ISに告白された少年   作:二重世界

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第28話 脅迫

現在は夕食を食べ終え、七時頃。俺はウサギに電話するためにいつものところに来ていた。

ちなみに今は黒を肩車している。最近、妙に触れ合いを求めてくる。

 

『はろはろー、しっくん。今日は電話が多いね。これで三回目だよ』

 

「嫌だったら回数を減らすぞ」

 

『嫌だなんて言ってないよ。しっくんの電話なら二十四時間いつでも歓迎だよ。何なら一日中、語り合ってもいいくらいだよ』

俺は嫌だ。

 

「それよりも今朝、話した件だけど」

 

『うん、もちろん終わってるよ。しっくんの頼みだからやったけど簡単過ぎて退屈だったよ。あそこのセキュリティ弱すぎるよ。今度、束さんにお願い事をするなら、もっと難しいことにしてね』

だから学年別トーナメントの時、いつもよりもテンションが高かったのか。

 

「分かった。善処する」

 

『頼むよ。紅椿も完成して最近、暇過ぎて困ってるんだよ。今日も暇潰しに学年別トーナメントの時のアレを作った研究所を破壊したしね』

そんなことまで、してたのか。て言うか紅椿、完成していたのかよ。だったら、すぐに侍娘に渡しに来ると思うんだが。何か企んでいるのかね。

 

「ご苦労様。で、あいつの今の様子が分かるか?」

フランスとの時差は八時間。向こうは午前十一時か。仕事をしていたらいいんだが。

 

『分かるよ。ちょっと待ってね。監視カメラをハッキングして様子を見るから。……よし、出来た』

速っ!相変わらず反則的な能力だな。

 

『今は部屋で仕事をしてるよ。どうする?しっくんに頼まれていたデータ送る?』

 

「じゃあ、頼む」

今日のストレス発散ぐらいにはなるだろう。

 

『オッケー、送ったよ』

 

「様子はどうだ?」

 

『あははははっ!面白いぐらい焦ってるよ』

 

「じゃあ、別のことをするから、また今度な」

 

『そういや、しっくんの考えていること聞いてなかったね。まぁ、いいか。またね』

あれ?説明してなかったっけ?まぁ、どうでもいいか。

とりあえず電話を切って別のところにかける。これからの電話での会話は全てフランス語だ。ちなみに俺は五カ国語話せる。

 

「どうも、初めまして。デュノア社の社長さん」

ついでに言っておくと、この携帯にはボイスチェンジャーの機能がある。他にも逆探知や会話を傍受されないような仕組みがある、ウサギが作った超高性能携帯である。

 

『誰だ、貴様は。もしかして今、このデータは貴様が送ってきたのか?』

思ったよりも冷静だな。電話の音で落ち着いたのか?

 

「そうだ」

送ったのはウサギだけど。まぁ、どっちでも一緒だろ。

ちなみに送ったデータの内容はデュノア社の汚職の証拠や社長の女性問題等だ。

 

『……貴様の目的は何だ?』

 

「物分かりが良くて助かる。単刀直入に言うと社長さんがIS学園に送り込んだ娘、シャルロット・デュノアについてだ」

 

『……ちっ!もうバレたのか。役に立たない娘だ。で、アイツに頼まれたのか?』

切り替えが早いな。社長なんてやってると、こういうことに馴れているのかね。焦ってるところを苛めたかったんだがな。

 

「いや、違う。むしろ、止められたぐらいだ」

今回の件については話してないが。

 

『だったら何故、こんなことをしている?あの娘に情でもあるのか?』

 

「ははっ、まさか。そんな訳ないだろ。もし、そうだったとしても俺はそんな理由で動く善人じゃない」

 

『だったら金で雇われたのか?それなら、あの娘の倍の金額を出すぞ』

何か典型的な悪党の台詞だな。一応言ってるだけ、って感じだが。

 

「違う。俺が動く理由、それは昨日読んだ漫画の内容に影響されたからだ」

 

『……は?』

俺の答えを全く予想していなかったのか、間の抜けた声を出した。

 

「だから昨日出た好きな漫画の新刊がちょうど、こんな感じの内容だったんだよ」

 

『……漫画というと、あの娘の母親が好きだった日本の娯楽文化か?』

 

「そう。だから俺があんたに寝返ることはないぞ。何たって自分には理由がないのだから。信念の無いところに裏切りはない」

ウサギよりも面白い物を教えてくれたら喜んで裏切るがな。 まぁ、そんなことは有り得ないが。

 

「さて、話を戻すぞ。俺が社長さんに求めることは一つ。シャルロット・デュノアを利用した作戦をやめることだ」

当然、シャルの本名は事前に確認している。

 

『……もし、やめなかったら、どうするつもりだ?』

 

「さっき社長さんに送ったデータをマスコミに公表する。それでもやめなかった場合はデュノア社を破壊する。ああ、もちろん、その場合は俺がシャルロット・デュノアの世話をするから交渉の余地はない」

社長さんが抵抗してくれる展開も面白いが無理だろうな。

 

『俺に選択の余地はないな』

 

「理解が早くて助かる。後、あんたが余計なことをない限り、こちらからは何もしない。ところで最後に一つ、聞いていいか?」

最初から何か違和感があるんだよな。何というか俺が予想していた人物像と違う。

 

『何だ?』

 

「俺程じゃなくても、あんたは頭が切れるみたいだ。そのあんたが、あんな小学生でも失敗すると分かるような作戦を何故実行したんだ?」

 

『ああ、バレることは予想していた。ちゃんと、その上での作戦も考えていた。まぁ、それもこんなに早くバレたせいで台無しだがな』

 

