ISに告白された少年   作:二重世界

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第21話 変態

「ヤッホー。深夜くん、約束通り遊びに来たよ」

刹那っちが部屋にやって来た。

 

「……デジャヴ?」

 

「ああ、一昨日もこんなことがあったな」

一昨日というか前回だな。メタ発言だけど。

 

「……深夜。私の知らない女だけど、いつ会ったの?」

 

「昨日の朝。言ってなかったっけ?」

 

「なるほど。深夜は私とのデートの前に違う女に会ってた、ってこと?」

あれ?黒はこんなことを言うヤツだったか?

 

「そう言われると俺が女たらしに聞こえるな」

 

「……違うの?」

かんちゃんがジト目で言ってきた。

 

「何々、修羅場?」

刹那っちが嬉しそうに言ってる。何か笑顔がシャルと被って怖い。

 

「そうなんじゃね?」

 

「……何か深夜、適当ね?普通はもっと焦るものじゃないの?」

 

「ああ、そういうこと」

俺の影響、受け過ぎだろ。

 

「かんちゃん。俺が一昨日寝ている間に黒に何か吹き込んだだろ?例えば、こうすれば焦るかどうかで俺の気持ちが分かるとか」

 

「良く分かったね」

 

「俺がいつもしている手だからな」

 

「それよりも我慢出来ないから、やっていいかな?」

ん?刹那っちは何を言ってるんだ?

 

「初めて見た時から好きでした。私とベットの中で一夜を共にしませんか、黒ちゃん」

何で女が女に告白しているんだ?しかも、かなり斬新な告白の仕方だな。て言うか黒がISだということと俺と付き合ってる、ってことを知っているはずだよな?

 

「まぁ、返事を聞かなくても襲うけどね。もう我慢出来ない。ISであるとか関係ないよ。だって、こんなに可愛いんだから。それに寝とるのも楽しいし」

言いながら目にも止まらない速さで黒に襲いかかって服を脱がし始めている。プロの動きだな。

 

「ちょっと深夜、助けて!何か怖いんだけど。それに凄いパワーだし」

ISである黒を押さえ込むとは。やはり、ただ者ではないな。

 

「……冷静に観察してないで助けた方がいいんじゃない?」

 

「俺に止められるとは思えないが」

今度は黒が酷い目に合う番だったか。

にしても俺の勘は当たってたな。あいつはアブノーマルだ。属性はレズか。俺には関係ないな。

 

「何か凄いことになってるんだけど」

黒が縄を出して相手を縛ろうとしたけど逆に縛られている。

 

「ちょ、深夜。本気でヤバい。何とかして!」

 

「大丈夫。深夜くんのことは忘れて私のことしか考えられないようにするから」

せめて、そういうのは俺のいない所でやれよ。

 

「まぁ、さすがにマズイし、そろそろ止めるか。かんちゃんも手伝ってくれ」

 

「……仕方ない」

 

三十分後、かんちゃんのIS起動までして何とか刹那っちの暴走を止めた。

 

「はぁ、はぁ……。お前……何者だ?」

 

「可愛い女の子が大好きなだけの可愛い女の子だよ」

 

「そういうことを聞いてるんじゃないんだが?」

何か物凄くふざけたヤツだな。……何か最近、こういうのが多い気がするな。

 

「て言うか、知ってて私を呼んでじゃないの?」

 

「刹那っちがただ者じゃない、ということ以外は知らない」

 

「だから、それを確かめるために呼んだの?」

 

「……お前、俺を勘違いしてないか?俺はそんな直接対決みたい方法はよっぽどのことがない限り使わない」

キャラがぶれた場合は知らないが。

 

「なるほど。じゃあ、誰にも喋らないと誓ったら教えてあげてもいいよ」

何か本題から完璧に外れているな。どうしようか?まぁ、後回しでいいか。

 

「じゃあ、言わないから教えてくれ」

 

「そっちの簪ちゃんはどう?もし私とベットの中で一夜を共にするなら特別に誰かに喋ってもいいけど?」

 

「……いや、普通に言わない」

まぁ、言う相手がいないもんな。

 

「ギロッ!」

怖いな。

 

「まぁ、いっか。特別に教えてあげよう。私は裏の世界で有名なプロの殺し屋だよ」

そんなに簡単に教えていい内容じゃないと思うが。

 

