はがない性転換-僕は友達が少ないアナザーワールド-   作:トッシー00

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第3話です。


柏崎さんに突撃

 翌日。

 

 外の天気は雨、さっそく何かが起こりそうな予感がするのはさておき。

 昼休み、同じクラスの夜空(通称:皇帝)が小鷹の元へやってくる。

 

「あ~、なんか久しぶりに授業出るとかったり~な」

「授業くらい毎日出なさいよ、あなた学校をなんだと思ってるの?」

 

 と、生徒会長のような言葉で注意をする小鷹は特にみんなから慕われるわけでもない、言うならぼっち。

 ぼっちにそんなこと言われてもなぁ、と夜空は鼻歌交じりで上の空を決め込む。

 

「別によぉ、テストでそれなりの点とれば先生は満足なんだろ?」

「そ、そうだけど。ちなみに皇帝のクラスの順位は?」

 

 小鷹がそう聞くと、夜空はクラスの端に貼ってある4月度の学力テストの順位表を指差した。

 改めて見てみると、三日月夜空の名前はうちのクラスの第一位の欄に記載されていた。

 つまりはこの皇帝と名乗る不良は、クラスで一番頭がいいのである。

 

「…………」

「やる時にやることをやればいいだけだっつうの。自分は毎日ちゃんとやってますで妥協してる真面目ちゃんもどきよりは俺の方がよっぽどマシだよ」

「うぅううぅみゅうううううううううううう!!」

 

 体を小刻みに震わせながら、小鷹は呻きを上げる。

 そして機嫌を損ねて教室から去ってしまった。それをすぐに追いかける夜空。

 

「おいおい怒るんじゃねぇよ、お前だって30人中9位とどうも表せない微妙に頭のいいやつだろ?」

「褒め言葉になってないよ!!」

「そんなことよりも、この昼休みにやることがあんだろ?」

 

 むくれる小鷹に対し、夜空はそう催促する。

 そう、今日小鷹は隣のクラスにいるこの学園一の美少女、柏崎星奈に話しかけるという重大な使命があるのだ。

 どうして小鷹が星奈の名前を出したかというと、単純に知ってる女子生徒が星奈しかいなかったからである。

 考え方によっては、ぼっちの小鷹でさえも知ってるほどよく目立つ、そこまで名を轟かせるすごい少女という風にも捉える事が出来る。

 最も、柏崎星奈についてある程度よく知っている夜空からすれば、女子生徒である小鷹があいつに関わること自体が無謀らしいのだが。

 そんなことすら知らず、今小鷹はそんな星奈の元へと足を運ぶのであった。

 

「柏崎さんか、名前は聞いたことあるけどどんな人なんだろ……」

「一言で表すと……天は二物を与えない女だ」

「どういうこと?」

 

 表現が曖昧だったので、小鷹は思わず聞き返してしまう。

 

「会ってみればわかる。会わなくてもわかるけどな」

「???」

 

 頭に大量のクエスチョンマークを浮かべる小鷹。

 これ以上話をしても無駄だろう。当たって砕ける、それが今の小鷹にやれることであった。

 最も、本当に何かが砕ける可能性があるのはさておき……。

 

 ガラガラガラ……。

 

 小鷹はいざ、柏崎星奈のいる教室へ。

 クラスに入るとさっそく、大勢の男子が一人の少女に群がっていた。

 男子生徒が集まる中央、そこにひときわ輝く美少女がいた。

 夜空の言う通り、スズメの大群の中にクジャクがいたのだ。

 

「あ、あの……柏崎さんはどちらにおりますか?」

 

 どこにいるかはわかっていたが、いきなり相手に話しかけるのも変だったので入ってすぐの席にいた男子生徒にそう聞いた。

 

「え?星奈様ならあそこだよ、星奈様~!」

 

 星奈様?なにやら夜空の皇帝というのと似たような響きを感じた。

 本人がそう呼ばれているのか、呼ばせているのか。

 まぁこの際どうだっていい、まずは手早く話しかけてみないと相手がどんな人なのかわからない。

 

「なに?下僕38号」

 

