ISに告白された少年   作:二重世界

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第27話 VTシステム

「おーと、皆さんの予想通りに箒選手、何も出来ずにリタイヤです」

味方であるはずの銀髪ロリに邪魔者扱いされて放り投げられ、シャルには何も出来ずに敗北した。

 

「もしかして深夜ちゃんは箒ちゃんが嫌いなの?」

 

「嫌い、というよりも期待外れなだけだ」

ウサギが自慢気に話すから期待していたんだがな。実際に会ってみたら、かなりつまらない人間でがっかりしたな。

 

「期待外れ?」

 

「おい、試合に関係のない話は後でしろ」

ちーちゃんに注意されて実況を再開する。

 

「にしても一夏選手とシャルル選手の連携は良いですね」

素晴らしいとは言わない。二人の連携には問題があるからな。

 

「確かに良い連携だけどシャルルくんが一夏くんに合わせている感じね。一夏くん自体はあまり連携の役には立ってないわね」

 

「いや、織斑に魅力があるからデュノアも力を貸して上手くいっているのだ。つまり織斑には他人に合わせさせる才能がある」

普段は厳しいのに今日は妙に甘いな。いっくんを褒めるコメントしかしていない。

 

「ですが二対一で互角に戦っているラウラ選手は素晴らしいと言えるでしょう」

代わりに俺は銀髪ロリを褒めるコメントばかりしているが。

これは何の対決なのだろう?

 

「一夏くんは零落白夜を使うみたいね。ここで勝負を仕掛けるつもりなのかしら?」

たっちゃんは、かんちゃんがいないので中立の立場だ。たまに俺に嫌がらせをしてくるが。

 

「そのようですね。零落白夜は触れれば一撃でシールドエネルギーを消し去る技です。でも対処自体は簡単です」

 

「……ああ、そうだな。当たらなければいいだけの話だからな」

ちーちゃんが苦々しそうに俺の説明を引き継ぐ。勝ったな。何に勝ったかは分からないが。

 

いっくんは銀髪ロリのAICによる拘束攻撃をギリギリのところでかわしている。

だが攻撃にワイヤーブレードも加わり、さらに余裕をなくしていく。

 

「一夏くん、思ってたよりも良い動きしてるね」

 

「ですが注目すべき点はシャルル選手の方でしょう。一夏選手を上手くフォローしています」

射撃武器で銀髪ロリを牽制しつつ、いっくんへの防御も行っている。俺ほどではないが、かなり器用だな。

何か強い奴はほとんど変態だな。ちーちゃんやウサギ、たっちゃんが良い例だな。いや、悪い例か。

あれ?こうなったら銀髪ロリも変態なのか?確かに、ちーちゃんが好きな百合ではあるが変態ではないはずだ。変人の相手は楽しいが、これ以上変態が増えるのはゴメンだ。

 

いっくん達がAICの弱点、停止させる対象物に意識を集中させないと効果を持続出来ない点を上手く突いて連携で銀髪ロリの大口径レールカノンを破壊することに成功した。

 

「遂に一夏達がラウラにまともに攻撃をくらわせたぞ」

元教え子を何だと思っているんだ、こいつは。後、喜びのあまり口調が素になっているぞ。

絶対に銀髪ロリを応援しよう。

 

「おーと、ここでシャルル選手、瞬時加速を使いました。これは事前のデータになかったからかラウラ選手も驚いています」

いっくんが止めをさそうとした瞬間にエネルギー切れをおこし、逆にピンチになってしまう。そこをシャルが瞬時加速で、いっくんのサポートに向かった。

 

「そうだな。恐らく初めて使ったんだろう。器用な奴だ」

 

「だがラウラ選手、AICでシャルル選手の動きを止めにかかる」

 

「無駄だ。後ろを見ろ」

銀髪ロリがAICを発動しようとした瞬間にシャルが直前に捨てていたアサルトライフルをいっくんが拾って攻撃した。確か、あれは訓練の時にシャルが、いっくんに使用許可を出していた銃だな。

