ISに告白された少年   作:二重世界

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第19話 昼食

「おっ!いっくん、速かったな」

俺が丁度、ISスーツに着替え終わったところにいっくんと男装転校生が肩で息をしながらやって来た。

 

「お前のせいで、こっちは大変な目にあったんだぞ!」

 

「俺のせいじゃないだろ。女子逹のせいだ」

 

「いや、ちゃんと説明しなかった深夜も悪い」

 

「それは遅刻したお前のせいだ。それよりも着替えなくていいのか?速くしないと、また遅刻するぞ」

 

「ああ、そうだった。速くしないと千冬姉に叩かれる」

そう言うと、いっくんは制服のボタンを一気に外し、ベンチに投げると一呼吸でTシャツも脱ぎ捨てた。

 

「おおー」

何で男装転校生は嬉しそうな声を上げているんだ?

 

「おい、転校生。嬉しそうな顔してないで速く着替えろ。俺が出ていって、いっくんと二人っきりになったら襲われるぞ。そいつはホモなんだがIS学園には女子しかいなくて飢えているから危険だぞ」

 

「えっ!?そうなの!」

何だ、この満面の笑みは?普通は引くだろ。

 

「そうなんだ!もしかして一夏と……君の名前は何だっけ?」

 

「飛原深夜だ」

 

「そうそう。一夏と飛原くんはもしかしてそういう関係だったりするのかな?その場合、どっちが受けでどっちが攻めなの?」

ああ、なるほど。こいつは腐女子か。それで最初、ため息をついていたのか。IS学園には男が一人しかいないから妄想のネタも出来ないからな。

 

「いきなり何を言ってるんだ、シャルルは?」

もしかしたら、いっくんがホモの可能性も考えていたんだが違ったか。だったら、こいつが女子の好意に気付かない理由はシスコンぐらいしか思い付かないな。いや、ロリコンや熟女好きという可能性も。……いや、さすがにないな。

 

「俺といっくんはそういう関係じゃないぞ。それに俺には彼女がいるし」

 

「それって、もしかして男の娘だったりする!」

何故、彼女だと言っているのに、その可能性が一番最初に思い付くんだ?

 

「いや、普通に女だ」

まぁ、ISだから普通ではないがな。

 

「……そっか」

あからさまにテンションが下がったな。

 

「じゃあ、そろそろ遅刻しそうだから俺は先に行く。黒も速く来い」

 

「分かったわ」

最初から物陰で俺といっくんの着替え写真を撮っていた黒が出てきた。

 

「うわっ!いつからいたんだ!って、それよりも速く着替えないと!」

 

「そ、そうだね」

急いで着替え出す二人だが、間に合わないだろうな。

 

 

 

「いたっ!」

いっくんがちーちゃんの拳骨をくらう。

 

「遅い。何をやってたんだ、馬鹿者」

今、気付いたけどちーちゃん、怒っているように見えて喜んでいるな。多分、今までもそうだったんだろう。この俺が今まで気付かないとは、さすがブリュンヒルデと言ったところか。

喜んでいる理由は、どんな形でも弟とコミュニケーションをとれているからか、弟を苛めるのが好きのどちらかだな。

ちなみに男装転校生はギリギリ間に合っている。見ていないが凄い早着替えだったんだろうな。

 

そして貧乳とパッキン女がマヤマヤと戦闘の実演で授業が始まった。結果はマヤマヤの圧勝だった。普段とは別人のようだったな。

ちなみに戦闘前にいっくんがマヤマヤの胸を揉むというラッキースケベがあったので写真を撮ったが使い道はあるのだろうが?

 

その後はグループに分かれて実習を開始した。専用機持ちがグループリーダーになってやったが、いっくんと男装転校生が大人気だった。

俺の場合は黒が睨みをきかしていたせいで大変だった。コーチの練習はまた今度か。

心配だった銀髪ロリはHRの影響で素直で良いヤツだと、皆分かっているので弄ったりして楽しそうにやっていたりした。

残りの貧乳とパッキン女は直前にぼろ負けしていたせいで、不満そうなメンバーが多かった。

 

 

 

 

昼休み、俺達は屋上にいた。ちなみに貸し切り。メンバーは俺といっくんと侍娘とパッキン女と貧乳とシャルの合計六人である。

シャルルはさすがに男装と呼ぶわけにはいかないので略してシャルと呼ぶことにした。

銀髪ロリも誘ったが、さすがに断られた。

 

「どういうことだ?」

侍娘がこの大人数を見て呟いた。

元々は侍娘がいっくんを誘って二人だけで食べる予定だったが、いっくんがシャルを食事に誘った。それを聞いた俺がついていって、ついでにパッキン女と貧乳もついてきた。

まぁ、パッキン女は元々いっくんのために弁当をつくっていたから関係なくついてきていただろうな。

 

「こっちの方が面白くなるからだ」

 

「お前はそれしかないのか?」

 

「当然だ」

何、当たり前のことを言ってんだ、こいつは。

 

「あんた逹、喋ってないで速く食べるわよ」

 

「そうですわ、速く食べましょう」

貧乳とパッキン女が呼んできた。

 

「はい一夏。アンタの分」

そう言うと貧乳がいっくんに酢豚の入ったタッパーを投げた。

確かに酢豚は美味しいが、何で他の料理をつくらないのだろうか?実家は中華料理屋って言っていたから普通に考えたら他にも出来るだろう。

 

「一夏さん、私もつくってみたので食べてみてください」

パッキン女はサンドイッチを出した。

 

「……ん?セシリア、その指どうしたんだ?」

パッキン女の指にはバンソンコウが張られている。

 

