「さぁ、いよいよ始まります、学年別トーナメント。実況は私、この世に知らぬことなし!一文字流、飛原深夜が。そして」
「解説は簪ちゃん大好きこと、生徒会長の更識楯無がお送りします」
いきなり妹に公開告白するなよ、シスコン。にしてもIS学園の二大戦力がシスコンとブラコン。本当に大丈夫か?
「これから始まる学年別トーナメントは1回戦から注目の組み合わせです。中国の代表候補生、凰鈴音とイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットのペアVS我らが日本の代表候補生、更識簪と一年三組のクラス代表、天吹刹那のペアの試合となります」
とりあえず最初だけは真面目にやる。当然、後でボケるけど。
ちなみに黒は邪魔しないでくれ、と頼んだので後ろでヘッドホンをして、かんちゃんの乙女ゲームをやっている。
「それにしても観客席は凄いことになってますね」
観客席には各国政府関係者、研究所員、企業エージェント、その他諸々が大量にいる。
「そりゃあ、そうよ。三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ人が入ってからね。それに一年でもトーナメント上位入賞者にはさっそくチェックが入るらしいし」
「なるほど」
何処の国もこんなところまで来て暇なのかね?スカウト以外は映像を後で見ればいいだけなのに。
「さて、この試合、実況の深夜ちゃんはどう思う?」
「いや、何で私に聞くんですか?それは解説である楯無さんの仕事でしょう?」
まさか先にボケられるとは。たっちゃん、やるな。
にしても、この喋り方はともかく呼び方は違和感があるな。まぁ、その内慣れるだろ。
「だって、この試合については私よりも深夜ちゃんの方が詳しいじゃない?」
そして、この呼ばれ方に慣れることはないだろう。男だとバレないためだとしても普通に嫌だ。
ちなみに服装は当然、女子の制服だ。名前はそのままでも大丈夫だろ。
「確かにそうですけど」
「じゃあ、よろしく」
「明らかに実況の仕事じゃないですけど仕方ないですね。私としてはどっちが勝ってもおかしくない試合だと思います」
「というと?」
「私が見た限りでは全員のISの性能は大体、同じぐらいです。こうなるとパイロットの実力の問題になります。ISの経験は外国人ペアの方があるでしょう。チームワークは両ペア共に微妙ですね。仲があまり良くないですから」
ISの経験は貧乳達の方が上だけど戦闘経験は刹那っちの方が圧倒的に上だな。殺し屋として子供のころから英才教育を受けていたらしいし、実戦で人を殺したこともあるらしいからな。チームワークは刹那っちの変態性が治れば問題ないんだけどな。
「聞いている限りだと外国人ペアの方が強そうだけど」
「日本人ペアのコーチをしたのは私ですからね。経験の不利ぐらい跳ね返しますよ」
「凄い自信ね」
まぁ、才能なら日本人ペアが勝ってるしな。
「さて、そろそろ試合開始の時間ね」
「まずは赤コーナーからはIS学園に舞い降りた天使、更識簪とIS『打鉄弐式』。そして学園きっての変態、天吹刹那とIS『ブラッディカルテット』が入場です」
そう言うと、かんちゃんが顔を赤くして、刹那っちは何故か誇らしげにISに乗って入場してきた。
「照れている簪ちゃんも可愛い!ねぇねぇ、この写真は買えないの?」
「学年別トーナメントの写真は私ではなく新聞部の皆さんが写真を撮ることになっています。お買い求めの際は新聞部の方に行ってください」
本当は写真も撮りたかったけど、さすがに実況と同時にやるとは無理だった。
まぁ、代わりに賭けはやってるけど。一番人気はいっくんとシャルのペア、二番人気は貧乳とパッキン女のペアだ。かんちゃんと刹那っちのペアはデビュー戦ということで人気はあまりなく三番人気。ちなみに俺はもちろん、かんちゃんと刹那っちのペアに賭けている。銀髪ロリはさすがに一人では厳しいだろう、と四番人気。つまり誰も侍娘を戦力に数えていない。
「では選手の紹介をしていきましょう」
「まずは簪ちゃんね。簪ちゃんは頭は良くて、さらに可愛い私の自慢の妹です」
