「待っていたぞ、飛原深夜」
風呂から戻ってくると銀髪ロリが俺のベットに座りながら、かんちゃんと話していた。
この状況、今までの経験等を考慮すると答えは一つしかないな。
「いっくんに惚れたか。いいだろう。その相談、請け負った」
「なっ!まだ要件を言ってないのに何故、分かった!?」
「だから言ったでしょ?深夜は無駄に勘が鋭いって」
相変わらず無駄とは失礼だな。それに勘じゃなくて推理だ。後でその考えを矯正しないと。
「ところで、もう動いてもいいのか?」
「ああ、この程度なら問題ない」
さすが軍人といったところか。鍛え方が違うらしい。
「でも、ちーちゃんが好きな百合だと思っていたのに意外だな。いっくんのどこに惚れたんだ?」
「私はアイツに助けられた。私はその強さに惚れたのだ」
堂々として清々しいな。
とりあえず俺もベットに座り、黒に膝枕をする。当然、猫耳にさせて撫でている。
「ふにゃ~」
ああ、癒されるなぁ。
「さて、具体的な内容を聞こうか」
実況の時に変な情がわいたからな。初めて真面目にやるか。
「実はここに来る前にウチの副官に相談していた時に言われたのだ。こういう時は男性の意見も聞いた方がいいと」
転校初日にも言っていた副官か。気になるな。
「なるほど。ところで、その副官に他にどんなアドバイスを受けたんだ?」
「ああ、日本では気に入った相手を『嫁にする』のが一般的な習わしだと聞いた。他には男は力ずくで奪う物とも言っていた」
何か色々間違っているな。嫁については一般的どころか、かなりマニアックな分類だ。力ずくについては……間違ってないな。いっくん相手なら、それぐらいでちょうどいい。
「確かにその通りだな。でも恋愛相談か。今まで真面目にやったことないし、何をしたらいいんだ?」
「織斑一夏の好みに合わせてアプローチをするのがいいと思う」
かんちゃんが意見を出すとは思わなかった。俺が戻ってくる前に仲良くなったのか?それとも単純に女子だから恋愛に興味があるだけか?
「いっくんの好みか……。歳上の巨乳好きだな」
前にいっくんの自宅に遊びに行った時に調べた隠し持っているエロ本の傾向からして間違いない。実際、マヤマヤの胸元をよく見てるし。そういや姉萌え系の数が一番多かったな。
「無理ね。諦めましょう」
立ち上がった黒が銀髪ロリの肩に手を置いて悲哀に満ちた表情で言った。
「ふざけるな!他にはないのか?」
「安心しろ。性癖と好きになる奴は、また別問題だ」
再度、黒に膝枕をして撫で始める。
「そ、そうか……。それは良かった。それで何か良い作戦はあるか?」
いっくんは何でこんなにモテるのだろうか?確かに見た目は悪くないが、それだけでここまでモテるか?主人公体質なのかもしれない。
「やっぱりインパクトだな。いっくんの周りには女子が多いからな。他の女子とは違う特別なポジションを得ることが重要だろう」
いや、インパクトは充分か?初日にビンタをくらわしているし。
「なるほど、インパクトか。例えば、何だ?」
「……殺せば、その人の唯一になれる」
かんちゃんが過激な発言をする。何だ、そのヤンデレ思考は?いっくんに対する恨みはマシになったと思っていたんだが。そこまで恨んでいたのか?
「う~ん、さすがにそれはやり過ぎだろ?」
そういう問題じゃない!
「やっぱりストレートに告白するしかないんじゃない?」
「でも、それで失敗したら取り返しがつかないぞ」
どうでもいい奴だったら俺もこの作戦を提案するが。フラれるように仕向けた上で。
「……だったら自分無しでは生きられない体にすればいい」
だから怖い!何が、かんちゃんをそんなにしたんだ?
「それは最終手段だな」
アリなのかよ!このままだったら、いっくんがどうなるか心配だ。いや、それはそれで面白いかもしれないが。
「だったら押し倒すしか」
「お前らにマトモな手段はないのか!?」
キャラじゃないけど我慢出来ずに普通にツッコんでしまった。かんちゃんは猟奇的すぎるし、黒は直接的過ぎる。
「……だったら深夜は何かアイデアがあるの?」
「定番ならピンチの時に颯爽と現れて助けるとか」
「……少女漫画の読みすぎ。て言うか普通、逆」
「読んでねぇよ。後、細かいことは気にするな」
ラブコメは好きだけどガチの恋愛物はあまり好きじゃない。いや、全く読まないわけじゃないけど。
「でも、そんな都合よくピンチなんてあるのか?」
「ああ、問題ない。明日、飛びっきりのピンチが織斑一夏を襲うだろう」
何か予言者みたいな口振りだな。
「で、その後に唇を奪うのね」
「う~ん、それぐらいなら問題ないか。ただし、舌は入れるなよ」
ちーちゃんに見られたら殺されそうだから気をつけないとな。
「うむ。よく分からないが了解した」
「今日は、ですね。皆さんに転校生を紹介します。転校生といいますか、すでに紹介は済んでいるといいますか、、ええと……」
翌日の朝のHR。マヤマヤはいきなり訳の分からないことを言っている。転校生とか、そんな話は聞いていないが。
それよりも、ちーちゃんがいないし計画の方を実行したいんだが。
「じゃあ、入ってください」
「失礼します」
そして女子の制服を着たシャルが教室に入ってきた。正直、意味が分からない。何がどうなっているんだ?
