ISに告白された少年   作:二重世界

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第9話 クラス代表決定戦

「お、織斑くん織斑くん織斑くん」

現在、クラス代表決定戦の直前で第3アリーナ・Aピットにいる。

そこに副担任のマヤマヤがいっくんの名前を呼びながら駆け足でやって来た。三度も呼ばなくていいと思うが。

 

「マヤマヤ、落ち着け。落ち着かないと後ろの怖い人に怒られるぞ」

 

「は、はいっ!そうですね!」

むしろ怯えたようにも見えるが。まぁ、いいか。一応、落ち着いたし。

にしても、何で生徒がタメ口で教師が敬語何だろうか?立場が逆転してるような気がする。

 

パァンッ!

いつものようにちーちゃんが出席簿で叩いてきた。

 

「誰が怖い人だ、誰が」

 

「 気にしているんだったら、暴力は止めろよ」

 

パァンッ!

また、叩かれた。さっきよりも威力が高い。

 

「教師にタメ口で話すな。何度言ったら分かるんだ、馬鹿者!」

 

「それよりも山田先生、どうかしたんですか?」

それよりも、じゃあないだろう。お前も姉の暴力行為を止めさせろよ。

 

「ああ、実は織斑くんの専用機なんですが、少し遅れているんです。到着までもう少しかかります」

 

「えっ!?じゃあ、どうするんですか?」

 

「どうもしない。飛原が試合をしている間に届けば、そのままぶっつけ本番でやるだけだ。届かなった場合は素手でやれ」

何て無茶苦茶な発言だ。素手でISと戦える人はちーちゃんとウサギぐらいなのに。この人は自分の弟を殺す気なのか?

 

「んな、無茶苦茶な。それにISの練習もしていないのに。どうすればいいんだよ?」

侍娘が気まずそうに目をそらしている。

侍娘がいっくんにISのことを教えることになっていたが、一週間、剣道の練習しかしなかったらしい。いっくんも途中で気付けよ。

ちなみに俺は知っていたが放っておいた。理由は生徒会で忙しかったのと、このまま放っておいたら、どうなるか気になったからだ。まさか、全くISに関することをしなかったとは。予想外だ。

さっきから侍娘が全く喋らないのは責任を感じているからだろう。

 

「じゃあ、行ってくるわ」

そう言うと、俺はIS『黒嵐』を展開した。

 

「深夜、出来るだけ時間を稼いでくれ。じゃないと、素手で戦うことになってしまう」

 

「安心しろ。その心配はいらない」

俺は考えた。

生徒会があるのにクラス代表までするのはめんどくさい。そこで俺が楽しめて、他のヤツにクラス代表を押し付ける方法を。

 

そして、俺は敵……いや哀れなオモチャのいるところに行く。

 

「あら、よく来ましたわね。貴方の戦い方は先日の模擬戦で見ましたわ。男にしては多少、出来るようですけど、その程度では……って人の話を聞いていますの?さっきから欠伸をしていますけど」

 

「いや、聞いてない。面白くなさそうな話だったからな」

 

「……相変わらず腹のたつ方ですわね。ですが、その減らず口も今日までですわ」

 

「ふーん。あっそ」

 

俺は相手の武装を見て球体の自立機動兵器『スカイルーラー』とレーザーライフル『ブラックバースト』を呼び出す。

 

「わたくしと同じタイプの武装!?どういうことですの!?貴方の武装は槍じゃなかったんですの!?」

 

「さぁな。自分で考えろよ」

 

『黒嵐』には専用武装というものがない。つまり、基本的に素手だということだ。それに加えて機体性能も低い。さらに燃費が悪くて使い物にならない展開装甲。はっきり言って欠陥品だ。

だが、戦闘ではなく趣味を優先した、この機体には他の機体よりも優れた部分がある。それは圧倒的な拡張領域だ。

元々、ウサギが黒を製作した理由は自分が気分転換に作った武装や試作品が余っていたからだ。その武装をバラバラにではなく、まとめて使えたら面白いことになりそうだ、ということで他を全て犠牲にして拡張領域の増長した機体を作ったらしい。

後、俺が製作した武装もあるし、中には武装以外も入っている。

 

「まぁ、いいですわ。同じ武装ならわたくしが負けるはずありませんわ」

 

「そう思っているなら、それがお前の限界なんだろうな」

そして、本格的に戦闘態勢に入る。

 

「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でるワルツで!」

 

「殺して解して並べて揃えて、晒してやんよ!」

 

そして、相手の自立機動兵器『ブルー・ティアーズ』から、まさに弾雨のごとく攻撃から降り注ぐ。

 

「ふむ。その程度か。つまらんな」

その攻撃を俺の『スカイルーラー』が防ぐ。

この武装はとても頑丈で防御にも使えるし、そのまま相手にぶつけて攻撃することも出来る。本来は13機あるが相手にあわせて4機しか出していない。まぁ、まだ全部使うことは出来なくて、最大8機までしか扱えない。

ちなみに、この武装は俺のお気に入りで黒の名前の由来にもなっている。

 

『この程度なら、私いらなくない?』

 

「まぁ、いいじゃないか。俺の計画のためにパッキン娘を完膚なくまで、ぶっ倒さなくちゃならないんだから」

スカイルーラーは俺じゃなくて、黒も動かすことも出来る。

 

「なっ!?わたくしの攻撃が!」

 

「じゃあ、興味も失せたし、さっさと戦闘不能にするか」

そう言うと、俺はブラックバーストを発射する。

すると、レーザーが途中で分裂して相手を襲う。

この武装は多対一を目的につくられた物である。

 

「くっ!」

相手は避けきれずにダメージをくらう。そして、ブルー・ティアーズ――ややこしいので以下ビット――を2機破壊することに成功。

 

