NARUTOの奈良家に転生トリップしたらブラコンになった。   作:柚子ゴル

14 / 36
第十二話

 

 

再不斬の追忍が去ってから辺りは嫌に静かだ。

ナルトやサクラは視線が定まらずウロウロうごめいている。サスケは目を閉じて立っているだけ。カカシにいたってはもはや空気と化している。

僕はというと追忍の気配がなくなっていくのを感じながらとりあえずまだ現実がわかっていない、受け入れられていない三人の下忍に話かける。

 

「カカシ隊長第七班護衛対象者の死亡により任務続行不可。木の葉に戻る。いいね。」

 

明らかに三人はビクリと肩を揺らした。ナルトは僕の言葉を聞き虚ろな目を向け静かに震える声で囁いた。

 

「こんなの…違うってばよ。」

 

その声小さいはずなのに聞いている者の心にズシンと響いた。特にサクラとサスケは尚更だ。

思わず二人はナルトの名を呼ぶがナルトは続ける。

 

「俺が…思い描いていたのと…全く違うってばよ…こんなの…。」

 

「何言ってるの。これはどうしようもない現実だよ。」

 

すかさずマサキはナルトに釘を指す。いつまでも夢物語の中にいるな。現実をみろとマサキは話してはいないのに雰囲気や目で語っていた。

ナルト思わずマサキに向けていた目を下へと落とした。

自分が思い描いていたものはタズナのおっちゃんを救い出し自分を認めさせて…。そんな未来を考えていたのに。

下に視線を向けるとタズナのおっちゃんの血が此処まで飛んで来ていた。それを見たら一気に気持ち悪くなりこの鉄臭い焼け焦げた匂いなどが原因で喉からこみ上げてくるものがあった。臓器は転がり再不斬がいた辺りは一面赤一色。

タズナさんは死んだ。

マサキのせいかわからないが何らかの形で爆発し無残な姿になってしまったが、その前に再不斬に斬り殺されたのは確かだ。

一番近くで見ていたのにも関わらず守れなかった。

もしあの時速く動けていたら…。

もしあの時もっと作戦などを考えて突っ込んでいたら…。

もし…

もし……

もし…………。

 

 

今更になってはもう遅い。

つまりは自分の弱さのせいだ。

自分の力量もわからずランクの高い任務を望み挙句失敗した。

タズナのおっちゃんを自分のわがままで殺した様なものなのでは…。そこまで考えてゾッと鳥肌がたち心から恐怖し震えた。

忍びとはこんなにも死が身近にあるものなのかと。

しかしそこでようやく気づいた。マサキはそれに気づいていたことを。そして尚且つ忍びであり続けるのは大切な人を守るために強くなくてはならないし時には残酷な決断もしなければならない。と自分達よりもはやく気づいていたのだ。

 

今では自分にも大切な…守りたい人がいる。イルカ先生やサクラちゃんなど自分には守りたいものが沢山出来たし皆に自分を認めさせるという目標がある。

忍びは死が身近で怖いと先程思った。だけど守りたいものをまもっているというこの緊張感や重みは別に嫌いではない。

タズナさんは死んだんだ。自分のせいで。自分の力量不足のせいで。

それは受け入れなければならない事実だ。そして何よりこの悔しさとこの悲しさを忘れてはいけない。自分は任務を失敗した。取り返しのつかない事をしてしまった。タズナのおっちゃんを自分自身が殺した様なものなのだから。

 

ナルトは下を向いたまましゃがみタズナの血に手を向ける。

ねちゃっとした音がりナルトの健康的な手に真っ赤な血がついた。

それをマサキの方に掲げ見せつける。

 

「俺は…乗り越える。

この悔しさと悲しみを忘れずに。

タズナのおっちゃんに顔向け出来ないような忍びにはならねーしこんな失敗二度としねぇ。

でもこんなけじめのつけかたは嫌だ。勝手かもしれないけど俺ってばタズナのおっちゃんの家に行くよ。

そしてガトーを必ず倒す。

タズナのおっちゃんが成しとげるはずだったものをする!