 下僕……?小鷹はさらにおかしく思った。

 まさか現実で男子生徒を下僕と呼ぶ女の子が本当にいたとは、小鷹の中で想像の中の星奈とは違う感覚を抱く。

 男子の大群から星奈が姿を現す。小鷹がその姿を見て思わず見とれる。

 自分とは比べ物にならない美しい金髪、整った顔立ち。まるで神様がオーダーメイドしたかのような美しい人形のようだった。

 胸も大きい、自分の5~6倍はあるのではないかと思った。自分が木の実なら相手はさしずめメロンといった感じだろう。

 ひょっとしたら自分は大変な相手に話しかけてしまったのだろうか、今更だが少し後悔する小鷹。

 

「えぇと?何か私に用?」

 

 強気な態度でそう聞かれ、思わず後ずさりするぼっち小鷹。

 容姿も中身も完全上位互換の柏崎、さしずめフリーザーLv.50がそこに君臨していた。

 自分なんてそこらにいるポッポだ。相性も悪かろう。

 

「え、えぇと……あなたが柏崎……さん?」

「おいそこの三流女!様をつけろやデコスケ野郎が!!」

 

 一人の男子生徒がそう言った。

 そこは「さん」付けじゃないの?と突っ込みたいところだったがやめる小鷹。

 というかそこよりも、三流女と言われたことに傷つく。

 

「あんたは黙ってなさい。そうだけどなに?」

「え……えぇとその、ボク……先月転校してきたばかりの羽瀬川小鷹なんですけど……挨拶しておこうかな、なんて……」

 

 あまり人と関わることが苦手な小鷹は、機嫌を損なわせないようにと慎重に言葉を選ぶ。

 それを聞いて、星奈があまり表情を変えずに返した。

 

「ふ~ん、この私に挨拶ね。いい心構えじゃないのよ」

 

 なんでこんなに上から目線なのだろう、と少し疑問に思ったが口には出さない小鷹。

 どうやら第一段階はクリアしたか。と思っていると。

 

「んで?なに?私とお近づきにでもなりたいの?」

「え、えぇと……」

「……ごめんなさいね、なんかあんたと一緒に行動してたら私の質が落ちそうだわ」

 

 と、はっきりと言い張る星奈。

 これにはさすがに、小鷹も内心怒りを覚える。

 

「ど、どういうこと……ですか?」

「その長めの金髪を……てかそれ金髪?なんかギョウ虫みたいな色ね」

「ぎ……ギョウ!?」

 

 濁った金髪だの汚い金髪だの言われてきたことはあったが、ギョウ虫と呼ばれたのは初めてで、しかも今までで一番傷がついた。

 

「そのギョウ虫色の髪の毛を整えもしないで、顔は……そこらの女どもの量産程度な上に目が死んでんじゃないあんた。そんなあんたとこの超絶美少女の私が釣り合うと思うの?」

 

 ひどい言われようだった。まさか柏崎さんがそんな人だったなんて……。

 この人は駄目だ。と内心呆ける小鷹。天は二物を与えない女……そういう意味だったのか。

 

「………すいません」

 

 一応謝っておく。てかなぜ謝る必要があるのか。

 

「しかも貧乳だし、ねぇ男子ども。この女のどこかに惚れる要素ある?」

「いえ!こんな中古品女に惚れる要素なんてありようがありません!!」

「星奈様の100億分の1にも満たないと思います!!」

 

 ひどい……ひどすぎる。

 次第に身体を震わせる小鷹。拳を強く握りしめる。

 

「ほら見なさい、あんたみたいな私の指先にも満たない女なんて興味がないのよ。さっさと家に帰って少しはその汚らしい髪の毛を整えることから始めなさい」

「…………」

 

 もう……もう限界だ。

 小鷹の中のリミッターが、瞬間的にはじけ飛んだ。

 

「外見も中古、能力も皆無。あんた生きてる意味あんの?てか生まれた意味すらない……」

 

 どがしゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!