「はい、シスコンは黙ってください」
この試合だけは別のヤツに頼んだ方が良かったな。こいつ、妹のことしか見ていない。
「うぅ。恥ずかしい」
「あれ、簪ちゃんの声が!もしかして音声も拾ってるの?」
「はい。この中継室は映像だけでなく音声も拾っております。選手との会話も出来ますよ」
これに関しては俺が黒に手伝ってもらって一晩で細工した。
「頑張ってね、簪ちゃん」
「シスコンは無視して紹介に入ります。簪選手はどちらかというと研究者肌ですけど、センスもあり冷静な判断力を持っている良い選手です。そして専用機の『打鉄弐式』は量産機の打鉄の発展型で機動力に優れています。そして最大の特徴はマルチ・ロックオン・システムでしょう」
もうちょっと詳しく説明したいけど長くなるので、ここで終了。
「そして次は天吹刹那選手の紹介です。刹那選手は非常に高い身体能力と反応速度を持つ変態です。そして専用機の『ブラッディカルテット』は打鉄弐式と同じで高い機動力を持っています。そして最大の特徴は背中から出ている二本の腕ですね。本来はそれで二刀流と二丁拳銃ですが、本人の趣味で四刀流になっています」
「ぶぅぶぅ。私が事前に書いていた紹介文と違うじゃない」
「そんな物は受け取っておりません」
あんな自分を持ち上げた紹介を良く考えられたものだ。俺なら途中で恥ずかしくなって書けないぞ。
「じゃあ、次は青コーナーからは貧乳と金髪です」
「何で私の説明はそんなに適当なのよ!後、何でプロレスの試合みたいな紹介なのよ!」
「え~と、だからわたくしは……?」
貧乳はツッコミながら、パッキン女は不満そうな顔をして入場してきた。
「二人の説明はめんどくさいので省略します。試合開始」
「何か中国とイギリスから苦情が来そうね」
「ちょっと待ちなさいよ!ちゃんと私の説明もしなさいよ!」
「じゃあ、ツッコミが仕事の貧乳。専用機はシェンロン。能力は玉を七個集めると願いが叶う」
「そんな何一つあっていないが説明があるわけないでしょ!」
ちゃんと説明したのに何の不満があるんだ?そして貧乳はあってるだろ。
「ああ、そうだ。ルール説明を忘れていました」
「ルール説明?普通のISバトルじゃないの?」
「今回は特別ルールが採用されています。バトルの途中で私達がボケるので、それに的確にツッコめたらポイントが入ります。題してツッコミISバトルです」
「私、そんなの聞いてないんだけど?」
「当然です。私が今、思い付いたんですから」
思い付きにしては我ながら面白い企画だと思う。まぁ、意味は全くないんだけど。
にしても完全に油断しているけど大丈夫か?
「そんな話がウワッ!」
「くっ!」
かんちゃんの山嵐のフルバーストに二人は直前で気付いたけど避けきれずにダメージをくらう。
「……油断する方が悪い」
かんちゃんも言うようになったな。
「残念ながらあんたは私のタイプじゃないから殺っちゃうね」
そして刹那っちがパッキン女に突っ込む。
「わたくしがその程度で――」
「秘技四刀流、名前はまだ考え中」
ちゃんと考えとけよ。
「も、もう少し……出番が欲しかったですわ……」
パッキン女はこれでリタイアだ。
どうでもいいけど旬を過ぎた一発屋芸人みたいな捨て台詞だったな。
「ちょっと何でいきなり攻撃してんのよ!反則じゃないの!」
「私はちゃんと言いましたよ。試合開始って」
人の話を聞かないから、こんなことになるんだ。
「ところで気になったんだけど。セシリアちゃん、刹那ちゃんの攻撃を受ける時に一瞬動きが止まらなかった?あのタイミングならギリギリでピットでの反撃が間に合ったの思うんだけど」
もう完全に実況と解説が逆転してるな。
「刹那選手の迫力にビビったんでしょう。つまり気合い負けです」
刹那っちはお嬢様みたいな偉そうなタイプが嫌いらしいから本気の殺気で攻撃したんだろう。プロの殺し屋の殺気を代表候補生と言えど温室育ちのお嬢様に耐えられるわけがない。
「ちょっとやり直しを要求するわ」
「その要求は却下です。もううるさいので速く倒してください」
