カメラと棒付きアメと   作:クロウズ

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六話目

 望月が家に来ることになった。休み明けテスト対策として勉強しに。

 

 

 

 

 ………………どうしよう。

 いや、見られて困るっていうものは部屋に置いてたりしてないけど。それでも、部活で一緒にいるとはいえ、同年代の女子を家に呼んだことなんて一度もない俺としては戸惑いしかない。しかもこいつ、ガード緩いところあるから2人だと気まずいというか、目のやり場にも困る。学校でもボタン開けて若干はだけてるし。

 隣を歩く望月を見てみると、いつの間にかシロを抱っこしてた。人懐っこいいい子だけど、初対面の人に抱っこされるとき、びくびくするんだけどな。引っ張られなかったってことはすんなり抱っこされたんだよな、珍しい。

 

 

「この子かわいいわねぇ~」

「キュ~ン」

「よしよし~」

 

 

 すっごい撫でてる。ここまでされるがままのシロは珍しい。あの2人や俺でも、シロに逃げられずにあそこまで撫でたことないのに。

 

 

「望月って、犬好きなのか?」

 

 

 こんなに撫でてるから、嫌いじゃないのは確かだろ。

 

 

「え?うん、好きよぉ」

「ま、じゃないとそんなに撫でないよな。……っと、望月。着いたぞー」

「あ、うん。あれ、ここって……」

「?どうかしたか?」

 

 

 家を前にして首をかしげている。何の変哲もない、一般的な家だぞ。隣には立派な和風の家あるけど。

 

 

「火野くんの家、ここだったのねぇ~。実はぁ、探してるときにここの前通ってたのよぉ~」

「あぁ、そういうことか。あ、悪いけどシロそのまま抱っこしてもらってていいか?足裏拭くから」

「は~い」

 

 

 家に入る前に、用意してたタオルでシロの足裏を拭いていく。ん、爪伸びて来てるな。また切らないと。

 

 

ガチャッ

「あれ、霞黒君今帰ったのー?」

 

 

 げ。

 

 

「あれ?あれあれあれあれ誰誰誰誰この子彼女?彼女なの!?彼女なんでしょ!このおっぱい星人!!」

「違う違う違うから落ち着け落ち着いてくれあとさらっと変なこと言うなそっちも違うから!」

 

 

 望月もびっくりしてるだろっ。

 

 

「えっと、この子って火野くんの妹さん?」

「いや、母さん」

「………え?」

「ちっこいけど、これ俺の母さん」

「史上最小のプロ雀士、火野美影(みかげ)でーす」

 

 

 いや、確かに母さんの身長140だけどさ、その自己紹介はどうなんだ?

 

 

「あ、望月エレナです」

「エレナちゃんね。で、霞黒君とは付き合ってないの?」

「い、いえ、火野くんとはただのクラスメイトで部活仲間です。付き合うとか、そんな」

「そう?家事は一通りできるし、結構優良物件になるけど」

「あーはいはいもういいから。今日はこいつと勉強しなきゃいけなくなったから、その話は終り終り」

 

 

 このまま放置してたら母さん暴走する危険あるし。というわけで、話が長引く前に望月の背中を押して家に上げる。

 部屋の前に望月を少し待たせて、着替えを済ませる。さっきまで着てたのは散歩用だし、私服はもう少しまともなやつだ。

 

 

「火野くーん、もう終ったぁ~?」

「ん、あぁ。入っていいぞ」

「お邪魔しま~す。…………へぇ~、火野くんの部屋ってこんな感じなのねぇ~」

 

 

 部屋に入ってきた望月は、まぁ予想通りというか、まず部屋の中を見回した。そんなに珍しいものはないと思うけどな。

 

 

「賞とかないの?」

「写真の方も麻雀の方も、結局は趣味だったからな。そういうのはまったく」

「ふぅん」

「そんなことより、勉強だろ?」

 

 

 テストは国数英らしいから、英語を重点的に勉強する。しかも、望月の得意教科は英語らしいからちょうど良かった。国語は簡単だし数学は大体できるけど、英語がどうも弱いんだよな。

