「お~、ヒハランがいるってことは何か面白いことがあるの~?」
朝、俺が教室にいるとのほほんさんとスポーツ少女とツッキーがやって来た。
そういえば、教室にいっくんがいないな。遅刻だろうか?珍しいな。
「俺がいるということはそういうことだ。ところで教室中が盛り上がっているが何かあったのか?」
何かクラス中の女子がカタログを持ちながら色々話している。
「今日がISスーツの申し込み開始日だからだよ」
ああ、なるほど。興味ないから完全に忘れていた。
「そういえば、飛原くんのISスーツはどこのやつなの?見たことのない型だけど」
「自作だ」
ウサギのヤツ、めんどくさいから自分で造れ、とか言ってきたんだよな。それで資料を読みながら黒と一緒に造ったんだよな。
「えっ!?そうなの?」
「ああ。だから聞いても参考にならないと思うぜ」
「凄いね。そういや、今月の学年別トーナメントで優勝すると織斑くんと付き合えるって噂、本当なのかな?」
女子はコロコロ話題が変わるな。
「さぁ」
ちなみに噂を流したのは俺だ。侍娘がいっくんに言っていたのを尾ひれをつけて流した。
「諸君、おはよう」
「お、おはようございます!」
ちーちゃんが登場すると、それまで騒がしかった教室が一瞬で静かになって全員席に座った。重度のブラコンなのに高いカリスマ性を持っているようだ。これが二面性というヤツか。
「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機であるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。さもなければ怪我では済まんぞ。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにしろ。正直、使い回すから臭うぞ。忘れた者は水着、それもない馬鹿者は下着でやれ。それもなければ裸だ」
転校生のことで忘れていたが実戦訓練も今日だったか。イベントの多い日だな。
「では山田先生、ホームルームを」
「は、はいっ」
そういえば、ちーちゃんと話す時マヤマヤは毎回怯えているように見えるな。どういう関係なのか気になる。
「今日は転校生を紹介します。しかも二名です」
「「「えええええっ!?」」」
相変わらず、このクラスはリアクションが大きいな。まぁ、気持ちは分かるが。
「はぁー。失礼します」
「……」
ため息をついている金髪と無愛想な顔をした銀髪が教室に入ってきた。
金と銀がいるなら銅がいてもおかしくないな。銅髪って何だよ、って感じだが。
「……?」
二人を観察して、俺は首をかしげる。
変な二人だな。
金髪の方は女なのに何で男の制服を着ているんだ?さらに銀髪の方はクロエにそっくりだな。何というか予想以上に訳ありな……もとい面白そうな臭いがするな。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。日本は好きな国なので、ある程度は知っていますが間違っていたりしたら教えてくれるとありがたいです。はぁー」
ため息をつきながら、当たり障りのない挨拶をする男装転校生。
異国の地に不安がある、という感じではないな。俺には分かる。中学時代の俺と同じだ。面白いことがなくて退屈している時のため息だ。でも好きな国に来といて退屈とはどういうことなんだ?
「「「きゃあああああーっ!」」」
またか。何度も大声だして喉は潰れないのか?
「あー、騒ぐな。静かにしないとぶっ飛ばすぞ」
毎回思うが、この暴力発言はいいのだろうか?しかも本当に暴力を振るう場合もあるし。
「み、皆さん。お静かに。まだ自己紹介が終わっていませんから~!」
まぁ、俺的にももう一人の方が気になるから速く自己紹介してほしいな。
「……」
だが、もう一人は挨拶どころか口を開けようとしない。そして、その視線はちーちゃんを向いていた。
「挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」
いきなりちーちゃんに敬礼をする転校生。
やっぱり、ちーちゃん関連だったか。しかも敬礼から見て軍人。
「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。 私のことは織斑先生と呼べ」
「了解しました」
見た目は似ていてもクロエとは性格が違うな。あいつは何と言えば分からないが違う。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「あ、あの以上ですか?」
「以上だ」
そう言えば、いっくんも自己紹介の時に同じことを言っていたな。しかもマヤマヤも同じように泣きそう顔をしているし。
「貴様が――」
俺を見て、いきなり敵意剥き出しにこっちにやってくる。俺、何かしたっけ?