「食えない奴だな」

 

『お前に言われたくない』

そして電話を切った。

まぁ、予定とは違ったけど楽しめたからいいか。

 

「まどろっこしいわね。さっさと情報を流してぶっ潰せばいいのに」

黒が肩の上から言ってきた。

 

「こういう脅しは実行しないから意味を持つんだよ。情報を流したら向こうは開き直って何をするか分からないからな。まぁ、それはそれで面白いが」

 

「さすが深夜。色々考えているのね」

それよりも、そろそろ降りてほしいな。電話中もずっとしていたし、そろそろ疲れてきた。

 

 

 

「あっ、飛原くん。ちょうど良かったです。今から会いにいくところだったんです」

部屋に戻る途中でマヤマヤに会った。

 

「何か用?」

 

「朗報ですよ。何と今日から男子の大浴場使用が解禁です!」

まさか、いっくんの入浴シーンの写真を撮ってこい、ということか。

 

「そうなの?」

 

「はい。今日は大浴場のボイラー点検があったので、もともと生徒達が使えない日なんです。でも点検自体は終わってるので、それなら男子三人に使ってもらおうって計らいなんですよ。って、黒さんは一緒に入っては駄目ですよ」

部屋のシャワーだけじゃ物足りなかったから大浴場に入れるのは素直に嬉しいな。

 

「大丈夫、大丈夫。私はISで人間じゃないから気にしなくていいわよ」

 

「いやいや、そういう問題じゃないですよ!」

 

「じゃあ、着替えの準備に部屋に戻るわ」

 

「先生の話、聞いてます?」

聞いてません。

 

 

 

「あー、気持ち良い……」

俺は久し振りの風呂を堪能している。ちーちゃんも夜に抜け出して銭湯に行くぐらい許可してくれても、いいと思う。

 

「いつもはシャワールームで狭かったけど今日は広いところだから、色々なプレイが出来るのね」

 

「あー、無理だろ。これから、いっくんとシャルも来るだろうからな」

て言うか、今日はのんびりと風呂に浸かっていたい。

 

「私は気にしない」

 

「気にしろ」

 

カラカラカラ

 

脱衣場の扉が開く音がした。

 

「お、深夜。先に来てたのか?」

いっくんが入ってきた。

 

「ああ、先に浸かってる。ところでシャルは来ていないのか?」

 

「いや、女子と一緒に入るわけにはいかないだろ。俺のためにシャルルは気を使って脱衣場で待ってるよ」

シャルが気を使う?俺といっくんが一緒に風呂に入る状況でか。何処かから覗いてるじゃないだろうな?

て言うか、いっくんはシャルの本名を知らないのか。

 

「気にしなくていいわよ。私も入ってるし」

 

「って黒!何で入ってるんだ!?」

黒がいることに気付いて顔を赤くして焦っている。まぁ、タオルも巻いていない完全な全裸だからな。にしても恥ずかしがりながらも目線を外そうとしない。むっつりだな。

 

「気にするなよ。むしろラッキーだろ」

 

「いやいや、確かに嬉しくないわけじゃないけど駄目だろ!」

 

カラカラカラ

 

再度、脱衣場の扉が開く音がした。

タオル一枚のシャルが入ってきた。

 

「何でシャルルまで入ってるんだ!?」

 

「僕のことは気にしなくていいよ。端でのんびりと浸かっているから。深夜と仲良くしてなよ」

予想通りの嫌な展開だな。

 

「って何で黒がいるの!?これじゃあ駄目じゃないか!」

 

「……何が駄目なんだ、シャルル?」

知らないというのは幸せだな。

 

「風呂に入るというなら男になってよ!」

 

「え!?黒は男になれるのか!」

いっくんがどうでもいいことに驚いているが無視だ。俺にとっては、それどころじゃない。

 

「絶対に男になるなよ。トラウマだからな」

 

「大丈夫よ。今日は私ものんびり風呂に浸りたい気分だから」

それを聞いて安心だ。久し振りの風呂にトラブルはいらない。

 

「ハァー。折角のお風呂だし、たまには趣味を忘れてのんびりするのもいいかもね」

若干、不満そうではあるが納得して風呂に入ってきた。

 

「って何でお前達は、そんなに普通にしているんだ!?混浴状態なんだぞ!」

 

「うるさい。気持ち良く浸かってんだから静かにしろ」

 

「そうそう。大体、女の裸ぐらいで騒ぎ過ぎよ。思春期の子供じゃあるまいし」

いっくんは思春期の子供だと思うが。そういや、俺に思春期ってあったっけ?

 

「僕らが気にしない、って言ってるんだからいいんだよ。それに堂々と女の人の裸を見られるんだから役得でしょ?」

 

「いや、でもバレたら大変なことにならないか?」

いっくんは貧乳達に殺されるかもな。まぁ、俺には関係ないが。

 

「大丈夫、大丈夫。バレなければいいんだから」

 

「……そういうもんか?俺がおかしいのか?」

納得していない感じだが、いっくんも風呂に入ってきた。

当然、いっくんの入浴シーンの写真は撮った。ちなみにカメラは防水加工されている。

いっくんが途中でのぼせたが、めんどくさいのでシャルに任せた。

やっぱり風呂は気持ち良いな。かんちゃんとかを誘って夏休みに温泉旅行に行こうかな。




最初は社長さんを小者っぽくする予定だったのに切れ者みたいになってしまいました。何か、こういうことが多いな。最初の予定が書いている途中で変わること。まぁ、変わった後の方が好きなんで良いですけど。

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