「じゃあ、速く倒してあげるかわりに今夜、黒ちゃんを貸してくれる?」
「その要求も却下です。さぁ、貧乳選手のコーナーキックで試合再開です」
「何でサッカーの試合みたいになってるのよ!」
ナイスツッコミ。後、もう貧乳には反応しなくなったな。
そして貧乳の衝撃砲が刹那っちに向かって発射された。
「そんな雑な攻撃に当たるわけないでしょ。代表候補生って、この程度なの?これなら私が国家代表になるのも夢じゃなさそうね」
「調子に乗ってんじゃないわよ!って同じ手はくらわないわよ」
かんちゃんが貧乳に向かって荷電粒子砲を発射した。
今度は何とか避けることに成功する。
「忘れられると困る」
「大丈夫よ、簪ちゃん。お姉ちゃんは忘れてないから」
「恥ずかしいからお姉ちゃんは黙ってて」
「か、簪ちゃんが冷たい」
そんなんだから、かんちゃんも冷たいんだよ。
「最初から思ってたけど簪だけ、ひいきしすぎでしょ!」
「そりゃあ、可愛い妹だからね」
「同室ですからね」
「あれ?私は?こういう扱いはイギリスの金髪の役目じゃないの?」
刹那っちが何か言ってるけど今は無視だ。
「同室だから、ひいきするっていうなら私の同室のティナを出しなさい」
「正直、全く意味が分かりませんがいいでしょう。貧乳の同室にして胸が大きいティナ・ハミルトンさんにカメラを向けましょう」
「……何となく前から思ってたけどあんたは私が嫌いなの?」
「そんなことはありませんよ。さて、ティナ・ハミルトンさん。カメラを向けられましたが何か言うことはありますか?」
俺は本当に嫌いな人間には何もしないからな。
「うるさいから引っ越したい」
「ティナっ!」
「分かりました。後で生徒会の方から職員室の方に提案しておきます」
その後、本当に提案したけど却下された。
「……分かったわ。こうなったら私と一騎討ちよ、簪」
何かどんどん訳の分からない方向に行ってるな。
「めんどくさいから嫌」
「もう我慢出来ない」
さすがにキレた貧乳が、かんちゃんに向かって衝撃砲を最大出力で発射しようと構えた。
「ここでピッチャー構えました!さぁ、次は何を投げるのでしょうか!」
「何で今度は野球みたいになってるのよ!」
キレててもツッコミはちゃんとするのか。本物だな。
「あんたみたいな貧乳に私の簪ちゃんはやらせないわよ」
そう言うと刹那っちが刀を戻してライフルを出して衝撃砲を発射する前に攻撃した。貧乳は体勢を崩して攻撃がずれた。良い反応速度だ
「ちょっと待ちなさいよ、刹那ちゃん!簪ちゃんは私の物よ」
「……どっちの物でもない」
「じゃあ、簪選手は誰の物なんでしょうか?」
「う~ん」
即返事をすると思ったのに予想外に迷っている。そして物凄い爆弾発言をした。
「……深夜の物?」
「「どういことなの、深夜(ちゃん)!」」
何故かヘッドホンをしていた黒まで詰め寄ってきた。
「確か前に黒が寝ていた時にかんちゃんと……」
つい素に戻ったけどいいか。
「「やったの!?」」
「二、三回だけだけど」
「一回もやってない!」
かんちゃんのこんな大声は初めて聞いたな。
「深夜がふざけるのは、いつものことだけど簪までふざけるとは思ってなかったらビックリしたわよ」
「かんちゃんが照れてるだけだ」
「実はそう……」
「「どっちなの!!」」
『試合終了。勝者――更識、天吹ペア」
試合終了のアナウンスが鳴った。
「「「は?」」」
俺達が言い争ってる内に試合は終わったのか?
「何か痴話喧嘩したみたいだけど、ちゃんと私の活躍見てた?」
「全く見てませんでした」
試合の映像は後で確認するか。
にしても代表候補生に勝ったのか。さすが俺が鍛えただけあるな。
「二回戦は休憩時間を挟みまして十分後に開始します。二回戦に出る選手は充分に準備をやっておいてください」
とりあえず無理矢理、試合を締め括る。
さて、かんちゃんの件はどうするか。
最初は真面目にやる予定だったけどボケたい衝動に負けました。まぁ、どっちにしても展開的には同じですけど。
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