが死んだらラウラが悲しむから困る。それがなかったら、どうでもいいが。

 

「だったら部屋に監視カメラと盗聴機を仕掛けるしか……」

 

「何だ、その犯罪思考は!俺に何か恨みでもあるのか!?」

 

「何を言う。いっくんのために言ってるんだぞ」

マジで何か考えないとマズイな。刹那っちが、かんちゃんの貞操を奪わないようにも気を付けないといけないのに。どうしたら良いんだ?

 

「お兄ちゃんは何をそんなに焦っているのだ?男女と言っても嫁と教官は姉弟だから問題ないだろ」

 

「そうだよ。そんなに一夏にイタズラ出来ないのが嫌なの?」

そうか、二人は知らないんだな。

 

「時として知らない方が良いこともある」

 

「「「……?」」」

俺の発言に三人が首をかしげる。

説明する気になれないな。

 

 

 

俺が部屋に戻ると、かんちゃんが刹那っちに襲われていた。

 

「良いではないか、良いではないか」

 

「や、やめて……」

二人共すでに浴衣がはだけていて下着が丸見えだ。とりあえず写真を撮っておくか。

 

「何やってんだ、刹那っち」

 

「今日のナンパに全敗したから落ち込んでいるから簪ちゃんで癒されてるの」

なるほど。フラれすぎて頭がおかしくなったのか。

 

「これをやるからやめろ」

俺は刹那っちに今日、撮った女子の水着写真を渡した。女子がノリノリだったせいで臨海学校の写真というよりグラビアの撮影みたいな写真も結構多い。

 

「良いところだったのに何?」

そう言いながら刹那っちは写真を受け取った。て言うか、それ以上やったらシスコンに殺されてたぞ。

 

「おお、これは素晴らしい写真だ。被写体の女の子も可愛いけど、何よりアングルが良い。女の子達の可愛いさを引き出している」

すでに意識は写真に向いており、ヨダレを垂らしている。どう見ても変態にしか見えない。それだけ欲求不満ということか。適当にパッキン女を売りたいけどタイプじゃないみたいだし、どうしようか?

 

「かんちゃん、大丈夫か?」

 

「な、何とか。助かった」

かんちゃんが安心した顔をしながら浴衣を直していく。

 

「それよりも俺は今から風呂に行くんだが、どうする?」

 

「私も行く。刹那と同じ部屋に二人っきりでいるのは危険」

 

「だったら私も行く」

 

「貴女は部屋でのんびりしてて」

かんちゃんがISを起動して刹那っちを脅す。

 

「でも、それだったら簪ちゃんの荷物の中から下着を出して色々するかもよ」

だが、全くビビった様子もなく変態発言をする刹那っち。元から変態だが最近さらに増してるな。早く対処しないと。

って、俺はこんなに悩んだり苦労するタイプじゃなかったような気がするんだが。

とりあえず俺のキャラを元に戻さないと。確か俺は人を喰ったような性格で人の不幸を何とも思わない人間だったはずだ。

 

「とりあえず殺す?」

 

「殺すのは良いが、ISは使うなよ。周りにも被害が出るからな」

これ以上、面白くないことに頭を使うのも嫌だし、殺した方が楽だな。

もしくは他にレズを探すしかないか。IS学園は元々、女子校だし探せば何人かいるだろ。

あっ!良いこと思い付いた。

 

「ちょっと殺すのを待て、かんちゃん」

 

「……何で?」

 

「刹那っちに話があるんだ」

 

「私も殺されるのは嫌だから話を聞くけど、何?」

 

「実はある部屋に欲求不満で困っている美人がいるんだが」

こいつらがくっつけば、俺の悩みのほとんどは解消されるはずだ。まぁ、無理だと思うが。

 

「えっ!本当に!どこの部屋!」

部屋の場所を教えると凄い勢いで出ていった。

 

「今の話、本当なの?」

 

「ああ。しかも、上手くいけば刹那っちの変態性もどうにかなるかもしれない。生きていればだが」

 

「……どういう意味?」

 

「そのウチ分かる」

その後、準備をして風呂に行った。脅威が去ったからか、かんちゃんは風呂には行かず部屋でのんびりしていることになった。

 

 

 

 

俺は風呂から出ると、ある部屋に向かった。ちなみに風呂は、いっくんが出た後も黒と十五分ぐらい浸かってから出た。

そして目的の部屋につくと入口のドアに女子が五人ほど張り付いた。

 

「何やってんだ、お前達」

 

「シッ!」

貧乳がそう言うと俺の口を塞いできた。するとドアの向こうから声が聞こえてきた。

 

『千冬姉、久し振りだから緊張してる?』

 

『そんなわけあるか、馬鹿者。――んっ!す、少しは加減をしろ……

 

『はいはい。んじゃあ、ここは……と』

 

『くあっ!そ、そこは……やめっ、つぅっ!』

え!まさか、そういうことか!?俺が危惧していた最悪の展開になっているのか。それを阻止するために刹那っちを犠牲にしたのに無駄だったか。いや、待て。いっくんのことだし、ただのマッサージということもあり得る。

 

