現在、いっくんとシャルの三人で第三アリーナに来ている。明らかにシャルが俺といっくんをくっ付けようとしているのは明白だ。
それでも練習に付き合っているのは気分転換だ。刹那っちの専用機はウサギが造ったはいいが忘れて放置されていたのを俺が見付けたものだ。簡単な調整はウサギがしてくれたが細かいところは俺がやって、今日の昼前に終わったところだ。黒にも付き合わせてきたので今は寝ている。
ちなみにいっくんがシャルの説明書を分かりやすそうに聞いているのを、自称専属コーチ三人が後ろから不満そうに見ている。正直、貧乳と侍娘の教え方は感覚的すぎて俺にも分からない。パッキン女は逆に理論的すぎて俺には分かるが、いっくんには難しいだろう。
にしても最近、体を動かしてないから結構なまっているな。
「たぶんたけど、それってワンオフ・アビリティの方に容量を使っているからだよ」
俺がストレッチをしているとシャルの声が聞こえてきた。
「零落白夜の話か?」
「今、白式に後付装備がない話をしていて、それでワンオフ・アビリティの話になったんだ」
「ああ、そういうこと。全くではないけど関係ないぞ」
「何でそんなことが分かるんだ?」
あれ?もしかして聞いてないのか?
「造った人に聞いたから」
「造った人って。倉持技研の人達にも詳しい分かってないらしいけど」
「そっちじゃなくてウサギのことだ」
「……え~と、束さんが何の関係あるんだ?」
やっぱり知らなかったのか。とりあえず簡単に説明した。俺も詳しいことまでは知らないが。
「これって僕が聞いていい内容なのかな?」
「ん?別にいいんじゃね。そんなに重要なことでもないだろ」
「んー。いいいのかな?」
ここ何日かで分かったけどBL関係以外は周りに気をつかうタイプらしい。俺は趣味の方に気をつかえ、と思うが。
「にしても白式が第一形態からワンオフ・アビリティが使えるのはそういう理由だったのか。じゃあ、深夜も使えたりするのか?」
「使えるぞ」
「へぇ、そうなんだ。問題がなかったら聞いてもいいかな?」
あんまり説明したい能力じゃないんだがな。
「詳しいことを言うつもりはないが簡単に言うと零落白夜よりも強力だな。零落白夜みたいに簡単に使える能力じゃないがな。俺はあまり使いたくない」
多分、全ワンオフ・アビリティの中で一番強くて一番使用者に危険な能力だろう。何たって短い時間とはいえ人間の限界を超えるのだから。それでも織斑千冬に勝てるとは思えないが。まぁ、本気を出させるぐらいは出来るだろう。多分。
「私は好きな能力だよ。今から使う?」
いきなり黒が起きてきた。何で急に起きてんだ?
「あの能力を使えると聞こえたから起きたのよ」
「そんなことは言っていない。大体、使ったら俺が倒れるかもしれないだろ?」
最初に使った時は一日中、目覚めなかったからな。使ってる時は良い気持ちだったんだけどな。
「……どんな能力なの?」
シャルが質問をしてきたところで周りがざわつきはじめた。男が三人(一人は男装)いるから凄い人数の人間がいる。
注目の的に視線を移すと、そこには銀髪ロリがいた。最初は弄られていたが冷たい態度をとっているせいで最近は孤立ぎみだ。だから最初にちゃんと忠告してやったのに。ちなみに転校初日の放課後に改めて、いっくんに平手打ちをしたらしい。変なところで律儀なヤツだ。
銀髪ロリがオープン・チャンネルでいっくんに話しているようなので俺も回線に割り込む。
「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」
いきなりの宣戦布告か。でも、このまま二人が戦っても面白くないな。銀髪ロリが勝つのは目に見えている。
「イヤだ。理由がねぇよ」
「貴様にはなくても私にはある」
ちーちゃんが亡国機業に誘拐された、いっくんを助けたせいで第二回IS世界大会『モンドグロッソ』の決勝戦の時間には間に合わず不戦敗になった件のことか。
そりゃあ、ブラコンからしたら世界最強よりも弟の方が重要だよな。
俺は二人が話しているところに口を挟む。
「なぁ、銀髪ロリ。いっくんの代わりに俺が戦ってやろうか?」
「何?どういうつもりだ?そう言えば貴様は何者なんだ?見たところ専用機持ちのようだが代表候補生でもないし、どっかの企業のテストパイロットにも見えん」
俺の正体について、よく聞かれるがいい加減説明がめんどくさいな。
「そんなことはどうでもいいだろ。……そうだな、俺に勝ったら織斑一夏を誘拐して織斑千冬が世界最強になるのを邪魔した組織を教えてやるよ」
