「海だぁぁぁぁー!」
今日は臨海学校の初日。移動中のバスから海が見えてきたところで刹那っちが叫んだ。
「……何で刹那っちが一組のバスにいるんだ?」
バスはクラス毎に分かれているはずなのに何で三組の刹那っちが、このバスに乗っているのだろうか?
ちなみに俺はバスの一番後ろの座席で黒とシャルと刹那っちの四人で座っている。
ラウラは俺が色々と手回しした結果、いっくんの隣に座っている。水着のこともあり緊張していて上手く話せていないようだ。
それをパッキン女と侍娘が離れた席から羨ましそうに見ているが、どうでもいいことだ。
「そりゃあ、三組よりも一組の方が美少女が多いからでしょ。でも今回の目的だったラウラちゃんは離れた席にいるし」
クラス代表がそれでいいのか?
「おい、ウチのラウラに手を出すなよ」
「簪ちゃんから聞いていたけど本当に過保護のシスコンのようね」
かんちゃんとそんな話をしていたのか。
「まぁ、そんなことよりもシャルロットちゃん。私と一緒に――」
「ごめんなさい」
「うわっ!言い切る前にフラれてしまった!」
俺が事前に刹那っちのことを教えていた結果だな。にしても、こいつは可愛い女の子だったら誰でも良いのか?
「そろそろ目的地に着く。全員ちゃんと席に座れ」
ちーちゃんの言葉に全員が従う。相変わらずのカリスマ性だな。
そして、ちょっとしたらバスは目的地である旅館に到着した。そして四台のバスから次々と生徒達が出てきて整列した。
って、刹那っちが一組に並んでいるけど良いのか?
「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員と特に私の仕事を増やさないように注意しろ」
「「「よろしくお願いします」」」
こっちが全員(俺と黒は除く)で挨拶をすると着物姿の女将さんが丁寧にお辞儀をした。
「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね」
その後の挨拶はめんどくさいので聞き流した。そして終わってから部屋に移動することになった。
「よぉ、いっくんの部屋は何処なんだ?一覧に書いてなかったが」
俺の言葉に周りの女子が一斉に聞き耳を立てた。
「いや、俺も知らない。女子と寝泊まりさせるわけにはいかないので別の部屋を用意している、と山田先生が言っていだが」
「そうなのか?俺は普通に女子と同じ部屋だが」
まぁ、俺の場合は押し付けられただけだと思うが。
「……お前と俺の扱いの違いは何だ?」
「やっぱり女子と同じ部屋が良かったのか?」
「いや、そういうわけでは――」
「織斑、お前の部屋はこっちだ。ついてこい」
話の途中で、いっくんがちーちゃんに呼ばれて行ってしまった。まぁ、知りたい情報は知らないみたいだしいいか。
ただ、ちーちゃんが妙に嬉しそうな顔をしていたのが気になるな。
まぁ、一日目は終日自由時間みたいだし早く部屋に荷物を置いて泳ぎに行くか。
「じゃあ、俺達も移動するか?」
「じゃあ、深夜。早速部屋で――」
「先に海だ」
「黒ちゃん。せっかくの自由時間だし――」
「泳ぎに行きましょう」
その後、かんちゃんと合流して部屋に移動した。
「おっ!良い部屋だな」
窓からは海が見えて景色が良い。さらに色々と設備も整っている。
ちなみに俺はかんちゃんと刹那っちが同室だ。クラスがバラバラだが、この部屋割りには理由がある。かんちゃんは部屋割りを決める時に一人だけ余ってしまったらしい。そして刹那っちは他のクラスメイトが貞操の危機を感じて嫌がったらしい。つまり厄介者が一ヶ所に集められたわけだ。
まぁ、五人部屋を四人で広々と使えるんだから良いけどな。
「早速、水着美女を見るために海に行こう。そして可愛い女の子がいたらナンパだ!」
刹那っちは一回、諦めるということを覚えた方がいいと思う。
そして俺達は水着の準備を開始する。
「あれ?入れたはずの私の水着がない」
かんちゃんが荷物の中を探しても目当ての物が見付からなくて困っている。
「じゃあ、仕方ないな。俺が準備した水着を着るしかないな」
「……もしかして事前に私の水着を抜いたの?」
「まさか。いくら俺でも女子の荷物を弄ったりしないさ」
「……わざとらしい」
かんちゃんが冷たい目線を向けてくるが、俺は無視して水着を出した。
「何着かあるけど、どれがいい?」
「……マトモな水着がほとんどないんだけど」
俺が出した水着は前に黒が選んだ紐みたいな水着に男物の水着、スケスケのスクール水着、濡れると溶ける水着などだ。本当にレゾナンスには何でもあって驚いた。まぁ、荷物の中には普通の水着もあるが。
「……これでいい」
かんちゃんが選んだのは水色をしたフリル満載のビキニだ。俺が出した水着の中では一番マトモなヤツだ。
「水着なんて着なくて裸でいいんじゃない?私はそのつもりだけど」
「……何で?」
「だって裸の方が開放感があって気持ち良いでしょ」
物凄く良い笑顔をしている。
「おい、絶対にラウラに近付くなよ。悪影響だ。後、水着は着ろ」
そして着替えの準備が完了したので部屋を出た。
更衣室に向かう途中で、困っている様子のいっくんと不機嫌そうに歩いていく侍娘を見かけた。
「どうかしたか、いっくん」
「ああ、深夜か。これを見てくれ」
いっくんに言われたところを見てみると道端にウサミミが生えていた。しかも『引っ張ってください』という張り紙まである。
今回は何も聞いてないが。気紛れか?