「ちっ!破壊し損ねたか」

 

「これならどうですか?」

レーザーライフルを発射してきた。

 

「それは悪手だろ」

俺はブラックバーストを発射して相殺する。

そして、その隙に黒がスカイルーラーを直接ぶつけてビットを破壊する。

 

「なっ!」

よく驚くヤツだな。

 

そして、俺は相手に接近する。

 

「これで終わりだな」

 

「……かかりましたわ」

にやり、とパッキン女が笑うと腰部から広がるスカート状のアーマーの突起が外れて動いた。

 

「おあいにく様、ブルー・ティアーズは六機ありましてよ!」

なるほど。やっぱり隠し球があったか。予想通りだ。

にしてもミサイルか。これが隠し球とは……つまらんな。

 

「これでわたくしの勝ちですわ!」

 

「これで終わりだ」

俺は爆風から何もなかったかのように現れて、パッキン女のレーザーライフルを破壊する。

 

「っ!?どうして!?」

 

「これだ」

そう言って、俺は新たに出したスカイルーラーを指差す。

 

「貴方も奥の手を隠していましたのね?」

 

「いや、これは奥の手でも何でもない」

 

そして、俺は出力を抑えて相手を倒さないように攻撃をする。

どんどん相手のISアーマーが破壊されていく。

 

「これだけ殺れば十分だろ」

 

『また字が違うよ。て言うか、深夜、それ好きだね』

 

「別にいいだろ」

そして、俺は相手に止めを刺す。

 

『試合終了。勝者――飛原深夜』

 

 

 

「……深夜。やり過ぎだろ」

試合が終わってピットに戻ると、いっくんが白い目で言ってきた。

 

「俺の計画に必要だったんだよ」

 

「計画って何だよ?」

 

「後で分かる。ところであれがいっくんの専用機か?」

俺が指差した方向に真っ白なISがあった。

 

「ああ、さっき届いたんだ」

いっくんが嬉しそうに言ってくる。やっぱり専用機が貰えるのは嬉しいことなんだろうな。俺も嬉しかったからな。

 

「それは残念だったな。パッキン女はもう戦えないだろう」

 

「え!?マジで!」

 

パァンッ!

ちーちゃんが出席簿で叩いてきた。

 

「何で叩くんだよ!俺、何かしたか?」

 

「やり過ぎだ。あれではオルコットはすぐに戦えないだろうな」

いっくんと同じことを言わなくてもいいだろう。

 

「じゃあ、どうすんだ、千冬姉」

 

「織斑先生と呼べ、馬鹿者。そうだな。とりあえず、飛原と戦え」

 

「ああ、それは無理だ。黒が疲れて寝てしまったからな。こうなると中々起きない。というわけで、俺は帰るわ」

まぁ、嘘だけどな。黒があの程度の戦闘で疲れるわけがない。

 

「じゃあ、俺はどうなるんだ?」

唖然としたいっくんを放っておいて、俺は部屋に戻る。

 

 

 

「……今日の試合。何なの?」

部屋に戻ると、かんちゃんにいきなり聞かれた。

 

「何が?」

 

「相手をいたぶるような真似をして……。明らかにやり過ぎ……」

 

「それ、三人目だな。まぁ、いい。説明するか」

かんちゃんが不機嫌になって、今日のアニメ談義が出来なかったら困るからな。

 

「俺がクラス代表にならないためだ。パッキン女があの調子なら試合は出来ないし、俺が棄権がすればいっくんが不戦勝で二勝してクラス代表に決定だ」

て言うか、今更ながら気付いたが、俺がクラス代表するわけにはいかいかないだろ。俺の存在自体、国家機密みたいなもんだし。人前に出るクラス代表は無理だろ。

 

「それなら、そんな方法とらなくていいでしょ……」

 

「それが一番楽しめる方法だからな」

 

「まぁ、貴方がそういう人だって分かっているから……いいわ。後、戦い方も気になったんだけど。貴方のISの機能なら、相手の武装にあわせて有利な戦法で戦うのが普通でしょ」

ああ、そういや、かんちゃんには黒のことを説明していたんだったな。まぁ、不思議に思うのも当たり前だな。

 

「俺の趣味だ。ただ勝つだけじゃ、つまらないからな」

 

コンコン

 

「入ってよろしいでしょうか?」

誰がやって来て、扉をノックした。

 

「入っていいぞ」

 

「失礼します」

すると、パッキン女が部屋に入ってきた。

何か恋する乙女みたいな顔をしているな。もしかして、俺にボコボコにされて惚れたのか。いや、そんなわけないか。どんなドMだって話だ。

 

「何の用だ?」

 

「……実は一夏さんのことで相談がありまして」

一夏さん?もしかして、そういうことか。でも何故だ?意味が分からない。

 

「……もしかして、いっくんに惚れたのか?」

 

「い、いえ、そういうわけでは。ただ、気になってしまって……」

 

「あいつの何処が気になったんだ?」

 

「飛原さんにボコボコにやられて落ち込んでいるところを一夏さんに慰めてもらって……。それで……」

え!?なにそれ?こいつ、ちょっと優しくされただけで惚れるとか、チョロすぎるだろ!

 

「……それで何で、ここに来たの?」

かんちゃんが凄く不機嫌そうに聞く。いっくんの話題が出ただけで不機嫌になるからな。

 

「同じ男である飛原さんに男の人の趣味を聞こうと思いまして」

 

「なるほど。そういうことか。いいぜ」

その後、俺とかんちゃんがアニメ知識で明らかに間違ったことを悪意をもって教えた。

困ったいっくんを見るのが楽しみだ。




最後に教えているのは、ほとんどクラリッサと同じ内容です。ただ、クラリッサとの違いは勘違いではなく、分かっていて教えているところですね。

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