ISに告白された少年   作:二重世界

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第12話 貧乳

「おい、深夜。どういうことなんだ?」

朝、教室に着くと、いっくんがいきなり俺に詰めよって言ってきた。

 

「いきなり何だ?」

 

「とぼけるな。さっきのことだぞ」

 

「さっき?」

何かあったっけ?全く心当たりがない。

 

「セシリアがパンをくわえて裸ワイシャツで俺にぶつかってきたことだ」

え?何それ?そんなことがあったのか。その写真、撮りたかったな。

 

「で、それが俺に何の関係があるんだ?」

 

「セシリアを問い詰めたら深夜に教えてもらった、って言ってたぞ」

あの野郎、喋りやがったな。

 

「いや確かに色々相談にはのったが、そんなことは教えていない」

本当に教えていない。確かに男は裸ワイシャツが好きだとか、パンをくわえてぶつかるのは恋愛に発展しやすいだとかは教えた。だが、裸ワイシャツでパンをくわえてぶつかれ、とは教えた覚えがない。そんなの俺の発想にもなかった。

昨日はつまらないと思ったが認識を改める必要があるようだな。

 

「相談?何の相談だ?」

さすがに内容を言うわけにはいかないな。先にパッキン女が喋ったとはいえ、写真を大量に買ってもらっている以上、守秘義務がある。

 

「それよりも転校生の噂は聞いたか?」

 

「何々?転校生の話?」

 

「確か今日、来るんだよね~」

スポーツ少女とのほほんさんがやって来た。

 

「転校生?今の時期に?」

確かにまだ4月だからな。しかもIS学園の転入はかなり条件が厳しく、国の推薦がないと出来ない。

 

「確か中国の代表候補生だったな」

 

「あら、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」

いつの間にかパッキン女がやって来ていた。

にしても、自意識過剰だな。全く違う理由だし、そもそもお前なんか危ぶむ必要ないだろ。

 

「このクラスに転入してくるわけではないだろう?騒ぐほどのこともあるまい」

何故か侍娘までやって来た。普段は来ないから知らないが、いっくんの周りはいつもこんな感じなのだろうか?

そして、残念だな。お前は確実に騒ぐ。

 

「それよりもおりむー、クラス対抗戦頑張ってね~。一位クラスには学食デザートの半年フリーパスが配られるんだから~」

 

「まぁ、やれるだけやってみるか」

 

「そういうことでしたら、このわたくしがクラス対抗戦に向けて、より実戦的な訓練を手伝ってあげますわ。一夏さんはまだ実戦経験がありませんから。ああ、もちろん相手はイギリス代表候補生の「凰鈴音」が務めさせて、ってまたですか?わたくしの名前に被せないでください。後、今のは誰ですの?」

 

「え?鈴?」

 

「こら、飛原。私がタイミングを見計らってたのに、先にバラさないでよ。後、私はイギリスじゃなくて中国の代表候補生よ!」

さっきから教室の入口で様子をみていた貧乳が俺に怒鳴ってきた。

 

「仲間になりたそうに、こっちを見ていたからきっかけを作ってやっただけだろ」

 

「そんなことないわよ!後、あんたは地の文で私を貧乳って言うのをやめなさいよ!」

そう言うと、ISを起動させて俺に衝撃砲を撃ってきた。

後、地の文とか言うなよ。メタ発言は禁止だ。

 

ドガァァンッ!

 

「安心しなさい。峰打ちよ」

衝撃砲に峰があるわけないだろ。馬鹿なのか?

 

「貴方は死なないわ。私が守るもの」

いきなり黒が人型になって盾で俺を守った。て言うか、起きてたのか?

 

「おい、黒。人前でアニメのセリフを言うな。いっくん以外理解出来てないぞ」

 

「いや、深夜もたまに言うけど簪以外に理解されないじゃない。それに私よりもマニアックだし」

それを言われるとキツいな。

 

「いやいや、俺はそれでもイタくならないように言ってるだろ」

 

「確かに深夜は格好いいけど……」

 

「夫婦漫才はやめて、こっちを向きなさいよ!て言うか、黒はどこから現れたのよ。さっきまでいなかったでしょ」

あれ?貧乳に黒のこと説明してなかったけ?まぁ、どうでもいいけど。

 

「それよりもいっくんと挨拶しなくていいのか?」

 

「私が感動の再会をしようと思っていたのに、あんたが邪魔したんでしょうが!」

俺が邪魔しなくても無理だったと思うが。

 

「鈴?お前、鈴か?」

 

「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

良くさっきまでの空気をなかったことにしてやり直せたな。凄いメンタルだ。

 

「それよりも、後ろの修羅に注意しろ」

 

「えっ?」

貧乳が振り向くと、そこにはそれは恐ろしい鬼が仁王立ちしている。

 

「ち、千冬さん……」

 

「織斑先生と呼べ。後、さっきの爆発音はお前か?昨日、あれだけしぼったのにまだ足りなかったようだな。覚悟しておけよ。それと飛原。誰が修羅だ、馬鹿者」

 

「……(ガクガク)」

貧乳が脅えている。俺も前にやられたけど怖かったな。いや、あの時はマジで死ぬかと思った。

あ、よく見たら少し漏らしてる。

 

「覚えてなさいよね、一夏!」

それだけ言うと、貧乳は走り去っていった。

 

「おい、何で俺なんだよ!悪いのは深夜だろ!」

恐らく……いや、確実にその叫びは通じてないな。

 

