NARUTOの奈良家に転生トリップしたらブラコンになった。 作:柚子ゴル
「くそっ…‼︎ふざけるな!貴方は僕を馬鹿にしているのか?!」
「いやいや、本当だから。」
白との死闘はすぐ決着がついた。
死闘というにはおこがましすぎるぐらいすぐ着いたのだ。結果は言わずとも、美しく、素晴らしいをもはや超えている奈良シカマルの姉、奈良シカミ!僕だ!
林の中では影が多いのですぐ白の体を捕まえられる。
そんなことも気付かないぐらい僕に怒っていたのだろう。
そして冒頭のことを説明するとしたらネタばらしをした、だ。
今回も空也が大活躍をした。
基本的に魂が無事ならばその人の人格は同じだ。だから魂を別の入れ物、この場合はその人の体になるものに移したとしても、それはその人である。
ただ記憶が断片的になくなる可能性や後遺症が残る場合がある。
決められた未来に、その人が大きな影響を与えるほどその後遺症等は大きくなる。
僕にとって再不斬は戦力になって欲しいわけだから、後遺症は困るわけだけど、正直ただ死んでバイバイとする訳にはいかない。
それに前に言った通り、再不斬の体のまま木の葉に行けば僕の信用に関わる。
ならば、魂を別の入れ物にいれて自分たちで再不斬の魂に見合うと思った身体を見つけて来てもらい、空也に頼んでそちらに移してもらう。
完璧な作戦だ。
再不斬が、カカシの技をくらい死んだ後、空也は魂を掴み無理やりある物に入れ込んだ。
ある物とは最近僕が買った小鬼のぬいぐるみ。クリクリ可愛い黒のお目がとても愛らしい赤鬼のぬいぐるみだ。
そして今、白にこれが再不斬だ!と見せつければ、白は冒頭のように叫びだした。
未だ起きないぬいぐるみの頬を思い切り捻る。このデジャブ感。
「ちょっ!何するんですか?!」
「あれ?信じてないんじゃないの??」
「なっ…?!」
僕が白と話していると、片手で持っていたぬいぐるみが動き出した。
僕の手から逃れるとぬいぐるみは白の元へ走り、そして抱きついてこう叫んだ。
「白っ‼︎俺はお前が大好きだ!だから俺はお前と一緒にいままで通り旅をしたい‼︎」
「え、…はっ?!」
「……ああ、後遺症ってやつなのかな。この再不斬。」
いきなり意味がわからないことを言う再不斬に、驚く白。
僕はやっぱりあったかぁというように手を叩いた。素直な再不斬はめっちゃシュール。
ーーーーーーーーーー
依頼人であるガトーからの任務は、タズナとかいうじじぃの暗殺。
白と共に行動してからの任務は、勿論暗殺が多くいつも通りのものだと思った。
ところが、タズナを守っていやがるのは写輪眼のカカシ。
こいつは一筋縄ではいかないなと思ったが、カカシよりも危険な奴がいた。
そいつは俺を爆発により死の窮地へと追い込ませたくせに、自分自身の危険を顧みず敵の本拠地へ乗り込みわざわざ俺を治した頭のおかしいやつ。
そして、ガトーが裏切ればそいつの里へ行くという賭けをした。
つまりタズナはまだ生きていて、俺たちの戦いはまだ終わっていない。
それを意味することは、俺はまだそいつに挑むチャンスがあるということだ。俺はそいつの策略、攻撃により死にかけた。その借りを返す事が出来る…!久しぶりのこの戦いへの高揚感に興奮がおさまらない。
しかし、実際身体が動くようになりタズナのじじぃを殺しにいくとそいつはいなく、代わりといったらなんだがはたけカカシがいた。こいつの力は相当なものだというのはわかるが、俺は黒髪で地味な例の人物と戦いたかったのだ。
酷くガッカリしたがきっとすぐ来るだろうと判断した。
今は目の前のはたけカカシを殺そう。
結果からいえば俺は、カカシのオリジナルの技、雷切りに直接体に受け負けた。
白が叫び近寄ってくるのがわかる。情けなくも体の痛みに顔が歪む。今まで色々な奴を、斬りつけ、骨を砕き、嫌がるターゲットの首を落としてきた。自身の体がここまで痛め付けられるのはなかなかない。爆発の時はいきなりの事でもあり気を失っていたから痛みはなかったが…。ああ…なるほど、久しぶりのこの痛みだ。死にかけたことなど幾度とあった。その時は冷静になんかなれず、痛みにすら気づかず、焦りまくっていたのというのに、この冷静さはなんなのか。まだ自身の野望すら叶えられていないというのに。
白の声がし泣くまいと自分に話しかけているのが聞こえる。
その言葉を聞くだけで妙に心が満たされる。何故心が満たされるのか。自分の野望すら霞んでしまうこの想いはいったい…。
望むものはすぐそばにある。
ふと、こんなフレーズを思い出した。誰が言ったのかすらわからないこのフレーズはやけにストンと胸に落ちてきた。
自分が求めていたものはこれだったのか。自分を認めてくれる存在。その存在を何年もの間探し続けていたんだ。でもそれは近くにいた。
白がいたのだ。
「……俺は馬鹿だな」
声に出ていたのか白がごくりと生唾を飲んだのが聞こえた。
ゆっくりと立ち上がり白の顔をじっと見つめる。白は白で自分の名前を呼ぶ。
「再不斬さん…」