とりあえず平手打ちをしようとしてきたのでボールペンのさきでガードする。
「ちっ!多少はやるようだが、貴様があの人の弟であるなど、私は認めない」
銀髪の転校生はボールペンに手があたる前にギリギリのところで手を止めた。
ところでこいつは何を言ってるんだ?俺に姉はいないぞ。
「何を言ってるか全く分からんが一つだけ言っておこう。銀髪で眼帯にロリとかマニアにうけそうな見た目してるからって調子に乗ってんじゃないぞ。自己紹介は第一印象を決める大事なものだ。しっかりとウケを狙え。そんなじゃあ根暗の烙印を押されて寂しい学園生活を送ることになるぞ」
「貴様は何をウチの副官と同じようなことを言っているのだ」
「……」
予定外の返答に言葉をなくす。
とりあえず、こいつの副官が気になる。
「何をやっている、ラウラ。私の弟はそいつみたいな何を考えているか分からんヤツではない」
あ、なるほど。いっくんと間違えたのか。確かに今、教室には俺しか男がいないから間違えるのも仕方ないか。……いや、やっぱりおかしいだろ。自分のターゲットの顔ぐらい事前に確認しとけよ。
後、俺のことをさりげなくディスりやがったな、あのブラコンめ。
「……え?でも……IS学園に男は一人のはずでは?」
「訳ありでな。IS学園と日本政府の一部しか知らないが、もう一人いるんだよ」
て言うか、入学の際に俺の説明はしなかったのか?
「そ、それは人違いで酷いことをした。すまなかった。許してくれ」
さっきとは別人のようになって礼儀正しく謝ってきた。良いヤツなのかもしれない。
「別に気にしていないからいい」
「いや、そう言われても詫びをしないと私の気がすまない。こうなったら日本式に腹を切って詫びよう」
そう言うと、ナイフを取り出して本当に腹を切ろうする。
「ちょ、ちょっと待て!何もそこまでしなくていい!」
「だが、これが日本式の謝り方だとウチの副官が言っていたぞ」
こいつの副官は間違った知識を持つ日本マニアなのか?
「それは昔の方法だ。今はごめんなさい、と謝るだけでよっぽどのこと以外は許してくれる」
「そうだったのか。ごめんなさい」
こいつは本当に素直で良いヤツだな。弄りがいがありそうで楽しみだ。
「うむ、許す」
「ところで本物の織斑一夏は何処にいるのだ?」
「遅刻しているじゃないか?」
「時間も守れんとはたるんでいる。そんなヤツが教官の弟とは」
「スミマセン。遅れました」
いっくんが勢いよくドアを開けて教室に入ってきた。走ってきたからか肩で息をしている。
「あれが織斑一夏だ」
「貴様が遅れたせいで私は余計な恥をかいたんだー!」
完全に逆ギレだな。ナイフを構えて凄い勢いで銀髪ロリがいっくんに襲いかかる。
ところで男装女子の方は何で嬉しそうな顔をしてるんだ?さっきまで退屈そうな顔をしていたのは好みの男がいなかったからか?少し違う気がするな。
「うわっ!いきなり何なんだ!」
「転校早々、問題を起こすな。馬鹿者が」
ちーちゃんが銀髪ロリを取り抑えた。さすがブラコンだな。まぁ、下手したら死んでいたかもしれないからな。
「これでHRを終了する。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」
この後は女子が着替えるから移動しないといけないのか。俺は気にしないんだがな。
「おい、いっくん。転校生の男子は任せた。俺は先に行く」
「はっ!?ちょっと待て!転校生!男子!意味が分からん!少しぐらいは説明していけ!」
「めんどくさいから後でな」
HRが終わったから他のクラスの女子がやってくるだろう。そいつらの質問攻めにあうのは御免だ。
面倒ごとはいっくんには任せるにかぎる。
補足しておくと一夏が遅刻した理由は単純に寝坊です。
寝坊の原因は今後、明かされるかもしれないし、明かされない可能性もありますが一応考えています。
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