ISに告白された少年   作:二重世界

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第33話 海

「おい、着替え終わったか?」

俺は更衣室を出たところで女子達の着替えが終わるのを待っている。

いっくんは一足先に遊びに行った。今は貧乳と戯れているようだ。

 

「着替え終わったわよ」

一番最初に黒が出てきた。

 

「どう?似合ってる?やっぱり私的には地味だと思うんだけど」

 

「大丈夫だ、似合ってる。いつもと雰囲気が違って良い。これがギャップ萌えか」

たまには普通の格好も良いな。黒は基本的に制服以外は変わった服装が多いからな。

 

「んー、よく分からないけど深夜が好きなら、それで良いわ」

 

「他の二人はまだ着替え終わってないのか?」

 

「簪はそろそろだと思うわよ」

簪は?刹那っちはどうしたんだ?

 

「……やっぱり恥ずかしい」

次にかんちゃんが出てきた。とりあえず写真を撮っておくか。

 

「ちょっと何でいきなり写真を撮ってるの!?」

 

「俺は写真係だからな。生徒会の仕事として臨海学校の思い出を写真に撮るように頼まれている」

この臨海学校は『ISの非限定空間における稼働試験』が主題であるため業者の人を雇うわけにはいかない。そこで俺が頼まれたわけだ。まぁ、これはただの口実で学園の二大戦力に頼まれ……もとい、脅されただけだが。

 

「だったら私も撮ってよ」

最後に全裸の刹那っちが出てきた。さっきの発言は本気だったのか。

 

「ちゃんと水着を着ろ!」

とりあえず俺は回し蹴りをする。

 

「ちょっと、いきなり何をするのよ?」

 

「ちっ!」

それを刹那っちは軽々と避けた。さすが殺し屋。身体能力が高いな。

 

「いいからお前は水着を着やがれ!」

 

「そう言われても体を拭くためのタオルぐらいしか持ってきていないんだけど」

さすがにこの返事は予想外だ。

 

「て言うか、何で脱ぐだけなのに最後だったんだ?」

 

「そりゃあ、黒ちゃんと簪ちゃんの着替えを見ていたからでしょ」

こいつには愚問だったな。そして、さっきの黒の発言はこういう意味だったのか。刹那っちは最初から着替えるつもりがなかった。

 

「仕方ない。俺が持ってきてる水着を貸してやる」

そして俺は更衣室に戻って鞄から水着を出して刹那っちに渡した。

 

「……何でそんなに女物の水着を持ってるの?て言うか、普通の水着も持ってるし。私も着替える」

かんちゃんもついてきて後ろで怖い顔をしている。

 

「水着を忘れた人のために生徒会として水着のレンタルをしている。後、変更は認められない」

生徒会って言い訳は便利だな。

 

「何か普通の水着ね。もっと変わった水着の方が良いんだけど。例えば濡れると溶ける水着とか」

 

「そんな物はない。それで諦めろ」

本当はあるけど、こいつに貸す気にはなれないな。

 

「ところで何で私の水着の変更は認められないの?」

 

「今から着替え直していたら時間がかかるだろ?」

 

「今、刹那も着替えてるし――」

 

「じゃあ、着替え終わったところで水着美女のナンパに行こう」

 

「はやっ!」

いつの間に着替え終わったんだ?全く気付かなかった。

 

「殺し屋たるもの行動は迅速にしないと。仕事場ではコンマ一秒の油断で死ぬこともあるし」

これを才能の無駄遣いと言うのだろうな。

 

「じゃあ、早速遊ぼうか」

 

「ちょっと私の話が終わってないんだけど」

 

「可愛い女の子が私を待っているはず」

俺達はかんちゃんの話を無視して海に出る。後ろでは諦めたように、かんちゃんもついてきた。

 

「おおっ!大量の水着美女が!IS学園は外国の生徒も多いし、色んなタイプがいてテンションがあがってきたぁぁー!」

刹那っちが壊れた。いや、いつものことか。そして目にも止まらない速さでナンパに向かった。

 

「さて、準備運動をするか」

俺は基本的にインドアだからな。泳いでいる時に足がつって溺れたりしたら格好悪い。

ついでに周りを見渡しけどラウラはまだ来てないみたいだな。シャルに頼んでおいたけど大丈夫か?