「失礼する」

そう言うと俺はドアを開けて部屋の中に入った。

 

「あれ、深夜。何か用か?」

 

「入るならノックぐらいしろ、馬鹿者」

 

「んーんー」

中には魔王にマッサージをしている、いっくんと猿轡と縄で拘束されている刹那っちがいた。何とか最悪の事態にはなってなかったようだ。そして刹那っちは役に立たなかったか。

 

「で、飛原はこの変態を回収に来たのか?」

 

「いえ、違います」

このまま放置していた方が穏やかに寝れるからな。

 

「うわっ!何、この状況!」

 

「ふ、ふん。私はこんなことだと分かっていたぞ」

 

「私もだ。私はけっして不埒なことなんて考えていないぞ」

 

「当然ですわ」

 

「僕はそれはそれでアリかな、と思っていたけどね」

刹那っちを見て驚いたり、誰にしているのか分からない言い訳をしたり、変態発言をしながら外にいた五人も入ってきた。

 

「貴様らは暇なのか?これから本番という時に」

マジでヤるつもりだったのかよ。来て良かったな。

 

「まぁ、いい。一夏、金を渡すから何か飲み物を人数分買ってきてくれ」

 

「分かった」

 

「いっくん、俺は日本酒で」

 

「自販機に日本酒があるわけないだろ。こいつは無視して行ってこい」

そして、金を受け取るといっくんは出ていった。

 

「て言うか、ツッコむところはそこじゃないような気がするんですけど」

 

「細かいことを気にしていたら、無い胸がさらに無くなるぞ」

 

「そんなわけないでしょ!」

 

「確かにそうだな。無くなるほど無いからな」

 

「うるさいわね!」

自覚はしていたのか。

 

「お前達は何を漫才をしているんだ?まぁ、いい。飲み物でも飲みながら話すか」

そう言って魔王は旅館の備え付けの冷蔵庫から、清涼飲料水を六人分取り出した。

 

「……あの教官。何で飲み物があるのに一夏に買いに行かせたのですか?」

 

「あいつに聞かせたくない話をするからだ。それよりも適当に好きなヤツを選べ」

て言うか、いっくんは飲み物があることを知らなかったのか?

 

「先生、アルコールがありません」

 

「しょうがないな。ノンアルコールでいいか?」

 

「ノンアルコールでも駄目でしょ!」

魔王にツッコむとは。やるな、貧乳。

そして俺達はそれぞれ飲み物を手に取って飲んだ。

 

「飲んだな?」

 

「まさか毒が入っていたんですか?」

弟との時間を邪魔したから仕返しとか。

 

「敬語になっても失礼な奴だな。ただの口封じだ」

そう言うと魔王は新たに冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、豪快に飲んだ。

 

「ぷはー」

 

「「「…………」」」

いつもの魔王のイメージと合わず俺以外のメンバーはぽかんとしている。

 

「おかしな顔をするなよ。私だって人間だ。酒くらいは飲むさ。それとも、私は作業オイルを飲む物体に見えるか?」

 

「見えます」

 

「お前は喋るな」

生徒から発言の自由を奪うなんて酷い教師だな。

 

「まぁ、いい。他の奴等も口止め料を払ったんだから黙っていろよ」

ああ、この飲み物はそういうことだったのか。

 

「織斑先生が普段通りに下着姿でダラダラとしていても黙っています」

 

「敬語になって何か前よりもイラッとくるな。とりあえず次に余計なことを喋ったら眼球をえぐりとるぞ」

マジでやる目をしている。何でこんな奴が聖職者なんてしているんだ?て言うか、出来ているんだ?

 

「さて馬鹿は放っといて本題入るか」

二本目の缶ビールを飲みながら言ってきた。

 

「お前ら、あいつのどこがいいんだ?」

なるほど。弟にまとわりつく邪魔者のことを知ろう、ということか。

まぁ、二人ほど違う奴もいるが。

 

「同性愛が似合いそうなところです」

 

「お前は国に帰れ」

気持ちは分かるが、さすがにそれは言い過ぎだろ。

 

「で、お前は?」

次はラウラに話を降った。

 

「つ、強いところが、でしょうか……」

 

「いや、弱いだろ」

それは魔王に同意見だな。

 

「つ、強いです。少なくも、私よりは」

心が、という意味だろうか。それなら俺の方が圧倒的に強いが。

 

「まぁ、強いかは別にしてだ。あいつは役に立つぞ。家事も料理もなかなかだし、マッサージだって巧い。さらに顔を良い」

引くくらいべた褒めだな。そして、その全てにおいて俺が勝っているな。負けているのは身長ぐらいだ。

 

「というわけで、付き合える女は得だな。どうだ、欲しいか?」

 

「く、くれるんですか?」

代表してラウラが聞いた。

 

「やるか馬鹿。あいつは私の物だ」

まさかの宣戦布告かよ。

 

「だったら、そこの拘束されて喜んでいる変態と交換はどうですか?」

 

「そんな変態はいらん。私には一夏がいれば充分だからな」

さすがに、この発言に他のメンバーがポカーンとしている。俺もここまで堂々と言い切るとはビックリだ。もう何か色々と諦めた。

 

 




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