ISに告白された少年   作:二重世界

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第10話 転校生

クラス代表決定戦の翌日、朝のSHRに俺は珍しく参加していた。というよりも初日を除いて初めての参加である。理由は面白いことがありそうだからだ。

 

「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね」

何がいい感じなのかは知らないが、マヤマヤが嬉しそうに喋っている。クラスの女子は大盛り上がりだが、いっくんだけは暗い顔をしている。

 

「先生、質問です」

 

「はい、織斑くん」

 

「俺は昨日の試合、何もしていないんですが、何でクラス代表になっているんでしょうか?」

 

「それは――」

 

「俺が説明してやろう」

マヤマヤの言葉を遮って、俺が立ち上がって言う。そして、いっくんとちーちゃんがツーショットになる位置に移動して写真を撮る。

 

「……深夜。その前に何で写真を撮っているのかを説明しろ。この前も撮ってたよな」

生徒会の初日の後にいっくんの写真を撮って、翌日に女子に売ったら凄く儲かった。特に昨日、パッキン女が大量に買ってたんだよな。さすがお嬢様、羽振りが良かったぜ。

そして、いっくんとちーちゃんのツーショットなんてなったら、凄い売り上げが期待できるぜ。

その他、道具とかは写真を渡せばウサギが準備してくれるから売り上げは全部俺のもの。

後でアニメのDVDに漫画、コスプレ道具に色々と買うか。

 

「気にするな」

 

「いや、すげぇ気になるんだが」

 

「……いっくんがクラス代表なのは不戦勝で二勝したからだ」

 

「無視するなよ!」

んー。やっぱり他の人間が入って上手くツーショットに出来ないな。仕方がない。後で加工するか。

 

「……もう諦めた。でも、納得出来ん。一番強い深夜がやるべきだろう」

 

バシン!

ちーちゃんがいっくんを叩いた。

 

「諦めろ。それに飛原を人前に出るクラス代表にするわけにはいかない。飛原の存在が世間にバレたら確実に問題がおきる」

 

「だったら、セシリアを痛っ!」

また叩いた。

 

「男らしく諦めろ」

 

「ハァー」

ちーちゃんに言われていっくんも諦めた。暴力に屈したようだ。

 

 

 

それから時間も過ぎて4月の下旬の夜、俺は人気のない校舎で電話をしていた。

 

『いやー、久しぶりだね、しっくん。しっくんの声を聞けて嬉しいよ』

電話の相手はウサギだ。さすがにウサギとの会話を人に聞かれるわけにはいかないので毎回、人のいないところに移動しなければいけない。正直、めんどくさい。

 

「久しぶり、って昨日、会ったよな?」

 

『あれー。そうだっけ?束さん、うっかりだね。あははははっ!』

相変わらずテンション高いな。

 

「で、何のようだ?写真なら昨日渡しただろ」

 

『昨日、言い忘れたことかあったんだよ。それをしっくんの声を聞くついでに言っておこうと思ってね』

昨日のこと覚えてんじゃねーか。相変わらず適当だな。

 

「それは面白いことなのか?」

 

『当然だよ。私が作っていたオモチャの実験だよ』

ああ、あれか。俺が研究所にいた時に作っていた物だな。

 

「ふぅん。それを俺にくれるのか?」

 

『それは無理だよ。まだ完成していないからね。でも、完成したらしっくんにもプレゼントするよ。そこでお願いなんだけどね、邪魔しないでほしいんだよね』

 

「ん?どういうことだ?俺と黒で性能テストするんじゃないのか?」

確か、そういう話になっていたはずだが。

 

『実は気が変わってね。他にも試したいことがあるんだよ』

 

「……ああ、なるほど。いっくんか」

 

『相変わらずしっくんは勘が鋭いね。他にも色々気付かれてそうで怖いよ』

それって色々企んでいる、って言ってるのと同じ意味なんだが。まぁ、だからウサギのことを気にいってるんだがな。

 

『とういうわけで用事は終わりね。後、一つ文句があるだよね』

 

「文句?何だ、それは?」

 

『いっくんの写真はいっぱいあるけど、ちーちゃんと箒ちゃんの写真が少なくない?』

 

「無茶言わないでくれ。侍娘もちーちゃんもすぐに暴力を振るうからな。いっくんの写真を渡すことで何枚か撮ってるけど盗撮は難しい。特にちーちゃんは不可能だ」

前にちーちゃんを盗撮しようとしたらバレて地獄をみたからな。あんなのは二度とごめんだ。

 

『まぁ、確かにちーちゃんはしっくんには厳しいよね』

 

「そんな挑発するような言い方をしても出来ないものは出来ないからな」

 

『ちぇ。仕方ないか。そうだ、くーちゃんも話さない?昨日、喋ってなかったよね。――え?嫌。相変わらずしっくんのことが嫌いなんだね』

まだクロエは俺のことが嫌いみたいだな。初めて会った時から、俺のことをライバル視してんだよな。ウサギを盗られると心配しているようだ。

ちなみに俺が唯一、あだ名で呼んでいない人物だ。ウサギ以外にくーちゃんと呼ばれたくないらしいし、クロちゃんだったら黒と被る、他の案も却下された。だから仕方なく名前で呼んでいる。

 

「黒はどうする?」

 

「ウサギなんてどうでもいいから、早く部屋に戻らない?」

黒も変わらないな。俺以外は基本的に興味ないからな。

 