 

「これで終わりかな?」

次の瞬間にはシャルが銀髪ロリの懐に入っていた。

シャルの盾の装甲がはじけ飛び、中からリボルバーと杭が融合した武器が露出した。

 

「あれは攻撃力だけなら第二世代最強と言われている武器、六九口径パイルバンカー『灰色の鱗殻(グレー・スケール)』。通称『盾殺し(シールド・ピアース)』」

ふぅん。そんな隠し玉まであったのか。

 

「ちょっと待て、デュノア!止めは一夏にさせろ!」

完全に私情にまみれた実況をする元世界最強。威厳のある姉を演じるのに疲れたか?

今、気付いたけど俺が銀髪ロリ、ちーちゃんがいっくん、たっちゃんがシャルを担当して実況しているな。

 

「ん?様子がおかしいですね」

シャルに攻撃を受けてやられそうになっている銀髪ロリの様子がおかしい。

 

「ああああああっ!」

突然、銀髪ロリが絶叫したかと思うとシュヴァルッェア・レーゲンから激しい電撃が放たれシャルが吹き飛んだ。

 

「一体、何?」

次にISの装甲がぐちゃりと溶け、どろどろになって銀髪ロリの全身を包んでいく。

そして全身を包み込むと、ゆっくりと地面に降りた。

見た目は黒い全身装甲のISみたいだ。そして武器は織斑千冬が現役時代に使っていた『雪片』だ。映像で見たことがあるから間違いない。

 

「……VTシステム」

VTシステム?どこかで聞いたことがあるような。

 

「何ですか、それ」

 

「重要案件である上に機密事項だが一応、説明してやる。正式名称はヴァルキリー・トレース・システム。過去のモンド・グロッソの部門受賞者(ヴァルキリー)の動きをトレースするシステムだ。IS条約で現在どの国家・組織・企業においても研究・開発・使用すべてが禁止されている」

確か前にウサギの研究所にあった資料で読んだな。あの不愉快でつまらない物か。面白くないシロモノだったから説明されるまで忘れていた。

 

「それって危ないんじゃないですか!?」

 

「そうだな。更識姉は観客を避難させろ」

 

「分かりました」

そして、たっちゃんはアナウンスを流した。

 

『非常事態発令!トーナメントの全試合は中止!状況をレベルDと認定、鎮圧のために教師部隊を送り込む!来賓、生徒はすぐに避難すること!繰り返す!』

 

「……一つ聞くが、あいつが関わっているのか?」

 

「それは有り得ない。ウサギは完璧で十全だ。それがあんな不細工なシロモノを作るわけがない」

確認のためとは言え、不愉快な質問だな。自分の友達を馬鹿にされるのは。

 

「そうか」

 

「いやぁ、初めて見たわ。深夜がキレてるのは」

やっぱり黒は俺の考えが読めるみたいだな。出来るだけ顔には出さないようにしてたんだがな。

 

「ああ、そうだな。あんな不細工でつまらないシロモノに俺の楽しみを邪魔されて俺はキレてる」

生まれて初めてかもな。俺がキレるのは。

 

「……いくぞ、黒」

 

「了解」

俺は黒を起動する。

 

「おい、飛原。何をするつもりだ?」

 

「聞かなくても分かってるだろ?俺の楽しみを邪魔した奴は潰す」

中継室の窓をぶち破って外に出る。

そしてグングニルを展開する。

 

「一撃滅殺!グングニル!」

 

グングニルはアリーナのシールドを貫通して、そのまま黒いISに向かっていく。

 

スドオオオオンッ!