名を呼ばれるだけで心が落ち着く。思い返せば白と過ごした時期は里で自身に期待をかけられていた時よりも居心地がよく楽しかった。
死の間際になり自分がもとめていたのものを理解するなど一体どういうことなのか。笑ってしまう。
「俺はどうやら欲しかったものは既に手に入れていたらしい…。
だから少しだけ休憩をしようか。」
本当は白とまたもう一度いろいろな所に行きたい。けれどそれには自分の体力が持たないだろう。本当は息をするのも辛い。話せば話すほど視界がぼやけていくようだ。
けれど、道具だなんだと言って連れ回し、それでも、俺について来てくれたお前に言いたい。
「今までありがとう白。悪かったなぁ。」
頭を撫でてやれば途端に泣き出す白。返事を聞いた後急激に眠くなった。きっと今一度寝てしまえば二度と起きれないだろう。
最後に白の笑顔が見たいと思えば、それが伝わったのか、白は無理やり作った笑顔で此方を見る。
白は、やっぱり、笑顔がいい。
「おやすみ、白。」
俺を簡単に見捨て忌み嫌った里を憎みもしたが、白と出会え一緒に旅を出来たことは感謝しよう。
白は生きていくべきだ。優しく人を殺しても真っ白な心があるお前ならば何処でもやっていけるだろうから。
意識が遠のく。
もう二度と浮上出来ない意識の中、笑顔の白だけが真っ黒な空間の中で生きながらえた。
……はずなのに、二度と浮上しないだろうと思っていた意識は、再び浮上し、白の驚愕の顔が目の前にあった。
流石に驚きはしたがそれよりも、今は感情が高ぶる。今は一時も早く白に伝えたい。
今ならば素直に言えるはずだから!
「白っ‼︎俺はお前が大好きだ!だから俺はお前と一緒にいままで通り旅をしたい‼︎」
ーーーーーーー
「つまり、魂を無理やり移したハチャメチャな術による後遺症で、性格が素直になったと?」
「多分ね、現段階では。
まだ他に後遺症はあるかもしれないけれど、それはどんなのかは知らないしわからない。」
「それをどう僕は信じればいいんですか。そもそも本当に再不斬さんなのかも怪しいのに。」
影真似の術をといた状態の白は、自分の足元に抱きついてきている摩訶不思議なぬいぐるみを抱きかかえじっと見つめる。
すると今まで黙っていたぬいぐるみになった再不斬は、小さな声で話しかけた。
「白。信じられないのも無理はない。
実際俺も一度、死を覚悟したからな。けれど何故かまだ生きている。しかも意味がわからない姿でだ。くだらないプライドがいまだ俺に残っているが、それよりも俺は白と共に生きる。たとえ無様な姿だろうが、生きていく。全てを信じろ、受け入れろとは言わないから少しだけでもいい。考えてくれないか。」
白は少しだけ驚いたような顔になり、ぬいぐるみを握る手に力が入る。
「あの…僕の性別を知っていますか?」
「?僕でさえわかる質問だよそれ。中性的な顔立ちだけど男なんでしょ?」
「貴方は黙っててください。」
先ほどから僕に対してとても冷たい。まぁ、僕も結構なことしたからおあいこか。
ぬいぐるみの再不斬は暫く黙った。
ちらりと僕と白を少し見てから話しかける。
「いいのか?」
「構いません。貴方が本当に知っているのなら。何故そうなったかの経緯まで。」
「そうか…。白は…女だ。」
「は?」
僕は思わず素っ頓狂みたいな声を上げる。原作では男という設定であったはずの白が……女?一体これはどういうことなのか。頭は混乱するが二人が話す言葉を一語一句聞き逃すものかと耳の感覚は研ぎ澄ます。
「俺が男になれ、と強要した。
……白がまだ力があまりなかった頃、力がある変態共に乱暴されそうになった時から俺が、男として生きることを強要した。」
「…再不斬さんは助けてくれました。強要だなんて、思ってません。女として生きるより、男として生きた方が都合がいいから……僕が決めたんです。それに、男として生きるのも悪くないです。皆騙されますから!」
ニコリとぬいぐるみに微笑み、そして言う。
「…再不斬さん、これからもよろしくお願いします。」
「!…ああ。よろしく。白。」
二人は見つめ合いながら互いに話す。
僕はよく二人といると空気になるわけだけど、何故白が男だと話していたか分かった。乱暴はされそうになるは、仕事上でも舐められた…とかそんな体験をしてきたのかもしれない。忍びの世界には、男女関係がないが、一般人からしたらそんなものわからないのだろう。
先ほどの話は、再不斬しか知らず白が試した…ってところかな。
「あの、再び会えた感動は後回しにして、これからどうするか話しましょう。」
「あ、はい。そうですね。」
「そうだな。」
二人の了承は得てから話す。
「とりあえず、再不斬はそんな姿、ずっとは嫌だろうから、白と二人で好みの体を手に入れてきて。
そしたら僕がその体に魂入れるから。それまでは自由に動いて。魂入れ終わったら木の葉で働いてもらう。」
「わかった。」
素直に頷く再不斬に比べ白が待ったをかける。
「ちょっと待ってください。
賭けには負けてませんよ?