「ということだ。じゃあ、そろそろ戻るわ」

 

『残念。じゃあ、またね。て言うか、明日電話するね』

 

「するな」

そう言うと、俺は電話を切った。

 

「じゃあ、深夜。早く戻りましょう」

 

「そうだな」

 

 

 

「本校舎一階総合事務受付……って、だからそれどこにあんのよ」

部屋に戻る途中、人気のない校舎で一人言を言いながらキョロキョロしている不審者を発見した。

 

「自分で探せばいいんでしょ、探せばさぁ」

 

「……深夜。あれ、何?怖いんだけど」

 

「一応、IS学園の制服を着ているな。この学園の生徒か?」

でも、だったらキョロキョロしている理由が分からんな。それに見たこともないヤツだし。

どうしようか迷っているうちに向こうはこっちに気付いたらしくやって来た。

 

「ちょっとそこの二人、案内しなさいよ」

 

「何処に案内するか先に言え、不審者」

 

「誰が不審者よ。私は転校生よ」

転校生?ああ、この前、生徒会の資料で見たな。

 

「……確か中国の代表候補生で名前は凰鈴音(おおとりすずね)

 

「何で日本語読みしてんのよ!あんた、馬鹿なの?私は凰鈴音(ファンリンイン)よ」

こいつもテンション高いな。て言うか、何でこんなところで迷子になっているだろうか?まぁ、どうでもいいけど。

 

「ああ、そりゃ悪かったな」

 

「て言うか、何で男がIS学園にいるの?何で私のことを知っているの?」

こいつ迷子になっていることを忘れてないか?

 

「それよりも俺は何処に案内すればいいんだ?」

 

「あっ!しまった。忘れたわ。私は総合事務受付に行きたいのよ」

やっぱり忘れたのか。

 

「まぁ、いい。行きながら説明してやる」

 

「こんな貧乳、放っておいて部屋に戻ろらない?」

 

ドカァァンッ!

 

爆発音がして、衝撃が部屋全体をかすかに揺らしていた。そして、気付くと貧乳の右腕はその指先から肩までがIS装甲化していた。

ふむ。衝撃砲か。

 

「い、言ったわね。言ってはならないことを、言ったわね!」

明らかにぶちギレている。貧乳なのを気にしているのか。

 

「おい、黒。大丈夫か?」

 

「私がこの程度でやられるわけないでしょう」

黒は盾の武装『ファランクス』を出して攻撃を防いでいた。

 

「なっ!IS!?貴女も専用機持ちなの?」

 

「違うわよ。て言うか、普通、いきなりISで攻撃する?ISの私的使用は禁止されてるの知らないの?」

黒が珍しく正論を言ってるな。

 

「あんたが言ってはならないことを言ったからよ。あんたが悪い」

なんて暴言だ。

 

「おい、早く案内してやるから早く来い。お前のISの私的使用の罰は後で決める」

 

「何であんたが勝手に決めるのよ!」

 

「さっきの俺が何でお前を知っているか教えてやる。それは俺が生徒会だからだ」

まぁ、俺にそんな権限はないが後でちーちゃんに報告しておけばいいだろう。こいつ、偉そうでムカつくからな。

 

「くっ!まぁ、いいわ。早く案内しなさい」

そう言うと、貧乳は先に歩いていく。

 

「そう言えば、何で男がIS学園にいるのよ?」

 

「それは俺が男性初のIS操縦者だからだ」

 

「え?それは一夏じゃないの?」

 

「一夏?もしかしていっくんと知り合いなのか?」

いっくん、もしかして結構顔広いのか?

 

その後、貧乳といっくんの関係やIS学園でのいっくんの様子を軽く話した。

どうやら、こいつもいっくんに惚れているようだ。あいつ、モテるな。

 

「だから、その前にイメージが分からないんだよ」

IS訓練施設の近くを通った時、いっくんの声が聞こえてきた。

 

「い、一夏の声!?」

 

「分かりやすく嬉しそうだな」

 

「そ、そんな訳ないじゃない。何、馬鹿言ってるのよ!?」

なるほど。こいつはツンデレなのか。

そういや、侍娘もそうだったな。

いっくんの幼馴染みはツンデレが多いのか?

 

「一夏、いつになったらイメージが掴めるのだ。先週からずっと同じところで詰まっているぞ」

 

「あのなぁ、お前の説明が独特すぎるんだよ。なんだよ、『くいって感じ』って」

いっくんは侍娘との練習の帰りだったようだな。にしても、侍娘は相変わらず、そんな教え方をしているのか。あれじゃあ、いっくんじゃなくても分からないぞ。

 

「……ねぇ、あの一夏と親しそうに話している女は誰?」

 

「いっくんのクラスメイトにして幼馴染みの篠ノ之箒だ」

 

「へぇ、そうなんだ。確か、前に聞いた名前ね。にしても、一夏、楽しそうね」

目が笑っていない。

 

「不機嫌そうだな。お前は確か二組だったはずだ。クラス代表になれば一組のクラス代表であるいっくんと戦えるぞ」

 

「へぇ、それは良いアイディアね。一夏、コテンパンにしてあげるわ」

楽しそうに言っている。本当にいっくんが好きなんだろうか?

 

とりあえず事務室に案内して、そのまま別れた。

いっくんといたら、面白いことには困らないような気がしてきたな。




プロローグ以来のウサギの登場です。電話ですけど。もっと出番増やしたいな。

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