 

グングニルの衝撃で土煙が上がる。

 

「よぉ、いっくん。助けにきたぜ。感動したか?」

俺が突入する前に戦ってやられたのか、すでにISは解除されていた。

 

「深夜か?邪魔をするな!あいつは俺がぶっ倒す!あれは千冬姉の技だ!千冬姉だけのものだ!それをあいつは!絶対に許さねぇ!」

なるほど。あれは、ちーちゃんをトレースしているのか。厄介だな。

 

「俺はお前が倒して構わないがエネルギーはあるのか?さすがに死なせるような真似は出来ないぞ」

そんなことになったら俺が殺される。

 

「それは……」

 

「無いなら他から持ってくればいい。でしょ? 一夏」

 

「シャルか」

電撃のダメージから持ち直したのか、俺達のところにやって来た。

 

「普通のISなら無理だけど、僕のリヴァイヴならコア・バイパスでエネルギーを移せると思う」

シャルはそんなことまで出来るのか。本当に器用だな。俺は興味がなかったから習得していない。やり方ぐらいは頭に入っているが。

 

「本当か!?だったら頼む!早速やってくれ!」

このままだったら格好よく登場したのに活躍出来ない。

 

土煙が晴れてきたが敵は攻撃してくる様子がないな。攻撃に反応する自動プログラムみたいなものか?て言うか、やっぱり、さっきの攻撃はギリギリのところで避けられていたか。

 

「けど、約束して。絶対に負けないって」

 

「もちろんだ。ここまで啖呵を切って飛び出すんだ。負けたら男じゃねえよ」

 

「だったら負けた場合は明日から女子の制服で通えよ」

ふむ、良いアイデアだな。これなら女装写真を撮れる。ちーちゃんもウサギも満足で俺も助かる。まさに皆が笑っていられる夢のようなハッピーエンドだな。

 

「うっ!い、いいぜ。何せ負けないからな!」

喋っているウチに、いっくんも落ち着いてきたみたいだな。

 

「女装した一夏と深夜が、あんなことやこんなことを。……いいね」

シャルが邪悪な笑みでボソッと何か言っているが聞かなかったことにしよう。

 

「じゃあ、始めるよ。リヴァイヴのコア・バイパスを開放。エネルギー流出を許可。一夏、白式のモードを一極限定にして。それで零落白夜が使えるようになるはずだから」

リヴァイヴから伸びたケーブルを待機状態の白式に繋ぎ、そこにエネルギーを流し込む。

 

「完了。リヴァイヴの残りのエネルギーは全部渡したよ」

そう言うとリヴァイヴは光の粒子となって消えた。

そして白式は一極限定モードで再構成を始めた。やっぱり武器と右腕だけで限界のようだ。

 

「じゃあ、死ぬなよ」

今の状態で一撃でもくらえば即死だろうからな。

 

「僕は死なければ負けてもいいと思うよ」

それは俺も思う。て言うか、そっちの方が助かる。いっくんを女装させられた上に俺が活躍出来るからな。

 

「何、訳の分からないことを言ってるんだよ?負けるつもりはないぜ」

絶対にシャルがったことの意味を理解していないな。

 

「じゃあ、行くぜ偽者野郎。零落白夜、発動」

いつもは強大なエネルギーを開放するだけだったものが、今回は細く鋭いものへと結束していく。そして、それがおさまるとエネルギーが日本刀に形に集約した姿になった。

今回のことで一つ戦い方を覚えたのか。ちーちゃんが言った通りに試合中でも成長していくんだな。面白い。

 

そして敵が刀を降り下ろす。それを弾き、次に頭上に構え縦に真っ直ぐ相手を断ち切った。

 

「ぎ、ぎ……ガ……」

そして黒いISは真っ二つに割れ、中から銀髪ロリが出てきた。それを、いっくんが抱き抱えた。

ちーちゃんに啖呵を切ってきたのに活躍出来なかったな。それに今、気付いたけど賭けも駄目になったんだよな。今度、好きなアニメのDVDボックスが出るから金が欲しかったのに。満足出来ない終わり方だな。




二巻の内容がそろそろ終わるけど、まだ三巻の内容はほとんど思い付いていない。原作を読みながら考えるか。

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