「何!?何で貴様がそんなことを知っているんだ!我がドイツ軍でも、そこまでは分かっていないのに」
「俺に勝ったら教えてやるよ」
「そうか。なら、これでどうだ?」
そう言うと、いきなり左肩に装備された大型の実弾砲が火を噴いた。
「おいおい、こっちはまだISを起動していないのに攻撃するか、普通。どんだけ短気なんだよ?」
とりあえず俺はシールドを出して攻撃を防御した。
「おい、周りの連中。邪魔したら色々バラすぞ」
それだけ言うと俺もISを起動して銀髪ロリの前に行く。
「暇潰し程度に俺を楽しませろ、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「いいだろう。軽く捻り潰してやる、飛原深夜」
俺は銀髪ロリの両手首に装着した袖のようなパーツから超高熱のプラズマ刃が展開しているのを確認する。そして俺は日本刀を二本展開した。日本刀を二本、何か駄洒落みたいだが、たまたまだ。
ちなみに現在は黒の装備から展開装甲を外して通常のスラスターを装備している。この前、完成したばかりで、すでにかんちゃんとの模擬戦で性能は確認済みだ。
そして戦闘が開始した。
「結構やるな。並みの反応速度ではない。だが、そんな太刀筋では私にダメージは与えられないぞ」
「そりゃ、どうも。だが、お前の攻撃も俺に当たってないぞ」
開始して、すぐに膠着状態に入った。何とか攻撃を防ぐことは出来るが、俺の攻撃も防がれている。よく考えたら俺って接近戦は初めてなんだよな。それどこらかマトモに動いての戦闘自体が初めてだ。結構楽しい。
「だったら、これでどうだ!」
銀髪ロリが一旦、距離を取ると肩と腰部に搭載された刃が六つ、一斉に射出された。しかも本体とワイヤーで接続されており、複雑な軌道で襲ってきた。
「ちっ!」
右手の日本刀を戻してアサルトライフルを出す。そして避けれそうにないワイヤーブレードだけを迎撃、他は何とか避けることに成功した。
「いいぜ。もっと本気でこい、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「いいだろう。だったら、次はこれだ」
今度はワイヤーブレードとプラズマ手刀が同時に襲ってきた。格闘戦に慣れていない俺では頭は反応出来ても、体がついてこない。今の武装ではかなり厳しい。こうなったら本気を出すか。
「これで終わりだ」
銀髪ロリがそう言うと俺の体が目に見えない何かに掴まれたかのように動かない。
「ちっ!これは何だ!?」
『AIC。慣性停止能力よ』
ああ、なるほど。めんどくさい……もとい、面白い能力を持ってるな。明らかに俺が戦ってきた中で一番強い。たっちゃんは冷静さを失っていたのでノーカンだ。
「だったら――」
『そこの生徒!何をやっている!学年とクラス、出席番号を言え!』
突然アリーナにスピーカーからの声が響いた。派手にやり過ぎたか。今からが良いところだったのに。
「……ふん。運が良かったな」
「お前がな。今から本気を出すところだったんだがな」
「負け惜しみか?まぁ、いい。次の機会に決着を着ける。その後で教官の経歴に傷をつけた組織のことを聞こう」
それだけ言うと銀髪ロリはAICを解除してアリーナゲートへと去っていった。
次の機会って言われても困るな。俺は学年別トーナメントには出ないし。どうしようか?
「大丈夫か、深夜」
俺が戻ると、いっくんが話かけてきた。
「ああ。にしても、良いところを邪魔されたな」
「ところで聞きたいことがあるんだ」
何だ?シリアスな雰囲気して。……ああ、さっきのあれか。
「俺を誘拐した組織を知っている、って本当か?」
「名前だけだがな。言っとくが教えるつもりはないぞ。そんなことしても、いっくんに出来ることはない」
「……だったら俺が強くなったら教えてくれるのか?」
何だ?ちーちゃんの経歴に傷をつけた連中に復讐でもする気なのか?
「俺が教えなくても時期が来たら分かると思うぜ」
「どういう意味だ?」
「さぁな」
それだけ言うと俺はアリーナから出ていく。
さて、さっきの教師からの呼び出し。ばっくれるか。
最近、変態ばかり書いていたけど久しぶりに真面目な話でした。
ラウラは好きなキャラなので箒やセシリアに比べて良い扱いにする予定です。
出来ればツッコミとして鈴の出番を増やそうと考えているけど、どうしようか?
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