「え?いや、大したことはありませんわ。ちょっと指を切っただけですから」

ちなみに本当は指は切っていない。

俺がこうすると頑張っている演出が出来て好感が持たれやすいと教えたからだ。

 

「ねぇ、飛原くんは弁当を一夏に渡さないの?」

シャルが周りに聞こえないように小声で言ってきた。

 

「だから俺にそんな趣味はない」

 

「そんなこと言われてもIS学園には男が二人しかいないから一夏と飛原くんでやるしか」

こいつは腐女子であることを隠そうとしないのか?かんちゃんは必死に隠しているのに。俺には隠せていないが。

 

「それにこれは同居人が作ってくれた物だ。誰かに渡すわけがないだろう」

基本的に俺は食堂で食べることが多いがたまにかんちゃんが自分の弁当と一緒に作ってくれることがある。その逆で気が向いた時は俺が作ることもある。

 

「へぇ。それは日本のアニメのキャラ?」

 

「そうだ」

 

「もしかして、その同居人が恋人?」

 

「違う。俺の恋人は黒だ」

 

「えっ!?ISと!」

シャルは実習の時に黒がISになるのを見て驚いたところを担当していた班の女子に説明してもらったらしい。

 

「……でも、恋人でもない女の子に弁当を作ってもらってるの?」

 

「普通だろ。俺もたまに作ってやってるし」

 

「周りから見たら恋人にしか見えないんじゃないかな?」

う~ん、そう言われたらそんな気もするな。

でもウサギやクロエにも作っていたしな。クロエ、料理出来ないからな。パッキン女よりはマシだけど。

 

「おっ!深夜の弁当、キャラ弁か?凄いな」

いっくんがパッキン女の料理から逃げるようにやって来た。

隣でシャルが視線でチャンスだよ、と言っているが無視だ。

 

「ああ、俺の同居人が作ったんだ」

 

「へぇ、そうなのか?そういや、深夜の同居人にまだ会ったことがないな」

ISが完成してからは前ほどは嫌ってないみたいだし、そろそろ会わせても大丈夫だと思うがまだ時期ではないな。やっぱり出会いは印象的でないといけない。銀髪ロリみたいに。

 

「あら、一夏さんはまだ会ったことがございませんでしたの?」

 

「私は会ったことあるわよ」

写真を買いに部屋によく来るからな。

 

「二人は会ったことがあるのか。箒はどうなんだ?」

 

「私か?2、3回だけなら会ったことがあるぞ」

侍娘はあんまり写真を買いに来ないからな。自分も写真が撮られるのが嫌なんだろう。

 

「それよりも一夏さん、さっき鈴さんの酢豚を食べたんですから次はわたくしのを」

 

「くっ!」

織斑一夏はこの世の終わりを見るような目をしている。

 

「大丈夫だ。俺が教えて食えるレベルにはなっている」

俺が周りに聞こえないようにいっくんに言う。

顔を近付けたからかシャルの目がキラキラしている。早く対処しないといけないな。

 

「……でも前は見た目は良かったけど、今は明らかに不味そうだぞ」

パッキン女の料理は見た目だけは良かったからな。中身はこの世の物とは思えないような味だったが。

そこで俺は逆転の発想をした。パッキン女が見た目を気にしないで作ったらどうなるか。不味いは不味いがこの世の味になった。

そこで俺はバンソンコウの時と同じように、こうした方が頑張っている感じが出て印象が良くなると教えた。

 

「大丈夫だ。見た目に騙されるな」

 

「……分かった」

そう言うと、いっくんはパッキン女のサンドイッチを食べた。

 

「どうですか、一夏さん。美味しいですか?」

 

「……前よりも上達したんじゃないか」

決して美味しいとは言わないんだな。

 

「そうですか。それは良かったですわ」

パッキン女の嬉しそうな顔を見て、いっくんは罪悪感のある顔をしている。気にしているなら正直に言えばいいのに。はっきり言ってやるのも優しさだと思うぞ。

 

「そういや、いっくんの弁当はないのか?まさか女子から弁当を分けてもらうだけか?それじゃあ、ヒモと同じだな」

 

「今日の一夏の弁当は私が用意したのだ」

そう言うと侍娘が弁当を取り出した。

中身は中々、手が込んでおりバランスも良い。

 

「ふーん、やっぱヒモか」

 

「いやいや、そんなことはないぞ!いつもは自分で作ってるし」

 

「貴様は私の弁当に不満があるというのか!」

 

「そんなことはない。感謝してるぞ」

こいつは本当に押しに弱いな。

 

「じゃあ、今すぐ食べろ」

侍娘がいっくんに無理矢理、唐揚げを食べさせた。

 

「ふぐっ!……ん、美味しい」

 

「そうか、それは良かった」

侍娘が嬉しそうな顔をしている。

 

「シャル、これが日本で恋人同士がやる『はい、あーん』というやつだ」

 

「これが噂の……。実際に見れるとは思ってなかったよ」

そう言えばウサギが俺にやらせて黒とクロエが嫉妬して一騒動、ってことがあったな。

 

「一夏!はい、酢豚食べなさいよ酢豚!」

 

「一夏さん!サンドイッチもどうぞ!一つといわずにどうぞ全部!」

俺の言葉に反応して貧乳とパッキン女が凄い勢いで押し寄せている。

 

「一夏は女の子にモテるんだね。でも、そういう人がBL的な展開って言うのも……萌えるね」

俺はシャルが女だということを知っているが、他の人が見たらどう思うのだろうか?腐男子?

 

「おい、シャル。後で俺の部屋に来い。面白い物を貸してやる」

面白いことは放置するが、厄介なことは速効で対処しないとな。




最初からシャルを一夏をホモ扱いすることで弄ることは決めていましたが、そこから発展して腐女子になってしまいました。

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