賭けの内容はガトーが裏切るかどうかですよね?裏切ってませんよね?ガトーは僕達を。少なくとも僕達は見ていません。
ですから、僕達の言うことを一つ、聞いてもらいます。再不斬さんの身体を僕達が見つけてくるので、無償で移してください。これでいいですか?」
「いやいや、待ってよ。それはないでしょ。」
「ならば、ガトーが裏切ったという証明になるものがありますか?」
「……。」
さっき気付いたのだけれど、僕は間違いを起こした。
ガトーが来る前に林に連れ込んでしまったのだ。
それにより、裏切りを証明できない。今更元のところへ行ってもきっと、カカシあたりが殺してしまっているに違いない。証明をするものなど今や皆無。こんな単純な失敗で今までの努力が水の泡になるだなんて。信じられない。
呆然と白を見つめる僕を助けてくれたのは、意外な人物だった。
「白、それはないんじゃないか?」
「再不斬さん?」
「俺をもう一度白の元へ誘ってくれたこいつに、すくなくとも俺は、恩を感じている。」
「再不斬さん…」
「え、じゃあ、木の葉に来てくれるわけ?」
少しだけ希望が見えてきた。
後遺症のせいか、今の再不斬は素直で馬鹿正直だ。前の再不斬ならば用済みだとか言って殺されそうだけど。これはなんとかなるかも…と思ったのだけれど人生ってそんな甘くないよね。
「いや、行かない。」
「何、僕をおちょくってんの?良い度胸だね。」
「再不斬さん、どうしたんですか?」
白でさえも混乱しているのに、僕が再不斬のやりたいことを知るわけがないが、答えは単純だった。
「貸し一つでどうだ?」
「貸し?」
「そうだ。お前が困っていたら、俺たちが助ける。これでキブアンドテイクだろ。あと、白にかけた術も解け。じゃないとカカシに密告するぞ、今までのこと。」
こ、こいつ…!
素直で馬鹿正直だけど、根元は変わってねぇ…!
なんて卑怯なんだ…。
カカシに報告されちゃあ、木の葉の上部まで届く。
僕の失態をなんらかの拍子でシカマルが知るかもしれない。
ねぇちゃん、カッコ悪いと言われるかもしれない。
そんな情けない事は断じて嫌だ。それだけは避けなければならない。
僕は泣く泣くその申しを引き受け、白に賭けた術を解いた。
「僕の名前は奈良シカミ。
以後よろしく。連絡がある場合、連絡鳥を使いましょう。じゃ、そろそろ行かないと怪しまれるんで。」
相手の返事も聞かずその場の土を蹴る。
後ろの方から聞こえた話し声に僕は更に足を進め、激しく嫉妬した。僕だって速く、シカマルイチャイチャしたいのに…!
ーーーーーーーーー
「行ってしまいましたね。」
「ああ、それにしても奈良一族か。道理で、影真似の術をする。
…ところで、俺の今の格好はどうなってる?まだぼんやりとしていて、よく自分の身体が見えないのだが。」
「あ、…えっと、赤い小鬼のぬいぐるみです。」
「は?」
「赤い小鬼のぬいぐるみです。再不斬さん。」
「……あいつ、ふざけやがって…。」
「ふふっ、でもとても可愛らしいですよ。僕は好きです。」
「……ふん、お前が喜ぶなら、この格好も悪くないな。」
「ざ…再不斬さん…、そんな姿でそんな嬉しい事言ってくれるなんて…。可愛すぎますよ…!」
ぎゅーっとぬいぐるみを抱きしめた白は、前のクールでカッコいい再不斬さんもありだが、今の可愛らしい姿で可愛らしいことを言ってくれる再不斬さんもありだなと思うのだった。