ほら!俺ってば火影を越す男だから…。こんぐらいは出来ないとな!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

最初は震えた声だったのにも関わらず最後はハッキリとした意志が伝わってきた。

 

なかなか面白いと思った。

まるで自分とは全然違う。

自分が初めてこのような事態に陥った時、なんて言い訳をしよう。

遺族に睨まれるのでは…と考えていた自分とは180度違う。

 

まるっきり沈んでいた空気はもう既になくサクラやサスケは自分もけじめをつけるだのなんだの言っている。忍びにはこのような事態が沢山あるということがわかっているのか、いないのか。

多分、後者だろう。わかっているのならここまですんなり受け入れこんなにもはやく切り替えられるはずがない。

でも、まぁ最初の調子のってた時よりも断然増しだ。

 

 

 

 

だけどね…まだ。甘いよ。

 

 

 

 

僕はナルトをじっと見つめる。殺気を徐々に徐々に強くし威圧感を出しながら優しくまるで駄々をこねている子供をあやしているかのように話かけた。

 

「ナルト、それは無理だよ。

これからの任務、いちいちそんなことをするの?非効率だ。

第一タズナのおっちゃんおっちゃんって…依頼主相手に情を持つな。忍びに感情はいらないんだよ。」

 

 

ナルトは何も言わず僕を睨みつけた。

明らかに怒っていますよオーラが出ている。

怖くはないが煩わしい。

はぁ…なんかこの任務がはじまってシカマルの写真を見ていない。禁断症状でイライラしているのかもしれない。僕はナルトから視線を外しシカマルの写真を見ようと探す。

 

すると近くで真新しい血の匂いがした。顰めた顔をし目の前を見ると自分自身に苦無を振りかぶりタズナの血がついていない方の手にそれをぶっさしているナルトがいた。血がついていなかった手はナルト自身の血で濡れていく。

そしてナルトの血が地面へとポタリポタリと流れ落ちタズナの血ど混ざっていった。

わけがわからずナルトをまじまじと見つめる僕にナルトはドヤ顔をしこう言った。

 

「タズナのおっちゃんは血を流し戦った。俺も血を流し戦った。お互い血を流し戦ったんだ。いわばもう戦友の様なもんだってばよ。

俺たち第七班は仲間を見捨てるやつはクズだと教わった。そんな俺たちがしっかりけじめをつけずタズナのおっちゃんを放置するということは友を、仲間を見捨てる行為になるってばよ。

俺は…仲間を見捨てたりはしねぇ!」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

流石は少年ジャンプ主人公ナルト。ここで原作のタズナのおっちゃんは俺が守るってばよ!と公言したオリジナルバージョンをしてくるとは思わなかった。

まさに、まさかのここでかよ!と叫びたくなった。

 

あの後今まで空気だったカカシは遺族に報告する義務が俺たちにはあるからタズナさんの家に向かうと言われ仕方なく未だに動けないでいるカカシをなんと僕がおぶり移動している。

 

移動中ナルト達は終始無言だ。

何故ならこれから遺族達に直接会い任務は失敗しタズナさんはお亡くなりになりました。申し訳ありませんでしたと言いにいくのだから決して足取りは軽くないだろう。

 

家に近づいてきた最中、カカシはいきなりまさかと呟き僕の背中から僕をまじまじと見つめた。するとナルト達には聞こえないように困惑した表情で僕に尋ねた。

 

「どういうことだ。シカミ。

説明しろ。」

 

「後で説明するんで、黙っててください。」

 

僕はそれを心底迷惑そうに軽くあしらいこれから遺族に会いにいくナルト達下忍三人の背中を見ながら今は一体どんな心境で前に進んでいるのだろうとほくそ笑んでいた。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。