「殺し屋か。敵に回すよりも味方にした方がいい人種だな」

 

「まぁ、私が有名なんじゃなくて家が有名なだけなんだけどね」

 

「家族で殺し屋なのか?」

 

「う~ん。少し違うけど、そんな感じ」

裏の世界についてはあんまり詳しくないんだよな。更識と亡国機業ぐらいしか名前も知らないし。たっちゃんに後で聞くか。

 

「私の説明はこれで終わり。他に聞きたいとかある?」

 

「何で殺し屋がIS学園にいるんだ?」

 

「天吹としてはISが欲しいからだよ。簡単に言うとスパイみたいなものかな。まぁ、私個人としてはどうでもいいんだけどね。単純に美少女が多いから来ただけだし。まだ質問はある?」

 

「そうだな。他にも聞きたいことはあるが後でいいだろ。さっきにこっちの用事をすませる」

にしてもやっと本題か。すでに結構疲れている。

 

「じゃあ、単刀直入に言うぞ。専用機が欲しくないか?」

 

「……は?」

 

「もう一回言うぞ。専用機が欲しくないか?」

 

「私の殺し屋発言よりも衝撃的発言を聞いてしまった」

そうか?IS学園にいるんだからISの話が出るのは普通だろ。

 

「で、どうなんだ?」

 

「そりゃあ、貰えるなら貰うけど。いきなり、そんなことを言われても怪しいだけなんだけど。私に専用機を与えて何か得があるの?」

こいつが言うことも正しいな。俺でも、いきなりこんなことを言われたら疑う。

 

「俺は面白いことが好きなんだ。それで使えるオモチャがある。だから、それを使って遊ぶ。それだけの簡単な話だ」

 

「何か子供みたいね」

 

「ははっ!まぁ、そんな感じだ。お前にも悪くない話だと思うが?」

こいつが無理だったら別のヤツを探なくてはいけない。でも、こいつ以上のヤツが見付かるとは思えない。

 

「OK、貰うわ。でも、何処にあるの?」

 

「持ってくるのはめんどくさいから篠ノ之束の研究所まで取りに行くことになる」

 

「……一つ聞いていい?」

急にシリアスな空気になったな。やっぱ篠ノ之束との直接対面には思うところがあるのか?

 

「篠ノ之束って美人だって聞いているんだけど本当?」

聞くことはそれか!いや、レズにとっては重要な問題なのか?何か良く分からない。

 

「ああ、結構な美人だ。しかも胸もかなり大きい。さらにもう一人、美少女がいるぞ」

 

「よし。じゃあ、今すぐ行きましょう」

 

「いや、明日の放課後だ。元々行く予定だったし、今日のうちに刹那っちのことを向こうに言っておくよ」

 

「仕方ないか。じゃあ、また明日ね」

それだけ言うと刹那っちは帰っていった。

にしても専用機よりも女の方が重要とか変な殺し屋だな。

 

 

 

 

翌日の放課後、俺は刹那っちを連れてウサギの研究所に来ていた。かんちゃんも一応誘ったが断られた。

 

「へぇ。これがあのISの開発者である篠ノ之束の研究所か。こんな所にあったのね」

 

「まぁ、何個かある中の一つだがな。俺と会う時は基本的にここだな」

ここはIS学園近くにある町の地下だ。こんな所にあるのに、よく見付からないな。

 

「ああ、その扉に近付くなよ。システムに登録されていない人間が触ったら蜂の巣になるぞ」

 

「怖っ!」

俺は網膜認証と指紋認証をクリアして扉を開ける。さらに監視カメラでも確認しているんだから恐ろしいよな。

 

「やっほー、しっくん!会いたかったよー!」

扉を開けると同時にウサギが俺に向かって飛び込んできたので蹴飛ばす。

 

「うー。酷いよ、しっくん。いきなり蹴飛ばすなんて」

 

「下手くそな泣き真似はいい。とりあえず紹介するぞ。こいつが昨日電話した時に言った天吹刹那だ」

 

「どーも、初めまして。気楽に刹那っち、って呼んでください」

普通、篠之束に会ったら物怖じとかするものじゃないのか?普段通りに軽いが。

 

