ISに告白された少年   作:二重世界

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第20話 史上最悪の敵

「言われた通りに来たよ、深夜」

放課後、シャルが俺の部屋に来た。

 

「……誰?」

 

「今日来た転校生だ」

 

「ああ、クラスの人達が貴公子みたいな新しい男子が来た、って騒いでいたけどそれ?」

周りを気にしないかんちゃんが聞いているほど騒がられているのか。

 

「いや、違う」

 

「えっ!いや、あってると思うけど」

 

「だって女だし」

いきなり核心をつくのは、ちーちゃんみたいで俺らしくないな。まぁ、たまにはこういうのもいいだろう。

 

「えっ!?何を言っているのかな!僕はどこから見てもれっきとした男だよ」

面白いぐらいの焦り様だな。俺はその顔が見たかったんだ。半分ほど嘘だけど。

 

「俺を誤魔化せると思うなよ。観察力だけなら、あの篠ノ之束にだって並ぶんだからな」

本当にそれだけしかないけどな。悲しいことに。

 

「……いつ気付いたの?」

 

「最初から」

 

「……それで僕を部屋に連れ込んで何をするつもりなの?」

かなり悲痛な表情だな。人の驚いた顔は好きだけど悲しそうな顔は好きじゃないんだよな。

 

「連れ込む、って人聞きが悪いな。何もするつもりはないよ」

 

「……じゃあ、何がしたいの?」

 

「お前が俺を妄想のネタにするのを止めさせたいだけだ」

 

「えっ!?」

うんうん。やっぱり驚いた顔はいいな。

でも、さっきから同じリアクションが続いているのは減点だな。

 

「その代わりにかんちゃんのコレクションを貸してろう」

 

「……え~と深夜。いきなり何言ってるの?」

 

「だから、かんちゃんがベットに下に隠しているBL本や乙女ゲームをシャルに貸すと言っているんだ」

 

「いきなり何を訳の分からないことを言っているのかな!私はそんな物、持ってない!大体、私が好きなのはヒーローであって、そんな同性愛とかそういうのは――」

かんちゃんがこんなに喋ってるのは始めて見たな。レアなものを見れた。

 

「じゃあ、ベットの下を確認していいか?」

 

「そ、それは駄目!乙女のプライバシーだから!」

恋人でもない男の前でバスタオル一枚で平気なヤツが何言ってんだか。

 

「これでしょ。私もたまに読んでるわよ」

黒がかんちゃんのコレクションを持って現れた。

 

「これでも言い訳するか?」

 

「……諦める」

やっと諦めたか。俺に隠し事が出来ると思ったのが間違いだったな。

 

「……深夜と生活しているとプライバシーがない」

 

「俺だけじゃなくて黒を前にしてもプライバシーはないぞ。黒にはハイパーセンサーがあるからな」

 

「……はぁー」

 

「え~と、大丈夫?」

シャルが心配そうにかんちゃんに話かける。腐女子である点を除けば優しいヤツなのかもしれない。

 

「大丈夫だろ。それよりもこれ、貸してやるから俺を妄想のネタにするなよ」

 

「おおー、色々あるね。でも、本だけじゃなく現実でも良いネタないの?」

めんどくさいな。

 

「……それじゃあ、いっくんの親友に五反田という男がいるんだが。そいつとのそれっぽい写真を撮ってきてやるから、それで我慢しろ」

あいつを売って助かるなら安いものだ。

 

「そんなめんどくさいことをしなくても私が男になればいいだけのことじゃない?」

ん?黒は何を言ってるんだ?意味が全く分からない。

 

「それはどういう意味?」

シャルが目を輝かせて俺の代わりに黒に聞いた。

 

「こういう意味よ」

そう言うと、黒の体が男になった。元が良いだけに結構イケメンだ。

 

「私はISだから自由に体を変えられるのよ。もちろん中身は女のままだけどね」

知らなかった。良く獣の耳やシッポはやらせているが性別まで変えられるとは。

 

「心配しなくても私は男のままでも深夜のことを愛せるよ」

 

「……出来れば女の体のままで愛してくれないか」

ヤバい。今、生まれて初めて冷や汗をかいてる。

 

「いいんじゃないかな。僕的には満足だよ」

 

「いやいや、それじゃあ俺を妄想のネタにしているじゃないか!」

 

「貴方もたまには苦しむべき」

 

「かんちゃんまで敵か!?」

くそっ!どうしたらいい!