「そういや、鈴と深夜って知り合いだったのか?」

 

「ああ、昨日、人気のない校舎で迷子になっていたのを案内したんだ」

 

「何だ、それは?」

 

「じゃあ、俺は戻るわ」

そう言って、俺は教室を出ようとしたところをちーちゃんに止められた。

 

「おい、飛原。またサボるのか?」

 

「サボるだなんて失礼な言い方だな。勝負に勝って手に入れた正当な権利だろ」

 

「確かにそうだな。だが、たまには授業を受けてもいいんじゃないか?」

ふむ、なるほど。普段と違うことをするのもいいかもしれない。

 

「じゃあ、久しぶりに授業に出るか」

 

「深夜、部屋であんなことやこんなことをしないの?」

 

「黒、間違ってはないが人前でそういう言い方をするな。めんどくさいことになるから」

 

「分かったわ。じゃあ、また寝るから。お楽しみは夜にお預けね」

そう言うと、黒は指輪に戻った。他のクラスメイトはいっくんに詰めよっている。そのおかげで黒の発言はちーちゃん以外聞いていない。だが、唯一聞いていたちーちゃんの視線が痛い。

 

「席に着け、馬鹿ども」

そして、ちーちゃんが出席簿で全員叩いて黙らせて、授業を開始した。

 

 

 

「おい、深夜。助けてくれ」

昼休みになったので食堂に行こうとしたら、いっくんが助けを求めてきた。若干、今朝と被るな。

 

「おい、逃げるな」

 

「そうですわ、一夏さん」

侍娘とパッキン女までやって来た。

ああ、なるほど。二人は授業中にぼーっとしていて、マヤマヤに注意されたり、ちーちゃんに出席簿で叩かれたりしていたからな。そのことだろう。八つ当たりとは、それでも高校生なんだろうか?

 

「めんどくさいことに巻き込むなよ。俺は今から食堂に行くんだから」

 

「だったら、俺も一緒に行くぜ」

織斑一夏は『逃げる』を選択した。

 

「というわけで、また――」

 

「私もついていくぞ」

 

「それでしたら、わたくしも仕方なく行って差し上げますわ」

だが、逃げられなかった。

俺はとりあえず、のほほんさんも誘って食堂に行くにした。

 

 

 

食堂に着くと券売機で俺は海鮮丼、いっくんは日替わりランチ、のほほんさんはお茶漬け、侍娘はきつねうどん、そしてパッキン女は洋食ランチを買っていた。

たまに食堂で見かけるけど、こいつら、毎回同じものを買っているな。俺みたいに色々頼めよ。

 

「待ってたわよ、一夏」

貧乳が俺達の前に立ちふさがった。

 

「だから、あんたは私を貧乳って言うのを止めなさいよ!」

 

「言ってないだろ」

何で心の声が聞こえるんだよ。どんだけ貧乳を気にしているんだ?それはそれで需要があると思うぞ。

 

「それよりも、まずはそこをどいてくれ。食券を出せないし、普通に通行の邪魔だぞ」

 

「う、うるさいわね。分かってわよ。あんたのせいよ」

俺を指差して言ってきた。俺は悪くないだろ。

それから、貧乳がいっくんと話始めたので俺はのほほんさんと話すことにした。

 

「そういや、あの話、かんちゃんからクラス対抗戦までの期間限定で許可がでたぜ」

 

「そうなの~?」

 

「ああ、だから、今日の放課後からしようと思っているけどいいか?生徒会の方はたっちゃんに後で言えばいいだろ」

 

「いいよ~。へへぇ、楽しみだねぇ~」

そして注文の品がやってきたので席を探して移動する。

 

「のほほんさん、何でお茶漬けに卵を入れんだ?」

 

「好きだからだよ~」

マジか?でも、のほほんさん幸せそうな顔しているな。でも真似する気にはなれないな。

とりあえず、俺は放課後のことを話し合いながら飯を食べた。

にしても、いっくんの方は盛り上がってるな。

 

「そういや、鈴と深夜って仲良いんだな」

ん?俺の話か?

 

「別にそんなことないわよ!そうよね、飛原」

 

「そうだな。俺が一方的にいじってるだけだからな」

 

「何よ、それ?」

 

「やっぱり仲良いんだな」

 

「だから違うんだってば!」

必死に否定している。パッキン女よりも貧乳をいじる方が楽しいな。

 

「そういや、さっきから地の文で貧乳って言ってるけど衝撃砲、撃たないのか?」

 

「あんたも地の文とか言うんじゃないわよ。て言うか、これ以上問題をおこしたら千冬さんに殺されるわ」

ふざけた口調で言ってるけど、その目は笑っていない。

 

「それよりも、今聞いたんだけど、あんたも専用機持ち何だって?私と勝負しない?」

 

「断る。俺は色々、忙しいからな。まぁ、どうしてもって言うならクラス対抗戦が終わってからならいいぜ」

 

「ふぅん。まぁ、いいわ。それよりも一夏。クラス対抗戦、覚悟しなさいよね」

そして、貧乳は食べ終わって片付けて、そのまま学食から出ていった。

 

「深夜、特訓に付き合ってくれ」

 

「だから、忙しいって言っただろ」

もしかして、俺のセリフを信じてなかったのか?

 

「だから私がすると言ってだろうが」

 

「いえ、わたくしが手伝いますわ」

めんどくさいことになりそうだったので、俺も片付けてのほほんさんと一緒に食堂を出た。

最後にいっくんが何か言ってた気がするけど無視だ。




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