「初めまして、刹那っち。束さんのことは尊敬の念を込めて束博士と呼びなさい」

 

「分かりました、束博士」

 

「うんうん。しっくんとか全然尊敬してくれないから、そういうリアクションは新鮮でいいね」

普段のウサギを見ていたら尊敬なんか出来ないんだが。そして刹那っちも尊敬してないと思うが。

 

「にしても、しっくんに束さん以外の友達が出来るなんて意外だよね」

 

「別に友達じゃないぞ」

 

「酷い!私との関係は遊びだったの!」

最近、ツッコミ不足な気がしてきた。前はツッコミの方が多かったのに。

 

「……お前、女が好きなんじゃなかったのか?」

 

「そりゃあ、女の子の方が好きだけど。でも、別に男が嫌いってわけでもないから」

 

「束様、紅茶の準備が出来ました」

クロエがやって来た。俺を見て露骨に嫌そうな顔をしているがいつものことだ。紅茶の淹れ方を教えてやったのに。

 

「ねぇ、深夜くん。あの可愛い女の子は誰?」

 

「クロエだ。ウサギと一緒に暮らしているが詳しいことは知らない」

ああ、そういや銀髪ロリのことがあるから、ついでに聞いていくか。

 

「クロエちゃんを食べていい?て言うか、食べる。私のモロタイプ」

だったら俺に聞くなよ。

そして黒の時みたいに目にも止まらない速さでクロエに襲いかかった。

 

「凄い動きだね。天吹って名前に聞き覚えがあったけど、今思い出したよ。何年か前に束さんを殺しに来た殺し屋集団が天吹って名前だったね。まぁ、束さんの敵じゃなかったけどね」

そんなことがあったのか。それでよくここに来れたな。

 

「よし。束さんも刹那っちを見習って、さっきから黙っている黒ちゃんを食べよう。いつも、しっくんとだけ仲良くして束さんには冷たかったからね。ここで親睦を深めるのも悪くない」

そう言うとウサギが黒に襲いかかった。

 

「ちょ、何いきなり血迷ってるのよ!」

 

「今日は本気でいくよ」

いつもは殴り飛ばされて終わりだったのに、今回は気付いたら服を脱がしていた。これが天災の本気か。

にしても2日連続で襲われて黒も災難だな。

 

「うわっ!いきなり視界がぐちゃぐちゃに!何これ!?」

黒鍵を使って幻覚を見せたのか。

 

「でも嗅覚まで封じられていない。この私をなめないでください」

まさか匂いでクロエの場所を把握しているのか?これが変態の力か!

 

「マジでピンチ!ちょっと深夜、助けて!」

 

「私の初めては束様に捧げる予定だったのに……」

何か危ない発言が聞こえたけどいいか。

さて俺はどうしようか?……クロエが淹れた紅茶でも飲みにいくか。

俺は黒とクロエの悲鳴を聞き流して部屋を出た。

 

三十分後、マニアックな縛られ方をしたウサギと気絶した刹那っちが運ばれてきた。

そして黒とクロエはかなり服が乱れている。

 

「ウサギは嬉しそうにしているからどうでもいいとして。刹那っちの方は大丈夫なのか?」

 

「少し……いえ、かなり抵抗されたのでISを使って気絶させましたが命に別状はないでしょう。私的には殺してもかまいませんが」

大変だったんだな。それよりもクロエの初めてがどうなったか気になる。

 

「おい、起きろ。朝だぞー」

気絶している刹那っちの頬に思いっきりビンタをして起こす。

 

「いたっ!いきなり何!?……って深夜くんか。美少女だったら嬉しかったんだけどな」

この状況で言うことはそれか。こいつ、かなりの大物かもしれない。

 

「まぁ、いいか。お前らが遊んでいる間にISを運んできた」

 

「どこに?」

 

「あそこだ」

俺が指差した方向には赤黒く血をイメージさせる色をしたISがある。

ちなみに、ここまではこれに乗って持ってきた。黒がピンチだったからか使うことが出来た。

 

 

「あれがお前の専用機『ブラッディカルテット』だ」

 

 

 




二巻の内容に入ってから変態が多いですけど、今回で打ち止めです。今後、増えるとしたらクラリッサぐらいでしょう。多分。

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