 

「大丈夫。いつもと同じだから」

黒が変態になってた時よりも怖い。

 

ダッ!俺は全力で逃げ出す。

 

「……逃がさない」

かんちゃんがISを起動して俺を捕まえた。

 

「普通そこまでするか!」

 

「面白そうなことには全力で。深夜がいつも言ってること」

 

「くっ!それを言われると反論出来ない」

 

「いつも新しい趣味を深夜は探しているんだからいいいじゃない」

こういうのを求めているわけじゃない。

 

「僕も直接見るのは初めてだからドキドキしているよ」

 

俺は今日、何か大切な物を失った。

シャルは俺にとって篠ノ之束や織斑千冬以上の史上最悪の敵だ。

 

 

 

 

「うん。こういうのもアリね」

 

「……頼むから、これで最後にしてくれ」

俺は生まれて始めて本気で誰かに懇願した。下手したら土下座しそうな勢いだ。

 

「……かんちゃん、いつもより多く金を渡すし、他にも言うことを聞くから今後は黒を止めてくれ」

かんちゃんの寝顔とか他に色々写真を撮って、たっちゃんに売れば問題ないだろ。

 

「……買収されたみたいだけど仕方ない」

これでかんちゃんは大丈夫だ。

シャルはどうするか?こうなったら俺の主義に反するけど仕方ない。最終手段だ。

 

「……シャル、これ以上やらせようとすると女子だってことをバラすぞ。何を企んでいるか分からないが困るだろ」

 

「……そ、それは……その……」

 

「だが、これ以上問題を起こさなかったから俺は何も言わないし、色々売ってる場所を教えてやる」

飴と鞭だな。追い込んでからの甘い言葉は効果バツグンだ。

 

「うん、仕方ないね。お互いにとって悪くない妥協案だね」

悪くないどころか最良だと思うが。

 

「黒、明日は作業を休憩して一日中付き合ってやるから今後は男にならないでくれ」

 

「うん、了解。明日はめいいっぱい楽しもうね」

変態性はなくなったし大丈夫だろ。多分。

 

「あっ!そろそろ一夏と夕食食べる時間だから行くね。それとも深夜も行く?」

 

「……いや、いい。今日は疲れているから」

俺はこの後、朝まで寝て過ごした。

昨日の楽しみだった気持ちが嘘みたいだ。

もう一人の転校生、銀髪ロリはこんなんじゃないことを祈るしかない。

 

 

 

「はぁー。昨日は酷い目にあった」

現在は朝のHR前。昨日は夕食も食べずに惰眠を貪ったせいで何とか落ち着いた。

とりあえず黒が起きる前にやることをやるか。

 

俺は目的地である一年三組にたどり着いた。

 

「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいか?」

教室の入口付近にいた女子に話かけた。

 

「え!飛原くん!何の用かな。何でも聞いていいよ」

一々身だしなみを整えなくてもてもいいと思うが。

他の女子達も集まってきたな。

 

「このクラスの代表に会いたいんだけど。来てるか?」

 

「クラス代表ですか?え~と」

 

「私がこのクラス代表でーす」

集まってきた女子達の中にいたのか。平均的な身長でツインテールが特徴の元気な女子だ。

 

「私が三組のクラス代表をしている天吹刹那。気楽に刹那っち、って呼んでいいよ。ちなみに趣味は掃除」

にしてもこいつ、ただ者じゃないな。掃除が人間の掃除だと言われても信じるぞ。何でこんなヤツがいるのに直接話すまで気付かなかったんだ?

 

「じゃあ、刹那っち」

 

「うわぁ。本当にそう呼んだの深夜くんが初めてだよ。ところで今日は黒ちゃんはいないの?」

確か、たっちゃんも同じようなリアクションをした気がするな。

 

「あいつは朝に弱くてまだ寝てる」

今気付いたけどあいつ、俺が寝ている間に何もしてないよな。

 

「ふーん。そう言えば、私への用事って何?」

 

「人前で話すことじゃないから明日の放課後にまた会わないか?今日は用事があって無理なんだ」

 

「もしかして告白。困るなぁ」

何だろう?こいつからもアブノーマルの匂いがする。俺に被害がないことを祈るしかない。

 

「違う。もっと良いことだ。まぁ、とりあえず明日を楽しみにしといてくれ」

 

「オッケー。よく分からないけど楽しみにしてるよ」

次の学年別トーナメントではウサギが何もしないのは確認しているから色々楽しまないとな。まぁ、俺に黙って何かする可能性もあるが。

だが一番の問題は何をするか、まだ決まっていないことだな。




新キャラ登場です。
色々と裏設定は考えていますが本編とは全く関係ないのでほとんど書くことはないでしょう。
苗字の意味とか分かる人いますかね?

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