 

 

「英語は、翻訳がたまに難しいのよねぇ~。あ、そこのスペル間違えてるわよぉ?」

「たまにどころじゃないんだけど……。で、どこ………あぁ、ここか」

「結構間違えやすいから気を付けてね?」

「うす」

 

 

 授業で出た文法の穴埋めや日本語の英訳を望月が出して俺が解く形で、数時間勉強し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 休憩中。

 

 

「あー………疲れた…………」

 

 

 休みボケのせいで頭が痛い。

 

 

「でも今のうちにしておいて良かったでしょう?今日のこれがなかったら、火野くんテスト中にそうなってるわよ?」

「う………っ」

 

 

 頭だけじゃなくて耳も痛い。実際その通りになることは想像ついたからなんか悔しい。いつもは息荒くしながら女子を追い掛け回してるくせに……。

 

 

コンコン

「失礼するぞ」

 

 

 望月の言葉に傷心中だったら、家の人間ならしないノックをして、着物を着た市松人形みたいな子が入ってきた。お茶を持ってきてるからお茶運び人形みたいだ。

 

 

「むっ……今失礼なこと言わなかったか?」

「言ってない。それより、ありがとう鈴ちゃん」

「そ、その呼び方は止めるよう言っただろ!?」

「まあまあ。あ、望月。この子幼馴染の鈴ちゃん」

「………不知火(しらぬい)五十鈴(いすず)だ。黒に――火野が世話になってるな」

「火野くんのクラスメイトの望月エレナよぉ、よろしくね~」

 

 

 俺と望月の前にお茶を置く鈴ちゃん。そのまま出ていくかと思ったけど、俺の上家に座る。なんか妙にそわそわしてるのは何でだろ?

 

 

「火野くんにこんなかわいい幼馴染がいたなんてねぇ~。ねぇ、写真撮らせてもらってもいい?」

「別に構わないが」

 

 

 鈴ちゃんが頷くや否や、愛用のカメラで色々な角度から撮り始める。望月は相手が市松人形みたいに小さ「小さいって言うな!」痛っ!?

 

 

「わ~お、着物から繰り出される見事なおみ足、もといローキック」

「鈴ちゃ……着物姿で、ローキックは………」

「うるさい、黒兄が小さいって言うからだ!」

 

 

 久しぶりに黒兄って呼んでもらったけど、ローキックの痛みでそれどころじゃない。うっ、足が………正座しっぱなしだったのもあったからいつもより痛い……。

 

 

「ふん、失礼するからなっ」

 

 

 怒って鈴ちゃんは出ていく。……あー、後で謝らなきゃ。

 

 

「いてて……。ごめん望月、騒がしいとこ見せた」

「私は気にしないけど。それにしても、かわいい幼馴染さんだったわねぇ」

「まぁ、妹みたいなもんだし」

「だから黒兄って呼ばれてたのねぇ」

 

 

 最近じゃ苗字で呼ばれることが多くてちょっと寂しいけどな。

 それから昼飯は家で食べて、休憩が終ってからは今度は望月の勉強を俺が見る形になった。けど途中で鈴ちゃんの話になって、アルバムを見せることになったり、勉強会は途中から俺の昔話になってた。写真を見せてるときは、幼い頃の鈴ちゃんともう1人の幼馴染を見て息が荒くなってたことには無視した。もうだめだこいつ。




 勉強……うっ、頭が…………。どうも、クロウズです。
 六話目にて火野母こと美影さん出ました。小さいです。昔からですので、火野父はロリコン(仮)だと思います。
 幼馴染に関しては、四人ほど候補があった中、友人と相談した結果五十鈴こと鈴ちゃんに決まりました。市松人形なお茶運び人形です。いいよね、着物。もう1人の幼馴染は、聖櫻学園生徒の方ならすぐに解るあの子です。



 次は人物紹介とか書いておこうかなと思います。じゃまた!

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