 

 星奈が罵倒を終わらせる一歩手前、星奈の後ろ側の教室の窓ガラスが全壊した。

 パラパラパラ……と綺麗に粉砕される窓ガラス。

 いったい何をしたか……というと、小鷹が柏崎の顔をかすめる様に拳を振るったのである。

 結果、その勢いのある拳が生み出した衝撃波によりガラスが割れた。ということである。

 これには柏崎、ないし教室にいた生徒達が驚愕の表情を浮かべ、小鷹をただただ見やる。

 

「……ごめんなさ~い。話す相手間違えました~ん☆」

 

 そうわざとらしく謝り、小鷹は教室から離れた。

 教室から出ると、夜空が手を叩きながら大爆笑していた。

 

「だっはっはっはっはっはっは!!あーーーーーーーーーーーーーはははははははは!!」

「笑ってねえで行くぞ!!」

 

 大爆笑する夜空を引きずり真っ赤な顔で立ち去る小鷹。

 

「…………」

 

 固まり放心状態になる星奈。当たり前である。

 あの衝撃波を最も身近で感じたのだから、あれが当たっていたらきっと遠くまで吹き飛ばされていただろう。

 

「だ……だだだ大丈夫でしたか星奈様」

「え……えぇ」

 

 答えるのがやっとだった。そして、星奈はもう一つあることに気付く。

 

「てか……あのギョウ虫女……夜空と一緒にいた?」

 

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 放課後、学校が終わり小鷹の家へ。

 

「な~~~~~んなのよ!あんの金髪性悪女はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 家にて荒れ狂う小鷹。思わず家が壊れないかと心配する夜空。

 

「だから言ったろ?やめといた方がいいって」

「あんな意地クソ悪い女だとは思わなかった!!てか一発殴っておけばよかった!!」

「やめとけ、あいつは理事長の娘だ」

「理事長?じゃああいつが父さんの友達の……」

 

 それを聞いて、夜空が疑問を浮かべる。

 小鷹がすぐさま「なんでもない!」と訂正する。

 

「それよりどうする?もう柏崎は諦めたろ?」

「てか、今日の事件でボクの対人恐怖症のレベルがなんぼか上がったよ……」

「ついでに怪力まで使用したしな。お前あれだな、蘭姉ちゃんよりも戦闘能力高いんじゃね?」

「あなたは蘭姉ちゃんをなんだと思ってるのよ……」

 

 相手は都大会優勝レベルで、目の前で放たれた弾丸を素でよける程度の戦闘能力。

 それより強い、そう考えると、小鷹の戦闘能力は未知数だった。

 

「気楽にいくか。まだお前の学園生活は終わっちゃいねぇ」

「ほぼ終わりな気がするんだけど……」

「めげんなよ、俺が手伝ってやるんだからよ」

「……」

 

 夜空のそのさりげない優しさに、思わず顔を赤らめる。

 自分程度じゃあ、この美少年とは釣り合わないこともわかってる。だけど優しさにときめくのは乙女心だろう。

 

「そういえば、お前を友達を作るための会。正式名を考えてみた」

「いつ"会"になったのよ」

 

「名付けて、隣人同好会だ」

 

 夜空はそれらしい名前を言った。小鷹はそれに対し、どうにでもしてくれといった感じで答える。

 

「隣人同好会か、まぁいいんじゃない?てっきり皇帝なんとかにするのかと思ったけど」

「じゃあ決まりだな。改めてよろしくだ小鷹」

「こちらこそ、た……頼りにしてるよ……皇帝」

 

 小鷹はまんざらでもなく、素直でもなく手を取る。

 正直まだ信じられない、けど信じなければ始まらない。

 ならばこそ、騙される覚悟でこの男を信じよう。小鷹はそう心に誓った。

 

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 翌日。

 

 今日も終わったら家で隣人同好会の会議を行う。

 正直小鷹自身、毎日の楽しみが増えたような感覚だった。

 そして家に帰る身支度をしている時、意外な人物が小鷹の元を訪れた。

 

「……ねえ?」

 

 話しかけてきたのは、なんと昨日あれだけ自分にひどいことを言ってきた柏崎だった。

 いったい何なのだろうか。まさか窓ガラス代の請求か……小鷹は無視しつつそう思っていると。

 

「あんた、皇帝とどんな関係よ?」

「……答える義理はないね」

 

 小鷹は昨日の仕返しもかねて、そっけなく返す。

 このまま立ち去ろうとする小鷹、すると柏崎は小鷹の手を握ってそれを止める。

 

「な……何?」

「その……私の仲間に入れなさいよ」

 

 それは、柏崎の意外な一言だった。

 

 

「私も……あんたの力になってあげるわよ!!」

 

 こうして、美男美女によるボクのプロデュースが、本格的に始まろうとしていた。


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