「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」
シャルの姿にクラス中がぽかんとしている。
そういや昨日、父親からもう自由にやっていい、と電話がきたとシャルが言っていたな。その時に俺が何かやったんだろう、と追及されたが適当に聞き流した。
それが関係してんのか?まぁ、女子なのに男装したまま生活をするのはしんどいだろうからな。
「あれ~?そういや昨日、男子が大浴場を使わなかったけ?」
のほほんさんの発言でクラス中が凄い喧騒に包まれる。
俺が言う予定だったけどいいか。
「一夏っ!」
貧乳が扉を蹴破って現れた。学園の備品を壊すなよ。また生徒会の仕事が増えるから。それにしても凄い地獄耳だな。
「死ね!」
ISアーマーを展開して、衝撃砲の発射準備に入る。
「ところでヒハランも一緒に入ったんだよね?」
さて、面白くなるように煽りますか。
「ああ、黒も一緒に入ったな。いっくんは途中、鼻血を出して倒れたな。黒とシャルの裸をガン見していたせいで」
「ちょっと待て、深夜!俺が倒れたのは、のぼせたからだ!鼻血は出していない!それにガン見もしていない!」
「……やっぱり殺すのはやめた」
貧乳の殺気が膨れ上がった。俺でも少し怖いと思うほどに。
「よく分からんが、殺すをやめ――」
「死ねよりもキツい苦痛を味あわせてやるわよ!」
そしてフルパワーの衝撃砲を発射した。
「なるほど。計画通りだな」
そこにISを纏っている銀髪ロリが割って入ってAICで相殺した。コアが無事だったから予備パーツで組み直したらしい。さすがに完全とはいかず大型レールカノンはないが。
「ちょっとあんた、何邪魔してんのよ!」
「ここでするのだな」
「さっきから何を言っているのか分からないが助か――むぐっ!?」
銀髪ロリがいっくんの胸ぐらを掴んで引き寄せ、キスをした。
そして俺はその瞬間を写真に撮った。
「ちょっと待て、深夜!さっきまで座っていたのに、いつの間に移動したんだ!?」
いっくんが混乱のあまりにどうでもいいことをツッコんできた。
「深夜、その写真は後で貰おう」
「了解。初回特典で別の写真もつけておいてやる」
「ああ、後で取りに行く」
そして俺は席に戻って座った。
「ああ、そうだ、のほほんさん。夏休みに温泉旅行に行こうと計画してるんだが、来るか?」
「おお、いいね~。他に誰を誘ってるの?」
「今のところは、かんちゃんだけだ」
「おい、深夜!平和に話してないで助けてくれ!」
いっくんの叫びを聞いて見てみるとパッキン女に侍娘まで参加していた。死ぬかもな。
「今は夏休みの旅行計画で忙しいから無理だ」
「まだ七月にもなっていないのに早すぎるだろ!」
「あまいな、いっくん。良いところは早めに予約を取っておかないといけないんだ」
出来れば温泉以外にも色々あるところに行きたいからな。旅費は両親の生命保険が残ってるから大丈夫だろ。
「一夏!飛原は関係ないでしょ!」
「いや、おかしいだろ!深夜も一緒に入ってんだぞ!」
「あいつはいいのよ」
「それに今の問題は一夏さんですわ!」
「大人しく諦めろ、一夏!」
物凄く理不尽な光景だ。モテるのも考え物だな。
「ねぇ、深夜。僕も一緒に行っていいかな?日本の温泉には僕も興味があったんだ。男女一緒に入るんでしょ?」
シャルが旅行会議に参加してきた。そして、また間違った日本知識か。何で外国人は日本文化をよく勘違いしているのだろう?
「ああ、いいぜ。にしても混浴か。探せばあるかな」
「ほら聞いただろ!深夜は堂々と混浴するつもりだぞ」
いっくんも諦めが悪いな。そして俺を巻き添えにしようとするのをやめろ。
「だから飛原はいいのよ」
「理不尽だろーー!」
いっくんの魂の叫びが学園中に響き渡る。
今日もIS学園は騒がしいな。
遂に二巻の内容も終了。次回から三巻の内容に入ります。冒頭しか話が思い付いてないけど、どうしよう。書いているウチに思い付けばいいな。
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