「げっ!」
「おおっ!」
「……?」
黒は嫌そうな顔、刹那っちは嬉しそうな顔、かんちゃんは不思議そうな顔と三者三様のリアクションをとった。
「どうする?」
どうするもこうするもない。やることは決まっている。
「よし。黒、刹那っち、やるぞ」
「了解」
「OK」
そして黒は日本刀を展開、刹那っちはイヤらしい手付きをしている。
「……何をするの?」
「まぁ、見てろ」
俺はウサミミを思いっきり引っ張った。
「ちっ!」
下にはウサギが埋まっていると思ったが違ったか。どこにいやがるんだ?
キィィィィン……。
何かが高速で向かってくる音が聞こえてきた。
「上か!やれ、黒」
「殺るわよ」
黒は日本刀を上段に構える。
スパァァァァン!
そして飛んできた謎の飛行物体を真っ二つにぶった切った。
「うわっ!いきなり何なの!?」
真っ二つに分かれたニンジンの中からウサギが出てきた。何故、ニンジン?
「よし!」
刹那っちが出てきたウサギを抱き抱えるふりをしながら胸を揉みつつ投げた。
「痛っ!今度は何なの!?」
「やっぱり束博士の胸の揉み心地は最高ね。ただ、もうちょっと揉んでいたかったわ」
刹那っちがウサギの胸の余韻を楽しみつつ、残念そうな顔をしている。
「……誰?」
「ISの生みの親にして俺の友達、篠ノ之束だ」
「えっ!?この変な格好をしている人が深夜が言っていたシスコンにして変態の篠ノ之束」
「……ちょっと、しっくん。束さんのことをどんな風に説明しているのかな?」
気付いたらウサギが後ろに立っていた。
「まぁ、いいか。それよりも久し振りだね、いっくん。いつぶりかな~?」
ウサギは早速切り替えて、いっくんに話かけた。
「お、お久しぶりです、束さん」
「うんうん。本当にね。ところでいっくん。箒ちゃんはどこかな?さっきまで一緒だったよね?トイレ?だったら覗きに行くけど」
行くなよ。って言うか、侍娘に用があったのか。紅椿関連の話か?
「まぁ、この私が開発した箒ちゃん探知機ですぐ見つかるよ。じゃあね、いっくん。それにしっくん達も。またあとでね!」
そして箒ちゃん探知機とやらのウサミミがダウジングロッドみたいに侍娘のいる方向を向いた。本当にどういう仕組みで出来ているのだろうか?
「ちょっと待ってください、束博士」
「うん?何かな、刹那っち。用事なら後にしてほしいんだけど」
「もう一回、その素敵な胸を揉んでいいですか?」
クロエに殺されるぞ。そして、どんだけ気に入ったんだよ。手付きがかなりイヤらしいが。
「ははっ!また後でね!」
そう言うとウサギは凄い勢いで走り去っていた。
「楽しみは後に取っておこう」
相変わらず無駄にボジティブだな。
「さて、今のところは関係なさそうだし早く着替えて海に行くか」
そして俺達は一番奥の更衣室に向かう。そこは男子専用になっており、直接浜辺に出られるようになっている。
「って、何で女子達も一緒に来ているんだ!?」
いっくんが女子の更衣室を横切ったところでツッコんできた。
「そりゃあ、黒ちゃんや簪ちゃんと一緒に着替えるためでしょ」
「ああ、深夜と生活してたから感覚が麻痺してた。でも、人の多いところは嫌だし。こうなったら、別に見なければ気にしないけど」
今気付いたけど、これがいっくんとかんちゃんの初対面か。インパクトのある出会いを演出したかったんだが仕方ない。
「……IS学園に入ってから俺の中の常識が書き替えられていく」
「そろそろ慣れろ」
その後、いっくんは照れながら俺と女子達は全く気にしないで着替えた。
臨海学校が始まったけど福音戦の内容が思い付かない。遊んでるシーンを増やして時間を稼ごうかな。
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