 

「まずは軽く、ひと泳ぎをするか。かんちゃんはどうする?」

 

「……私はあそこの海の家でのんびりしてる」

かんちゃんの指差した方を見てみると結構、大きな海の家があった。ビーチボールや浮き輪の貸出もしてるようで賑わっている。

 

「せっかくの海なのに、それはないだろ」

 

「……私は海が好きじゃない」

 

「ヤッホー、かんちゃんにヒハラン~」

のほほんさんとその他クラスメイトがやって来た。ほほんさんは狐の着ぐるみみたいな水着を着ている。前に似たような物を見たが、おそらく同じところで買ったのだろう。

 

「織斑くんの体も格好良かったけど飛原も格好良いね」

 

「ねぇねぇ、私達と一緒にビーチバレーしない?」

 

「俺は先にひと泳ぎしたいから後でな。代わりに、かんちゃんが一緒にやってきたらどうだ?」

 

「……何で私が?」

 

「これを機にかんちゃんも友達も作ろう~」

そう言うと、のほほんさんがかんちゃんを引っ張って行った。

 

「ちょ、ちょっと本音!」

 

「飛原くんも後でやろうね」

 

「ああ、また後でな。かんちゃんも頑張れよ」

さて、やっと泳げるな。

 

「じゃあ、邪魔者がいなくなったところで二人っきりで楽しみましょう」

 

「ああ、そうだな。二人でのんびりと泳ぐか」

そして海の方に歩いていくと、いっくんがパッキン女にサンオイルを塗っているのを見かけた。それを隣で貧乳が不機嫌そうに見ている。

 

「私にもサンオイルを塗ってくれない?」

 

「ISが日焼けすることはないだろ」

それ以前にサンオイルを持ってきていないが。

 

「よぉ、いっくん。そのまま尻も塗ってやったらどうだ?」

 

「深夜か。さすがにマズイだろ」

 

「さっきまでパッキン女の尻をガン見していたのに説得力がないぞ」

 

「い、一夏さんがしたいんでしたら私は構いませんわよ」

 

「だったら私がやったげるわよ!」

我慢できなくなった貧乳がいっくんからサンオイルを取ってパッキン女の尻に塗った。

 

「きゃあっ!?り、鈴さん、何を邪魔して――つ、冷たっ!」

サンオイルを温めずに強引に塗ったのでパッキン女が怒り体を起こした。

 

「きゃああっ!?」

さっきまでパッキン女は、いっくんにサンオイルを塗られていた。つまりパッキン女の胸が、いっくんに丸見えになった。

とりあえず俺は写真を撮った。

 

「ところで、いっくん。今の写真はいるか?パッキン女のだから安くしとくぞ」

 

「って、何で飛原さんはそんなに冷静に写真を撮ってるんですの!?後、何で私の写真だったら安くするんですの!?」

 

「いや、それはさすがにセシリアに悪いだろ」

 

「だったら、こんな写真はいらないから消すか」

パッキン女の写真なんて、あっても売り先がないからな。容量の無駄だ。

 

「それよりも一夏。私と泳ぎで勝負しない?負けたら駅前のカフェでパフェおごんなさいよ」

 

「だったら俺も参加していいか?向こうのブイに速くたどり着いた奴が勝ちにするか」

 

「ちょっと私を無視して話を進めないでくださる!」

 

「良いわね」

 

「深夜が参加するなら私も参加するわ」

そして四人でのレースが開始した。

トップは貧乳で、そのすぐ後ろに俺がいる。

 

「結構、やるわね。私についてくるなんて」

 

「そりゃ、どうも」

 

「でも、ここからが私の本気よ」

そう言うと貧乳のスピードが上がった。こうなったら俺も本気を出すか。

 

「!?ごぼぼっ!」

いきなり貧乳が溺れはじめた。おそらく、ちゃんと準備運動をしていなかったので足がつったのだろう。

俺は一回止まって様子を見るが、いっくんが助けようしていたので、そのまま泳ぎを再開する。

 

「深夜、私も溺れているんだけど助けて」

俺がブイまで行って戻る途中で黒が言ってきた。

 

「本当に溺れていたら助けるが、俺に嘘が通じるわけないだろ」

貧乳がいっくんに助けられているのを見て真似たのだろう。て言うか、そもそも黒は呼吸していないから溺れても問題ない。

そして俺は一位で浜辺に戻った。

 

「よぉ、溺れていたようだけど大丈夫か?」

 

「何であたしが溺れてんのに普通に泳いでんのよ!」

ふむ。ツッコむ元気はあるようだし大丈夫だな。

 

「だって俺よりも、いっくんに助けられた方が嬉しいだろ」

 

「な、何言ってのよ、馬鹿なの!」

 

「相変わらず分かりやすいな」

 

「もういいわ。あたしは向こうで休んでくる」

貧乳は照れているのを誤魔化すかのように、どこかに行ってしまった。

 

「ふぅ、やっと終わったわ」

結構、疲れた様子で黒が戻ってきた。

 

「遅かったな」

 

「よく考えたら私、泳ぐの初めてだったのよ」

そうだったか。それで普通に泳げているのは凄いな。

さて、もうひと泳ぎしたいけど、そろそろビーチバレーの方に行くか。

 




今日は大晦日。今回が今年最後の投稿です。次は来年に会いましょう。
では良いお年を。

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